「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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私の中のあなた


 白血病の姉を救うため遺伝子操作されドナーとして生まれた少女が、臓器提供を拒み両親を相手に訴訟を起こすというヒューマン・ドラマ。とはいえ、主演キャメロン・ディアスで次女役が『リトル・ミス・サンシャイン』のぽっちゃり女児アビゲイル・ブレスリンとくれば、無理を強いる親とドロドロの法廷バトルってな展開なわけもなく、終末医療の問題提起を軸に家族愛を描いた切なく温かく泣ける映画に仕上がっております。こういうのを観ると、日本の「難病もの」の多くが如何に安直で踏み込みが浅いかがよく判ります。

 ラブコメの女王と実力派子役の競演が話題で、二人ともそのユニークな魅力を遺憾なく発揮してくれてる本作ですが、それ以上に頑張ってるのが白血病の長女を演じたソフィア・ヴァジリーヴァです。当初は天才少女ダコタ・ファニングが起用(そして妹役も実妹エル・ファニングだった)されていた難しい役を見事にこなし、鼻血や嘔吐も厭わずに髪どころか眉まで抜けた顔を披露して強く優しくキュートに大熱演。実質の主役と言って良い活躍でした。辛い治療でボロボロになりながらもポジティヴに短い青春を謳歌する様がグッと来ます。ここは、恋人役トーマス・デッカーのTV版『ターミネーター』のジョン・コナーの時とは大違いの男振りにもやられました。

 デザイナーズベイビーの問題から、延命治療の是非、難しい問題に直面した家族の在り方まで観る者に考えさせる要素がてんこ盛り。多少の取っ散らかりや投げっ放しもありますが、説教臭かったり小難しかったりすることなく描くストーリーの構成が巧みです。現在と過去の回想が行き来し、視点も一人に固定しない重層的なシナリオの緊張感のおかげで、ミステリー仕立てのオチがわりと簡単に読めてしまっても問題なく楽しめました。地味だったパパと息子それぞれに、大事なところで家族を救う見せ場があるのも良かった。全体的には善人ばかりが出てきてちょっとロマンチックすぎる内容でしたけど、家族それぞれの心の中や弁護士・判事・担当医のエレガントな対応がしっかりまとめられてるのが素晴らしかったです。

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キャメロン・ディアスアビゲイル・ブレスリン

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ワルキューレ

 ドイツ軍内部の反ヒトラー派によるクーデターを描いた作品。トム・クルーズのアイパッチ軍服姿が物凄い胡散臭さを醸してるわけですが、クラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐は実在の人物であり、眼帯もキャラ付けじゃなく実際に隻眼で、描かれた「ワルキューレ作戦」によるヒトラー暗殺計画の顛末も概ね史実をなぞってるそうです。北アフリカ戦線の描写は導入部だけであり、勘違いして戦争アクションを期待しないよう注意。
 この件を発端にロンメル将軍が自害に追い込まれた事(この映画では一切触れられない)は知ってたんですが、事件の詳細は全然知らなかったので歴史好きとしては面白かったです。しかし、クライマックスでヒトラーの生死を隠して物語が進行するのは興醒めでした。冒頭でご丁寧に事実に基づく旨を教えてくれる事もあり、観客はクーデターの失敗を知りつつ物語を追う事になるのですからそこはもっと工夫して欲しかったです。

 でも、ドイツ貴族の誇りに賭けナチス打倒に立ち上がった英雄の悲劇として描けば楽なところを敢えて政治サスペンスに挑んだ意気は買いたいです。クーデター実行までのプロセスや政治的な主導権争いはわかりやすくまとまっており、「ヒトラーの側近にならなかった」とうそぶく弱腰軍人達とは一線を画す反骨の主人公像も素晴らしい。結末がわかっていてもそれなりの緊張感を保ち退屈と思わせない作劇も見事です。
 これで、暗殺計画の何所に綻びがあり、どんな予期せぬ出来事がおこり、いかにして叛乱が失敗したかをドラマチックに描いてくれれば文句なしなんですが、リアルに真面目に作りすぎた故に娯楽作としての醍醐味がごっそり抜け落ちてます。その後の情報コントロールの優劣による形勢逆転も美味しいネタなのに淡々と描きすぎで勿体ないです。

