Wring that Neck

DVDで観た映画の感想

釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束

 『釣りバカ』シリーズはスペシャル版2本を含めると今回で20作・20年目を迎えたそうです。当初は『男はつらいよ』のB面映画でしたが96年からは松竹のニュー・スタンダードの座を守ってきたのだからたいしたものです。尤も、ハマちゃんの妻・みち子さんをはじめ実は結構降板が多く、主役コンビ以外にレギュラーを守り通してるのは谷啓、笹野高史、中本賢といった面々ぐらいなんですが。後継シリーズの模索も始まりましたが、ハマちゃんは定年せずスーさんも隠居しない不自然な世界で延々と続けていって欲しいものです。まだ廻ってない県もかなりありますし。

 さて、三國連太郎さんを如何に動かさないで撮るかに腐心していた近作とは一線を画し、今回は釣りバカコンビ中心に原点回帰してて嬉しいです。朝原雄三監督の5作品では一番好きですね。遂にスーさんが鈴木建設社長を退任し会長に就任という導入部から岡山に失踪してマドンナと合流という流れまで、完全にスーさん中心に話が進みます。毎回『三國さんはあと何作出来るの?』という不安に苛まれて来たのが馬鹿らしくなる健在ぶり。考えてみれば森光子さんの三歳下で森繁久彌さんよりは十も若いんだから芸能界の85歳はまだまだ現役です。寄る年波に負けず頑張って欲しいものです。
 一方、今回は前半でスーさん夫人の密命を帯び、後半はスーさんの手足となって動く位置にいるハマちゃんは印象が薄め。その場その場のギャグは見事だしスーさんとの息のあった掛け合いもバッチリなのですが、ストーリーの中心に活躍の場が用意されてません。西田敏行さんがバイプレーヤーとしても優秀なのを証明した形ですが、「弥七」兼「八兵衛」役で主体性無く動かされるハマちゃんって何かが間違ってます。

 そしてゲストの印象も弱い。今回は釣りバカ・パートとマドンナ・パートがバラバラという事は無く、「リゾート開発と反対運動」として程好くブレンドされてるんですが、「お寺の後継者問題」に中途半端にちょっかいを出してバランスが悪くなった感じです。マドンナは山田洋次のお気に入りで宝塚出身の檀れい、その母親に東宝『若大将』シリーズの星由里子と、シニア層には堪らない新旧女優揃い踏み。これは何の問題も無いんですが、反対運動のリーダーという重要な位置にいる筈の高嶋政伸の掘り下げがあまりに不足。結果として酷かった前作の恋物語以上に底が浅いです。
 今回、痛感したのはパターン消化が多すぎて本筋に割ける時間が足りないって事ですね。ハマ・スー両家に営業三課にボンクラ取締役四人衆を絡め先述の皆勤レギュラートリオの出番も作らなきゃって事で尺はどんどん喰われます。釣りのシーンや地方スポット廻りにゲスト描写を織り交ぜてサイドストーリーを充実させろというのは無理な要求なのかも。どこかを思い切って切らないとね。
 ところで、今回は闘争という全共闘世代向けの題材を持って来たのがナイスなアイデアと思いました。入場料千円の低予算映画で採算ラインをキープするには従来のシルバー層に加え団塊世代を取り込めるかが重要ですからね。きっと「今どきの若いやつはピケの張り方もしらねぇのか。」とか盛り上がるでしょう。

釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束
(2008/02/08)
浅田美代子谷啓

商品詳細を見る

デス・プルーフINグラインドハウス

 三番館2本立て興行のパロディ映画の後編はクエンティン・タランティーノ監督のB級カーアクション&バイオレンス。『プラネット・テラー』を観てからこの映画を観ると、本当は後半なのに先に公開した関係者がなーんもわかっとらん事が明々白々であります。病院のシーンに向こうのキャラが登場するお遊びの他、張り詰めっ放しの1本目で疲れた客に追い討ちで“シャベリタランティーノ”丸出しのガールズ・トークを延々と続け、テンションを目一杯落としておいて一気にトップギアという狙いも台無し。これ、単独で気力充実状態で観てしまうとダベリが退屈極まりないだけなので要注意です。一杯引っかけての観賞がベター。勿論、女性観客の事など微塵も考慮してませんのでそのつもりで。

 コイツは70年代の低予算アメリカ映画がいかに素晴らしかったかを明示する完成度の高いB級映画であります。まったく、イカれてます。本筋とはなんら関係の無い与太話を繰り広げるミニスカやホットパンツのビッチ達の腿や尻を、ひたすら執拗にローアングルで追い回すのみで本編の5割を占めるという変態ぶりが凄まじいです。酒場で流れるソウルの選曲は渋いですが今時の若い娘と完全にミスマッチで苦笑。フィルム傷などのエフェクトに妙に明るい照明と毒々しい色調で見事に古臭いフェイク70'sに仕立て上げつつチャカチャカ娘どもが普通に携帯電話使いやがるのも笑えました。間延びからご都合主義の急展開もまさに当時のアクション映画のテイスト。完全に「知っている世代」で更に「偏った人」向けの作品です。面白いのは『プラネット・テラー』だけど好みなのはこっちの方ですね。あの頃、テレビ東京の土曜の昼の映画を腐るほど観てたティーンとしては、こういうのが観たかったと心底思います。バカ映画バンザイ!
 ただ、終盤だけは一般の人にもお薦めできる愉快・痛快の歴史的カーチェイスなので必見。何でこんなにテンションが上がるのか不思議なほどの高揚感。的確なカット割と命がけのスタントが醸し出す恍惚の疾走感。クルマの壊れ方も素晴らしかったです。そして完璧なチェイスを演出しながらも、同じところを何度も走っている様にしか見えないB級魂に脱帽。ラストの「何コレ?」感も最高にバカっぽくて素敵。流れる曲も最高。

