「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ALWAYS 三丁目の夕日

 高度成長期“昭和33年”の古き良き日本を描いた人気コミックの劇場版ですが原作は未読。とにかく観た人の評判が圧倒的に良くてターゲットの団塊世代もそのジュニア世代も「良かった!」「泣ける!」と口を揃える作品ですが、マピールさんは「えっ!これで泣ける?うそ?」という感じで取り残されたのでした。一番気に入った焼き鳥の団らんシーンでもジーンとは来なかったです。退屈することの無い映画なのは認めますが、世間並みに大絶賛する程には感銘できず。なんか悔しい。

 まあ、おかげでマピールさんはガチガチに保守派でオーソドックスな手順を踏んでくれないとダメだって事を自覚。この映画の極めてシンプルで贅肉を削ぎ落とした構成では涙腺が緩む前にエピソードが消化されてしまうのですよ。全体に薄口で不幸と幸福のメリハリが弱く人情話としてベタな要素を外しすぎです。話に軸が無い上に重層的でもないのは群像劇としてどうなのか。吉岡秀隆は連載を確保してる上に道楽気味に駄菓子屋を経営する余裕があるし、堤真一の家は3種の神器と商用車&電話を揃え「貧しくても心は豊か」というのもピンときませんしね。
 それに伏線のタイミングが変。肘のツギ当てにしても小料理屋の先行きを暗示するワンカットにしても別のエピソードにさりげなく混ぜて置くべき伏線が直接のエピソードの頭に入ってるのはスマートじゃないです。「医者が飲んでる横にサンタの衣装があるだけでよかろうに」とか、「いちいち感動を台詞で伝えさせるなよ」とか演出にも感心しない点が多かったです。あと短編の羅列を同時進行で誤魔化してる割りに暗転の多用でぶつ切り感が増してたのも気になりました。でも大多数がこれで満足してるんだから、やっぱりマピールさんの頭が固くて感受性に難があるんでしょう。仕方ないです。

 小道具やミニチュアセットの出来は素晴らしくCGも違和感無くはまっているのはさすが“特撮畑”山崎貴監督。この時代の映像がカラーで楽しめるってだけでも価値が高いです。建設中の東京タワーと路面電車の行き交う大通りのロングショットを眺めると「嗚呼、1作目のゴジラやモスラをリメイクするなら特技監督はこの人!」と確信します。映像は文句無し。・・・いや、あの時代だと最新鋭機のミゼットがオンボロ過ぎるのは異議ありですが。
 しかし、トリップを誘発する雰囲気作りは特筆モノの巧さですね。現実の昭和30年代を離れて美化された一種のテーマパークが醸し出す独特の空気は確かに心地よく、有無を言わさず共感させるスイッチもあちこちに仕込まれてます。誰に感情移入してもいいし登場人物として混ざってもいい箱庭的な世界を構築してるのは感じます。たぶん、これが多くの人を惹きつける魅力なのでしょう。

 でも、これだけ技術的に完成していながらマピールさんは巧くシンクロ出来ない。恐らく登場人物の行動に納得出来ないからですね。家族同然に暮らしながら心を開いて無い奴ばっかりだし周りにお節介な奴が少なすぎ。この街は実は昭和40年代の京塚昌子や森光子のホームドラマよりもドライな関係で居心地が悪い。この人物描写の時代感のズレが気になって現実に引き戻されてしまうんですよね。まあ、堀北真希が可愛かったから良しとします。

ALWAYS 三丁目の夕日 通常版 ALWAYS 三丁目の夕日 通常版
吉岡秀隆 (2006/06/09)
バップ

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SAYURI

 原作は既読。更に花柳界のしきたり云々を数本の日本映画で学習済みの身としては、お話自体はあまり面白くない芸者一代記なので退屈するかと思ったのですが、意外にテンポがよく2時間半の長さを感じないで楽しめました。絵的物珍しさで興味が持続したのは否定しませんが。西洋人の日本文化への憧憬が確認できる美しい文芸作品に仕上がってます。登場人物が英語で話す上に中途半端に入り混じる日本語が中国訛りだったり、神社の鈴を鳴らしたら鐘の音が鳴ったりしますが、基本的に勘違い日本を爆笑するようなバカ映画にはなってないのでそっち方面は肩透かし。

 主要キャストが中国女で日本描写も怪しい為に「国辱ものだ」とか騒ぐ輩もいるようですが、ハリウッドの美意識で再現された古き日本というのは独特の味わいであり、あの街には本物の日本人は似合わないのでキャスティングは概ね正しいと思います。英語が喋れて踊りが出来て渡辺謙&役所広司でさえ馴染まない風景にマッチする日本女優なんて思いつかないですし。とはいえ、芸妓の映画にしては董が立ち過ぎの女優陣は確かに気になります。いくら東洋系が欧米で若く見られるといっても20代後半のチャン・ツィイーが15歳の舞妓だったり、渡辺謙とほぼ同世代のミシェル・ヨーが現役No.1芸者だったり。
 考証無視の日本描写ですが、原作を読めば作者(アメリカ人)が深く日本文化を理解した上で正確に欧米に伝えようとしている事は判ります。当然、ロブ・マーシャル監督も欧米人には不可解な文化を入念にリサーチした筈です。その結論が部分的にチャイナの混ざる町並みと日中競演の世界なんですよ。分っててやってるんだから目くじら立てるのは野暮ってもんです。祇園だと思うから着崩れが気にかかるんで、満州の花街と思っとけば良いのではないかと。

