「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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オーケストラ!

 ブレジネフ体制の旧ソ連で弾圧により楽団を追われた天才指揮者が、30年間の沈黙を破りかつてのメンバーを集めて偽楽団を結成しパリへと向かうコメディ。てっきりロシア映画だと思ってたらフランス映画でした。両国の民族ネタや国家ネタをさして理解出来ないというハンデはありましたが、ベタなギャグも十二分にあるし笑いの品も良く、色々と中途半端で煮込み不足の構成なのに見せ方の巧さで拍手喝采に持ち込んでしまう力業に感心。特にヒロインの出生の秘密から後日譚迄詰め込んだ12分間に及ぶチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲演奏で感動的にフィナーレというのが素晴らしかったです。

 前半はメンバー集めのドタバタがに費やされてるわけですが、そこで多彩な登場人物それぞれを魅力的に描いた割りにサブ・ストーリーが群像劇として綺麗に収束しないのはガッカリ。偽造パスポートや楽器調達問題や団員失踪などの障害もあっさりクリアしすぎるし、嘘がバレるスリルも殆ど無いなど全体に脚本は甘いです。でも実在するパリ・シャトレ劇場やボリショイ交響楽団に間抜けな役回りを振ってみたり、チェルシーのオーナーである石油王やロシア国家をコケにするような政治の話もあったり尖った部分も多いです。
 特筆すべきはソリスト役を務めたメラニー・ロランの美貌。『イングロリアス・バスターズ』での映画館オーナー役に引き続き今回も受難のユダヤ系フランス人を熱演。流麗な弓さばきに自然と目が行く首筋や胸のホクロ、バイオリンと一体になって感情を吐き出し究極のハーモニーへと誘っていく姿には震えが来ました。後半のフランス編しか出演してないにも拘わらず物凄く輝いております。

 ところで、普遍的なロシア人気質というのがよくわからず、況んやフランス人視点となれば更に厳しいのですが、どうやら、「出たくねぇ」事件の歌手『t.A.T.u』を思い出せばいいようですね。即ち、大雑把で時間にルーズでプライドが高く約束を守らないし謝らないエトセトラ。しかし、宇宙飛行士・野口聡一さんの本などで効率・マニュアル重視のアメリカ流とは別の経験則アプローチでビッグ・プロジェクトを成し遂げる姿も伝え聞いており、いざという時に結束し型破りな力を発揮するのは映画の中の話だけじゃ無いのかもしれません。少なくともロケット打ち上げは天候も気にしなければカウントダウンもせずいきなり発進な国だけど、それで高い成功率を誇ってるわけですし。

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アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン 他

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運命のボタン

 「ボタンを押せば100万ドル、ただし見知らぬ誰かが死ぬ」。この設定を聞いた時に脳裏に過ぎったのは『ヒッチコック劇場』や『ミステリー ・ゾーン』などの古き良きSF風味TVサスペンス。だから、真っ先に考えたのは「これって30分かせいぜい1時間のネタじゃね?」と言う事。そして、予想通りに無意味な探偵ごっこと予想を超えて意味不明なSF展開で引き延ばされておりました。はっきり言ってこの辺りが面白くないです。加えて、シニカルというよりアンフェアな後付けルールを持ってこられちゃ観客に拒絶反応を起こしてくれと言ってるようなものですよ。もっとスマートに纏まってればああいう幕切れも悪くないのですが。

 意外な展開続きで話が何処に転がっていくかわからず退屈はしませんが、とにかくストーリーの膨らまし方が中途半端。主人公が脚に障害を持ってるという設定が今一つ活かせてませんし、この話にNASAや火星が必要だったとも思えません。ピースサインとか図書館の顛末とか水のゲートも何がしたかったのか謎です。サルトルの思想が解ってるとピンと来るのかも知れませんが、哲学とトンデモSFの食い合わせは究めて悪く、善良につつましく生きてる女を経済的に追い込んで罠にかけるという安手のポルノみたいな展開も不可解。なんで普通に利己主義を戒める寓話にしなかったのでしょうか。

