「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ラストキング・オブ・スコットランド

 1970年代のアフリカ、ウガンダ共和国の大統領だったイディ・アミン・ダダを題材に、交流のあった数人の白人をモデルに作られたスコットランド人の青年医師の視点から独裁者であり虐殺者でもあるアミンの人物像を描いたフィクション。
 マピールさん的にはモンド映画『食人大統領アミン』をたぶん観てる筈だけど全く思い出せず、アントニオ猪木との異種格闘技戦をする予定だった人物として記憶に留めるのみであります。
 んで結論から言うと、ある程度の知識を仕入れてから観た方がいい映画でした。国民的人気の理由、彼の思想・信条の変化や政策・外交関係の推移、行ったとされる粛清・拷問の内容、といった興味を覚える事柄がかなりぼやけてるのでフラストレーションが溜まりまくりなのでした。率直な感想はフォレスト・ウィテカーの演技がいいだけの映画。

 脚本的には平板で虐殺などのショッキング映像や本気かジョークわからないアミンの過激な言動などが思ったより少ないせいもあるのですが、アミンより語り手の若造の軽はずみな行動を映すのに主眼を置かれているのが一番のイライラ原因です。只の人妻キラーでしかないモラトリアム小僧がここまで重用されるのは不可解きわまりなく、激情型の大統領と何年も上手くやれる程に世渡りが上手いとも思えない行動の数々はリアリティに欠け、偽善的白人を強調する狙いがあるとはいえ感情移入できない人物像では終盤のサスペンス展開も盛り上がりません。ジェームズ・マカヴォイが熱演すればするほどに、このボンクラしか友達がいないアミンが不憫に思えてしまうのでした。
 ただ、ウィテカーの迫力は最後まで飽きさせず、気さくで魅惑的なカリスマ大統領の脂ぎった笑顔に潜む狂気と疑心暗鬼を見事に表現しております。根拠の無い自信と思い込みの激しさで突っ走る極めてユニークでヴァイタリティに溢れる人物で、それだけに被害妄想から恐怖に怯えはじめると手の付けられない残忍さを発揮するというチャーミングなパラノイアなのです。

 実際に史実を調べてみると、アミンは農業改革や憲法改正を実施し学校や病院をたくさん建設するなど近代化に熱心で、理想に燃えた為政者だったのは間違いありません。植民地軍炊事係から二人しかいないアフリカ人士官まで登りつめ独立後は参謀総長までスピード出世してますから軍人としてはかなり優秀だった模様。またボクシングのヘビー級ウガンダ・チャンピオンの経歴があり人気も納得なのでした。人懐っこく頭も悪くは無いようです。ただ、尊敬する人がアドルフ・ヒトラーで、小心者ゆえに自分に取って代わり得る有能な人物は全て排除、癇癪を起こして浅慮な政策を頻発するなど政治家としてはろくでもなく、挙句に反対派30万人以上の虐殺なのでした。
 特筆に価するのが物凄い外交下手。71年のクーデター時のアミンの後ろ盾は反アラブ姿勢に好意的だったイスラエルとウガンダの左派政権を嫌った英国だったのですが、過大な援助要請を断られてイスラエルと断交、植民地だった関係で当地に留まり商工業の中心を為していた英国籍インド人を追い出し英国の援助も停止、ミュンヘン五輪のパレスチナ・ゲリラを讃えて西側諸国を全て敵にまわしリビアとサウジの支援を受けるようになるのが全部72年の出来事です。ウガンダ軍がイスラエル特殊部隊に屠られる事になる劇中のハイジャック事件が76年で、78年には隣国タンザニアへ侵攻するも逆に反撃され翌年サウジに亡命する破目になっています。03年80歳で没。
 表題になってる「スコットランドの最後の王だ!」という発言は実話で、縁も所縁も無いのに共感だけでスコットランド独立運動を支援してたようです。「人間の肉は何度か食った」と発言したとも伝えられるんですが、木村太郎のインタビューではこれを否定。まあ、北朝鮮やオウムの事例ではジャーナリストも騙されてたんで真相は藪の中なんですが。とにかく、映画で描かれなかった部分に面白いエピソードが多いわけでして・・・。