 ヒトラーの弁舌はドイツ語の方が趣があるとなんとなく思いますが、個人的に登場人物が英語で話すのに抵抗はありません。画面に映る日記をドイツ語で記述してたり、急に「ハイル・ヒトラー」とか言い出しても無問題。トム・クルーズがドイツ語で喋る方がよっぽど落ち着かないですよ。
 ナチス内部の正義たる反ヒトラー勢力の皆さんが地味に生臭くて権力バカから日和見野郎や獅子身中の虫っぽいのまで複雑な人間模様を奏でてる辺りが本作の見所で、トム・クルーズの華のありすぎる個性によって若干優等生的に成りすぎた物語を引き締めてると思います。『ブラックブック』で反ナチ・スパイ女を好演したカリス・ファン・ハウテンがわりとどーでもいい扱いで登場するのは解せませんが。
 とはいえ、「ヒムラー?ゲッベルス?誰それ?」レベルの知識での観賞は厳しく。劇中で殆ど説明されないノルマンディー上陸作戦後のドイツ軍情勢や国民の窮状・ナチの悪行などは大雑把に抑えておきたいところ。

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ワールド・オブ・ライズ

 サー・リドリー・スコット監督による中東を舞台にしたド外道な対テロ戦争スパイ工作情報戦。ハイテク米国とアナクロ中東の価値観の違いを対比しつつ骨太かつサスペンスフルに仕上げた作品で、冒頭のアクションからガツンと来て終盤までリアリティと緊張感を保ったままグイグイ来るのですが、最終的に物話が小さく纏まってしまい物足りなさを覚えるという、リドリー・スコットにありがちな結果となっております。

 ペルシャ人看護婦の出番が増えるほどに敏腕エージェントな筈の主人公に迂闊な動きが目立っていくのが問題です。出会ったばかりで身辺調査も済んでない女性を任務遂行中に口説くとか酷い危機管理です。しかも、仕事が一因で離婚調停中って男が何の躊躇いもトラウマもなく。
 更に、異教徒との簡単には埋めがたい距離をカップルに重ねるにしてはヒロインの姉やご近所の皆さんが良い顔しないぐらいでさしたる障害が無いのも話を薄っぺらくしてます。挙げ句に安直でB級臭いオチに利用されちゃ社会派の雰囲気は台無しなのです。

 けど、メインの3人の俳優の虚々実々のやりとりは高水準。レオナルド・ディカプリオはリドリー映画お約束の「異文化と衝突し過酷な状況に追い込まれる主人公」として中東の文化を理解し尊重するも上司と現場の板挟みなCIA工作員を手堅く演じております。アメリカを体現する現場無視の傲慢な上司にラッセル・クロウ、協力を仰ぐヨルダン情報部の冷徹な親分にマーク・ストロングが配されており、考え方の差異による主人公との微妙な関係が味方さえ信じられない状態を作り出していて面白かったです。ただ、流石にラッセル・クロウの役柄がポンコツ過ぎだとは思いましたが。

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私は貝になりたい

 TBSの歴史に燦然と輝く半世紀前の伝説的TVドラマのリメイク版。再放送・再ドラマ化・懐かし番組のダイジェストなどで誰もがあらすじとオチを知ってる作品ですが、オリジナルと同じ橋本忍の手による脚本は潔いまでに意外性ゼロで手堅く反米・反戦の気持ちを伝えてきます。SMAPの中居正広が主人公という事で脊髄反射的にダメダメ感がつきまとい実際に足を引っ張る場面も多々あるのですが、超シリアスに演られると凄くヘビーな物話なだけに「中居クン」まんまのコント演技が一服の清涼剤な部分もあり短所を相殺。ちゅか、それだけじゃなく映画全体がいろんな意味でチグハグなんですが、オリジナルを凌ぐことはないけど良さは殺さない絶妙の玉石混淆加減で意外と良作になっちゃってる不思議。

 中居クンには「ガビーン!」とか「ガチョーン!!」とかそういう擬音がピッタリのオーバーアクトが飛び出す難はあるものの、前半はアイドルなのにちゃんと善良小市民のオッサンに見える演技をしてるし後半は丸刈り&ダイエットの努力に見合うだけの画は撮れてて及第点。クライマックスは鬼気迫りますし、面会で子供達と会うシーンとか大根だけど子役パワーで最後よりもむしろ泣けました。
 問題は白黒写真ですら現代の芸能人にしか見えない仲間由紀恵の方です。高知の田舎者っぽさも無ければ薄汚かったりやつれたりとも無縁。芝居そのものにも苦悩や辛抱の要素がごっそり抜け落ちてます。署名集めとか夫婦愛を前面に押し出したものとなっているのに、吹雪く中でまで小綺麗な顔してちゃ全然ヒロインの必死さが伝わってきません。
 けど紅白コンビの演技が頼りない穴は豪華な個性派俳優陣が少ない見せ場でいい演技を見せて埋めております。外人達もそれぞれいい味。ただ荒川良々と笑福亭鶴瓶は本人が持つキャラ・イメージが強すぎて納まりが悪く、草クンの登場もコント色を無意味に増幅するのが困ります。皆、確実に中居クンより巧いんですが。