 キャストにはいかにもB級っぽい雰囲気を漂わせた女優陣が揃ってますが、後半4人組の顔ぶれは『RENT/レント』のダンサー&レズビアンの二人に『ダイ・ハード4.0』のブルース・ウィリスの娘と実はかなり豪華。唯一見覚えの無いゾーイ・ベルは『キル・ビル』でユマ・サーマンのスタントを演じていたそうで、Tシャツ一枚でやるなんて論外の「姐ちゃん凄ぇな!」と言うしかない身のこなしを披露。腕っ節にも拍手喝采。ロザリオ・ドーソンのムチムチかかと落しも見事でした。
 そして、最高なのはよくぞこの仕事を請けたカート・ラッセル。仕事の無くなったスタント野郎の悲しみ、若い娘に相手にされなくなった中年男の怒り、そして異常者の笑顔から無様で情けない泣き顔までヴァラエティたっぷり。劇中のラップ・ダンスのくだりで「アレがキュートでセクシー?」みたいな事いわれてるオジサンですが、ラストは本当にキュート。いやはや、この人に今更キュートという言葉を使おうとは思いもよらなかったですよ。

デス・プルーフ プレミアム・エディションデス・プルーフ プレミアム・エディション
(2008/02/22)
ヴァネッサ・フェルリトローズ・マッゴーワン

商品詳細を見る

DOA/デッド・オア・アライブ

 元ネタは日本の格ゲーのようですが、マピールさんはDOAXの認識しかありません。それもネットで水着販売とかが盛り上がってたのを知ってるだけで、動いてる画はXboxのCMで見たぐらいです。この通称「乳バレー」と呼ばれるゲームの存在だけでどういう客層がどんな理由で支持してるかは容易く想像出来ますけど。

 つまるところ、アメリカのティーン向けセクシー格闘バカ映画ということで、ゲームファンの悲鳴を他所にB級映画好きに全力でツッコミを堪能させてくれる期待通りの作品でした。なんせ、合間に人探しやらお宝探しやら様々な思惑で格闘トーナメントに集まった世界最強のファイター達が陰謀に巻き込まれるドラマが挟まるものの、基本的にはアートフルなアクションとねえちゃん達の乳を眺めて楽しむだけの作品です。舐める様なローアングルや不自然なトップアングルが多用され、ストーリーに全く絡まないのに延々と挿し込まれるビーチバレーから無意味な雨中のキャットファイトまで、ポロリなしの健全お色気描写で徹底的に攻める姿勢が最高にくだらないシーンの数々を生み出すのでした。

 まあ、そうやって笑っていられるのもゲームに全く思い入れが無いからで、コアなファンは憤懣やるかたないんでしょうがね。潔いまでに女性キャラのみをフィーチャーするのは正しいにしてもロケもエキストラも日本の忍者集団の描写も全部中華ってどーなのか。しかも、ストーリーの一応のメインを張る忍者姫(なんだそれは?)がつのだじろうの漫画キャラみたいな顔で華の無い貧乳日系人、もう1人の女忍者に至っては北欧系と何かが間違ってます。同じく忍者設定のケイン・コスギまでもカンフーを軽やかに披露したりする始末で、日本のゲームなんだから少しはリスペクトしろと言いたくもなるのでした。でも、カウボーイハットのアメリカ娘のいかにもなルックスとか、半裸からのブラ装着アクションを決める女泥棒とかは素晴らしかったです。

 問題は意外にツボを押さえた造りというか、物語構造がまんま『燃えよドラゴン』になっているため折角の場当たり展開が予定調和に落ち着いて弾けきれないことと、アクション映画なのに「燃え」要素が決定的に足りないことですね。愛・友情・正義も仇敵・因縁・復讐もかなり薄目。ボスキャラとその陰謀にインパクトが無いのも痛いです。あと、クライマックスに関わる人数が多すぎ。気がつけば無駄に大量のカップルが発生している辺りは脳天気でよろしいのですが。

DOA デッド・オア・アライブ デラックス版DOA デッド・オア・アライブ デラックス版
(2007/08/03)
デヴォン青木 ホリー・ヴァランス ジェイミー・プレスリー ケイン・コスギ サラ・カーター ナターシャ・マルテ

