「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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蒼き狼 地果て海尽きるまで

 オール・モンゴルロケが話題のアジアで最も偉大な王チンギス・ハーンの伝記映画。原作は森村誠一の『地果て海尽きるまで』なのですが、モンゴル統一後の拡大路線やフビライ等の継承者の活躍をカットしたため大人の事情で原作ではない井上靖『蒼き狼』の方にが近いかも。
 興収13億だから曲がりなりにもヒット作な筈ですが製作費を半分も回収できず。まあ、シニア向け歴史大作にしては妙に小粒なキャストですし、集客の要である若年女性層へのアピールを放棄している事から妥当な結果ではあります。でも、最初から角川春樹の趣味で採算を度外視して作った映画にしては驚異的なスクリーン数を確保してた辺りが笑えない。無論、興行の成否と作品の出来は無関係なのですが、キャストに比べかなりまともなスタッフが揃っていながらそっち方面も芳しくないのが泣けます。

 歴史大河がダイジェスト編集に成りがちな事を酌量しても脚本にメリハリがないのが辛いです。モンゴルの女達の目線でチンギスを描こうというアプローチなので正妻ボルテが中心になるべきなんですが映画では実に出が薄いのでバランスが悪いです。原作では創業期のチンギス躍進はボルテの部族がもたらした財力・先進技術と彼女の求心力・包容力を抜きには語れないし、チンギスに「二度と部族の女を敵の戦利品にさせない」と決意させる重要なキャラなんですが。そこが効果的に描かれないのは演じた菊川怜のせいというより脚本家の責任でしょう。彼女の起用自体も謎ではありますが。
 その弊害はチンギスにも及びます。女達に学んで覇業に邁進していく展開なのに母も妻も立派に見えないので彼も器の小さなダメ人間みたいでまるで魅力がありません。どうしてこんな男の元に人が集まるのか不思議でした。加えて戦場での活躍が殆んど無く、家臣は空気同然、理由も無く形勢逆転するなど武勇を示すドラマが弱いのも問題ですね。盟友ジャムカとの友情と確執にもっと焦点を当てるべきで、中途半端に息子や愛妾の話を混ぜたのは失敗だと思いました。戦闘シーンに変化が無くインターミッションの役割しか果たしてないのも苦笑。

 主人公・反町隆史は良い時は意外なほどハマってますが目を覆うほど酷い演技も混在し、津川雅彦・松方弘樹といった重鎮は顔見せ程度で助けにならず、若村麻由美が一人だけ頑張ってるという悲惨な状況。ほぼ全員がオーバーアクションな大根芝居になってる演出の意図が理解しかねるのですが、菊川怜の演技レベルに合わせる必要でもあったのでしょうか?いや、菊川さんは出番が少ないので決して足は引っ張ってないのですが・・・。
 それと、モンゴル人の映画なのに日本語をしゃべる事の違和感を批判するのは筋違いで、『敦煌』や『西遊記』、世界でも『トロイ』や『頭文字D』などで普通に行われてる事ですよね。それよりも若村さんだけ年をとって反町・菊川が若いまま(なのに創業期だけ子役起用)ってことの方がよっぽど気になりましたよ。

 苦言ばかり並べましたがモンゴルロケをやっただけの画はしっかり撮られてるんで、薄いドラマよりも壮大な草原と遊牧民の生活を愉しむのが吉です。男優たちがかなり頑張っていて様になっている騎馬のシーンも見所。なんやかや言っても往年の角川映画大作と同じで肩肘張らずに観てられる安定感があるのも売りです。あと、どうやって広大な版図を得たとかそれをどう統治したとかが曖昧になっているので、歴史好きの好奇心をくすぐって原作を手にとらせる可能性もあり、メディアミックス角川商法的には美味い造りなのかも。