 わざわざ70年代設定で作ってるのは拘りの原作準拠なのでしょうか。エンドクレジットで知ったのですが原作は『地球最後の男』『縮みゆく人間』などの古典SF作家リチャード・マシスン。この人は『ミステリー ・ゾーン』のメインライターの一人でもあります。つーか、調べたら85年の『新トワイライト・ゾーン』でこの話が映像化されてて、映画で旦那さんが懸念してるのがオチだったようです。当時、観てると思うんですが全然記憶にありません。原作の方も気になって試しに我が家にあった『激突!』の原作本を捲ったら巻末の訳者解説にオチまで載ってやがりまして、これもありがちだけど冷笑的な幕引きのようです。
 ところで、キャメロン・ディアスがすっかりオバサンになってますけど、『私の中のあなた』ではここまで酷くなかったから70年代っぽい役作りとダーク系の演出に因るものでしょう。爽やかな笑顔とコメディの印象が強いキャメロンやジェームズ・マースデンを真逆の役で起用したのは皮肉たっぷりな本作らしくて良いと思います。

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キャメロン・ディアス、フランク・ランジェラ 他

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インセプション

 国内興収30億円超と大ヒットした上に「ベスト・オブ・ベスト アワード2010」で堂々2位に食い込むなど、どうやらマジで一般ウケしてるらしい事に驚かされた本作。難解な設定に賛否両論必至の夢ネタで普通の映画よりハードルが高い上に、クリストファー・ノーラン監督の趣味丸出しのフィルム・ノワールなのに。『ダークナイト』がヒットしなかった国で絶賛の嵐を目の当たりにすると、「皆さん、何者かにインセプションされちゃったんじゃないですか?」と問いかけたくなります。個人的には睡魔と闘うのに苦労したし。

 「夢の共有におけるメリットとリスク」「夢の階層化と移動のルール」「体感時間の変化と上位層の干渉」あたりは最初の1時間をチュートリアルに費やしてくれるおかげで普通に理解できるし発想自体も魅力的。雰囲気もスタンリー・キューブリックを彷彿させ凄く興味深かったですし、散りばめられた古典映画ネタも趣あり。パリのシーンや無重力アクションなど特殊映像は総じて面白かったし、シニカルで緻密な世界観をきちんと構成し独特の閉塞感を映像化した監督の手腕も素晴らしいです。これで主旋律が他人の夢を荒らしまくる産業スパイチームの大活劇であったなら凄く楽しめたと思うのですが、話はセンチメンタルな主人公のトラウマ克服という地味で意外性の無い方向に注力され・・・。

 吹き替え版の情報量ならもっと嵌る要素が発見されるかと期待してDVDで再観賞してみたわけですが際だった収穫は無し。むしろ、上辺は小難しそうだけど実は捻りも無い一本道のストーリーという印象が強まってしまいました。異なる世界の出来事が3つも4つも同時進行する点はグレートだけど、本質的に脚本の出来はあまり良くないと思いますよ。
 特に「夢の中で死んだら目が覚める」というルールを徹底せず、「今回は脱出不能の最下層に落ちちゃう」なんて後付けし、挙げ句に「脱出は可能、経験済」となる流れは酷すぎます。いつ死んでもOKじゃアクションに緊迫感なんて生まれません。大体、常套の緊急脱出法が使用不可なら作戦開始前にメンバーに周知徹底しとかなきゃ拙いですよ。「ミッションを破壊する女の登場は主人公が原因」ってのが冒頭のミッションで明示されてるのに無策で突撃というのも腑に落ちず、設計士の迷路設計能力を全然活かせてないのも気になりました。
 一番の問題は主人公のディカプリオが全能すぎる事でしょうね。奴は最も夢世界の構造に精通してるし、イドの怪物たる女房の問題もきちんと把握してるわけで、結局エレン・ペイジも渡辺謙も関係なく一人で全てに決着を付けちゃうわけですよ。意味ありげなラスト・シーンだって主人公が全てを掌握し望んで其処にいるのは明らかなんで、其処が夢か現実かで物議を醸してもあまり意味がないのであります。我々の暮らすこの世界の現実性を問うても仕方ないように。

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レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙 他

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インビクタス/負けざる者たち

 描かれるのは、国家反逆罪で27年間投獄され釈放後に南ア初の黒人大統領になったネルソン・マンデラと、直後に自国開催されたラグビーW杯で快進撃するナショナルチーム「スプリングボクス」の逸話。手堅く真っ当で感動的な秀作なのですが、クリント・イーストウッド監督作品に付きものの強烈なインパクトが無いので地味に感じました。不遇の半生を送り苦難の国家再建に挑む大統領とアパルトヘイトに対する制裁の影響で低迷するチームを纏め上げるキャプテンとを重ねた構成は巧いし、自ら映画化権を買い取り主演したモーガン・フリーマンの演技は迫真でマット・デイモンも当たり役「ジェイソン・ボーン」とは全く異なるラガーマン的肉体に改造して取り組んでるけど、うーん。

