「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ポセイドン

 さて、2006トホホ外国映画の代名詞であり「リメイクされる意味がわからない」との声が圧倒的な本作ですがその実態は・・・あー、脚本が屑。オリジナルを冒涜してるって意見は否定できませんね。自分達だけが助かればいいと思ってる連中を主役にした脱出劇って、何を考えてこんなストーリー組んだのか理解に苦しみます。「何とか助かって欲しい」という感情移入無しにどーしろというのか。
 尚、オリジナルに興味のある人はこの映画では『ポセイドン・アドベンチャー』の代用にはならないので注意。これとは別に昨秋にテレビでやってた紛らわしい奴(未見)もありますが間違えずにジーン・ハックマン主演の1972年版を観てやってください。ちなみに『ポセイドン・アドベンチャー2』の存在は無視していいです。

 あれほどの完成したパニック映画をリメイクするとなると、どんなに皆が牧師の勇姿を望んでいようと同じものを作るわけにはいかないってのは分ります。余計な話を膨らましてダラダラやるよりはストーリーを一新する方が正解とも思います。でも、オリジナル版の最大の武器「感動ドラマ」を切り捨てたのは大冒険というか無謀でした。しかもドラマに変わる大ネタが用意されたわけでもないので薄っぺらな娯楽アクションになってしまいました。
 特に酷いのがキャラクター造形です。元NY市長でもある引退消防士、潜水艦乗りだったギャンブラー、ゲイの設計士、密航娘を匿う給仕など個性もスキルもバッチリの設定ですが、それを活かす場は殆んど与えられないので意味がありません。一方で女性陣は十羽一絡げの足手纏い扱いで、大胆な胸元のドレスで泳ぐぐらいしか見せ場がありません。たかだか十人やそこらのキャラの描写が何でここまで薄くなったのか不思議です。
 更に追い討ちをかけるのが一貫性の欠片もない演出。独りで脱出するつもりだった筈の男はあっという間に決死のダイブで仲間を救うヒーローに豹変してるし、転覆直前に自殺しかけてた奴は何故か必死で生き残ろうとしてる。足に怪我した男が泳ぎに活躍とかもあります。局面毎のキャラの動きに納得いかない描写が多すぎます。
 でも一番不味いのは船長さん。この人、調査もせずに他のフロアの乗員・乗客は各個対応を決め込んで速攻で切り捨てる。船長が苦渋の表情も見せずこんな対応してたら暴動ものでしょ。一気にリアリティ失速ですよ。そして乗客の「(救助が来ても)どうやって脱出すんの?」って疑問にさらりとスルーした上、自信満々に「ガス漏れも火災も浸水も心配が無い」と言い切って乗客を黙らせます。でも馬鹿みたいにあっさり浸水しちゃって無根拠に適当なことを言う奴になっちゃいます。演出が雑にも程がありますよ。ここで船長が愚かである必要は全く無いというか、現実の酷さを強調したいのなら正しい判断だったけど誤算が生じたっていうシーンであるべきです。船長の話に全く理が無いんじゃ話しになりません。

 しかしですね、ここまで罵倒しておいてなんですが、マピールさん困った事に普通に手に汗握って楽しめちゃいました。オリジナル版と全く別のB級パニック大作としてみれば、脱出をスリリングに描く事には成功しています。オリジナルは理詰めのストーリー重視型でしたが、本作はタイムオーバーまでに速やかに条件フラグを立ててステージクリアする事に主眼を置いたアクションゲームのテイストで急き立てられ感が絶妙です。元々100分弱の映画ですが体感時間は更に短いです。行く手の困難さをテンポ良く次々と見せるのでTBSの『SASUKE』みたいな感覚で楽しむライド映画と割り切れば結構良作。寒さの描写も冬の『SASUKE』並に欲しかったですが。
 あと、転覆シーンの地獄絵図は丁寧に描かれており、ここは技術の進歩をまざまざと見せつける仕上がりです。ちょっと生存者のパニック描写があっさりめなのが残念ですが見応え充分です。天地逆転風景が目立たない辺りはオリジナルとの差別化を狙ったものと思われますね。言い換えれば豪華客船をひっくり返した意味すら殆んど無いわけですが・・・。
 終盤は、あまりにも唐突にピンチに陥るガキから始まって、このキャラ設定なら絶対にありそうになかった自己犠牲ネタを臆面なくやってのけたり、電気制御装置が水没しながらも平然と正常作動したり、最後まで大味ご都合主義目白押しで爆笑でした。

