バイオレンス映画風のタイトルですが、中身はブラックなコメディです。寂れた田舎町の淡々と流れる日常の中に潜む、それぞれの秘密、それぞれの葛藤。揃いも揃って個性的なろくでなしでありながら、しかしどこにでも居そうな登場人物たちによる、だらしなく、みっともなく、情けなく、毒だらけのゆるーい狂騒劇。これをローテンションできっちりと滑稽に描き出した手腕が見事でした。
マピールさんがATG映画の為に二番館通いしてた頃によく観た昭和のマイナーコメディを想起させる作品ですが、それでいて物凄く新しいセンスと完成度を感じさせる作品でもあります。何れにせよ万人にはお薦めできません。完全に特定の波長の人向けです。
とにかく田舎の閉塞感と人間関係のぎごちなさがやたらリアルなのです。事故や女性問題といった平和な暮らしのちょっとした波紋から、救いようもないけど踏み止まらざるを得ない最悪の日々へ。薄っすらと笑ったあとでジワジワと苦い後味が積み重なって溜息に到る、そんな感じの妙な暗さのある映画です。この珍奇な人物達に自分を重ねず笑い飛ばせる人じゃないとダメージ大ですが、この映画を好んで観るような奇特な人は共感バッチリの駄目人間な気がします。
主役の警官(新井浩文)とその双子の兄(山中崇)の狂気とか三浦友和のダメオヤジぶりとか特筆に価する演技は多々ありますが、それよりも元アイドル・川越美和。オウムの女性信者みたいな壊れたキャラが良かったです。雪原に倒れたまま男児に乳と股間を弄られ、折角披露した大胆ヌードは全く色気の無い脱ぎ損ともいえるシーンで、下着姿の濡れ場じゃ喘ぎ声で笑わせたりと、頑張りようが痛々しいです。その他、シモの話題が多目でタイトルの乱射もそっちの意味かと思わせた本作では男優・女優・幼女も含めて脱ぎまくり。殆んどエロくはないですが。
今は無きジャパン・アクション・クラブの設立者・千葉真一(現在名・JJサニー千葉)と倉田プロモーション代表・倉田保昭という70年代アクションのレジェンド二人の対決が観れる親父ホイホイ映画。
片や空手の代名詞であるハリウッドスター、片やブルース・リーと交流のあった香港クンフーの巨人。この二人の激突だけが目当てで飛びついたんだから、60代とは思えない両雄の打点の高い蹴りやスピード感より動と静のコントラストを重視した体技が見れただけで満足しなきゃなんですが、ラストの方に待ってるそれ以外に本当に見所がなかったです。中年アクション・ファン向けに作られてないのは仕方ないにしても、アイドル俳優らしき若手達のファン層とも被らないので、誰に向けて作ってるんだと言いたくなります。
学芸会レベルの若手はどうでもいいからさっさと倉田先生とサニーを出せと思って見てたマピールさんも同情する程に終盤どうでもいい扱いをされる若者7人衆。仲間集めと修行でキャラ立てをしっかりやったのに、誰の特技も全くアクションに活かされないし、事件の解決にも殆んど寄与しない衝撃の展開。エンディングのNG集から推察するに個々の活躍はバッサリ切られた模様。聖闘士星矢で言えば、「ここは俺に任せて先に行け!」とかやってるのにそのバトルシーンをすっ飛ばされ、挙句に突然現れた五老峰の老師がラスボスと決着という流れですよ。哀れすぎる。
まあ、7人の内マピールさんが知ってるのは、最終決戦で「映す価値なし」状態になる面白アフリカ人アドゴニーと『バトル・ロワイアル』で見かけたヤンキー娘ぐらいなんですが、調べたら殆んどが特撮番組のレギュラー経験者のようです。二大巨頭も芝居は大根なので苦労は察するに余りありますが、全くのド新人ってわけでもない若手にここまで酷い芝居させてるのは監督の問題でしょう。無駄にワイヤーアクションとか挿入してる暇に演技指導すべきです。脚本も褒めようがないですがアクション以外だとカメラワークの質が格段に下がるのも泣けます。低予算をカバーするアイデアもアイドルを魅力的に撮るノウハウも足りてません。キャストにもスタッフにも頼れる名脇役が欲しかったところ。
