「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ゆれる

 映画に「痛快」とか「感動」とか求める人には向きませんが、人間の内面をえぐる心理ドラマとして非常に良く出来ていました。西川美和監督の演出力が絶品でセンスの良さが随所に溢れてます。妙にドライで綺麗で独特の佇まいがある映画です。話の流れは簡単に予測できるんですが、わかっていても目が離せないスリリングな展開が圧巻。1人の女の転落事故から兄弟それぞれの想いが食い違っていく様をリアルに描き出します。観客に判断を委ねるラストの切り方も好み。

 主役のオダギリジョーもかなりの熱演で「成功者でお洒落で無自覚に嫌な奴」が嵌りすぎなのですが、役者的には香川照之に尽きる映画でした。余人をもって替え難いといっても過言じゃないです。罪の意識で錯乱気味なのか嫉妬心に身を任せたのか捉えどころのない人物を見事に演じます。自嘲にも弟への悪意にもとれる微妙な仕草や表情が素晴らしいです。それにしても兄・香川照之、弟・オダギリジョー、その父が伊武雅刀で伯父に蟹江敬三ってやたら濃い一族ですな。

 本当に見応えある映画なのですが、構成が論理的過ぎて若干面白みに欠ける気はしました。弟の記憶は「真実」、「事実誤認」、感傷から生み出された「偽の記憶」など色々と解釈できるようにもっと曖昧にした方が良かったんじゃないかと。
 あと、裁判モノとしてのリアリティがどうにもこうにも。被告の自白を唯一の証拠に立件してるのに、それを覆す証言をあっさり容認してどうするのか。その後、誘導尋問しかできなくなって漂う手詰まり感。『逆転裁判』のチュートリアル並にあっさり逆転されてる原告に萎え。とにかく検察側弁論が弱すぎで、嫌な検事を演じてる筈の木村祐一が只の馬鹿に見えます。DNA鑑定も詰めが甘いし、被害者の男関係も洗えてないみたいだし。そもそも、煩わしい事を避けてるっぽい弟クンが行きずりで中出しって設定もどーかと思いますが。
 そして、予算の都合があるんでしょうが、都会の成功者に憧憬する田舎者という構図を描くのにロケ地・山梨はいくらなんでもねぇ。そんな日帰り圏内の隣県で30近い大人の女が一大決心って・・・。

ゆれる ゆれる
オダギリジョー (2007/02/23)
バンダイビジュアル

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時をかける少女

 昨夏の公開直後からインターネット中心に人気沸騰も上映館が異常に少なく、しかもアニメである故に劇場は所謂キモオタ・腐女子に占拠されて一般層への浸透は皆無に等しかった2006版『時かけ』ですが、DVDリリース後は順調に観賞されている模様。マピールさんは大林宣彦版『時かけ』世代で時間跳躍モノが大好物のSFギーク野郎ではありますが、そういうバックボーンを抜きにしてもこの作品大絶賛です。
 正直、作画は背景以外好みじゃないですし、描かれるのは大昔からある少女漫画的人間関係だし、SF的には設定が著しく甘いです。しかし、さりげなく無駄のない伏線、徐々にストーリーが手堅く纏まっていきテンポよくクライマックスに繋ぐ見事な脚色、コミカルなオーバーアクションや超常的要素を違和感なく溶け込ませた演出、青臭くも躍動感に溢れバランスよく配置された恋と友情の悲喜劇と、青春映画として完璧です。しかも、実写ではなくアニメで作ることの意味をちゃんと意識して作られてます。色々な人に観て貰ってこの半端じゃない清々しさを味わって欲しい作品です。

