「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ヒーローショー

 2006年に起きた東大阪リンチ殺人事件をモチーフにした青春バイオレンス。「キネマ旬報」と「映画秘宝」の年間ベストテン双方で8位入着してる話題作です。両誌のベクトルがかなり異なる事を考えるととっても凄そうと思ったのですが、これはちょっと期待し過ぎでした。いや、鬱系でアンチ・ハッピーエンドなオイラ好みの映画には違いないのですが。

 とにかく、中盤までは不毛な暴力を怒濤の如く描いていて最高に盛り上がるのですが、埋めてしまった後は二人の主人公のプチ・ロード・ムービーがダラダラと続き結構かったるいのでした。恐喝兄弟や重機オヤジから更なる暴力の連鎖という思惑を肩すかしされた事もあり、後半は無駄に長く感じたし展開も弱くオチもぬるいと思いました。「昔のひとーがー♪  いうことみたいだーとー♪」な説教をかましつつも夢破れゆく今どきの若僧へのエールを込めてる点は好印象なのですが、やっぱり物語は『ミスティックリバー』風に陰惨で絶望的であるべきだったと。

 井筒和幸監督というのは『ガキ帝国』の紳助・竜介とか『岸和田少年愚連隊』のナインティナインとかお世辞にも演技が上手いとは言えないお笑いコンビを起用して成功を収める驚異の演出力の持ち主で、今回もジャルジャルの二人をはじめ無名の吉本芸人や若手俳優をごっそり揃えてるんですが学芸会みたいには決してなりません。特にジャルジャル・福徳秀介のダメ人間ぶりは完璧レベル。ごく自然に悪気もなく次々と嘘をつくのがまた良いのです。相方・後藤淳平も暴力を振るう側の怯えを丁寧に表現してました。他では事件の発端となり事態を悪化させていくチャラ男くんが印象的。けど、寝取った女をナース姿にしてスパンキングってまだ若いのに随分とマニアックですな。これだからポルノ出身監督は・・・。

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(2010/11/26)
後藤淳平(ジャルジャル)、福徳秀介(ジャルジャル) 他

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プレシャス

 ハーレムに暮らす16歳の主人公プレシャスは妊娠中で、これが理由で学校を馘になる。実は父親にレイプされた結果であり、しかもこれが二人目。当の父親は失踪中で、母親は生活保護をアテにして働かないし、補助が出るので通わせてるけど本音は教育も無駄と考えてて、口汚く罵り悪態をつくのがデフォルト。挙げ句に一人目の子はダウン症で、母に疎まれたため祖母に預けられてる。そんなこんなで両親に虐待される貧困層の黒人少女がとある教師に出会い人生に少しずつ希望を見出してくありがちなお話・・・なんですけど其処は一捻り。
 普通なら薄幸の美少女が勉強とかスポーツとか性格の良さとか何か秀でたスキルで幸せを掴む展開ですが、凶悪顔の巨デブ、読み書きできないレベルの知力、見た目通りの運動能力、かつ社交性も低くて妄想で辛い現実を紛らわすのが関の山というヒロイン像となっているのが本作の特徴です。そこらの携帯小説を超える不幸てんこ盛り設定で底辺ライフを描くめっちゃ社会派な作品。でも泣かしてやろう感無く、社会的に無力で無知な貧困層の子供でも前向きに生きる術はあるという励ましを感じさせる映画でした。

