「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ハッピーフィート

 かわいいペンギンがダンスするアメリカ製キッズ・アニメ・・・に見せかけた別の何か。タップ・ダンスは得意だけど音痴だから求愛できないというはみ出しコウテイペンギンを主人公にしたハートフルな物語かと思ったらところがぎっちょん。主人公の両親のモデルがプレスリーとマリリン・モンロー、使用楽曲は80'sって所からわかる様に真のターゲットは大人でして、テーマもデリケートかつディープなのでした。

 擬人化ペンギンのタップダンスというファンタジーでありながら、極寒の氷原で身を寄せ合い絶食状態で立ったまま抱卵するオス達や、ある程度育つと形成される雛たちの共同保育所などなど、ペンギンの生態を意外と真面目に再現していて感心したのも束の間、この「意外と真面目」という製作姿勢が曲者でして、やがて予期せぬ方向へと踏み込んでいくのでありました。

 前半はありきたりな展開ながら、ノリノリのダンスをこれでもかと披露してくれるのが嬉しいです。歌い出す瞬間の高揚感も丁寧に表現されてます。曲の使い方も巧いです。ただ、タップの足捌きと足音がきちんとシンクロして無いのが残念。あと、最初からペンギンたちが歌って踊ってしている為、主人公だけダメ出しされる理由がわかりにくいです。更に中盤ではレクチャー無しに他のペンギンもかなり踊れちゃう事が判明。こうなると主人公のアピール・ポイント自体が大きく揺らぐわけで・・・。
 しかし問題なのは後半で、家族愛とか求愛とかを放り投げてアドベンチャー・モードに突入するシリアスな展開。面白いアプローチなんですが前半の流れが殆んど無意味なのはどうかと。でも、いったいどうなるのかと引きつけておいて豪腕にもほどがある超展開で閉める厚顔に天晴れ。たぶん、SFファン以外置いてきぼりです。まさかのスピルバーグ・リスペクトに拍手喝采なのでした。ただ、色々な問題提起の意義は認めますが、メッセージはもう少しオブラートに包んで伝えるスマートさが欲しいところで、ちょっと生真面目過ぎるように思いました。

 最近のアメリカのCG技術は本当に質感が凄く、映像は良い意味でも悪い意味でも鳥肌ものでした。ラブリーな雛時代はいいのですが、30分後にはリアルなペンギンに人間の目を入れた怪しい生き物に成長していてこれがキモイです。しかも換羽しない主人公は毛並みを追求した一段と微妙な造形。天敵アザラシに至っては凶悪にリアルな外観で子供が本気で泣きそうなのでした。5羽のアデリーペンギンの可愛さに助けられてますが、インド映画さながらに歌って踊る愉快な雰囲気とのギャップはなかなかシュールです。氷原を滑ったり泳ぎ回るシーンはダイナミックで背景のリアルな南極とマッチしてるし、ロングショットの群舞にはさほど違和感が無いのだから中途半端にデフォルメしないでも成り立った筈なのに。

ハッピー フィートハッピー フィート
(2007/07/20)
イライジャ・ウッド、ロビン・ウィリアムズ 他

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ブラッド・ダイヤモンド

 内戦下の西アフリカで巨大ダイヤをめぐり見ず知らずの3人が同床異夢で結びつき、次々と襲い掛かる危機を切り抜けお宝に到達という定番のアドベンチャー映画であります。しかし、容易くハリウッドお得意の秘境探検ロマンスに突入できる所を敢えて踏み止まり、搾取と貧困と暴力の「This is アフリカ」を塗して娯楽性と社会派メッセージとのバランスを上手くとっっており啓蒙映画なのに説教臭くない点がグレート。アフリカに影を落とす諸問題が解り易く提示され勉強になります。