蒼き狼 地果て海尽きるまで 通常版蒼き狼 地果て海尽きるまで 通常版
(2007/08/08)
反町隆史.菊川怜.若林麻由美.袴田吉彦.松山ケンイチ.Ara

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ラッキーナンバー7

 「驚きのラスト!」とか宣伝したどんでん返し系でありながらトリックがバレバレという困った映画。マピールさんがサスペンス慣れし過ぎている事を差し引いてもこれは捻りが無さ過ぎ。なんたってミスリード役がいないのが痛いです。製作側は『間違えられた男』っぽくしたかったんでしょうが、あまりに直球で淡白な見せ方なんで謎を謎とも思わせず想定の範囲内で二転三転することに。結局は予定通りに事が進まなければご破算の無駄に手の込んだ計画なのも虚しいです。「なんでそんな事すんの?」って思う事ばかりでした。
 斯様に演出・脚本に頭の悪さを露呈した作品ですが、そのわりには可もなく不可もなくな印象です。もうちょっと群像劇にしてキャラを掘り下げてくれとは思うものの豪華スター饗宴のエンターテインメントとしては及第点つけても良いんじゃないかと。オチとか謎とか考えずにぼやーっと観るならそこそこ楽しめる、実に真っ当なつくりの佳作なのであります。ヒッチコック・サスペンスや007ネタに詳しいとニヤリとするシーンがあるのも映画好きには嬉しいのでした。

 もっとも、敵対するマフィアの両巨頭に扮したモーガン・フリーマンとベン・キングズレーの渋いオスカー俳優競演はいまひとつ冴えません。スタンリー・トゥッチも含めて役不足感は否めず凄く勿体無いです。ブルース・ウィリスは儲け役で雰囲気も良く見応え十分ながらなんとなくチープ。回想の変なかつらが笑えます。しかし、汗かかないブルース・ウィリスは物足りなくもあり・・・。
 ただ、主人公ジョシュ・ハートネットが災難に次々と巻き込まれるやたら不運な男を好演し、アクの強い役者に囲まれながらコミカルな魅力を振りまいてます。R指定のハード・ヴァイオレンスでありながら腰に巻いたパスタオル一枚のみであちこち連れ回されるコメディ展開のギャップが素敵。クライマックスでは一気に哀愁を漂わせたり難しい役を巧みに演じています。
 そして、ルーシー・リューが小さくて可愛い事にビックリ。全然イメージと違うんですけど。活発でコミカルなヒロイン役でして、ミニスカでテーブルに座って腿チラとかどうみても小娘の演じるべき役柄なのに似合ってます。四十近い彼女に今更キュートという言葉を使うとは思いもよりませんでした。

 「すべては<幸運のナンバー7>から始まる」とか宣伝してましたが、邦題のセブンは実はまったく関係なくて苦笑。でも、競争馬の馬番が「7」って事から無理矢理捻りだして来た努力は評価したいです。原題「LUCKY NUMBER SLEVIN」は大きなヒントではあるんですが、そのままカタカナにしても意味わかんないですから。だったら映画にちゃんと関係がある『カンザスシティ・シャッフル』ってタイトルにしちゃえよ、とか思わないでもないですが。

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(2007/06/22)
ポール・マクギガン

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バブルへGO!! タイムマシンはドラム式

 最近の邦画はやたらと地上波放送が早いのでレンタルした2日後にTV放映なんて間抜けなことが起きます。ファッキン!

 タイムマシンと名が付けばどんなに期待薄であろうと食指が動いてしまう悲しい性。予告で見る限りパラドックスとかバブル経済とかをアカデミックに考える必要は全く無さそうなのでお気楽に観賞。
 意外と面白かったのですが、クライマックスで全てが台無し。バブルを満喫したバカタレどもが「バブル最高~!」と叫ぶのは構わないですが、バブル崩壊の責を総量規制に舵を切った故人に負わせ、あまつさえ黒幕に外資を持ってくるなんて恥ずかしい真似をされちゃ洒落になりませんよ。ITバブルと対比させて風刺するにしても配慮が足りな過ぎ。普通に若者たちが新しい世界を作っていく方向に着地すれば良かったのに。

