「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ブラックブック

 ナチス占領下でレジスタンスに協力するユダヤ女性を描くという社会派の題材でありながら、女スパイ物のエロティック・サスペンス風味娯楽大作で、しかも数奇な運命に翻弄される女の壮絶な大河ドラマでもある間口の広い作品。ただし人の偽善をストレートに描く作風なんで『シンドラーのリスト』のようなヒューマニズムを期待すると間違いなく大火傷します。
 監督は『ショーガール』でラジー賞を総なめにするなど怪作を連発し『スターシップ・トゥルーパーズ』ではパワードスーツを登場させずハインライン信者の度肝を抜いた“シニカルでエロい惨殺野郎”ポール・ヴァーホーヴェン。相変わらずエロスもヴァイオレンスも豊富ですが、今回は揺ぎ無いオーソドックスな演出と一気に畳み掛ける流転のドラマ展開で一味違う風格を身に纏った作品を送り出して来ました。過剰な描写だらけなのにそれが驚くほどしっくりきています。いつの間にこんな王道映画を撮るようになったんだろ?

 冒頭で主人公が生き残ったことを示すのはサスペンスとしてマイナスだし、あからさまな演出で容易く真相に辿り着ける造りはミステリーとしても苦しい筈なんですが、確信犯でやってるわけでそんな事は全くハンデになってません。物凄いテンポで次々と不幸が降りかかるにもかかわらず感傷的なシーンが殆んどないなど、徹底的にクールな視線で復讐の連鎖とその徒労感を描ききり、それでも戦いは終わらないと突き放すドラマ部分が非常に強力です。注文をつけるとすれば「ブラックブック」があまりに唐突に出現する事でしょうか。
 とにかく、復讐鬼にしてはどこか醒めててスパイにしてはドジで奔放過ぎる主人公を演じるカリス・ファン・ハウテンの魅力に釘付け。物語を暗くしすぎないコミカルな演技と素敵な歌声を披露しつつ、見事な脱ぎっぷりでハードな汚れ役をこなしています。無論、繊細な心理を演じ分ける技術もあり裸以外も見応え充分。

 さて、物語をより深く理解するための歴史のおさらい。ABCD包囲陣の一員という事でオランダは連合国側で頑張っていたイメージがありますが、実は1940年に僅か5日でナチス・ドイツに本国を占領されヴィルヘルミナ女王はイギリスへ亡命してます。本作の舞台は1944~45年ですからオランダ・ナチスによる文民政権時代ですね。ドイツは敗色濃厚でフランスに続きベルギーが解放された頃です。ちなみにオランダ領東インド(インドネシア)も1942年に10日ほどの戦闘で日本に全面降伏。本編とは無関係ですが日本軍もナチスと似た立場って事は頭の片隅に置いておいても良いでしょう。あと冒頭の1956年10月はイスラエルがエジプト領内に侵攻した「スエズ危機」勃発の時期。ついでにキブツは地名ではなくイスラエルの集団農場のことです。

ブラックブックブラックブック
(2007/08/24)
カリス・ファン・ハウテン.セバスチャン・コッホ.トム・ホフマン.ミヒル・ホイスマン

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unknown/アンノウン

 「記憶を失なって密室に閉じ込められている5人の男たち。判っているのは3人が誘拐犯、残りの2人が人質、そしてボスが戻ってきたら人質には死あるのみ。リミットは3時間。」
 設定は抜群に面白そうなんですが、残念ながら話が進めば進むほどつまらなくなっていきます。全般に意外性のなさが問題です。85分の作品でありながら弛みまくり。この設定なら疑心暗鬼の人間模様に注力すべきなんですが、演出がどうにも旨くないです。