 舞台は首都攻防の大戦闘があった1999年のシエラレオネ。ドラマ部分はフィクションですが背景にある反政府軍(RUF)の悪行三昧は事実に基づくようです。ダイヤモンド鉱山占領・強制労働による採掘・支援国リベリアへの密輸・売却益による武器調達と負の連鎖を繰り返し、民間人への虐殺や手足切断の横行、子供を拉致し少年兵や性奴隷に仕立て、麻薬漬けに後先考えない破壊に大量難民とやってる事が出鱈目過ぎて俄には信じ難いですけど。また、政府軍側に南アの民間軍事会社が絡んでたのも事実で、報酬がこれまたダイヤモンドの採掘権だったり反政府側にも武器を流してた疑惑もあり。劇中でヒロインが追いかけてる非合法ダイヤの流通事情や欧米企業の思惑なんかも概ねその通りみたい。

 そんな訳でテーマは重く内戦描写はそれなりにハードで知的好奇心もくすぐられますが、メインのドラマ自体は前述の通りエンタメ色が強いバディムービー。ディカプリオ演じる主人公は元傭兵の屈折した密輸商人で、内戦の巻き添えで離散した家族を探す真面目な父親役のジャイモン・フンスーが相棒役、そしてキスシーンすら無いので出が薄いものの強気で正義なジャーナリストのヒロインがジェニファー・コネリー。キャスティングは文句無しです。特にアフリカに絶望していたディカプリオの最後の台詞にグッときました。

 ただ展開はかなりご都合主義で、ダイヤの隠し方や採掘場のセキュリティは単純すぎるし、少年兵のイベント処理は強引、最後の方は駆け足気味になり更に蛇足感も強いです。アフリカの抱える問題が多すぎる事もあり、いささか長すぎる物語でありながら掘り下げ不足の単発ネタが多いのも残念。それでも、戦後のシエラレオネの「平和になった」では済まされない惨状とか、RUFの戦犯が殆んど無罪放免になった事とか色々スルーして圧縮してるんですが。

 「ダイヤなんて欲しがるな」と言うのにはこの映画はとても便利なのですが、石油やレアメタルでも同じ事は起きてるしコーヒーやカカオだって血塗られてる可能性は高く、途上国の犠牲の上で潤う先進国の住人としてはげんなり。結局、資源オンリーの経済状況と近代化の遅れを解消するために資本を入れるという答えになるんですが、それを戦争に使っちゃう歴史が四半世紀以上続いてるわけだし。民度の低さもどげんかせんといかんでしょう。全く頭が痛いです。
 ところで、劇中で手足を切り落とす風習を生み出したのはベルギーとの指摘があるのですが、これはコンゴで天然ゴム採集ノルマ未達の作業者の手を切断した19世紀後半のエピソードです。シエラレオネはベルギーに植民された事は無く、イギリス統治下で黒人奴隷の輸出基地として長い間好き放題されたのでした。

ブラッド・ダイヤモンド (期間限定版)ブラッド・ダイヤモンド (期間限定版)
(2007/09/07)
レオナルド・ディカプリオ. ジャイモン・フンスー. ジェニファー・コネリー. カギソ・クイパーズ. アーノルド・ボスロー

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アポカリプト

 大航海時代の中米・ユカタン半島を舞台にマヤ文明末期の荒廃と未開人の受難を描いた歴史アクション・アドベンチャー(ただし、メル・ギブソン監督の脳内ファンタジー)。意図的に歴史的事実を無視してるのでそこは信じちゃ駄目です。冒頭から鮮血と内臓のヴァイオレンス描写連発なのでそっちも要注意。半端なく辛そうで痛そうな描写の数々です。でも、この無法映画を配給したのは子供達に夢を売る天下のディズニーなのでした。

 メル・ギブソンはじめ有名俳優は一切出ないしオール・マヤ語というのも興行戦略としてかなり勝負してるんですが、思想的にもかなりヤバイ映画です。もしも冒頭に「文明が征服される根本原因は内部からの崩壊である」という歴史学者ウィル・デュラントの言葉を引用して朝鮮併合前夜の大韓帝国の腐敗を日本人が映画化したら確実に国際問題レベルなわけですが、マヤ文明がスペイン人到達より500年も前に滅亡していて謎だらけなのをいい事にメル・ギブソン大暴走。時代設定とか神事の描写が殆んどアステカ文明なのをマヤ文明だと言い張って凶悪に描いてるんだから性質が悪いです。