 圧倒的な存在感はオスカーをゲットした虐待ママ役のモニーク。観ていて本当に怖ろしくなる程に不幸の連鎖の元凶として暴れまくり。その気性の荒さは常に何かとんでもない事をしでかしそうな雰囲気を纏い、煙草を持ったまま赤ちゃんを抱くシーンとか凄い緊迫感でした。本業のコメディアンの仕事に差し支えかねないレベル。
 そして、トップ・ミュージシャンのオーラを完全に消し去ったすっぴんのマライア・キャリーが社会福祉のカウンセラーを好演してるのも話題。あと、何故だかレニー・クラヴィッツも男性看護士役で出演してます。こっちは妙にセクシーという意外には特に印象なしの小さな役でしたが。
 さて、芸人やポップ・スターが活躍し主役も個性的な新人が務める本作で割を食ったのが、『デジャヴ』『ミラーズ』のヒロイン役で知られる主演級女優ポーラ・パットン。ドロップアウトした問題児達の更正に尽力する女教師という大役をきちんと演じながらモニークとの絡みが薄いせいで美味しい所を全部マライアに持ってかれちゃいました。また、フリースクールの生徒達が無駄に美形揃いなのも彼女の足を引っ張ることに。主役のガボリー・シディベがリアルにフライドチキンをバケツ食いしそうな外観であり役柄上愛嬌を振りまくわけにもいかないため華を添える役回りが一杯必要とはいえ急に不自然になるんですよね、学校のシーン。となれば人格者の先生が一番嘘っぽくなるのは必然なわけで。それにしても、あんなにルックスもスタイルも整ってるのにアルファベットが書けない娘ばっかの教室ってショッキングですな。

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(2010/11/05)
ガボレイ・シディベ、モニーク 他

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ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

 親友の独身最後の夜をラスベガスでのバカ騒ぎに費やした男達は、目覚めれば昨夜の記憶がなくホテルの部屋には虎と赤ん坊がいて花婿の姿はない。親友の行方と空白の一夜を解明する為に男達は奔走し、謎解きしつつ謎が生まれていくノンストップ・コメディ。
 無名俳優による低予算映画ながら世界的にメガヒットした本作は、コメディ映画不毛の地・日本ではDVDスルーが早々に決まって映画マニアを落胆させ、ゴールデン・グローブ賞作品賞の獲得で一転して劇場公開が決まり今度は半年以上待たされる羽目になったDVD派が嘆く事となった話題作です。
 そんなこんなで否が応でも期待値が上がったわけですが、基本的にはお下品なアメリカン・コメディで、結局の所、笑いが肌に合うかどうかは個人の嗜好に依存します。登場人物はアクが強く下ネタ満載でネイティヴじゃないと解らないギャグも多い気配と、唯々くだらない笑いを楽しみたい層以外には向かず、巷で言われるように美しく伏線回収が決まるロジカルな脚本なのですが、どんでん返し系のミステリーみたいなものをイメージしてるとこれもガッカリします。記憶を失くした二日酔いの朝を知る者にとっては身に染み過ぎて乾いた笑いに繋がる部分もありますしね。

 ホテルの調度品を破壊しテレビを窓から投げ捨てスタッフを縛ってアンプのケースに閉じこめたりした古のロック・スター達の武勇伝を彷彿させるスイートの惨状が大インパクト。あの世界もドラッグとアルコールに満ちてたわけですから、この映画の状況設定もあながち誇張とは言えないですね。というか、殆どの事件が日本じゃ無理でもアメリカだと成り立っちゃいそうに思えるからつくづくぶっ飛んだ国です。しかし、赤ちゃんの方は簡単に想像つくものの虎の経緯は完全に斜め上を行かれてひっくり返りました。あと、中国人最高。
 笑える疑問符を散りばめてサスペンスを盛り上げ、馬鹿馬鹿しい単発ギャグの真相なのに感嘆符を伴って回収される脚本は見事。破壊の過程をきっちり設定した上で計算され尽くしたタイミングで情報を小出しにし謎を発展させていくのが心憎いです。探偵役が同時に犯人である点も面白いですね。最後はたぶんアウトテイクの集合体なんでしょうが、ハイテンション続きの本編に不釣り合いなあっさり目のエンディングを一気にヒートアップさせるナイスアイデアでした。ニワトリが謎のままなのは残念でしたが。続編には日本の誇るリアル『ハングオーバー』、市川“灰皿テキーラ”海老蔵の起用を期待します。

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(2010/10/06)
ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ 他

