「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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クラッシュ

 アカデミー賞とか関係なくコレは素晴らしい群像劇です。エピソードが乱立するグランドホテル形式でありながら話が上手く噛み合っていて、衝突の螺旋が徐々に収斂する様が心地よいです。よく考えると一つ一つの話の内容は薄いんですが統一感でそれを見事に補い、ヘビーな話の数々とドロドロの人間関係をささやかなクリスマス・ファンタジーへ昇華させ見応えある作品になってます。悪と正義を頻繁に入れ替えたり、奇跡の連発かと思わせて救いの無い展開があったりメリハリも良い塩梅です。

 当初は「人種差別」「銃社会」「階級差」といった日本に馴染みの無いストーリーだと思ってたんですが、描かれたものはもっとシンプルに「偏見」と「不信」の連鎖が生む軋轢という普遍的なテーマでした。「アメリカはおっかないね。」で済む話じゃありません。
 ネットで声高に叫ばれるほどに嫌韓・嫌中が現実社会で進んでるとは思わないけど、荒っぽい窃盗事件には中国人を想像するし、うっかりチリ人妻を娶ると白い目で見られるぐらいには世間の偏見は助長されてます。韓国人の全てが嘘つきじゃないし、南米の人が凶悪とは限らないし、米軍はレイプ魔ばかりじゃないけれど、拭い難い不信感はやっぱりあります。北朝鮮問題はあるものの思想的・民族的な差別は昔より少なくなってきていて、現在色濃いのは外国人や宗教団体の事件を背景にしたレッテル貼りによる差別なんですよね。まあ、昨今の日本では異文化・異人種との衝突より親子間・世代間の衝突の方が深刻な気がしますが。兎も角、日本にもクラッシュの下地は確実にあります。
 そして劇中でしばしば見られる、本当に些細な事柄からむしゃくしゃして起こるトラブル、八つ当たりされる弱者、妬み根性の大衆、言葉不足からの誤解、全部普通にその辺に転がってる問題です。「クラッシュして触れ合えば良いことか悪いことかは別にして何かが起こる」というこの映画のスタンスは、上手くかわす事で丸く収める日本の文化とはちょっと違うかなと思うんですが、考えさせられることが多い映画でした。

 ただ、やっぱりアメリカ特有の問題を扱った辺りはちょっと難しいですね。レイシストの白人警官の抱える問題では手厚いとは言い難いアメリカの保険事情やら、行き過ぎた人種優遇政策とそれで割を喰う白人貧困層(アイリッシュ系とか)、検事さん絡みでは白人による黒人殺しは無関係であっても人種問題に発展しがちなこと、黒人世論のアピールに白人を生贄にする逆差別が社会問題化してることなんかを知識として持ってはいるものの細部のディティールがスッキリしません。黒人とヒスパニックではどっちが階級が上なのかってのもわかってないし。マイノリティの底辺に割り当てられてるのがどうやらアジア人なのはわかりましたが。

クラッシュ クラッシュ
サンドラ・ブロック (2006/07/28)
東宝

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ステイ

 思わせぶりなミステリー風味の映画ですが、つまるところネガティヴな『ビューティフル・○○ー○ー』でした。もっと似てる作品もありますが、それはネタバレすぎるので敢えて言及しません。しかし、お話が壊滅的につまらないです。映像は非常に凝ってるけど話に全くヤマが無いので自殺願望の青年より先にコッチが昇天しそうでした。そして、存分に退屈させられた挙句の最後のネタバラシが「ふーん・・・くだらねぇ。」で済まされる屈辱。オチよりも同時に明かされる伏線たちの意味に萎え萎え。これは全然ダメでした。許しがたいですね。

 監督的には思惑通りに撮れて大満足なんでしょうが、オチだけが全ての映画は独りよがりでしかないと思います。マピールさんは伏線が大量に張ってあれば拾いきれなくても満足って人ですが、オチが来るまで一切の推理が不能な伏線ばかりで謎解きさせられるのは勘弁です。しかも、再観賞は遠慮したいこと請け合いのわけわからん話で。こういう話は結末よりも過程が大事だってことをまるで解ってない。ズボンの裾とか変な映像に拘ってる場合じゃないんですよ。熱演であろうが設定的にはリアルであろうが通るか、こんなもん。

ステイ ステイ
ユアン・マクレガー (2006/09/02)
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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ハサミ男

