「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ユナイテッド93

 この作品は政府公式発表と関係者・遺族等からもたらされた情報を集めて「あの時何があったか」を徹底的にシミュレートしたものであり、そこには遺族の「彼ならばきっと」という願望も当然含まれますが、これは遺族が彼らの死に様を全世界に知ってもらうための慰霊映画なんだとご理解いただきたいです。つまり、米軍機による撃墜とか陰謀論を語りたい人は最初から「お呼びで無い」ってことですんでよろしくお願いします。

 傑作です。フィクションとノンフィクションの境目のギリギリの位置に見事に立っています。美談を満載するでもなく、乗客を英雄視するでもなく、テロリストへの怒りを煽るでもなく、軍の無能をあげつらうでもなくデリケートに描いてます。とにかく緊張感が半端じゃないです。この映画を観て、何が起こってるのか現実なのかもよくわからないで茫然と見つめている内に二機目突撃からビル崩壊と衝撃が続いたあの夜の自分の無力感を鮮明に思い出しました。何度も繰り返して観る映画じゃないですが必ず一度は観るべき映画ですね。
 秀逸なのは舞台を機内と民間管制・空軍指令のみに限定したことです。電話の受け手である遺族側の映像を入れて安易な泣かせを作るなんて事はしてません。墜落現場の映像は勿論、エピローグに使いがちな追悼式典の光景も敢えて外してあります。そして、不謹慎ではありますが、実話であるが故に「墜落バッドエンド」なんていう禁じ手が使えてしまった事もこの映画が凄くなった一因だと思います。

 役者は全て無名、管制官や軍人さんに至っては本人出演多数でありながら、皆さん臨場感溢れる抑えた演技が見事です。特にアメリカン77が突っ込んだシーンのリアクションが素晴らしいです。つーか、アレは演技じゃなく素の反応なのかも。リアルタイムで見てしまった者として未だ残る強い衝撃は理解できます。それにしても、醜態といっていい混乱状態の防空司令部の将校とかよく出演してくれたものです。自分達の失態を再現するのに協力するんだから偉いです。
 管制室で情報が交錯するシーンが多数あるので日本語吹替の方がいいかなと思ったらこれが全然緊迫感が無いです。字幕ではパニック状態の管制官達の台詞を追いきれて無いけど、かなり頑張った字幕がついてるようなので英語版推奨です。英語ができる人には鬱陶しいほどの字幕量でしょうが。

ユナイテッド93 ユナイテッド93
コリー・ジョンソン (2006/11/30)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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嫌われ松子の一生

 中谷美紀、頑張り過ぎなまでの熱演です。いやはや、こんなに凄い女優さんだったとは。彼女抜きにはこの映画は考えられないです。監督のやりたいようにやり過ぎてる感の突拍子もない演出の数々を、恐らくは演技プランゼロで体現しております。もう、柴崎コウと区別がつかないとか言ってられないですねぇ。文句なしに主演女優賞級です。劇中の松子よりも役者・中谷を応援したくなる点が問題ですが。

 本作は『下妻物語』の中島哲也監督が贈る原色使い艶やかにポップでファッショナブルな「擬似昭和映画」であります。加えて日本では珍しく成功したミュージカル映画とも言えましょう。30年以上に及ぶヒロインの転落人生を、過剰なまでの映像で超スピードかつコンパクトに描いた監督の手腕は見事です。原作は未読なんですが間違いなく映画とはまるで違う雰囲気の作品のはずです。普通の人なら「寺島“the男で自滅”しのぶ」でも起用して鬱々に仕立て上げる筈の不幸話ですよね、たぶん。それが何故かハッピー・テイストのコメディになってるんだからビックリです。ストーリーの悲惨さと映像の派手さのギャップがかなりシュール。とんでもない力技です。