 とにかくオリジナルと似ないようにするあまり空回りしていて、むしろオリジナルの出来の良さを強調しただけになってしまった点はもの悲しいものの、『タイタニック』みたいに長々と3時間もやられるよりよっぽどマシで、無駄なくスピーディにパニック映画の醍醐味が味わえる作品です。ポセイドンさえ名乗らなければここまで酷評されなかったでしょう。でも、パニック映画ってのは嘘臭くても勇気や博愛を前面に押し出すべきで、子供時代に『ポセイドン・アドベンチャー』から色々教訓を学んだ身としては、やっぱりこの映画は間違ってると思いますけどね。

ポセイドン ポセイドン
カート・ラッセル (2006/10/06)
ワーナー・ホーム・ビデオ

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雪に願うこと

 ばんえい競馬に興味がある人や馬好きなら楽しめます。北海道だけで行われているこの特異な障害物レースの魅力をこの映画は存分に伝えてくれます。とにかく輓馬の強烈な巨大さが圧巻。体重にしてサラブレッドの約2倍。ずんぐりとマッチョな農耕馬です。それが500kgものソリに騎手を乗せ2箇所の障害を含む200mの直線コースで持久力とパワーを競います。白い鼻息、馬体から立ち昇る湯気、収縮する筋肉。凍てつく寒さの中、美しく愛らしい馬達に目は釘付けです。特にメインを張るウンリュウ号は、甘えたり怒ったり見事な役者っぷりを見せます。
 ばんえい競馬のルールや競馬場の観客の様子、レースでの騎手の駆け引きの醍醐味、調教風景などの裏方仕事の苦労、そして厳しい運営状態まで競馬関係者が伝えて欲しいポイントを網羅していて、素人目には地味に映るばんえい競馬を「見てみたいっ!」って気にさせる作りになっているのもいいです。

 ただし、馬に興味の無い人がドラマだけで楽しむとなるといささか心許ないです。ベテラン監督らしい小技の利いた撮影ですし、演出は申し分なく役者も上手い人ばかりで脚本にも無駄はないです。豪華すぎる客演に重要キャラかと惑わされる点を除けば何所を切っても良質な日本映画なのですが、「都会で挫折した男が廃用寸前の輓馬に己を重ね、つつましく生きる人々の姿や家族愛によって再生へ向かう」ってストーリーはどうしたって平凡です。下手に派手にされたら世界観が壊れるのは分りますが、泣かせや訴えかけのパンチが妙に軽いのはちょっと気になりました。
 主演の伊勢谷友介は、若くして事業を起こした都会人という役柄なので完全に他から浮き上がって見えるのは当然なんですが、意外と厩舎の肉体労働もそつなくこなすし周囲との軋轢も少ないなど人間味を出す機会が乏しいドラマ展開で損をしてます。でも、周りに諭されるのではなく自分で結論を出す展開がともすると自己中なまま成長してないように映るのは、この人がナルシスト系の役に嵌まり過ぎる事と無縁ではないでしょう。加えて、殴る蹴るだけど好感度の高い佐藤浩市とか、バカっぽいけど儲け役の山本浩司とか、賄い婦にしちゃ華がありすぎる小泉今日子とか脇が光りすぎ。競馬に人生を重ねる話なのに感情移入できるのはウンリュウ号ばかりで主人公の人生の行方とかどーでもよくなっちゃうんですよね。