 原作読了ってことで、相当厳しいであろう映像化のお手並みを拝見。これが意外になかなか。ストーリーはかなり原作の再現度が高く、そのままでは使えないメイン・トリックのアレンジも上々でした。ハードルの高さを考えれば大健闘といって良い出来です。
 ただし、それは原作既読の好意的な視点だから。予備知識無しに観る場合は厳しいですね、コレは。脚本は良いけど演出がいまひとつで、旨く捻り出した折角のアイデアが活かしきれてません。豊川悦司と麻生久美子が上手く演じてるにもかかわらずかなりヘボいです。これで観客を騙せるかはちと疑問。
 それに昔の土曜ワイド劇場か日活ロマンポルノを思わせる演出とカット。なのにお色気ショットが全然無いのは赦しがたい・・・間違えました、古臭い映像がこの話のテイストにマッチしてないのが大きなマイナスという話です。なんでこんな冗談みたいな映像にしちゃったんでしょ?
 ファースト・インプレッションが全てみたいな作品なんで、どちらかを先に選ぶなら原作を読むべきです。そして映画には原作読者が楽しめるようなサプライズは殆んど無いので特に観る必要は無いという結論に。でも、原作を知らない事にはこの映画の努力の痕跡に気付かない、と。報われないですねぇ。

 まあ、一応オリジナル要素のエピローグも付け加えてあるんですよ。ここで女子高生が出てきた辺りまではまあまあのアイデアだったと思うんですが、そこで止めておけば良いものをトヨエツが出てきてダラダラと喋るのがいけません。完全に蛇足。匂わす程度に画で語るべきモノなのに、わかりきったことをクドクドと台詞で説明しちゃうのはダメな日本映画の典型ですね。エピローグ以外も説明的な台詞が鼻につくシーンが多々あり興醒め。
 もうひとつ余計だったのが「靴跡」。慎重なハサミ男が靴跡に気が回らないってのもお粗末ですが、決定的過ぎる重要証拠を握らせておいて有耶無耶ってのはどうなのか。ソールが擦り減るほどのスニーカーが複数存在する説明もつきませんし。
 原作では緻密に設定されてた伏線を所々端折った為に警察の捜査に齟齬が生じてるのも問題で、綻びだらけのバカ推理になってます。もうちょっとデリケートに扱って欲しかったところです。

 色々と苦言を呈して来ましたが、元々のストーリーがしっかりしてるのと殺伐とした雰囲気がよく出てるおかげでそれなりに見応えありです。ハサミ男のサイコっぷりは存分に堪能できますし、声もいいです。麻生嬢も無表情だったり吐きまくったり頑張ってます。CG合成や脇役のショボさには目を瞑ってあげてください。もっと予算があって相性の良い監督が撮ればきっと傑作になっていた作品です。いや、これを映像化した監督はそれだけで凄いんですけど。

ハサミ男 ハサミ男
豊川悦司 (2005/11/25)
東宝

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インサイド・マン

 先ず、最初に断っておきますが、本作は娯楽映画ではあるものの派手なアクション目白押しお気楽ハリウッドものを期待する人は観ちゃダメです。これはスパイクー・リーという人種問題に関する社会派映画を得意とする監督が撮ったビター・テイストのヒューマン・ドラマなのです。はっきり言ってアクション要素は皆無。

 人質全員に自分達と同じ服を着せ立て籠もる銀行強盗団、翻弄されながらも交渉に当たる刑事、銀行の別命で事件に介入する謎めいた女弁護士の三つ巴の心理戦という面白いプロットに、演技派の豪華キャストを取り揃え、中盤までは実に良い感じのドラマを展開してたんですが・・・最後ヘボ。確かに面白いんですよ。でも素材良し・シェフ良し・盛り付け良しのフルコースでメイン・ディッシュだけ普通だったみたいな感じで、練られたストーリーに見合うオチがついてないのです。ひとことで言うと微妙。

 とにかく謎とき系として致命的なのはかなり早い段階でメイン・トリックの想像がつくことです。それも、「まさか、こんなんじゃないよな。」って除外するような手口。アレは全然完全犯罪じゃないと思いますよ。絶対フェイクだと思ってたんで脱力でした。
 犯人側のワンサイド・ゲームなのも緊張感に欠けます。警察の対応は初歩的な部分にヘマが多すぎです。あれでは主人公の刑事は切れ者といわれても信じ難いです。タフなネゴシエーションで犯人を慌てさせるシーンが欲しかったですね。そして女弁護士も事件をややこしくするでもなく、あっという間に出番が終わりの種明かし役で物足りなさ倍増。とにかく期待を高める割に肩をすかされてばかりで何かスッキリしないんですよね、この映画。