ラストキング・オブ・スコットランドラストキング・オブ・スコットランド
(2007/10/05)
フォレスト・ウィテカー

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パンズ・ラビリンス

 妖精に導かれた少女が迷宮で試練に立ち向かうファンタジーみたいに編集された予告編に騙されて観ると、『となりのトトロ』でハッピーなつもりが同時上映の『火垂るの墓』で茫然自失という体験を再現できる衝撃の問題作。レイティングはPG-12、半分は暗黒な『千と千尋の神隠し』みたいな話で、半分はファシズムに支配されたスペインの暴力と恐怖の時代を切り取った悲劇のリアリズムであります。幻想の国もダークだけどそれ以上にヘヴィな現実世界が描かれグロテスクでショッキングな演出が一杯。救いようもなく死屍累々だけどラストは切なく、単純なストーリーのようで深読みの余地が満載というマピールさんモロ好みの作品です。

 時は1944年、フランコ独裁政権下のスペイン。臨月を迎えた母に連れられたヒロインは再婚相手の大尉さんがゲリラ掃討作戦に勤しむ山岳駐屯地に赴くわけですが、怪しげな試練を課す牧神パンの暗躍と行くところ残虐シーンがついて回る冷酷無比な大尉さんの活躍で絶望の淵へと着実に追い込まれて行きます。このシュールなメルヘン世界と過酷な現実世界とのはっきりとは語られない因果関係が面白く物凄い緊張感が心地よいです。
 3つの試練は母と赤子の運命に被さる様でいてレジスタンス一味の家政婦にリンクしている様でもあり、それぞれのミッションの成否と現実世界で起るリアクションをシミュレートしてみたり妄想が尽きません。蛙や怪物、鍵や短剣の象徴するものにも考察が必要だし、妖精が示した鍵穴が間違ってた事、「2滴」で繋がるアイテム達などにも頭を捻らされます。
 地上に取り残された地下世界のプリンセスの帰還というファンタジー設定や子宮や血を匂わし期限が満月ってことなどから察するにミッションの目的は初潮の前に母体回帰って事のようですが、一方でご母堂の「世の中は残酷、人生はお伽噺じゃない」という台詞にしろ恐怖や欲望との対峙を要求する牧羊神にしろ大人になる事を促しているようでもあります。他にも魔法のチョークと監禁部屋からの脱出の幻想と現実の兼ね合いとか、一事が万事、一人一人が違った解釈を楽しめるようにわざと作られてるのが粋なのです。最後も救いが無いような有るような・・・。

 脚本良しキャラ良し映像良しで極めて完成度の高い作品なんですが、スペイン少女は葡萄には抗えないかのような演出は疑問。食事抜きという伏線があったにしても、時間制限ありで怪物を目の前にしながら誘惑されてしまうほどの説得力は見出せませんでした。あと、美術のレベルが異様に高いわりに山奥の爆発などの合成映像が見事な違和感で苦笑。素敵デザインのクリーチャーたちに活躍場面が少ないのも残念。どれも瑣末な事ですが。

 さて特に知らなくても観賞に支障は無いけど最後に歴史のお話。ピカソの『ゲルニカ』やヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の題材として有名なスペイン内戦ですが、社会主義勢力のスペイン人民戦線と右翼のフランコ将軍率いる反乱軍の戦いは1939年にフランコの勝利宣言で一応は幕を閉じております。だから、本作はその残党とバスク、カタルーニャ地方に大弾圧が加えられてる時期ですね。劇中でノルマンディー上陸作戦のニュースをレジスタンスが喜んでるシーンがあって誤解し易いんですが、スペインは第二次世界大戦では中立を維持し戦禍を免れており革命闘士に春は来ません。60年代以降は多少の緩和政策が実施されたようですが、フランコの独裁は75年にその生涯を終えるまで続いたのでした。

パンズ・ラビリンス 通常版パンズ・ラビリンス 通常版
(2008/03/26)
イバナ・バケロ セルジ・ロペス マリベル・ベルドゥ ダグ・ジョーンズ

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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

