「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コラテラル

 タイトルの意味は「巻き添え」。5人の殺しを請け負ったヒットマンに借り切られたL.A.のタクシー運転手が事件に巻き込まれ一晩の運命を共にする物語。とにかく渋いサスペンスです。個性派俳優2人が熱演し、雰囲気良し、アクション良し、音楽も概ね良し、なのに脚本が物凄く酷いです。

 トム・クルーズ扮する殺し屋さんはこんな人です。キャリア6年の凄腕フリーランスでクライアントにも顔を知られていない用心深い男・・・でもサイレンサーを使わずに街中で銃をぶっ放します。殺したタクシー運転手に罪を被せて何の痕跡も残さないプロです・・・胸に2発と頭に1発撃ち込んで確実にヒットするんで特徴的ですが。ターゲットは暗記せずに資料を直前チェックするだけで犯行は殆んどアドリブでこなします・・・第一殺人で早々とタクシーの運ちゃんに正体バレ、フロントガラスを損壊しトランクに死体を積んだタクシーに乗り続け、第二殺人では無関係な通行人2名を殺害。道中2回も大事な資料を置き引きされるし、その他いろいろ迂闊すぎです。
 どう見ても素人以下の無差別殺人男でおまけに超タフです。ターミネーターですか?

 なんで組織に車を用意させずにタクシーを使うのか?って事と、こんな性格の殺し屋がなぜ正体を知ったタクシー・ドライバー(=ジェイミー・フォックス)を生かし続けるのか?という答えが最後まで見出せませんでした。脚本の人はちゃんと仕事してください。 あと、FBIや刑事の対応も頭悪すぎます。タクシーをマークしてた筈なのにターゲットの前まで侵入を許し挙句タクシーで逃走されてロストってなんですか?非常線も張ってないみたいだし。
 最後の方はご都合主義連発で萎え萎えでした。ジェイミーが命をかける理由が弱いし、あっさり終わりすぎるし。
 そもそも、この話は運ちゃんが主役であるべき話なのにトムのアクが強すぎです。熱血野郎のトムにクールな殺し屋ってのが松岡修造に汗をかくな!黙れ!って言うぐらい無理な話なワケで。

 散々文句を言いましたが、会話劇としてみればウィットでユーモアに溢れ、なかなか含蓄に富んだシーンが多々ありです。まるで違う二人の人生が一晩を過ごすうちに互いに影響を受け大きく変化すると言うメイン・テーマもよく描けてると思います。なにより、トムのガンアクションが流れるように美しいです。期待値の高さからするとがっかりでしたが、B級アクションとしては良作だと思います。
 ところでL.A.って処は鹿やコヨーテが普通にいる街なんですかね?

コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション コラテラル スペシャル・コレクターズ・エディション
トム・クルーズ (2005/12/22)
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

この商品の詳細を見る
スポンサーサイト

トニー滝谷

 原作は村上春樹の短編集「レキシントンの幽霊」に所収された30頁程度の短編で、執筆が90年頃です。村上作品は、あの独特の空気や透明感を表現するのが難しいって事と、読み易い文体と裏腹にストーリーが難解な事が原因で、過去数回の映像化の試みは成功とは言い難い評価に留まってきました。しかし、この作品は原作のもつ世界観をかなりの精度で再現していると思います。それ故に村上ファン以外の人にはわけわからん内容の映画だとも言えますが。

 脚本は驚くほど原作に忠実。全篇に渡り西島秀俊の朗読が淡々と続き、役者は空白の多いセットで極端に少ない台詞だけで一人芝居を演じるという、舞台と言うか紙芝居風に撮る事で春樹ワールド化してるんですが、リアルに撮らないと言う決断が功を奏して実にいい雰囲気です。これには音楽の坂本龍一も多大に貢献してますね。
 そして、こういう演出意図なら主演がイッセー尾形なのは納得です。一人芝居のキャリアもそうですがなにより「孤独」が似合います。そして二役を絶妙に演じた宮沢りえも見事で、数々のファッションを着こなす必要があるこの作品は彼女なしには成り立たなかったんじゃないかと。
 時々、朗読に被さる様に急に役者が「・・・と、彼は言った。」なんて台詞を吐くんですが、慣れるとCMみたいなソリッドなテイストで面白かったです。

 ただ、徹底的に原作まんまで来たのにラストでちょっとだけ付け足ししちゃったのは疑問。限りなく蛇足っぽかったです。むしろ村上春樹ファンへのサービスで、トニー滝谷の庭を猫が通るとか、向かいの庭のデッキチェアの女の子やら鳥の石像やら、ギイイイッと鳴く鳥の声とか入れとけば良かったのに。最近の版の「ねじまき鳥クロニクル」にはトニー滝谷に関する会話のシーンはカットされちゃってるって噂だけども。

トニー滝谷 プレミアム・エディション トニー滝谷 プレミアム・エディション
イッセー尾形 (2005/09/22)
ジェネオン エンタテインメント

この商品の詳細を見る

モーターサイクル・ダイアリーズ

 バイクで南米を縦断する若者達のロードムービーでも見て美しい景色を堪能しようとか思ったわけですが、パッケージのあらすじをろくに読んでなかったこともあり色々驚かされました。

