「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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松ヶ根乱射事件

 バイオレンス映画風のタイトルですが、中身はブラックなコメディです。寂れた田舎町の淡々と流れる日常の中に潜む、それぞれの秘密、それぞれの葛藤。揃いも揃って個性的なろくでなしでありながら、しかしどこにでも居そうな登場人物たちによる、だらしなく、みっともなく、情けなく、毒だらけのゆるーい狂騒劇。これをローテンションできっちりと滑稽に描き出した手腕が見事でした。

 マピールさんがATG映画の為に二番館通いしてた頃によく観た昭和のマイナーコメディを想起させる作品ですが、それでいて物凄く新しいセンスと完成度を感じさせる作品でもあります。何れにせよ万人にはお薦めできません。完全に特定の波長の人向けです。
 とにかく田舎の閉塞感と人間関係のぎごちなさがやたらリアルなのです。事故や女性問題といった平和な暮らしのちょっとした波紋から、救いようもないけど踏み止まらざるを得ない最悪の日々へ。薄っすらと笑ったあとでジワジワと苦い後味が積み重なって溜息に到る、そんな感じの妙な暗さのある映画です。この珍奇な人物達に自分を重ねず笑い飛ばせる人じゃないとダメージ大ですが、この映画を好んで観るような奇特な人は共感バッチリの駄目人間な気がします。

 主役の警官(新井浩文)とその双子の兄(山中崇)の狂気とか三浦友和のダメオヤジぶりとか特筆に価する演技は多々ありますが、それよりも元アイドル・川越美和。オウムの女性信者みたいな壊れたキャラが良かったです。雪原に倒れたまま男児に乳と股間を弄られ、折角披露した大胆ヌードは全く色気の無い脱ぎ損ともいえるシーンで、下着姿の濡れ場じゃ喘ぎ声で笑わせたりと、頑張りようが痛々しいです。その他、シモの話題が多目でタイトルの乱射もそっちの意味かと思わせた本作では男優・女優・幼女も含めて脱ぎまくり。殆んどエロくはないですが。

松ヶ根乱射事件松ヶ根乱射事件
(2007/08/22)
新井浩文、山中崇 他

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ダイ・ハード4.0

 『ダイ・ハード』の1作目は完全無欠のアクション映画であり、密室を舞台にした緊張感溢れる描写の数々、孤立無援の主人公の激しいアクションに魅力的な悪役、派手で大雑把な筋立てにみえてキレイに回収される複雑な伏線などが大きな特徴でした。しかし、『ダイ・ハード4.0』にこれらの要素は殆んど踏襲されてません。むしろ方向は真逆で、良くも悪くもハリウッド映画の王道をいく作品です。だけども面白かったです。
 最初から最後まで目が離せない痛快娯楽活劇で、かつ近年稀に見るバカ映画ぶりと、観客の期待を裏切りません。20世紀末アクション映画のセオリーをきちんと押さえた演出とたたみ掛けるようなハイテンポの展開、無駄に壮大なくせにわりと迂闊なテロ集団、シュワルツェネッガーばりに不死身の主人公。色々とやり過ぎな部分がかなり楽しめました。作を重ねるごとに急速に劣化していたシリーズの4作目にしては破格の出来です。過去の作品は観てなくても全く問題ありません。

 この映画の強みは、どんなにありえない描写でも興醒めにならないバランス感覚ですね。5分に一度はツッコミ入れてるような状態なのにそれを許容させちゃうパワーがあります。「ネット万能」と言う設定自体も大嘘ですが上手くリアリティを保ってます。
 過去シリーズの事はすっぱり忘れ、ヘリを車で撃墜し生身の女に容赦なく車でアタックするワイルドでスーパーな刑事による、無制限にインフレしていく戦闘を笑いながら観るのが正しいでしょう。家族のために頑張るというコンセプトこそ残ってますが、かつてのぼやきながら頭脳で敵に挑む姿は影を潜め、妙に積極的に事件に介入する成り行き任せの肉体派になっております。もう、「世界一運が悪い」とか「死にそうで死なない」とかいうレベルじゃないですよ。

ダイ・ハード4.0 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付き・2枚組)ダイ・ハード4.0 (特別編/初回生産分限定特典ディスク付き・2枚組)
(2007/11/07)
ブルース・ウィリス