あと、冒頭では気合の入った縦横無尽の大乱闘を長廻しで撮ってるんですが、テンポが悪く演舞っぽく見えちゃう上にそもそもカット割ってない事に気がつきにくいのが難。凄いハードなファイトシーンにトライした筋肉男の努力が報われてないです。
単純にできる話を無理にややこしくしてるような纏まりの無さとエピソードのぶつ切り感を修正すればもう少し面白かった気がするので勿体無い。意外にギャグは滑ってなかったし。
あー、予告編を見て想像したまんまのお話の映画でした。ブラピとアンジーの豪華スター競演アクション・ラブ・コメディという、お気楽映画として求められるお洒落で楽しくゴージャスで派手という要素はきっちり抑えているのでなかなかの出来映え。予想外にアクションも多めでしたし。捻りも無いスカスカのストーリーでしたが意外と酷くなかったです。
「倦怠期の夫婦は互いの正体を知らぬ殺し屋同士で、やがて真実を知り生死をかけた夫婦喧嘩が・・・」というのは、奇抜でも斬新でも無いけどやっぱり可笑しげなプロットだと思うんですよ。実際、カーチェイスの真っ最中に繰り広げられる夫婦喧嘩あたりまでは面白かったんです。だけど、テーマになるべき「愛」の描写が足りませんでした。なんとなく主人公達が元の鞘に収まってインパクトが無いし、仲直りのタイミングを中盤に持ってきたせいで終盤は完全に失速しちゃいました。もっとロマコメして2人の絆を強調しても良かったのに。
もうひとつの問題は主役2人以外は誰も話の本筋に絡まないのでスパイスが利かない事。2人の喧嘩に巻き込まれていつも悲惨な目に遭うキャラとか和解しかけた2人を掻き回すキャラとか欲しかったです。ハイテク美女軍団ももっと後半まで活躍させたかったし。特にダメなのは明確にボスキャラが示されて無い事で、そのせいでラストバトルはクライマックスにならずに尻切れに。オチさえマトモなら良作なのに勿体無いです。
だから、普通なら屑脚本のダメ映画なんですよ、間違いなく。ところが役者がピッタリと嵌まるものだからそれなりに観れちゃうのです。てゆーか主役二人を魅せるためだけにこの映画は特化してます。そして、その試みは概ね成功と云わざるを得ません。アクションも美形を格好よく撮るという1点において文句無しです。お洒落でセクシーな美男美女がたっぷり堪能できますし会話も洒落てます。特に前半は丁寧に夫婦の性格の違いと微妙な距離感を演じてました。ただ、もっとバカっぽく弾けてみて欲しいのに、どのシーンも絵になり過ぎてしまうのが難ですがね。とにかく二人の演技は最高なのでお話への興味なんてとっとと葬り去って画を楽しむのが吉です。
日本勢では男子体操や男女バレーが活躍した72年のミュンヘン五輪で起きた、パレスチナ・ゲリラ「黒い九月」によるイスラエル選手団11人殺害事件の報復の為にパレスチナ人11人を狙うモサド暗殺チームのお話。ただし、あくまでインスパイアでありノンフィクションではありません。勿論エンタメ路線でもありません。『シンドラーのリスト』とテーマは似通ってますが、向こうは人助けの話でこっちは人殺しの話、我々に与えられるのは感動ではなくずっしり重い苦悩なので映画ぐらいハッピーでありたい人はパスしてください。
ユダヤの同胞から裏切り者呼ばわりされ、パレスチナ側からはイスラエル寄りと批判されるスピルバーグ渾身の問題作は、面白いことにパレスチナ問題から遠い位置に居る日本でも右と左が真逆の視点で猛反発のご様子。たぶんスピルバーグの目論見どおりの反響で、みんな痛いところを突かれたってこと。この圧倒的な嫌悪感は凄いですよ。
でも小難しい政治的なテーマを扱ってる3時間弱の長い映画でありながら、見事なサスペンス演出で退屈させない演出力に感服です。ヒッチコックやスパイ大作戦のようなエッセンスに70年代の退色フィルムの雰囲気を再現してみせ、しかし痛快娯楽アクションじゃなくハード・バイオレンスという不思議なテイストなのです。