 フロンティアの時代が終焉を迎えアメリカン・ドリームの手段がゴールドからオイルにシフトする事になる20世紀初頭のカリフォルニアを舞台に、流れ者の穴掘り鉱夫から石油採掘の山師を経て石油王に成り上る孤高の男の一代記。欲望のおもむくままに突き進む異常なバイタリティの偏屈親爺キャラ萌え映画です。健全な米国社会の根幹を為す筈の家族愛・資本主義・宗教を容赦なくぶった斬る風刺に富んだ悲喜劇であり、石油開拓の歴史大河としても知的好奇心をくすぐられる美味しい作品です。感涙やロマンスの要素は全く無く、意味を理解できず戸惑ったり、辛辣過ぎて笑うどころかげんなりって可能性もある、毒含みで余韻がしっかり残るタイプの力作。

 オスカーの主演男優賞は時々変な選考があるんですが、今回のダニエル・デイ=ルイスの演技は完璧で極めて真っ当な受賞だと確信しました。胡散臭く仰々しい話術、味方でなければ敵認定の激烈な性格、自分以外は信じない愛とは無縁の人生観、ダイナミックで勤勉で一切揺るがない武骨な男。この魅力的な現実主義者を単なる守銭奴に貶めない説得力ある演技に最初から最後まで惹き込まれっぱなしでした。2時間半を超える長さがあっという間で正直もっと長くても構わないです。劇中で語られない彼の青年時代(特に女っ気の無い人生の原因)とかも描いて欲しかったぐらい。

 そんな仕事でも家庭でも対等のパートナーの存在を認めないエゴの塊である主人公ですが、血の繋がらない幼い息子の面倒は意外にきちんと看てて、更に途中で息子は障害まで負うわけで普通なら愛と感動の物語に転ぶところなんですが、ここから徹底的にシニカルなドラマを展開するのが面白いです。
 土地の買占め・油井掘りなどの開発過程で起るトラブルや金目当てで群がってくる者たちとの対決も見所。自ら陣頭指揮に立ち身を粉にして採掘を行う主人公は、金で買い漁るだけの石油メジャーを理不尽なまでに罵倒します。確かに同業者はライバルなんですが、この男の頭には提携とか合併とか共存共栄とか全く無く頂点に君臨するのみ。アメリカの中東政策に被せると同時に投機に踊り虚業蔓延る現代社会への批判も匂わせてる気がしました。

 そして、ある意味アメリカで最も強い力を持つ宗教にもひたすらにネガティブなのがこの映画のもの凄いところ。日本人には理解しにくいんですが、彼の国の田舎には未だに進化論を教えたくない輩がゴロゴロいたりするし、劇中のショーのような説教や過激な洗礼も誇張ではなく普通にそういう集会が行われてます。まして昔の田舎ですから今以上に保守的な住民の巣窟でそれを束ねてる教会も先鋭的。それは宗教のような非論理的な概念を理解できない主人公とは相容れず対立というかマウントポジションからほぼ一方的にボコボコにされるわけで・・・。
 しかも「第三の啓示」教会ってどうやら「イエスの再臨」の事らしいので、モデルはブッシュの支持基盤の超巨大勢力「キリスト教福音派」っぽいです。それをあそこまでコケにしてるんだから吃驚仰天です。同情に値する程のタイミングの悪さと空気の読めなさで、搾取された側でもありながら、それでも虐められるたびに「ざまあみろ!」と思わせる若き大衆伝道者を演じたポール・ダノの嵌り振りが見事。特に「I DRINK YOUR MILKSHAKE!!」のクライマックスが最高です。しかし宗教に疎い我々には実に痛快ですが当事者的にはどうなんでしょうね、コレ?