 物語は所謂サクセス・ストーリーなのですが、苦労話にしても恋愛要素にしてもあまり心に響きません。いかに努力を重ね妨害を乗り越えて芸者になったかが今ひとつ描かれて無いのでルックスと姉芸者の裏工作で成り上がったみたいに見えますし、水揚げ後、最高峰に登り詰めるまでが省かれてるので「芸妓は芸を売る仕事」と言いつつ体を売るイベントばかりクローズ・アップされてしまいます。熱演の子役には申し訳ないけど幼少期は端折ってコッチに時間を割くべきだったんじゃないかと思います。
 それでも女同士の争いで引っ張ってる間はいいのですが、ラブ・ストーリーに転化して行く戦後編はメインの男二人があまりにも自己主張しないキャラな為にかなり物足りない感じでした。美味しいところは工藤夕貴(洋装姿がレイチェル@ブレードランナーに見えて仕方がなかった)が持って行き男優に全然見せ場が無いです。まあ、原作通りなんですけどちょっと可哀想。

 この映画は字幕か吹替かでかなり印象が変わりますね。字幕だと前述の日英チャンポン会話や姉を名前で呼び捨てにするのが奇妙だったりしますが、インチキ日本の画と相まって一昔前の芸能人かくし芸大会の英語劇のような味わいがあります。吹替だとこの面白さは失われますが日本人にしっくりとくる台詞回しでかなりまともなドラマになってます。ただ、日本人俳優の本人吹替が口の動きとまるで合わないのでどことなく韓流風味ですが。

SAYURI SAYURI
チャン・ツィイー (2006/07/05)
ポニーキャニオン

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グエムル -漢江の怪物-

 はっきり言いますがコイツは決して出来のいい映画ではありません。シリアスなモンスター・パニックかと思うと腹を抱えて笑わされるギャップの激しさ、「娘の救出」と「政府からの逃亡」というミッションが融合せず間延びする脚本、軍・警察・病院などの突拍子もなく稚拙な描写、どれも正直酷いです。しかし、それらを補って余りある掟破りの展開と異端独特の複雑な余韻。極めてオリジナリティに溢れる作品です。ズバリ超問題作。

 なんたって怪物シーンの演出が最高です。大きすぎず小さすぎず絶妙なサイズのリアルなCG。それを違和感無く群集とマッチングさせた画作りのセンス。躍動感溢れる怪物の疾走を捉える秀逸なカメラワーク。存在しない怪物と競演する役者陣の演技もパーフェクトです。特に白昼堂々の怪物初上陸は映画史に残る素晴らしさ。一瞬目を離すとそこにいる恐怖、圧倒的にパワフルな暴れっぷり、人を捕獲し容赦なく踊り食いにする戦慄の描写に大興奮です。
 だけど怪獣だけの映画じゃないです。この映画を傑作たらしめてるのは意表をつく定石外しの数々です。大統領も科学者も特殊部隊も活躍させず底辺のダメオヤジとその親兄弟に闘わせるユニークな構成。しかも、主役だけじゃなく家族一同ダメダメという型破り。更に不条理な社会のドタバタ追走劇が怪物放ったらかしで展開される意外性。シリアス・シーンの真っ最中に強引なギャグを挟み込み観客を笑わせておいて間髪いれずに凍りつかせるスピルバーグばりに悪質な手法も多用されます。
 加えて、どこまで意図的なのかわかりませんが韓国人の悪癖が上手く笑いになっていて、日本人にとっては『ここがヘンだよ韓国人』的に楽しめます。現代韓国風刺が強すぎて国辱モノなレベルなのに輸出に踏み切る勇気に感心しました。見当外れで不遜なコリアン・メンタリティが全開。自戒せず全部アメリカのせいで済ます臆面のなさが素敵です。
 ただ真面目に考えると韓国を笑ってる場合じゃないのですよ。水辺から現れ人をさらう怪物に主人公の主張をまともにとりあわない政府機関、いい加減なマスコミ、無関心な世論って図式はまさに「拉致問題」なんですから。ユルユルの展開に誤魔化されてますけど、さらわれる娘の視点で見ると強烈に悲惨な話ですし。