 イーストウッド監督という事で上がり過ぎたハードル以外には、弱小チームが這い上がって勝ち抜いていったかのように語られる違和感というのも評価を下げる原因。日本では145失点の悪夢で記憶されるあの大会は、NZオールブラックスと豪ワラビーズが2強を形成し、スプリングボクスは国際舞台からは遠ざかってはいるもののイングランドや仏と同等かそれ以上、つまり決勝進出も不思議じゃないレベルだった筈なんですよね。チームが強くなっていく過程が映画であまり描かれてないのは、劇的なエピソードがたいして存在せず技術向上や作戦による勝利だったからなのでは。
 なんせラグビーのルールなんて全く知らないであろう米国人向けなので、試合の駆け引きはおろかトライとドロップゴールの得点の違いすら殆ど触れてません。怪物ウィングのジョナ・ロムー対策が気合いと根性で済まされるのには失笑しました。一目でロムーとわかるキャスティングは素晴らしいのですが。

 そんなわけでラグビーチーム、特に多大な貢献をしたと推測される監督・コーチ陣には残念なのですが、この映画の面白いところはラグビー・エリートではなく、脇役の大統領SP陣・キャプテン宅の人々・教会でシャツ受け取らなかった少年など市井の人々で示される新しい南アの白人と黒人の共生なんですよね。
 そして、受刑時代のマンデラを敢えて深く語らないのが良いです。タイトルのインビクタスは不撓不屈という意味だそうで、それならば回想で獄中の受難とかに触れるのが常套なのですが、収容所を訪れたキャプテンが垣間見た幻影と一篇の詩だけでそこを表現してしまうのが凄い。劇伴の使い方も絶妙です。
 ところで最後のホルストの「木星」に歌詞が付いた曲「World In Union 95」。あれは毎回歌われてるラグビーワールドカップ公式テーマ曲に過ぎないのですが、この映画向けに作られたかのような詞で驚きました。あれで終わるのは卑怯だよなぁ。

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(2010/07/14)
モーガン・フリーマン、マット・デイモン 他

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アリス・イン・ワンダーランド

 鬼才ティム・バートン監督が描くディズニー・アニメ『ふしぎの国のアリス』の後日譚。冒険から13年後、それを夢だったと思いこんでる19歳アリスを主役に据えたオリジナル・ストーリーなんですが、件のアニメの内容はほぼ忘れていて、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』&『鏡の国のアリス』も挿絵眺めただけでちゃんと読んでない身にはなんだか色々と厳しい話でした。日本でも世界各国でも大ヒットしたわけだから原作を知り英語に堪能ならもっと楽しめるんだと思うのですが。あと、3Dで観て無いで言うのもなんですが、鮮やかな色彩が売りのバートン作品と色がくすむ3D眼鏡の相性は最悪な気がします。

 凝りに凝ってる映像は流石の出来ですが、もっとぐちゃぐちゃの世界観を予想してたので意外にあっさり目で残念。それに、バートン監督の趣味が炸裂すると普通の話でもワンダーランドになっちゃうわけですから、折角のナンセンスな世界感も予定調和にしかならないのです。監督の作風に先入観を持ってない方が純粋に楽しめるのかも。
 んで一番難儀なのは、奇抜なキャラを揃えながらストーリーが在り来たりの成長物語になってる点。ディズニーの意向なのか、かなり毒気が抜かれた勧善懲悪物語に小さく纏まっているのです。微妙に現実世界とリンクしてるようであまり意味を為してないし、意外な事も全然起こらないし、盛り上がって欲しいとこで盛り上がりません。異形の者への愛も感じられず物足りない事この上ないです。

 キャラクター映画としては、とにかくアリスが可愛くないのが辛いです。コンセプトが救世主として戦う強い女だとしても、従来のチャーミングなアリス像と両立して欲しかったところ。ジョニー・デップもいつも通りの怪演を見せてくれるのですが「いかれ帽子屋」にしては随分まともな人で周りのマッド過ぎるCGキャラに喰われる始末。ヘレナ・ボナム=カーターは流石の存在感だし、アン・ハサウェイの他人事のような態度も悪くないと思うのですが、どうも人間体が全体に精彩を欠いてる印象です。服を着たカエルさんの造形と表情豊かなチェシャ猫のラブリーさが救いなのでした。ぶっちゃけ、アリスなんか抜きで良いからCGキャラがメインで不思議の国の日常を描く作品が観たいです。

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(2010/08/04)
ジョニー・デップ、ミア・ワシコウスカ 他

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