 実際、ソフトバンクの支援でなんとか帯広単独開催に縮小で落ち着いたものの、依然ばんえい競馬は廃止の危機に晒されてます。現在の賞金で関係者の生活を支えるのは厳しいし、馬主を引き受ける人材も、好んで輓馬を生産する牧場も確保できないのは自明。立地的に集客が劇的に増えるとも考えにくいし、たぶんギャンブル性も薄い。スターホースの登場もまずありえないどころか、下手すると映画出演馬のある程度は既に馬刺しになってる可能性すらある。もはや産業としては終わっていて地方の文化遺産として保護して行くしかないように思えるのですよ。一競馬ファンのマピールさんも神様に助けてもらうための目印に願います。ばんえい競馬の関係者と馬たちが幸せでありますように。

雪に願うこと プレミアム・エディション 雪に願うこと プレミアム・エディション
伊勢谷友介 (2006/11/10)
ジェネオン エンタテインメント

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サウンド・オブ・サンダー

 これ、予告編見た時に凄い面白そうだったんですよね。時間の波が迫ってくるシーンとか超大作っぽくて、“過去から持ち帰ってしまった1.3gの何か”とか謎を煽ってて。しかも、原作はオールドSFファンの崇めるレイ・ブラッドベリのショートショートで、マピールさん大好物のタイム・トラベルもの。もう劇場に足を運ぶしかないって状況なワケですが、酷評しか聞こえてこないし近年は駄作量産体制のピーター・ハイアムズ監督だしと逡巡してる間にさっさと公開終了となったのでした。

 さて念願の再会となりました感想は「・・・よく、これ公開に踏み切ったな。」と。未公開作品コーナーから1週間レンタルするに相応しい掛け値なしのB級SF映画ですよ。「70年代はこんな映像だったなぁ。」と観る側をタイム・スリップさせる圧倒的なまでの貧乏臭いヴィジュアルに驚かされます。背景は殆んど書割で通行人まで絵の部分があったりする凄まじい未来都市。乗り物はプラレール風で人物もきっちり浮き上がる芸術的にチープな合成。でもデザイナーは『トロン』『ブレードランナー』あるいはヒゲのガンダムで知られる巨匠シド・ミードなのですよ。だから一層古臭いってのもあるんですが。
 ストップモーション撮影を彷彿とさせるぎこちない動きの恐竜も見所です。今時のゲーム・ムービーの方が絶対クオリティが高いです。

 しかし、B級と割り切ってしまえばこれは極上クラスですよ。低予算を逆手にとって安っぽいCGにマッチするようにわざと古臭い演出を採用してるのがグッドです。人類存亡の危機に凄い小さい世界観で行き当たりばったりに事に当たる感情移入しにくい人物描写の地味なキャストたち。襲い掛かる珍妙なクリーチャー。ダレることなくスピーディーに進むストーリー。エンターテインメント的には結構ツボを押さえててパニック・アドヴェンチャーとしては楽しめます。過去をいじって変わってしまった未来を修復するために駆け回る物語は、意外性の欠片も無いお約束の展開と満載されたツッコミどころで退屈しません。もう、パーティー編成の時点で殺られる順番まで予想がつきますからね。
 特に素敵なのが時間ものに付き物のパラドックスの処理。この映画では、毎回同じ時間にタイムスリップして直ぐ死ぬ運命にある恐竜をハントし、過去をいじらず残さず持ち出さず速やかに帰還する恐竜狩りツアーが行われてるワケです。ドラえもんで慣らされた日本のキッズなら直ぐ気付くと思いますが、そんな事したら同じ時間にのび太君が一杯なわけですよ。でも、そこにはちゃーんとパラレルワールドでツアーは鉢合わせしないってルールをブラッドベリは設定してくれてるんですね。んで、原作は世界が変わってしまったところで幕なんですが、映画には狂った未来を修復するというエピソードが付け加えてある。だから、過去に戻って事件を未然に防がなきゃならない。つまり異時間同位体のバッティングを許容しないとダメなわけで矛盾が生じるんですよ。さて、それをどう処理したのかというと・・・。さすがアメ公、「細かいことは気にしない」という潔い態度であっさりクリア。他にも原作設定を無視して破綻してる箇所多数。マニアの逆鱗をものともせずに漢っぷりを貫きます。