 バブル期に生きてた世代の視点では、中盤まではカルチャーギャップ・コメディとして良くできてると思いますよ。今の若者に伝わるかが疑わしい小ネタが結構ある気もしましたが、現在とのズレを巧く笑いへと転化している辺りは流石に漫画『気まぐれコンセプト』で四半世紀の広告業界を描いてきたホイチョイ・プロダクションズ原作。ディテール部分はきっちり作りこまれてるようです。露骨なタイアップもこの作品なら許せますね。問題は前述の終盤展開とドラマとしてはあまりにも中身が無い事です。ちゃんと家族を描かないと・・・。
 実質の主役・阿部寛は得意の軽薄・女たらし・遊び人の型に嵌ったコメディ演技を楽しそうに見せてくれます。思えばモデル出身の長身二枚目という微妙ポジションで儚く消える雰囲気を漂わせていた阿部寛が現在では三枚目もこなす実力派として重宝されてるなんてバブルの頃には想像もしませんでした。広末涼子もキャバ嬢から芸妓姿まで色々見せてくれたし、あの不思議な感じが作品世界にマッチしてました。それに競泳用水着姿が体のラインといいハイレグの度合いといい実にエロ可愛くとても1児の母には思えませんでした。

 バブル時代を知る者が昔の事を思い出して語り合いながら観たくなる作品なのであまり劇場向けじゃないですね。絶好の機会だった昨日のテレビを見逃した30~40代の御仁は同世代で集まってDVD観賞するといいと思いますよ。バブルの負の側面も理解してくれてそうな失われた10年の世代と違いその下のプレッシャー世代には思いっきり反感をかいそうですがね。ほんとはそれ程いい時代でもなかったんですが。
 1990年頃のマピールさんは新宿辺りをうろつくボンクラ学生だったわけですが、「賞金が200万円のビンゴ」とか「タクシーのチップに諭吉1枚」とか全く体験してません。当時も「トレンディドラマのような部屋にあんな若造の収入で住めるわけない」とか言ってたし、ボディコンもTPOと着れる容姿の人が限定的なのでTVや雑誌で見るほどには街にいなかった気がします。映画は誇張ではないんですが、ヒルズ族の豪遊とかが一般人には異次元の事なのと同じように、ギョーカイとかで羽振りが良かったごく一部の人のエピソードを『ALWAYS 三丁目の夕日』と同じようにテーマパークで再現しただけなんで若い人たちは誤解しないように。いつの時代も蚊帳の外の人が大多数なのであります。

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(2007/08/17)
馬場康夫

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デジャヴ

 ネタバレ厳禁映画でした。そして、ネタバレしないと何も書けないという事実に困惑。この作品にとって不幸なのは、語っちゃいけない重大な部分が明らかになった時点で拒絶反応を起こす観客がかなり見込めることと、よりによって大味の代名詞ジェリー・ブラッカイマーの製作だって事。一見穴だらけでご都合主義に見えるこの映画、実は意外と頭使って組み立てられてます。みっちりの伏線が綺麗に回収され破綻も殆んどないというのがマピールさんの結論。でも派手で無内容なカイマー映画の先入観が邪魔してツッコミだらけの豪腕トンデモ映画だと理解されちゃう可能性が高いです。拒否反応を抑え少し頭を捻って観て欲しいのに。

 先ずは触れてもいいネタだけで感想。やたら画がクリアーで美しいです。特に冒頭のフェリー・シーンは主役登場までの10分間を動きのある映像で魅せるトニー・スコット監督らしい仕事ぶり。フィルム撮りの良さをまざまざと見せつけてくれてます。
 そして、プロットも面白いです。肝は建物の中まで覗き見る事が出来る人権無視の衛生監視システム“白雪姫”の存在。これがまた「約4日前の映像のリアルタイム再生しかできない」「アングル自在だけど一度に映せるのは1箇所」など制限事項がたっぷりで、それを巧みに利用して犯罪捜査をスリリングに展開していくシナリオは実に面白くなっています。カーチェイスの仕掛けも斬新です。ただ、惜しむらくは白雪姫の設定が秀逸すぎました。だから後半の急展開が観客に冷や水を浴びせ後ろ髪を引かせる効果ばかりになっちゃってます。
 あと、演出上の問題点は、デンゼル・ワシントン扮する切れ者捜査官ダグが事件そっちのけで被害者クレア(ずっとハル・ベリーだと思ってたら別人だったw)にご執心に見える事。おかげで最優先されるべきミッションがおまけみたいです。ダグの行動原理が愛であるならそれでもいいのですが、ちょっと違うみたいなので悩ましいです。