 だけど、この作品はハイレベルな失敗作だと思います。好き嫌いがくっきりと分かれる独自ワールドの部分が微妙に強すぎてギリギリのラインを踏み止まりきれなかった感じです。涙腺が緩むタイミングでギャグが炸裂するので「泣かせ」としてはストレスが溜まるし、でも「コメディ」として笑うにはブラックというよりダーク過ぎてキツイ。くどい程の片平なぎさネタをはじめ前半部分のハイテンションな小ネタ連発が散漫な印象を残しますし、黒沢あすか登場で中盤は落ち着くものの終盤で間延びと結構バランスが悪いのも気になりました。一歩間違えば大傑作だったと思うんですが実に惜しいです。面白いんだけど凄い疲れるんですよ、この映画。

嫌われ松子の一生 通常版 嫌われ松子の一生 通常版
中谷美紀 (2006/11/17)
アミューズソフトエンタテインメント

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ダ・ヴィンチ・コード

 ありゃ、これは失敗ですねぇ。作品がではないですよ。作品はベストセラー小説の映像化としては期待外れではあるものの『デビルマン』のように大騒ぎするほどじゃありません。サスペンスとしては駄作だけどアドベンチャー映画としてはそれなりに楽しめる普通の小品です。で、何が失敗だったかと言うと、先に原作読んじゃったことなんですよ。この映画はミステリーとしては非常に珍しいパターンなのですが、予備知識無しで観賞してから更に原作にあたるのがベターな作品のようなのです。
 勿論、先に映像を見ると基本ストーリーやミステリー部分は色々ネタバレするわけですが、それは逃亡劇のスリルという物語の一面を先取りするに過ぎないのです。原作のストロング・ポイントはもっともらしいトンデモ理論と幾つもの意味を持つ暗号解読、あるいは登場人物たちの複雑な背景といったところです。この映画はその辺りの描写が思いっきり端折ってあって、だからこそ袋叩きにあってるんですが、結果的に鑑賞後でも原作の魅力のかなりの部分が残されたままになるのですよ。原作のガイドライン映像としてはなかなか優秀なのです。

 即ち、原作を既に読んでいる人、映画単品で楽しみたい人、宗教や秘密結社にアレルギーがある人、TV・雑誌等でダ・ヴィンチの謎ネタを知ってる人にとっては、あまり意味の無い作品です。酷評の嵐なのも肯ける幅の狭さですね。特に封切前に散々組まれたTV特番があまりにもネタバレ過ぎで「世界ふしぎ発見」的に映画を楽しむ機会すら奪った罪は大きいんじゃないかと。
 意味不明な部分が多すぎて原作未読な人にキツイことも確かなんですが上記に該当しない人なら結構楽しめます。問題はそれよりも圧倒的に多いであろう原作ファンが楽しむ要素は殆んど無いって事で。きちんと映像化されてるか確認する以外にやる事がありません。サプライズで台無しにされても困るけど、これはあまりにも忠実すぎるしあまりにも詰め込みすぎ。
 登場人物のウラを理解させる間もなく、絵画や建築を楽しむ暇も与えずにコロコロ変わる舞台。話を知っているが故に唖然とする説明不足の連続。とにかく冒頭の人体図風全裸死体からして何でこんな格好で死んでるのか不明(原作ではヒロイン宛のメッセージを意味する)。宗教の派閥争いも一切解説なし。地理的な説明が皆無なのも困りものです。クライマックスが無いのも辛いところだけど、これは原作も同じ。信仰の破壊とか異教徒にはよくわからないですから。

 役者はと言うと、薀蓄を垂れては悩みもせず謎を解き逃げ回る主人公のトム・ハンクスは得意とする感情表現を活かす場がなく、儲け役の悲しき狂信者ポール・ベタニーは見せ場の感動シーンがカットされる不遇、ジャン・レノ以下の豪華出演陣が熱演するほどに実は薄っぺらなストーリーが浮き彫りになり失笑を余儀なくされます。もっとB級っぽい役者でアクション要素や泣かせ要素をバカっぽく散りばめた方がマッチした印象です。それじゃ『ナショナル・トレジャー』ですが。

 兎に角、一番重要なのは映画を観ただけで挫折せずに興味が出たら原作もトライして欲しいって事です。謎の答えはそこにありますから。本が嫌いなら観ないでスルーしとくが吉。

ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション
トム・ハンクス (2006/11/03)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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