 しかし、困った事に娯楽映画としてはかなり面白い。前半は人狩りに遭った部族が蹂躙される様を『世界残酷物語』ばりにいかがわしく嗜虐的に描き、後半は家族のために逃げて逃げて戦ってまた逃げる“走る男”ロナウジーニョ(仮名)と残忍な追撃部隊との壮絶なジャングルの死闘を描くノンストップ・アクション・スリラーとなっており、知力・体力・時の運のエキサイティングなチェイスに手に汗握らせられ長尺を全く意識させないまま最後まで突っ走ります。
 印象的だったのはご丁寧な説明書になってる壁画。捕虜となりピラミッドの都市に移送され何故だか青く塗られちゃった人たちが壁画で知る己が運命。役者は現地調達のメキシカンだそうですがこの時の絶望的な表情が最高でした。

 年齢を重ねるにつれ狂いっぷりに拍車がかかるメル・ギブソンには是非とも『バイオレンスジャック』とか『カラテ地獄変』とか実写で撮っていただきたいものです。

アポカリプトアポカリプト
(2007/11/21)
ルディ・ヤングブラッド

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キサラギ

 ネットを中心に一般客層に高く支持されブルーリボン賞作品賞も獲ってる作品なんですが、個人的には微妙。元ネタが一幕物舞台劇でジャンルが論理ミステリー・コメディというのは大好物なのですが、だからこそ気になる箇所が多すぎて自然と評価は辛めに。
 「掲示板で知り合った5人のアイドルヲタのそれぞれの情報からD級アイドルの死の真相に迫る」というプロットは悪くないんですが、『12人の優しい日本人』の縮小再生産という謗りは免れない出来。後出しの証言一発で状況が一変する辺りは生ぬるい『逆転裁判』です。
 ストーリーラインがしっかりしてるので一見良く練られた脚本に見えますが、伏線の使い方や話の膨らまし方に工夫が足りず肝心要の構成に緻密さを欠く造りになっています。何も考えずにボヤッと観てる分にはショートコント的な笑いと小気味良い会話劇で面白いんですが、ロジックものでそういう観方がお薦めってどーなのか。

 一番の問題は緩すぎるテンポ。ある程度の先読みをわざと促しておいてミスディレクションを誘う狙いにしては捻りが甘く、だらだらとコントを挟み観客に考えるゆとりを与え、かつ、あからさまな伏線を律儀に拾ってくれるので先の展開から5人目の処理までかなり早い段階で全て解けてしまいます。そして、劇中の人物達がそこに辿り着くまでのタイムラグにイラつくのです。安直な謎を勿体つけてもKOパンチに成り得ないんだから連打で一気に畳み掛けるべきだったと思います。
 そして折角の密室劇を壊すだけの無意味な冒頭シーン、強引に綺麗事へ誘導する星空の感傷シーン、エンディングのがっかりな二段オチなど、演劇を映画にするために足したと思われる辺りが全部余計なのも痛いです。下手な歌声の披露にとどめ5人のヲタ芸でさらりと終わっていればもっと好印象だったのに。

 全体に型に嵌り過ぎたオーバーアクションが気になるものの、キャラクターが立ってるためキャストに不満はありません。圧巻はなんといっても見事な怪演で魅せる香川照之。他のキャストが幅の無い演技で一杯一杯の中、独りメリハリをつけて単調にならないように盛り立てます。言い換えると香川さんが絡まないシーンはかなりグダグダって事なんですけどね。まあ、前半は便利に笑いに使われるだけの塚地武雅も後半はかなりの演技を見せてくれてます。小栗旬はイケメンでも強度のヲタはキモイ事を証明。でも狂言回し役は似合ってました。演出的にちょっとウザ過ぎる小出恵介にはもうちょっと見せ場が欲しく、ユースケ・サンタマリアは起用自体が殆んど出オチ扱いなのが・・・。

 結局のところ、セットやカメラワークも劇場中継レベルのアイデアしか無いし、演技派の役者を揃えて舞台で演じた方が完成度が高いんじゃないかという疑念が拭えないのでした。映画ならではの醍醐味の不足がとても残念。

キサラギ スタンダード・エディションキサラギ スタンダード・エディション
(2008/01/09)
香川照之、ユースケ・サンタマリア 他

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