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トランスフォーマー

 約二十年前にアメリカに輸出され大ブームを起こしたタカラの変形ロボット玩具シリーズが「トランスフォーマー」です。日米合作でアニメ化となり日本にも逆輸入されましたが、世代が違うので乗り物に変形できて喋れるロボット達のバタ臭いキッズ・アニメ程度の認識しかありません。ロボも「コンボイ」しか知りません。ただ、アメリカでは今でもヒップホップ系のティーンを中心に超人気ってことは知ってます。
 日本では「直撃世代の30代とその子供向け」あるいは「スピルバーグの一般向けSFロボット大作」と誤解した大多数が阿鼻叫喚のようですが、実際のターゲットは幼児向け玩具をクールと崇めるアメリカのボンクラな若きギーク達なのです。ストーリーが幼稚だのギャグがつまらないだのと言った所で奴らはこういうのが大好きなんだから虚しいだけです。だからアメリカナイズされた世界観の元でいい大人たちがありえないスケールで作り上げた映像だけを存分に楽しむ割りきりが大事です。当然、メカ好き馬鹿男子の魂を持たない人には用無しの作品。
 大画面・大音響でないと魅力が半減するタイプの映画なんですが、「実写版ゲッターは任せろ!」と言わんばかりの物理的に無茶な変形はコマ送りで確認したくなるほど高速でしたし、“空間を撮れない男”マイケル・ベイ監督の真骨頂で何が起こっているのかわからなかったアクションシーンのチェックも必要って事でDVDで再観賞。今回は吹替で観てみましたが、字幕が邪魔にならないしジョークも多少はましになりコッチのが正解のようです。

 車を格好良く撮る事では並ぶ者のないマイケル・ベイですが、寄り過ぎでクラクラのカメラワークは巨大ロボの格闘には全く向いてませんね。どうしていつもいつも距離感がメチャメチャなんでしょう。ここだけでもスピルバーグにやって欲しかったってのが本音。そうするとロボットよりも大破壊に巻き込まれた人々の惨殺映像満載になっちゃいそうですが。
 一方、お得意のカーチェイスと爆発は冴えに冴え、必然性は無いが無駄にカッコイイ画が満載。米軍全面協力の最新兵器達も大活躍です。商品展開前提の日本ではありえないギミックだらけでCG化されたロボをかぶりつきで堪能できました。これならどんなロボット・アニメでも実写化できると確信。惜しむらくは、ロボ形態の見た目が似通ってて敵味方の判別すら殆んど付かない事。そもそも2時間半も尺があるのにロボ達のキャラ立てが全く出来てないってのはどーなのか。

 ストーリーが本当にしょーもないので脚本至上主義者としては許し難い筈なんですが、そんな事どーでも良くなる力技に感服です。やりたい盛りで軟弱なハイティーンのベタなサクセス・ストーリーとロボ&米軍の勧善懲悪大戦争とを無理矢理融合した底なしに頭の悪いプロット、ハッカーやら秘密機関やら広がりすぎて畳めなくなる大風呂敷、全登場人物が行き当たりばったりなのもいつも通り。バカバカしいオモチャ映画なのにマイケル・ベイの作風のおかげで別角度から凄く楽しめました。細かい映画ネタもグッド。

トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディショントランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション
(2007/12/19)
シャイア・ラブーフ、タイリース・ギブソン 他

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善き人のためのソナタ

 最初から最後まで抑えた調子で語られるヒューマン・ドラマ。生粋の主義者が人間性に目覚めて云々のよくある話なんですが、社会主義国の冷徹で息詰まるような空気が見事に表現されており、それでいて結構クスクスと笑える描写が多いので程好く緊張感がほぐれるのがありがたかったです。終わり方もキレイで所謂映画通の人たちに異様なほど好評なのも納得です。

 舞台は東西冷戦末期、まだベルリンの壁が健在な1984年の東ドイツ。コカ・コーラとカール・ルイスの商業五輪の年です。アメリカ以上のメダル大国だった東独のボイコットを残念がりながら、超大国ソ連のパートナーとして知られ相応の発展を遂げていると信じていたあの頃。壁越えの話とかで殺伐としたイメージはあったものの、ゲルマン魂と律儀で勤勉な国民性の賜物で「社会主義の優等生」という枕詞で語られてた東ドイツ。ところが、その実態は諜報機関・秘密警察である国家保安省の作り上げた非人道的な相互監視国家だったのです。
 主人公は、この国家保安省の凄腕のプロフェッショナルである「大尉」。彼は下衆な大臣の命令で反体制的な劇作家のアパートを盗聴する無感情な介入者なのですが、やがて善意の介入者に変貌を遂げ劇作家の知らないところでこっそりと彼を守り続けることになります。この国家の機械から静かな支援者への変貌をわずかな人間臭さの増減で巧みに表現したウルリッヒ・ミューエの演技が凄かったです。ミューエ自身も監視下に置かれていた経験があるというから説得力も抜群。
 残念ながらウルリッヒ・ミューエは昨年7月に胃癌で急逝してしまいました。享年54歳。哀愁漂うこの人の姿をもっと観たかったです。

 完成度の高い作品ですが、主人公の変心のきっかけを捉えにくいのがちょっとだけ不満。ここをセリフでくどくど説明しちゃ台無しなのは解りますが、早い段階でスピーディーにシフトするので一時的に大尉の立ち位置を見失ってしまいました。
 それと、舞台女優の悲劇やサスペンス要素をもう少し煮詰めてくれたらという思いはあります。特にドイツ統一後の機密文書開示で国民の10人に1人以上が密告者と判った経緯を考えると、もっとドロドロした要素があっても良かったのでは。あのキレイすぎる結末には居心地の悪さと物足りなさを感じるのです。

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション善き人のためのソナタ スタンダード・エディション
(2007/08/03)
ウルリッヒ・ミューエ、セバスチャン・コッホ 他

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