商品詳細を見る

ディパーテッド

 巨匠マーティン・スコセッシ監督による、香港映画の傑作『インファナル・アフェア』のハリウッド・リメイク。しかし、マフィアに潜入した警官と警察に潜伏するマフィアの対決というプロットから主要なストーリーの流れまで同じなのに、作り手でこんなに変わるのかと思わせるほどに別ヴァージョンになっております。
 オリジナルは善と悪の狭間で苦悩するスパイの悲壮感溢れるヒューマン・ドラマだったわけですが、本作はソリッドでバイオレンス色の強い潜入サスペンスに仕上げられスコセッシ流ギャング映画に完全にカスタマイズ化。オリジナルに在った哀愁が微塵も残っていない上に終盤はブラック・コメディみたいなんですが、いかにもアメリカなスタイルでこれはこれで趣があると感じました。だけど、数々の名作で戴冠を逃し続けたスコセッシ監督が遂に制したアカデミー作品賞&監督賞作品という金看板を背負うに足るとは到底思えず。

 基本的にギャング映画という奴は独特のポリシーや因縁を上手く理解できない部分が多いので苦手です。まして本作はアメリカ特有の人種・地域ネタや市警・州警・FBIの複雑な対立が絡んでくるので背景がややこし過ぎてお手上げ。義理と人情のヤクザ映画のように感情移入できる登場人物も見当たりませんし。でも、オリジナルの感動的な要素をバッサリ切った代わりに加わったものを眺めながら、アジアンとアメリカンの好みの違いを浮き彫りにするという視点で結構楽しめました。

 売り物の豪華キャストは味のある役者揃いなんですがバランスは非常に悪いと言わざるを得ません。先ず、ボス役ジャック・ニコルソンが不必要に前に出過ぎ。しかも渋くダンディなファミリーのドンというイメージには程遠く、下品でクレイジーな殺し屋オヤジにしか見えません。その怪演ぶりは面白いんですがキャラが強烈過ぎて主役二人のインパクトがめちゃ弱に。事実上独りで敵味方構わず引っ掻き回しており、真面目に情報戦をやってる主役達が馬鹿みたいです。一方、警察側上司は逆にカリスマ性が薄すぎます。片方は怒鳴ってるだけだし。
 そして主役。覆面捜査官レオナルド・ディカプリオは新境地といえる演技で不安や焦りを巧く演じてるのですがマフィアとしてのポジションが下っ端にしか見えず、逆の立場のマット・デイモンの方はそもそも見た目が善人っぽくない上にあからさまに倫理観が薄めで小物臭が漂う役柄。そういう狙いの演出なんだとしてもこの二人にチンピラ役はミスマッチだと思います。
 あと、女医さん絡みの描写が邪魔臭いだけになってるのも不満。やたらと男臭い映画なんだからヒロインには一服の清涼剤を期待したいのに、主役二人に同時に愛されるにしちゃ妙に地味。こういう役は淑女と娼婦の魅力を併せ持つようなパワーがないと駄目ですよ。濡れ場も癒しって感じじゃなくて只の尻軽っぽいし。

ディパーテッド (期間限定版)ディパーテッド (期間限定版)
(2007/06/08)
レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン 他

商品詳細を見る

ダイ・ハード4.0

 『ダイ・ハード』の1作目は完全無欠のアクション映画であり、密室を舞台にした緊張感溢れる描写の数々、孤立無援の主人公の激しいアクションに魅力的な悪役、派手で大雑把な筋立てにみえてキレイに回収される複雑な伏線などが大きな特徴でした。しかし、『ダイ・ハード4.0』にこれらの要素は殆んど踏襲されてません。むしろ方向は真逆で、良くも悪くもハリウッド映画の王道をいく作品です。だけども面白かったです。
 最初から最後まで目が離せない痛快娯楽活劇で、かつ近年稀に見るバカ映画ぶりと、観客の期待を裏切りません。20世紀末アクション映画のセオリーをきちんと押さえた演出とたたみ掛けるようなハイテンポの展開、無駄に壮大なくせにわりと迂闊なテロ集団、シュワルツェネッガーばりに不死身の主人公。色々とやり過ぎな部分がかなり楽しめました。作を重ねるごとに急速に劣化していたシリーズの4作目にしては破格の出来です。過去の作品は観てなくても全く問題ありません。

 この映画の強みは、どんなにありえない描写でも興醒めにならないバランス感覚ですね。5分に一度はツッコミ入れてるような状態なのにそれを許容させちゃうパワーがあります。「ネット万能」と言う設定自体も大嘘ですが上手くリアリティを保ってます。
 過去シリーズの事はすっぱり忘れ、ヘリを車で撃墜し生身の女に容赦なく車でアタックするワイルドでスーパーな刑事による、無制限にインフレしていく戦闘を笑いながら観るのが正しいでしょう。家族のために頑張るというコンセプトこそ残ってますが、かつてのぼやきながら頭脳で敵に挑む姿は影を潜め、妙に積極的に事件に介入する成り行き任せの肉体派になっております。もう、「世界一運が悪い」とか「死にそうで死なない」とかいうレベルじゃないですよ。

ダイ・ハード4.0 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付き・2枚組)ダイ・ハード4.0 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付き・2枚組)
(2007/11/07)
ブルース・ウィリス

商品詳細を見る