 一方で随所に見られるのがリアリティの無い描写。隔離施設をはじめ事件に対応する組織の無茶苦茶さはツッコミ所が満載ですし、対象年齢がそれほど低く無いだろうに「東映戦隊」並にオミットされる軍・警察も極めて不自然であります。で、偶に出て来るとすかたんな行動ばかりするから性質が悪いです。特にクライマックスのガス散布なんて閉鎖区域の中で反戦団体が集会中というありえない状況下で決行ですよ。しかも対人被害が増えるだけで米軍にメリットが見当たらない謎の作戦です。冒頭の怪物誕生エピソードもあまりのスケールが小ささに唖然とさせられますが、この部分は実際の事件を基にしてると聞いて呆然。何でそれであんなに幼稚なやり取りなんですか?
 ストーリーの方も、理不尽な出来事のはずが半分はバカの自業自得に擦り替ってしまう点や、バラバラだった家族がひとつに纏まるという話の割りにラストバトルでも信頼関係が怪しいままってのが演出上よろしくないと思います。炎をバックにジャージ姿のぺ・ドゥナ嬢は凛々しいですが。

 本作は玉石混交というか原石そのまんまみたいなモノなんで、トホホ感を楽しむ余裕のある人なら怪獣好きじゃなくても絶対お薦めですが、真面目な人に受け入れられるかはちょっと自信ないです。キネ旬でも高評価だから結構いけるのかもですが。確実にウケそうなのはネットに蔓延る嫌韓の皆さんなんですが、パクリの噂を信じて食わず嫌いしてるのか全然ブレイクして無いんですよね。勿体無い。これは彼等が待っていた映画だというのに。

グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション
ソン・ガンホ (2007/01/26)
ハピネット・ピクチャーズ

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サイレントヒル

 ゲームの映画化だそうですが原作はタイトルぐらいしか知りません。だから漠然としか分からないんですが、カメラアングルとか色合いとか非常にゲームっぽく再現してる印象です。場面転換や音でビビらすんじゃなくて心理的・生理的にじわりと攻め込んでくるところもゲームっぽい。映像が凄く作りこんでありゴーストタウンの雰囲気が素晴らしいです。住人も化け物もその世界に見事に嵌ってます。特に子役のキャラ作りが素敵。「もっと虐待して欲しかった」とか発言するのは危険ですが、悲惨な境遇で妖しさが絵になる少女なのでした。完成度の高い「ゲーム映画」なのは間違いないです。ただ、演出があまりにもゲームユーザーに寄り過ぎで、映画として感心しない作りなのは気になりました。

 閉鎖された町“サイレントヒル”に辿り着くまでの冒頭の展開からして強引なんですが、「消えた娘を捜す」というミッションが始まると不可解現象も化け物襲撃も速攻で順応する猪突猛進ママに違和感バリバリ。妙に薄着で胸元ばかり気になるヒロインは娘の影を追って一心不乱に怪奇の街を駆け巡ってはヒント回収というRPGの流れを何度も繰り返します。否応なく進まざるを得ないゲームなら当たり前の作業ですが、そのまんま映像にしちゃうとまわりくどくて単調でバカっぽい。設定も脳内リプレイで補完出来ない立場の者としては説明不足に映りました。
 加えて、アクション要素が殆んど無い。原作が「倒す」より「避ける」ゲームなのかも知れないですが、主人公が全然ピンチにならないからテンションが上がりません。被害者が配置されてない前半は特に見せ場が無いです。折角、化け物の造形はいい感じなのに殆んど存在意義が無い演出で残念。全然、怖く無いんだもんなぁ。
 後半はバイオレンス描写も増え映像美に凄みを増して行くのですが、反比例してストーリーはつまらなくなっていきます。意味なく大量に湧く住民達。効果的とは言い難い別働の父親の扱い。謎解きっぽく誘導しておいて練れてない真相をボスキャラが一気に語る芸のなさ。しかも恐らくは嘘が混じり矛盾だらけのボスキャラの説明。有耶無耶のまま消化不良気味のオチ。
 特に致命的なのは、ゲーム形式に拘っていながらストーリーに条件分岐がまるで無いところです。映画だから結果的に一本道になるのは当然ですが、「もし、あそこでこう動けば?」と考えたときに同じ結末にしか至らないのですよ。「サイレントヒルに行かない」という選択以外ではね。クソゲーですよ、それじゃ。「これはマルチ・エンディングのひとつの答えだ」と匂わせてくれれば、色々想像で埋めれるのに。

 個人的には「ホラーだと思ったらダークファンタジーだった」ってのがしょんぼりだし、「30分モノの『トワイライト・ゾーン』の方が遥かに洗練されてた。」という愚痴も出ますが、実はそれほど駄目な評価ではありません。なんやかやで雰囲気は充分に楽しめました。兎に角、原作のリスペクトに溢れてるのが伝わってくるし、たぶんゲームファンの満足度は高い作品でしょう。もっと若い頃ならたぶんゲームにトライしてます。それぐらいのパワーはある作品です。

 ちなみに本作で一番怖かったのはDVDのチャプター画面の磔少女なのでした。

サイレントヒル サイレントヒル
ラダ・ミッチェル (2006/11/22)
ポニーキャニオン

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