 ただし、人間ドラマとしてならかなり面白いです。三人の掛け合いは勿論、中盤までの犯人×人質、刑事×人質の絡みが絶妙で、視聴者に必要な情報を与えると共にしっかりと伏線を貼り、しかも人種のルツボNYの差別風刺もきっちり盛り込んでいます。茶目っ気たっぷりの洒落た会話も随所に盛り込まれてます。ラストも小粋。籠城という基本的に動きの無い状況で飽きさせないカメラ・ワークも素晴らしいです。水準自体は高いのですよ、この映画。これで終盤の処理にカタストロフがあれば物凄い作品になったのに。

インサイド・マン インサイド・マン
デンゼル・ワシントン (2006/10/12)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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キング・コング

 思えば今年の劇場観賞第一号映画です。大興奮した素晴らしい映画だったんですが、3時間を越える大作をDVDで再観賞するのはやはり二の足。未見の映画の処理を優先しズルズルと先延ばしに。でも、上手い具合に13分追加のデラックス版がリリースされて結果オーライ。デラックス版は追加映像に加え未公開映像もたっぷりで大満足でした。その他の特典映像はまだ観てませんが。

 二番館で三本立て映画を見てた頃の忘れていた感覚を呼び覚ましてくれたこの映画、世間の「長すぎる」との悪評を尻目にマピールさんはもっと膨らませるべきだと主張します。3部作6時間ぐらいやれるネタですよ。先ず、コングの出番を遅らせた諸悪の根源扱いの「洋上編」を海洋冒険映画にして海賊とか大海獣とかバトル要素で子供を黙らせ、並行して描写不足のラブ・ロマンスもじっくりと。コングなんてラストにシルエット出して「つづく」でいいです。で、第2部「髑髏島編」は次々と死んで行くサブ・キャラ達の人間ドラマを五月蝿い位に増やし原住民との攻防戦とかも入れれば良し。丸ごとカットしても問題ないと悪名高い巨大昆虫グロシーンもたっぷりと。そして最後の「NY編」では突如出番の無くなった船乗り達のためにコング移送の苦労話を回想形式で挿入。ついでにナルシスト俳優とコングのNY対決とか追加。クライマックスにはオペラ座の怪人のテーマを鳴り響かせながら三角関係の愛憎劇を盛り上げ・・・。あー、それは違った。

 まあ、冗談はさておき、3時間なんてあっという間のジェット・コースター・ムービーです。削るなんて勿体無い。序盤の人間描写がないと島の話はつまらなくなるし時代背景も理解できなくなります。コングの映画だってことを忘れてしまえば文芸作風で面白いんですよ、この導入部。そしてこの映画の肝である、ここだけスピルバーグが撮ったみたいな島での大アクションは一切省けません。ここでコングの激情と哀愁と男気をみっちりやらないとラストの胸に迫るラブストーリーが活きてこないのです。頭の足らない好戦的な坊やの話だって切れません。だってこれ仁侠映画ですよ(断言)。体を張って守るべき女と共に愛嬌のあるバカなチンピラは必須なのです。

 特に必見なのは恐竜大渋滞、異種格闘技・巨大猿vs恐竜軍団、恐怖の殺人昆虫にコングとヒロインのNYデートも素敵。つまり特撮全部。今回テレビで見て劇場で観れて良かったと実感。とにかく物凄く丁寧に描いていて、しかもアホみたいに全球フルスイング。もう、コングが男前すぎて悩殺されます。

 残念なのはコングをどうやって運ぶのかわくわくして観てたらそのシーンが無かったこと。最低限いかだを組むことを仄めかすとかして欲しかったです。それとラストの台詞ですね。オリジナルのコングは心の通じない獣だったんであの台詞でいいけど、今回は善玉コングなんでまるで的外れなんですよね。誰もが「違うっ!テメーのせいだっ!!」ってツッコミ入れながらエンドロールっていかがなものかと。

キング・コング 通常版 キング・コング 通常版
ナオミ・ワッツ (2006/05/25)
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キング・コング デラックス・エクステンデッド・エディション(3枚組) キング・コング デラックス・エクステンデッド・エディション(3枚組)
ナオミ・ワッツ (2006/11/30)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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