 助命嘆願してくれる人が大勢いて愛する家族もいる男が「貝になりたい」という心境に至るには、もっと要領の悪い人生を強調したり理不尽な受難を増やす必要がある気もしますし、「悪いのは軍で国民は被害者」「連合軍の裁判は出鱈目で不公平」という主張が強調されすぎてるのは気に入りませんが、やはり脚本のクオリティは高くこの頃流行りの無理矢理な泣かせ連発に陥らないのが好感。
 そして撮影が高水準。テレビドラマ出身の初監督作品だそうですが、とても映画的に画面を大きく使って撮っているのに感心しました。四季を美しく切り撮った近代化される前の日本の風景は特筆ものだし、見事に再現された巣鴨プリズンの外観や内部なども見所です。焼け跡のCGは酷すぎて笑っちゃいますが。時代考証は多分に怪しい感じでいながらも、進駐軍・帝國職業軍人・地方名士・市井の人々などのディテールはリアルっぽく演出され、木曜日に響くお経と聖書の醸すムードも本格的。何より2時間超でありながら長尺を感じさせないのが素晴らしかったです。

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中居正広仲間由紀恵

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ワルボロ

 80年頃の東京・立川市を舞台にしたヤンキー中学生抗争映画。原作は「バカ」系ライターのゲッツ板谷による自伝的小説のようですが漫画的デフォルメはかなり強烈です。何を隠そうマピールさんはほぼ同世代人であり、隣町の有名不良中に一般生徒として生息していた為、当時の地域事情はそれなりに把握しております。ツッパリの造形はあんなもんですが、街はあそこまでブロンクス化しておりません。歓楽街中心にワルやクズも多いですが機動隊や自衛隊など公権力の眼も厳しい土地ですからね、立川は。

 「腐ったミカン」の『金八先生』が高視聴率を獲得し『横浜銀蝿』がヒットを飛ばすツッパリがトレンドだったあの頃、確かに我が母校でも不良のカテゴリーに含まれる男子が全校で120人強はいたと思います。ただ、普段は映画のように少数でつるんで遊んでたし、近隣との抗争とかでも戦力として動員できた武闘派は2割がいいところで、族やOBが絡まなければ大集団にはならなかったかと。ただ、劇中の「立川抗争図」は校名を変えてる割には現実の配置や背景と酷似しており、各校の力関係もほぼ変わりません。・・・もうちょっと配慮しろよ。
 一般生徒からも恐れられるほど朝鮮中が異常に好戦的だったのも事実です。無知ゆえに「バカでもチョンでも」と言ったり、珍しさで「チマチョゴリ」を指差したりするたびに被害者が発生してましたから。それが理不尽な暴力にしか映らない為に男気だしたツッパリ達が介入して事態が悪化するのが常でして。しばしば映画じゃやれない酷い惨状に。今ほど民族問題の認知が進んでなかったですからねぇ。

 誰も中学生に見えないのはお約束なので置いといて、映画は殆んど喧嘩ばかりでドラマ的内容が無いに等しく、ガリ勉からの転向だとかヤクザの世界に引き入れようとする叔父だとかの設定も活かされず退屈でした。ド定番の家族の問題やら色恋沙汰まで中途半端なままフェードアウトするに至っては、不良界隈以外は扱わない方がマシに思えました。松田翔太×新垣結衣、ゲストに仲村トオルというキャスティングから考えて、一般人にもうける『ビー・バップ・ハイスクール』的なヤンキー青春ものを狙った筈なんですからベタベタな友情物語と喧嘩アクションで押すべきでしたよ。
 ゴチャゴチャと大人数が動き回るだけのアクションは迫力不足だし、友情と義理人情の青春賛歌としては熱さに欠け、コメディとしてもパンチが無くて、成長ものとしては人物の内面描写が貧弱。地元民としては「懐かしい」という一点で楽しめますが、それ以外にこれといってストロング・ポイントが見当たりません。

 特に主人公の憧れの少女が不良世界のあれこれに一切関わってこない脚本なのが問題です。目玉の筈の新垣結衣がほぼ端役扱いで出番のわりに印象が薄いです。物騒な世界観のわりにエロ方面は物凄く健全でレイプもなければ図書室で盛るとかもありません。不良デビューものの基本である「ヘタレだけど女絡みでやせ我慢」という構図が最初しか成立せず、ヒロインの心情は最後まで謎のままです。
 松田翔太もオーソドックスに演じてはいますが、あまり悶々としているようには見えずギラギラとした危うさもありません。そもそも、あのルックスで非モテというのが無理。アクションでは父・松田優作の目つきを垣間見せたのですが全体に平凡でした。これは他の不良たちにも言える事で演出がつまらないって事ですね。大きな外しはないからこの手のVシネとか好きな人ならそこそこ楽しめるとは思いますが。

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