「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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どろろ

 手塚治虫のカルト的人気コミックを邦画としては破格の20億円を費やし実写化という謳い文句、近頃死屍累々のインチキ時代劇妖怪アクション、原作では十歳前後の「どろろ」を成人女性・柴咲コウに演じさせる大胆なキャスティングと、観賞前から「駄作」の二文字が脳裏によぎる作品です。しかし、もっとろくでもない映画を想像してましたが予想よりはかなりマトモで驚きました。
 主演・妻夫木聡&柴咲コウから予測されるターゲット層は低学年児童の母親なもんですから陳腐なラブ・ストーリーとか無理矢理な泣かせとか覚悟してたんですが、原作から大きく逸脱しない程度のアレンジで納まっていて意外。どろろの設定変更もすんなり納得できました。打ち切り同然の尻切れだった原作を補完した「父と子」の物語というアプローチも悪くありません。けど、やっぱり駄作です。それも、頭を抱えるレベルの。

 兎にも角にも製作費20億の映画のアクション・シーンが『ウルトラファイト』ってのは洒落になりません。高校の文化祭映画を想起させる貧相な造形に唖然。これを大画面のスクリーンで見せちゃう神経が凄い。CGが安っぽいとか言う次元じゃなくて布団加工品にしか見えない着ぐるみとか視聴者をなめてます。明らかに予算配分を間違っており、異形のダーク・ヒーローと妖怪たちとの見せ場は嘆息をつくばかりのクオリティに。必然性も無くクロサワ戦国合戦絵巻を撮るために敢行したニュージーランド・ロケが予算を食い潰した弊害です。
 演出も脚本も映画の流れを無視してゴチャゴチャやり過ぎという問題もあります。監督・脚本家・アクション監督のやりたいことがバラバラな上に、その折り目がクッキリとついたままなのが酷い。特に深刻なのが終盤で、父・中井貴一を強大な敵として表現してないのでクライマックスがこれっぽっちも一大事に思えません。基本となるべき葛藤が全く描かれず心情変化も全然見えないんで登場人物たちがなんでそんな行動をするのかさっぱりわからない事に。いくら「父と子」というアプローチの方向が正しくてもクラブやショットが滅茶苦茶じゃねぇ・・・。まだ続編にゴーサインが出てなかったのか、強引で中途半端な着地点でグダグダな感じに終劇なのも気になりました。

 さて、これらの駄目な点がありながらマピールさんがそこそこいけてしまった理由は、当初の最大の不安要素・柴咲コウの存在だったりします。「どろろ」役を女優にしたのはプロデューサーサイドの要請らしいですが、そこで彼女を起用した監督の功績は讃えたいですね。確かに違和感は大ですし喚き声は五月蝿いです。特に原作を知らない人はその微妙なポジショニングに戸惑う事でしょう。だがしかし、この怪しい世界に違和感無くはまるビジュアルとなんとなく楽しめてしまう突き抜けたキャラに救われる事しばしばなのですよ。本当に柴咲抜きのシーンがかなりキツイ。原作ファンの拒絶反応は理解できますが子役にはちょっと無理ですよ、この役は。
 まあ、主人公・百鬼丸の妻夫木聡もかなり頑張ってはいます。いい人が透けて見え過ぎて怒りが弱い面がありますが、ペシミストな部分を強調した事で只の男前ではない深みが出てますね。アクションには問題あるものの自ら挑戦した意気を買いましょう。ねだってみても若手のアクション俳優が育ってないのが現状なんだから。
 それよりも脇で支えるべきキャストに精彩がないのが痛いです。中井貴一、瑛太といった演技巧者がこの不思議世界では全く機能してません。土屋アンナは容姿のマッチングは最高だけど喋らせると途端に駄目になるのが惜しいです。やっぱり京本政樹とか松村雄基とかそっち方面の濃い役者が欲しかった気がします。

 しかし、これの続編を2本も作ろうってのは豪気ですな。

どろろ(通常版)どろろ(通常版)
(2007/07/13)
柴咲コウ、瑛太 他

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墨攻

 日本のコミックを中国と香港に加え韓国の俳優を出演させて実写映画化したという触れ込みの歴史スペクタクル。大国の前に蹂躙されようとする小国に現れた防衛請負集団「墨家」の男が10万の敵に篭城戦を挑む話です。そもそもは『後宮小説』の酒見賢一による小説ですか。読んでないや。