 さて、どうにも不当な評価を授かりそうな中盤以降を擁護するために以下ネタバレで語ります。

 なんせ[時間物SF]だって事を伏せざるを得ない作品なもんで、観る側とのミスマッチが生じて理解されてないっぽいので主だった点を説明してみますよ。

 先ずは前提。この映画では過去を変えれば未来が変わり干渉前の未来は徐々に消滅するシステムが採用されてます。ドラゴンボールで未来トランクスが最初に目論んだのがコレです。あれは最終的に複数の未来に枝分かれしましたが、この映画では並行世界は共存せずやがて統合されます。しかも、ドラえもんの世界のように「起きた事は必ず起きる」のではなく「起きた事が起きなくなる」少し変な世界です。鶏が先か卵が先かみたいな話になっちゃうんで、この辺は深く考えずそういうルールだと捉えて下さい。

・レーザーポインタの透過
 不評が予測されるシーンですが、アレは画面に見えて実はマジックミラーみたいな物なんでしょう。衛星データ云々は科学者の嘘(つーか両方の技術を併用してるっぽい)で、実際には時間の窓を4日前の空間に直結してます。つまり「どこでもドア」に近いものと考えられます。

・人間転送の件
 不可能だと言いながらあっさり実現して萎えたのは認めます。強引過ぎる。でも証言と行動から推測するに科学者達はハムスターの死体の転送実験には成功してるし、莫大な電力さえ使えば重い物が送信可能な事も理論的に解ってた筈です。問題視されてるのは電磁波が生物の電気的活動を停止させる事と過去に干渉する危険性の2点。後者は倫理的な問題(世界が丸ごと消えるレベルだけど)ですから結局は電磁波の問題だけクリアすれば良かった。それならば手は有りそうです。まあ、あの力技だと遺伝子がかなり損傷しそうな気はしますが。

・ダグの痕跡の謎
 一番誤解されてそうな所。クレアが死んでテロは起きてるのにタイムトリップしたダグと接触した痕跡が残っていることの矛盾から整合性無視の駄作と捉えがちですがそれは間違いです。転送前のダグの「2度目」という台詞を見落としてます。この映画は「1度目(とは限らないけど)のタイムトリップが失敗に終わった所から始まってる」というのが真相です。冒頭の遺体袋から携帯の呼び出し音が鳴るシーンもこの事実を暗示してます。つまり、前回のクレア救出・ダグ治療後の流れはこんな感じと推測。

9:45 クレアを自宅に残してダグ出発
    二人の無事に気付いた犯人がクレアを拉致
    クレアの指切って焼き殺し川に流す
10:42 クレアの遺体が発見される
    ダグ、フェリーに乗り込む
    犯人、ダグの裏をかいて襲撃、ダグを昏倒させ出航前に立ち去る
10:50 ダグを載せたままフェリー爆破
    ダグ、遺体袋の中の人に。

 移動を考えると犯人は超忙しいですがギリギリ成立しそう。ちょっと苦しいのは映画で示された2度目では出航直前まで犯人が二人に気付いてない事。この場合、仮にクレアを家に残していっても犯人に殺す暇がないです。スケジュール的にはクレアの家に移動する車を犯人が目撃して尾行されるぐらいじゃないとおかしいのですよ。という事は、ダグが流れを途中で変えたんじゃなくて2度目は最初から別の流れだったのかも。SF的に破綻するわけじゃない瑣末な事ですが。

・デジャヴの正体
 この映画におけるデジャヴは、要するに上書き前の未来の記憶の断片ですね。最後に出てくる次のダグにも記憶は薄っすら引き継がれてますから。2度目のダグがクレアに惹かれたのも、白雪姫システムにもさして驚かないのも、レーザーポインタに気付いたのもこのデジャヴの影響と思われます。クレアが視線を感じたのもそうかも。

 とにかく、もうダグが白雪姫と関わる理由はないから歴史は確定。可哀想な相棒はワニの餌だけど仕方ないです。


 ・・・と、長くなったけどこんな解釈じゃないでしょうか。

デジャヴデジャヴ
(2007/08/03)
デンゼル・ワシントン. ポーラ・パットン. ヴァル・キルマー. ジム・カヴィーゼル. アダム・ゴールドバーグ

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