暗殺チームはエキスパート揃いのように見えて実は素人集団、みんな諜報部員のつもりでいたら殺し屋に任命されちゃったみたいな普通の人達で、任務は毎回不手際だらけでコミカルなんだけど、人が死ぬシーンは物凄くリアルというダークサイド・スピルバーグ・ワールド。包帯だらけ・埃まみれのオチが似合うコント展開から一気に具合が悪くなるほど血生ぐさいシーンに飛び込んでいきます。悪質。
殺し屋チームが善人揃いならターゲットも善良に見える普通の市井の人々という中で、さも当然のように狂った理論を振りかざしチームを理不尽な状況に陥らせる上官が最高でした。あとは、やっぱりオランダ女が儲け役。
この映画の主張は「報復の連鎖では何も事態を解決しません。さて皆さん、どうすればいいと思いますか?」なんて問題提起ではない気がします。パレスチナとイスラエルの闘いというのは比喩にすぎず、この映画の真の批判対象はどっかの大統領とその後ろにいる能天気で絶対正義な皆さんなわけで、そんな中立的な立ち位置にスピルバーグが居るとは思えません。劇中で主人公とパレスチナ青年の主張は平行線を辿りパレスチナ問題は簡単に解決できないことは示されてます。人の数だけ正義があり時には暴力に暴力で応じることも否定しないけど、破っちゃいけないルールはあるし明後日の方向に飛び火させるのは言語道断ってことじゃないかと。星がいっぱいな国の最近の介入はとにかく大雑把で、映画のヒットマン・チーム以下の素人集団が余計な被害を増やすわりに結果が伴ってないわけですから。
バイクで南米を縦断する若者達のロードムービーでも見て美しい景色を堪能しようとか思ったわけですが、パッケージのあらすじをろくに読んでなかったこともあり色々驚かされました。
先ず、てっきりバイク2台のお気楽貧乏旅行だと思ってたのが、おんぼろバイクにタンデムで大荷物を背負ってという無茶な冒険の旅で唖然。これは実話を元にした作品ですよ。目的はアルゼンチン〜ベネズエラ間一万キロ走破。しかも舞台は1950年代。こんなハードな旅なのにありえないレベルで無計画。なんか雪のアンデス越えとかしてるし。
そして、信じられないことに映画の中盤、三千キロ付近でバイクがスクラップになってからは全篇ヒッチハイク映画になります。バイクの耐久性を考えれば当然の帰結なんですが、タイトルは「モーターサイクル・ダイアリーズ」なんですよ。詐欺です。でも、バイクでコケるだけだった前半より話は俄然面白くなりました。
最後にこの映画が若き日のチェ・ゲバラの伝記映画だとようやく気付いてまた吃驚。まだ医学生に過ぎない頃のゲバラがマルクス主義革命を志す切欠になった最初の南米放浪の旅の映画化だったんですね。劇中の青年はキューバ土産のTシャツとかでよく見るワイルドなゲバラからは想像もつかない喘息持ちで融通のきかない若造なんですが。
エルネスト・ゲバラが中南米でアイドル的人気があるキューバ革命の英雄だと知っているかどうかで映画の印象が結構変わるんじゃないかと思います。知らなくても普通の青春グラフティとして南米の空気感が楽しめますが、
プロフィールを知っていれば、序盤では富裕層の世間知らずの坊やだったゲバラが貧困層や社会的弱者と出会って変わっていく様子がより鮮明に理解できるんじゃないかと。
実話ベースなのであまり事件は発生しませんが、あまり退屈はしませんでした。特にハンセン病施設のエピソードとか興味深い。ただ、ゲバラが高潔で繊細な真面目男に描かれ過ぎ、その煽りで相棒が女好きのちゃらんぽらん男に強調されちゃったのは残念。むしろ相棒の方が魅力的になっちゃってるんですよね。情熱的なラテンの若者があんなに潔癖な筈がないでしょうに。
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