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ハート・ロッカー

イラク戦争における米陸軍爆発物処理班の活動を題材にしたアカデミー賞6冠作品・・・の割りに極端に賛否が分かれてるっぽい問題作。まあ、主人公がクレイジー過ぎますし、爆弾処理描写は何がどうなっているのか理解不能だし、指揮系統が曖昧で独立支援部隊か何かのような行動に不可解な点も多いので、娯楽作品としてはわかりにくくリアルな軍事モノとしても考証が酷すぎる気がします。でも、異様な緊迫感で意味の無い戦いが無限ループで続くマッチョな恐怖映画として面白かったですよ。描かれるのがあまり知られてない仕事というのも好奇心が満たされますし。

 冒頭で「戦争は麻薬である」と引用される通り、テーマは「戦争中毒者の狂気と悲劇」なんですが色々と一筋縄では行かないのが興味深く。常套なら普通の善良な若者が地獄を見て変わっていく様子を捉えるでしょうに、本作は爆弾処理が大好きなだけのジャンキーを主人公に据えており、それが次第にテロ犯への怒りを顕わにするまともな人物に変遷していく様を描くという変化球なのでした。それが英雄的な兵士に成長するというわけでもなくてですね、既に戦争中毒者であった男が大義やら使命感やら持つというのは最悪の男が最悪の状態で大暴れという事に他ならないという・・・。
 そんな暗いドラマが展開されるのは、やたら暑そうな荒れた風景の中で一般市民がごちゃごちゃと生活を送る町。この描写と強烈なストレスで疲弊していく兵士の心情との相乗効果が素晴らしいです。爆弾テロには色々な種類がありますし、唐突に砂漠のど真ん中で狙撃戦が繰り広げられたり飽きさせない工夫も豊富で良く出来てます。後半に筆が滑りすぎのあり得ないイベントが続くのはアレですが。

 しかし、この映画を見ると「戦闘地域」だの「非戦闘地域」だのと騒いでいたのがバカみたいですな。爆弾テロの無差別非道ぶりにこんな分類は意味を為してませんし、主な標的もイラクの一般市民であり米とか日とかあまり関係ないようですし。陸自の居たサマーワは比較的治安が良かったとされますが空自はバグダッド国際空港でも活動してたわけで、死傷者が出なかったのが奇跡に思えます。反撃すら難しい特措法下の自衛隊をこんな所に派遣するって狂気の沙汰ですよ。民生支援も論外。

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(2010/09/02)
ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー 他

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ホースメン

 『ソウ』並の直接描写は不要だけどあれと同じぐらいに痛みを感じさせる演出がないと今時の恐怖映画は成り立ちません。『羊たちの沈黙』をやりたいのならレクター博士並の猟奇なバックボーンと美学が無いと辛いです。そして、『セブン』の雰囲気を出す為だけに聖書ネタを引っ張ってくるのはいいかげん止めるべきなのです。派手な死体を用意しても奇抜なアイデアや説得力のある犯行動機が無い上にオチがバレバレとくればモヤモヤ感が残るだけです。マイケル・ベイ率いるホラー制作チームによるオリジナルのサイコ・サスペンスという事で観てみましたが、端的に言って駄作以外の何者でもないですな。

 一生懸命ホラー映画のリメイクに勤しんできたマイケル・ベイともあろう人がこの程度の脚本にゴーサインを出すってのが信じられませんねぇ。わざわざ高いギャラを払ってチャン・ツィイーを起用しながら中途半端な扱いをしてる点を鑑みると制作中に構想を変えざるを得ない何かがあったんだと推測しますが、それにしても・・・。

 ツィイーの演技は確かに新境地で面白いんですが、いかんせん設定が薄っぺらで伏線ほったらかしだし、後半の話に全然絡まない点が非常に残念。状況からしてあの程度であの女が満足しちゃうってのも腑に落ちないです。物語よりもアラサーの彼女が18歳の役を演ってると言う事実に驚愕させられるってのも酷い。
 それと、家庭を顧みないダメ父役のデニス・クエイドが、仕事に家庭に頑張ってる良きパパにしか見えないのも問題。演出が間違ってるってのもありますが、それ以上に『デイ・アフター・トゥモロー』や『オーロラの彼方へ』のイメージが強すぎますね。

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(2010/02/05)
デニス・クエイドチャン・ツィイー

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