 『時かけ』は古くは70年代の「NHK少年ドラマ」、その後は原田知世や内田有紀などで何度もアイドル映画化されてるわけですが、本作はそのリメイクというよりは続編的位置づけのオリジナル・ストーリーであります。舞台は原作から20年ほど過ぎた現代であり、主人公は従来ヒロイン芳山和子の姪っ子ですが、物語に直接的な関わりはありません。テイストとしては『耳をすませば』に近いですが、あれ程こっぱずかしい幕切れではないので安心です。
 何よりもヒロインの造形が秀逸。高三にもなって恋愛感情未発達なくせにイケメン二人とお友達というリアルなら同性に嫌われそうなキャラですが、ボンクラぶりといい無駄遣いな行動原理といい“女のび太”で、しかも脳天気で天衣無縫で色気無しでバカとくれば好感度はバッチリ。でも、ある意味ハードでダークなこの物語を映えさせるのにうってつけのライトで前向きなお子様キャラなのでした。泣き方まで“のび太泣き”なのが天晴れです。そしてミニスカでアクティヴに転げまわりつつ絶対にパンツは見せないこだわりも素敵です。・・・いや、パンツはどーでもいいですが。とにかく、従来の受身キャラからの変更が効果的です。
 女1人に男2人・未来人・理科室などの基本設定を踏襲しているものの、歴史改変ありのタイムリープ乱用という無茶な設定で原作の世界観を根底から破壊し、プリンやカラオケや野球を小道具に小気味よく繰り出されるコントからやがて訪れるシリアス展開・・・と、完全オリジナルで進めておいて、しかし、最終的に『時かけ』ならコレしかないという落とし所にちゃんと落ち着いているのが巧いです。テーマを端的に表した「待ってられない未来がある。」というコピーも素晴らしいです。
 そして、オールド・ファンを唸らせる「その後の芳山クン」の片鱗。彼女は主人公にアドバイスする達観した大人の女性の役割ですが、消されたはずの記憶もどうやら取り戻し、「結局は別の人と結ばれるのよ」とかうそぶきつつ未だに奴さんの帰りを健気に待ってるご様子。確かに原田知世が演じた芳山クンの性格ならと納得の描写に、いつのまに薬学から美術方面にジョブチェンジしたんだと思いつつも心鷲掴みにされてしまうのでした。ついでにやっぱり報われない吾朗ちゃんには涙ナミダ。

時をかける少女 通常版 時をかける少女 通常版
筒井康隆、 他 (2007/04/20)
角川エンタテインメント

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フラガール

 06年賞レースに常に顔をだしたのも納得のフラダンサー養成物語。福島県いわき市で斜陽の炭鉱業からレジャー産業へと舵をきって誕生したのが常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)。本作はそれに伴って1965年に開設された「常磐音楽舞踊学院」を舞台にしてますがストーリー自体は概ねフィクションのようです。
 マピールさんにとっては80年代のアイドル歌手の墓場的な微妙芸能人の営業先のイメージが強い「ハワイアン」ですが、確かに70年代には憧れの観光地だったような気がします。その前が炭鉱だったなんて事は最近まで知りませんでしたが。今ではありがちな一次産業から三次産業への転換ですが、炭鉱閉山よりもかなり早い段階で実施した思い切りの良さが功を奏した感じでしょうか。採掘時の有り余った温泉の熱を回収して利用するコストダウン策も成功のポイントだったようです。なにより当時の行ってみたい外国No.1“ハワイ”を東北に作る発想が「プロジェクトX」風味。当時だけでなく最近もスパ・ブームに先駆けてリニューアルに成功しているわけで「ハワイアン」にはほとほと感心します。

 特筆すべきは時代の再現度の高さですね。『ALWAYS 三丁目の夕日』のCGは見事でしたがそこで暮らす人々には違和感がありました。でも、本作は町並み、風俗、当時の人間の価値観などが見事にマッチングしています。セピア色にすりゃ統一感が生まれるってもんでも無いしスタッフの腕ですな。描かれてるのはマピールさんが生まれる前の昭和ですが、歴史ある田舎の工業町ってわりと最近までこの雰囲気を漂わせてたんでリアルなのがよくわかります。
 そして、この映画の最大の武器は松雪泰子と蒼井優。蒼井優は『男たちの大和』で一昔前の世界観に馴染むことを証明済みでしたが、松雪泰子がこれほど60~70年代モノにフィットするのは意外でした。コメディ部分でオーバーアクト気味ながら主人公が誰かわかりにくいこの映画を要所できちんと締めてるのは紛れもなく松雪さんです。蒼井優は笑顔と熱演に加えその舞踊能力もグレイト。この手の「ダメが連中が集まって何かを成し遂げる」パターンは練習に時間を避けない主演級が一番下手ってのがありがちなのですが彼女の実力は本物。ソロを任せられるだけの芸をちゃんと身に着けているのでした。