 先ず、観客に情報を提示し過ぎ。密室の外で起こっていることや、それぞれの記憶が回復するときのフラッシュ・バックなど、監禁メンバーが共有していない情報を持たされてしまうので劇中人物の心理とのシンクロが難しくなってます。もっと曖昧で断片的な記憶と状況証拠だけで話を進めた方がミス・ディレクションを誘発し易く緊張感も持続したと思います。
 次に、局面の変化を記憶の復活だけに頼り過ぎです。現場の手がかりから推理するような展開がもっと欲しかったし、曖昧な記憶により生じた誤解を物証や論理で解いて行ったりしても良かったと思います。記憶が鮮明になる後半ほど予定調和になるんじゃ盛り上がりません。
 加えて人物の描き込み不足が目立ちます。地味ながらクセのある俳優を起用しているわりに個性がイマイチ。勘違いだらけの短絡バカとか、無闇に疑り深い奴とか、露悪的な皮肉屋とか、もっと話を引っ掻き回すキャラを仕込んでおけばインパクトがあったのに。記憶の蘇る時間に個人差があるという設定そのものは面白そうなのに疑心暗鬼に存分に活かされてるとは言い難いのが残念です。

 サスペンスの雰囲気はいい感じだし、スプラッタに走らず心理的取引で魅せようと言う心意気は良いです。これで探り合いや駆け引きが面白ければかなりの水準になったのですが、テンポが速すぎてわかりにくいのが困りもの。求心力はあるだけに勿体無い感が際立ちました。
 ラストはロジックでは到達できない結末ですが、それ自体は否定しません。やはり密室劇の『11人いる!』の真相だって推理で判明するような代物では無かったですが存分に楽しめますからね。ただ、本作のオチは全体の流れに巧く融合出来ておらず、結果的に意味の無いサブストーリーを発生させただけになってしまいました。こういうのは記憶の断片にさりげなく混ぜ込んで置くのがスマートなやり方でしょう。アイデアは悪くないだけにその唐突さが惜しいのでした。

unknown/アンノウンunknown/アンノウン
(2007/07/04)
ジム・カヴィーゼル、グレッグ・キニア 他

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パフューム -ある人殺しの物語-

 ドイツ映画って事と公開前に話題を攫った750人全裸ラブシーンの画からてっきりアートな作品だと思い込んでスルーしたんですが、パッケージはサスペンス超大作を名乗っているので急遽チェック。結果は想像を全く超えてなんだか凄い映画でした。これは劇場で観たかったです。
 お話は18世紀のパリを舞台にした連続殺人モノではあるんですが、テイストはヨーロッパ独特のエロかったりグロかったり寓話的教訓が詰め込まれた「本当は怖い・・・」的な御伽噺でした。キワモノ殺人者が主人公でアクが強く後半には超展開もありと好き嫌いが明確に分かれるとは思いますがマピールさん的には傑作認定です。魚市場の悪臭から香水の芳わしい薫りに官能的な体臭まで、嗅覚を刺激するいちいち大げさな描写が素晴らしく恍惚の時間に酔いしれました。

 最初に言っておくとエロティック・サスペンスは期待できません。ヌードは出てきても大半は屍体として転がってるだけですし、噂の750人スワップは別の意味で物凄いだけです。フェチっぽい異常者を扱った悪趣味な映画ですがそこに性欲は含まれていません。それでも生理的に無理な人とか感情移入すべきキャラが見つからない人は多いかと思いますが。殺人の直接描写を避けるなどグロ表現もかなりオブラートに包んでますがこれもダメな人はダメでしょう。そしてクライマックスのマンガ的ハッタリの連続を許容できずキレる人も少なくないんじゃないでしょうか。うわぁ、改めて書くと本当に人を選ぶ映画ですねぇ。
 しかし、2時間半という長さを感じさせずに好奇心をくすぐり続ける破天荒なストーリーに釘付けです。特に主人公が行動規範が謎な前半が抜群に面白いです。18世紀のフランスの風俗や調香師という職業にも目を惹きますが、なにより寡黙すぎるサイコパスなマッド・サイエン君の意外な行動に興味津々。本人の意思と無関係に『オーメン』のダミアン並みに死神なのも可笑しかったです。目的がハッキリする中盤はやや間延びしますが、それを補って余りある終盤のエスカレート。あまりの力技に爆笑。でも、物語の深みを増す実に魅力的な風呂敷の畳み方でした。