 結論から言うとこの映画微妙でして、良作ではあるものの本来はこんなものじゃないはずだという思いが強いです。体を張った人間同士の戦いは力強く美術も演技も満足いく内容なのですが人間ドラマが薄っぺらい。前半の知略に富んだ攻城戦に胸を躍らせてると謀略やら悲恋物語やら色々な要素が詰め込まれて冗長になっていくのがいけません。期待していたのは少が多を圧倒する痛快な描写なのにモロボシ・ダンばりに理想と現実の狭間で戦う事に苦悩し女に惑わされる主人公。ストイックでプロフェッショナルな仕事ぶりだったのが、無駄だらけで中途半端な凄さの矮小な人物に堕ちていくのが虚しいです。
 何が駄目なのかと言うと、民衆から信頼を得ていく過程がさっくり省かれている点でしょう。ヒーローの魅力を描かないと敵将も映えないし王の疑心暗鬼も説得力を持ちません。それにどう考えてもヒロインが邪魔。男ばかりのむさ苦しさを和らげる効果よりメッセージが薄れるマイナスが勝ってますよ。

 この物語の舞台は春秋戦国時代の中国ですが、お話はほぼ創作のようです。でも戦国七雄「魏」が覇者の座から滑り落ちて「梁」と呼ばれたのも、この時代に思想集団「墨家」が勢力を増していたのも史実です。まあ、マピールさんは思想となると「墨家」どころか「孔子」や「老荘」でも苦手です。覇権争いの流れなら横山光輝の漫画とか宮城谷昌光の小説とかのおかげである程度理解してますが。
 その「墨家」の思想の肝が「非攻・兼愛」でして、映画のテーマにじっくり絡んでくるわけですが、中華の世界では基礎知識なのかあまり詳しく説明されずちょっと戸惑いました。専守防衛で平等主義で軍事組織を持ち頼まれれば防衛に赴く助っ人なんて復興支援の自衛隊みたいな集団が紀元前に存在したなんて俄かには信じ難いし。反撃の自由度は比べるべくもないですが。

墨攻墨攻
(2007/07/27)
アンディ・ラウ、アン・ソンギ 他

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リトル・ミス・サンシャイン

 アカデミー脚本賞と助演男優賞受賞という輝かしい実績を引っさげたインディペンデント映画。ニューメキシコ州アルバカーキに住んでいる一家が美少女コンテストに愛娘を出場させるべくオンボロの黄色いミニバスでカリフォルニアに向かう、笑いと感動で綴るファミリー向けハートフル・ロード・ムービー。しかし米国では子どもは観られないR指定映画です。何故ならオスカー受賞者アラン・アーキン演じる一家の祖父がぶっ飛んでるから。でも、子供にも見せるべき秀作なので日本でのPG-12指定は英断です。コメディですがテーマはシビアな社会派ものなので頭空っぽにしてひたすら笑いたい人とかは要注意。

 極めて脚本主導型の映画でして、徹底的にデフォルメされた尋常じゃないキャラクターがエピソードとしっかり結びついていて隙がありません。崩壊寸前の家族が次第に力をあわせて「負け犬」人生と向き合うというお決まりの話なのですが、現代アメリカの家族像を強烈に皮肉ったそれぞれのエピソードが絶妙で捨てキャラや無駄なシーンが見当たりません。個性的過ぎて噛み合わない家族、容赦なく降り掛かる悲劇の連鎖、壊れていくミニバス、敗色濃厚なコンテスト。それらをシニカルな笑いに昇華しながら計算され尽くしたクライマックスへなだれ込む展開がグレイト。テクニカルな視点で観れば観るほど味が出てくる作品です。その突飛過ぎる行動に入り込めないと辛い作品なので一般には佳作と駄作にくっきり評価が割れそうですが、グッとくる台詞が多くほろりと泣かせもありのあったかい映画です。

 ピュアなぽっこりお腹の眼鏡っ娘を核に、「勝ち組」至上主義のパパ、まとめ役だけど食卓がジャンク過ぎるママ、無言の業を敢行中のマッチョ兄貴に仕事も恋も失ったゲイの伯父さんと皆が個性的で素敵なんですが、やはり最強にファンキーなエロ爺の存在が物語を数段面白くしています。理想とは裏腹に転げ落ちる息子を讃え、悩めるティーンの孫に説教し、天真爛漫な孫娘を励まし、後半は出番以上に大活躍する美味しい役どころでした。

リトル・ミス・サンシャインリトル・ミス・サンシャイン
(2007/06/02)
アビゲイル・ブレスリン、グレッグ・キニア 他

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武士の一分

 興味は「木村拓哉に演技の幅はあるのか?」という一点だったのですが、やはりキムタクにはキムタクしか演じられないという結論。しかし、山田洋次監督はそのキャラクターを徹底的に活かした当て書きで大衆娯楽時代劇に融合させる事に成功しております。そりゃ「SMAP×SMAP」的違和感はあるけども、絶妙なトボケ芸を持つ笹野高史にフォローを託し、殺陣のぎごちなさには盲人というエクスキューズを用意し、寡黙な男に設定してキムタクの最大の弱点であるライトな喋りを弱めて表情や仕草に専念させる仕事振り。
 キムタクがどうにも料理できない素材みたいに書きましたが、「食事」の演じ分けなどの難しい演技をちゃんとやっています。主役に指名されるだけの華があり、コントやCMでもみせる一瞬で人を引きつける能力は抜群。平凡な侍が譲れない「一分」に垣間見せる感情を盲目になった者の眼で表すという監督の演出に見事に応えています。俳優・木村拓哉を見直しました。まあ、一番の収穫は楚々とした顔立ちがぴたりと役にはまった檀れいという女優を知ったことですが。