 ただし、脚本至上主義者としては注文がつきます。『がんばれベアーズ』や『プリティ・リーグ』を彷彿する在り来りな展開は個人的に好きだからいいんですが、中盤から1時間近くを泣かせの連打に費やしたのがちょっと食傷気味。確かに一つ一つは良いシーンなんですが、これだけ畳み掛けられるとタメが足りずあっさりした幕切れになってしまったように思います。まあ、今時の瞬発力のある女性などは泣き通しなんでしょうが。群像劇としてはエピソードが細切れで収斂しないのが気になるのでした。
 何を隠そうマピールさんは斜陽産業で働いてて工場閉鎖による大規模リストラで職を失った人ですから、クビ切られた炭鉱夫とかそれで稼がざるを得なくなった脇役の踊り子に感情移入しまくり。それだけに最初に会社と組合の対立、働き場を失う従業員といった重い要素を出しておきながら炭鉱街に射す影や炭鉱夫達の決断といったものが希薄なのは残念でした。中途半端な植物係のエピソードや今ひとつ意味が見えてこない豊川悦司の役どころが歯がゆいです。ダンサーたちも夢や憧ればかり強調せず生活がかかってるって気迫や境遇に対する怒りが欲しいです。
 あと、最後のダンス・シーンは素晴らしいけどやっぱり長すぎると思います。じっくり踊りを見せたいのはわかるけど、師弟の物語も母子の物語も先に終わらせてしまっているので、余韻としては引っ張りすぎなのでした。泣かせのピークがここに来てれば文句ないんですがねぇ。

 演技もダンスも申し分なく脚本も演出も質が高いわりに不満が色々出てしまうのは、物語の終わらせ方がイマイチなことが大きく、そのせいで大傑作になり損ねてしまった印象です。クライマックスの作り方にもうひとつ工夫が欲しかったですね。万人向けで笑って泣けてダンスや音楽も楽しめる水準の高いエンタメ作品なのは間違いないですし、オーソドックスをオーソドックスに撮れる若手って邦画界では希少なので監督には今後も期待いたします。

フラガールスタンダード・エディション フラガールスタンダード・エディション
松雪泰子 (2007/03/16)
ハピネット・ピクチャーズ

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フライトプラン

 これ、劇場予告が凄くよく出来てたのを覚えてます。まあ、明らかに「旅客機で消えた子供」のプロットに無理があるのがその予告だけでわかったからこそ、ここまで放っといたんですがね。予想通り、脚本は破綻しておりサスペンスにもミステリーにもなってません。ちっともスリリングじゃないです(いや、後述するように別の意味でハラハラドキドキですが)。かといってアクション映画にもなってないのが辛いですね。無理にシリアスにせずヒッチコック映画のパロディに徹してれば良かったのに。
 しかし、つまらないわけではないから困りもの。ジョディ・フォスターのイカれっぷりだけで充分に楽しめちゃう変な映画です。一回観れば充分だけど。

 とにかくジョディさんの暴走が常軌を逸したレベルで展開されるので、娘消失の謎は妄想でも誘拐でもいいけど何れにせよ彼女は狂ってるという予想外の着地点へ全力疾走。高飛車でヒステリックで何をするかわからない半狂乱ママをパーフェクトに演じてます。完璧すぎて好感度ゼロのままフォローもなく幕という、親子愛モノなのに感動のストーリーになってない所が斬新でした。オスカー二度も獲った女優がなんでこんなB級作品を好んで選ぶのか。
 でも、大女優熱演は物語の馬鹿馬鹿しさを際立たせる一方で退屈させない効果も間違いなくあり、普通なら萎える真相も一気に畳み掛ける演出で最後までダレさせなかった力技に拍手。まさか、最後にあんな無茶なオチがつくなんて想像もできませんでした。あまりに非道なテロリストぶりに唖然。それ過剰防衛だろ!

 とにかくツッコミどころは宝の山の屑脚本なので割り切って観るしか無いでしょう。直前に『逆転裁判4』をプレイしてたせいで、後半の種明かしでは頭の中で「待った!」「異議あり!」の連呼でした。潔いほど貼られてない伏線と矛盾しまくりの強引な展開にめまいを覚えます。最大の問題はストーリーの都合以外に子供消失の必然性が全く無いということで、メインネタの着想の段階からいきなりダメじゃん。たぶん、この監督は「出たとこ勝負」とか「成り行き任せ」とか「ライヴ感覚」とかが大好きなんでしょうね。サスペンスには全く向いてないですよ。
 あと、リストラによるサービス低下とか9.11後の不自由さとか何かよっぽど嫌な目にあったのか、航空機業界を憎んでいるとしか思えないトンデモ描写の数々に驚かされます。客室乗務員の対応は尽くサービス業の基本がなってないし、セキュリティにも色々問題あります。なによりあれだけ問題行動させておいて機長に謝らせたのが最悪。
 ハリウッドのお偉いさんたち、よくこの脚本にゴーサインを出したものですな。航空会社だけじゃなくアラブ系も敵にまわしてるしなぁ。FBI無能扱いはいつものことだけど。

フライトプラン フライトプラン
ジョディ・フォスター (2006/05/24)
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント

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