 先ず、てっきりバイク2台のお気楽貧乏旅行だと思ってたのが、おんぼろバイクにタンデムで大荷物を背負ってという無茶な冒険の旅で唖然。これは実話を元にした作品ですよ。目的はアルゼンチン~ベネズエラ間一万キロ走破。しかも舞台は1950年代。こんなハードな旅なのにありえないレベルで無計画。なんか雪のアンデス越えとかしてるし。
 そして、信じられないことに映画の中盤、三千キロ付近でバイクがスクラップになってからは全篇ヒッチハイク映画になります。バイクの耐久性を考えれば当然の帰結なんですが、タイトルは「モーターサイクル・ダイアリーズ」なんですよ。詐欺です。でも、バイクでコケるだけだった前半より話は俄然面白くなりました。
 最後にこの映画が若き日のチェ・ゲバラの伝記映画だとようやく気付いてまた吃驚。まだ医学生に過ぎない頃のゲバラがマルクス主義革命を志す切欠になった最初の南米放浪の旅の映画化だったんですね。劇中の青年はキューバ土産のTシャツとかでよく見るワイルドなゲバラからは想像もつかない喘息持ちで融通のきかない若造なんですが。

 エルネスト・ゲバラが中南米でアイドル的人気があるキューバ革命の英雄だと知っているかどうかで映画の印象が結構変わるんじゃないかと思います。知らなくても普通の青春グラフティとして南米の空気感が楽しめますが、プロフィールを知っていれば、序盤では富裕層の世間知らずの坊やだったゲバラが貧困層や社会的弱者と出会って変わっていく様子がより鮮明に理解できるんじゃないかと。
 実話ベースなのであまり事件は発生しませんが、あまり退屈はしませんでした。特にハンセン病施設のエピソードとか興味深い。ただ、ゲバラが高潔で繊細な真面目男に描かれ過ぎ、その煽りで相棒が女好きのちゃらんぽらん男に強調されちゃったのは残念。むしろ相棒の方が魅力的になっちゃってるんですよね。情熱的なラテンの若者があんなに潔癖な筈がないでしょうに。

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版
ガエル・ガルシア・ベルナル (2005/05/27)
アミューズソフトエンタテインメント

この商品の詳細を見る

HINOKIO

 子供向けなのに「スター・ウォーズ」「宇宙戦争」が公開されてる真っ只中に投入し果敢に玉砕。小6の役に16歳の堀北真希を抜擢し体操服着せるマニアックな趣向(しかも堀北は端役)。配給側も製作側もオツムのネジが心配になりますが、実は地味に真面目で切なく爽やかな友情モノの秀作です。事情で学校に通えない生徒の為に遠隔操作のロボットが一般化してるという設定で、ロボと少年少女の交流と操縦者の引きこもり少年と父親のふれあいが物語の肝。

 これは非常に評価に苦しむ作品です。将来的に有り得る興味深いモチーフなのに他のメッセージを詰め込みすぎて広げた風呂敷を畳めなかった印象のシナリオ。子供だまし過ぎてターゲット層の就学児童が馬鹿にしちゃいそうな表現が目に付く一方で子供達の描写は旨くって「少年ドラマシリーズ」のテイストを想い起こさせる演出。喩えれば「刺身で食べれる新鮮な蟹が手に入ったんでじっくり煮込んでカレーにしてみました。」みたいな作品。興業的失敗も含め実に惜しいです。

 先ず、ダメダメなところ。ゲームと現実がリンクしていくという要素は無理矢理感が強く率直に言って不要だったと思います。それに眼鏡っ娘の暗躍とかゲーム中毒の馬鹿ガキとかも中途半端でした。なにより終盤の処理が雑で奇跡のオンパレードな上に子供達のパートと親子のパートとが旨く連動しないのが痛いです。ロボとかどーでもいい話になるし。

 しかし、それらの欠点を補って余りあるのが見事なVFXとファンタジー・ラブストーリーとしての面白さです。 背景・人物に溶け込んだロボット・ヒノキオのCGは尋常なレベルではなく、ハリウッド映画にもヒケを取らない出来映えです。ドラム演奏から格闘まで器用にこなすテクニシャンのヒノキオ。デートで溶けていくソフトクリームを見守るしかないとってもラブリーなヒノキオ。ヒノキオは軽量化の為に一部に檜が使われているんですよ。檜より軽くて丈夫な材料なんていくらでもあるとか考えがよぎりますが、木目調の高級感あるデザインが大事なんですよ、きっと。なんたって電気駆動なのに防水加工より感覚フィードバック機能の開発を優先する博士ですから。

 ヒノキオのリアリティを支える子役達の存在感も素晴らしいです。特に多部未華子が奇跡的な嵌り役で、少年時代の友情と恋愛感情の狭間の微妙な関係を見事に演じてます。しかも、おこちゃまには分り難い形で仄めかされる性的虐待というダークな過去。物語の根底に流れるテーマは重く、脆弱な心の現代っ子達に現実世界に留まる意味を伝えようという監督の意欲が伝わってきます。ただ、今回は監督の空回りも多すぎました。次回作に期待です。

ヒノキオ ヒノキオ
中村雅俊 (2005/11/26)
松竹

この商品の詳細を見る

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。