 だけど、この映画の最大の笑いどころは、誰が見ても低予算作品にしか見えないのに実は製作費100億円の超大作って事ですね。撮影はトラブル続き、途中でプロダクションは倒産、何度も製作は止まり、力技で完成するもお蔵入りし、数年を経た挙句に投売り。映画本編以上に苦難を乗り越えて公開に漕ぎ着け、でもやっぱり大赤字のバッド・エンド。乾いた笑いで済ますしかないやるせないコンボですねぇ・・・(ため息)。

サウンド・オブ・サンダー デラックス版 サウンド・オブ・サンダー デラックス版
エドワード・バーンズ (2006/07/21)
ジェネオン エンタテインメント

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ヒストリー・オブ・バイオレンス

 「映画秘宝」読者の06年ベストだし殺戮をモロに描く事に定評のデヴィッド・クローネンバーグ監督なのでを人体破壊ショーを覚悟して観賞に臨んだわけですが、意外とグロ抑え目の描写で小奇麗に纏まったバイオレンス・ヒューマンでした。一見捻りの無い地味な映画に見えますが、素早く冷たく呆気なくもたらされる「死」が全篇に渡って緊張感をキープする作品です。なかなか味わえない不思議なテイスト。
 本作のテーマは「家族の安全を脅かす者への暴力は正当化されるのか?」という事でしょう。報復の連鎖を続けるブッシュ政権批判になってるのはスピルバーグの『ミュンヘン』と同じ構図ですが、こっちのが簡潔で主張も分かり易い。そこで示される暴力の恩恵によってもたらされた平穏の気まずさとやるせなさは秀逸です。

 ある日、店に押し入ってきた強盗を逆に撃ち殺し英雄となった田舎町のコーヒーショップのマスター。だが、報道を見た彼の過去を知るらしいマフィアが付き纏い始め平穏だった一家が暴力の渦に呑み込まれていく・・・と、プロットは物凄く新鮮味が無いです。「静かに暮らす善人の過去に隠された罪」という西部劇にもよくあるし日本だと高倉健の得意ジャンルですね。普通はヒロイックに描かれる物語を殺伐とシビアでストイックに描いてみちゃったこの作品は一味違いますが。
 とにかく主演ヴィゴ・モーテンセンのどこか病的な雰囲気を漂わせた目が素晴らしく、苦渋に満ちた静かな善人のようでいて最後まで得体が知れないです。暴力で解決することの重みを知りながら、しかし命乞いの暇も痛がる間もない確実な殺しっぷりを見せるミステリアスな男を見事に演じています。詳しくは語られない凄惨な過去への興味が尽きません。妻役のマリア・ベロも信頼していた夫への疑心暗鬼に苛まれ、怒り狂い、しかし愛してもいて三行半とはいかない複雑な心境を好演。
 特に二回ある二人の濡れ場は妙に生々しく強烈です。一本目がチアリーダー・コスプレで二本目がレイプ風に始まって済崩し的に和姦突入・・・と書いてしまうと倦怠期夫婦のイメクラ・プレイにしか聞こえないですが、物語的には重要な意味合いを持たされていて、その演出力に感嘆しました。でもやっぱり四十路一歩手前でのチアガールは・・・。

ヒストリー・オブ・バイオレンス ヒストリー・オブ・バイオレンス
ヴィゴ・モーテンセン (2006/09/08)
日活

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