パフューム スタンダード・エディションパフューム スタンダード・エディション
(2007/09/07)
ベン・ウィショー.レイチェル・ハード=ウッド.アラン・リックマン.ダスティン・ホフマン

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300<スリーハンドレッド>

 歴史スペクタクルを想像していましたが、これは漫画チックな誇張の数々を愉しむエンタテイメント作品、ぶっちゃけてしまえばバカ映画ですね。序盤が変に真面目に造ってあるもんだから一瞬騙されました。よく考えたら国民皆兵の重装歩兵で知られるスパルタ軍がマンホールの蓋持った半裸のガチムチ集団って時点で時代考証もクソも無いわけで。裸マントのマッチョ戦士がガッツでがっつんがっつんのバトル自体が目的の人向け。

 とにかくスパルタ兵の出鱈目な強さが見所です。恥ずかしいぐらいストレートでヴァリエーションの無い戦法に暑苦しい魂の台詞群。これは古代ギリシア版『男塾』ですよ。それもメインの達人集団じゃなくて男気と根性だけが頼りの一般塾生達が男塾名物の連係プレイで屠るという構図。率いる王様は男塾塾長・江田島平八まんまの威圧感。惜しむらくは「知っているのか雷電!?」パターンで解説する人材がいません。
 対するペルシア軍は過剰に異形集団。巨大すぎるサイとゾウ・怪力巨人・仮面の忍者軍団・爆裂魔道士と、どうみても『ベルセルク』かなにかの世界です。ビックリ人間大集合。しかも偉大なペルシア王はよりによってアクセサリーじゃらじゃらの妖艶なオカマですよ。イラン人が怒るのも当然の造形です。
 これを観て「決死の特攻の意義」とか「滅びを美学の危険性」とか「愛国心を鼓舞」とか「民主主義vs蛮族」を云々する感性をマピールさんは持ち合わせてないです。男塾をモチーフに思想や政治を語るような痛い真似はできません。気楽に楽しめば良しです。

 ストーリーが殆んど無いに等しい本作の肝はアクション・シーン。見慣れないファランクス隊形からの計算され尽くした連携、あまりグロくはないけれど容赦なく腕や首が飛び交う豪快な斬撃、美しい筋肉と高度な殺陣を観客にきっちり示すスローモーションの多用。ごちゃごちゃしてるだけに成りがちな大軍の乱戦をスッキリとまとめ、悲壮感の欠片もない勇壮な戦士達を見事に描きます。それを病的なまでの絵画的な色彩により壮大な絵巻物っぽい雰囲気にしたCG処理も素晴らしいです。
 一方、戦場ばかりで飽きが来ないように挟まれたスパルタ王妃の男前なドラマは緊張感が途切れるだけであまり旨くありません。これなら脇役戦士のドラマを混ぜた方が良かったんじゃないかと。いや、デルポイの神託の巫女さんと共に乳首露出で頑張ったレナ・ヘディには申し訳ないんですが。まあ、そのベッド・シーンにしても『オペラ座の怪人』からは想像もつかないジェラルド・バトラーの肉体美に完全に喰われてるんですけどね。

 この映画では戦争の背景や結末が詳しくは示されないのでちょっと調べてみると、ヘロドトスの『歴史』に記述されるテルモピュライの戦いが元ネタ。一応、神話じゃなくて正史に分類されるようです。100万vs300人は誇張にしてもカルネイア祭によって300人しか出兵できなかったスパルタ軍が無茶な徹底抗戦を敢行したって部分は史実通りなんですな。
 尚、ペルシア戦争全体の流れはこんな感じ。ラスト・シーンは奇跡的勝利となるプラタイアの戦いってことですな。この間にアテネとかは陥落してますがスパルタ本土は一貫して無事のようです。

300<スリーハンドレッド>特別版(2枚組)300<スリーハンドレッド>特別版(2枚組)
(2007/09/26)
ジェラルド・バトラー.レナ・ヘディー .デイビッド・ウェナム.ドミニク・ウェスト.ビンセント・リーガン

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