 ただ、マピールさんは『男はつらいよ』シリーズとか『幸福の黄色いハンカチ』とかの大衆人情娯楽ものが苦手なんですよね。悪はきちんと悪として描いて欲しいクチなので山田洋次の作風は時代劇としては物足りなく感じました。やはり「よいではないか、よい ではないか」は自害・返り討ちから仕事料ってな展開のほうが燃えます。
 あと、たぶんキムタクのスケジュールの都合なんだろうけど、殆んどセット撮影で狭苦しいのも気になりました。山田洋次といえば郷愁さそう日本の日常風景の第一人者だというのに。

 そんなわけで『たそがれ清兵衛』と比較されたら辛いけど山田流時代ラブストーリーとしては安心感のある作品に仕上がってます。予定調和だけどホロリとするオチも良し。「いちぶん」という言葉の意味とかツブ貝の毒とか気になって調べたのでタメにもなりました。ちゅか、ツブ貝の毒はテトラミンって奴でして、実はこれの仲間を学生時代に頻繁に扱ってたんですが、工業利用の特性しか頭になくて毒だなんてまるで知らなかったという衝撃の事実。やれやれだぜ。

武士の一分武士の一分
(2007/06/01)
木村拓哉、檀れい 他

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マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝

 今は無きジャパン・アクション・クラブの設立者・千葉真一(現在名・JJサニー千葉)と倉田プロモーション代表・倉田保昭という70年代アクションのレジェンド二人の対決が観れる親父ホイホイ映画。
 片や空手の代名詞であるハリウッドスター、片やブルース・リーと交流のあった香港クンフーの巨人。この二人の激突だけが目当てで飛びついたんだから、60代とは思えない両雄の打点の高い蹴りやスピード感より動と静のコントラストを重視した体技が見れただけで満足しなきゃなんですが、ラストの方に待ってるそれ以外に本当に見所がなかったです。中年アクション・ファン向けに作られてないのは仕方ないにしても、アイドル俳優らしき若手達のファン層とも被らないので、誰に向けて作ってるんだと言いたくなります。

 学芸会レベルの若手はどうでもいいからさっさと倉田先生とサニーを出せと思って見てたマピールさんも同情する程に終盤どうでもいい扱いをされる若者7人衆。仲間集めと修行でキャラ立てをしっかりやったのに、誰の特技も全くアクションに活かされないし、事件の解決にも殆んど寄与しない衝撃の展開。エンディングのNG集から推察するに個々の活躍はバッサリ切られた模様。聖闘士星矢で言えば、「ここは俺に任せて先に行け!」とかやってるのにそのバトルシーンをすっ飛ばされ、挙句に突然現れた五老峰の老師がラスボスと決着という流れですよ。哀れすぎる。
 まあ、7人の内マピールさんが知ってるのは、最終決戦で「映す価値なし」状態になる面白アフリカ人アドゴニーと『バトル・ロワイアル』で見かけたヤンキー娘ぐらいなんですが、調べたら殆んどが特撮番組のレギュラー経験者のようです。二大巨頭も芝居は大根なので苦労は察するに余りありますが、全くのド新人ってわけでもない若手にここまで酷い芝居させてるのは監督の問題でしょう。無駄にワイヤーアクションとか挿入してる暇に演技指導すべきです。脚本も褒めようがないですがアクション以外だとカメラワークの質が格段に下がるのも泣けます。低予算をカバーするアイデアもアイドルを魅力的に撮るノウハウも足りてません。キャストにもスタッフにも頼れる名脇役が欲しかったところ。
 あと、冒頭では気合の入った縦横無尽の大乱闘を長廻しで撮ってるんですが、テンポが悪く演舞っぽく見えちゃう上にそもそもカット割ってない事に気がつきにくいのが難。凄いハードなファイトシーンにトライした筋肉男の努力が報われてないです。
 単純にできる話を無理にややこしくしてるような纏まりの無さとエピソードのぶつ切り感を修正すればもう少し面白かった気がするので勿体無い。意外にギャグは滑ってなかったし。

マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝
(2007/01/26)
木下あゆ美、芳賀優里亜 他

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