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドゼア・ウィル・ビー・ブラッド
(2008/08/20)
ダニエル・デイ=ルイスポール・ダノ

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仮面ライダー THE NEXT

 石ノ森章太郎の原作漫画をベースに大人向け恋愛アクションとして2005年に公開された『仮面ライダー THE FIRST』の続編。目玉はダブルライダーに立ちはだかる改造人間ホッパーVersion 3ことV3の登場です。前作は漫画版のエピソードをアレンジした部分も多々ありましたが、今回は世界観だけ受け継いでオリジナルの色彩濃いJホラー・バイオレンス映画となっており、ハナっから子供を相手にしないPG-12指定で首チョンパありオッパイもありで御座います。でも昨今流行りのアメコミ・ヒーローもののように大人の観賞に耐え得る作品かと言うとこれが結構幼稚だったり。
 観賞にあたり見逃していた前作もチェックしたのですが、続編である意味が見出せないほどに繋がりが無いので観てなくても全く問題なし。ライダー二人が痴話喧嘩を繰り広げ取り合ったヒロインの消息は一切触れられず、立花のおやっさんすら出てきません。知っておくべきなのは一文字隼人が死にかけてるのは改造の拒否反応って事ぐらい。まあ、本郷猛が石ノ森漫画の主人公らしいナイーブな性格だったり一文字がインチキホストみたいだったり、仮面は顔を隠すために着けてるだけとか、一文字は本郷を襲う刺客出身とかTVシリーズと違う設定は色々ありますがね。

 アクション・シーンは目茶目茶熱く、出渕裕のリファインデザインも超カッコよく、イケメン俳優たちのキャラ造りもイロモノで面白いのですが、脚本が驚くほどお粗末で中途半端。ライダー初期の怪奇アクション路線ともベクトルが違いがっかりです。ホラーの合間に挿入されるライダーアクションが完全に浮く有様でライダーと無関係な話に時間割き過ぎです。テンポもグシャグシャ。それに二つの話は仮面ライダーの一貫したテーマである「人で無くなってしまった者の悲哀」に収束すべきなのに、ショッカーに翻弄された兄と妹の悲劇も余命僅かの改造人間の生き様も描写が薄く話が盛り上がりません。
 メインとなるのは風見志郎の妹であるアイドルに絡んだ怪死事件なんですが、既に「改造人間で世界征服を狙う組織」という大嘘があるのに「包帯姿のエヴァ初号機女」やら「ショッカーと無関係のスーパードクター」やらフィクション要素が並びまくりで興醒め。そもそも怪奇の事件はシグマの仕業・・・じゃなくてショッカーの仕業という先入観がある中で呪いだとか超常現象だとかやられてもちっとも怖く無いわけで工夫が足りません。“貞子”まんまのホラー演出も古臭いですし。風見が登場した辺りから主役の本郷が本筋から外れていき、実質的にライダーが誰一人介入しないまま惨劇が進行し勝手に決着してしまうのも大胆すぎます。
 そして、何故かサブに追いやられてるショッカーとの死闘は、降りかかる火の粉を払ってるだけの本郷、ピンチに馳せ参じるだけの一文字と、基本的に自衛隊活動なのがボトルネックです。二人が命懸けでショッカー殲滅を目論む戦士として描かれ無いので、ショッカーに心酔していた風見の造反にまるで説得力がありません。なし崩し的に戦ってる奴ばっかり。基本的にキャラ燃え映画なんだから男の友情で暑苦しく突き抜けて欲しかったです。
 かくして関係ないにも程がある二つの物語は当然融合せず、監督が何をしたかったのかサッパリ理解出来ません。しかもエンド・ロール終了までおとなしく座ってた観客の心を踏みにじる最低なセンスのパチンコのCM付き。脱力感倍増です。

 しかし、どんなに話がつまらなくてもライダーと怪人のバトルは文句無しでして、東映特撮陣のノウハウとアクション監督の偉大さを思い知らされます。V3反転キックとか、一文字横っ飛びバイクアクションとか、本郷顔出しライダーキックとか見所だらけ。ハサミジャガーもノコギリトカゲの女もエキセントリックで痺れるキレの良さを発揮してます。唯一、残念なのは6人のショッカーライダーで、ドラマでは殆んど戦闘員扱いなのが哀れです。でも、サイクロン号は2台とも1000ccオーバーの大型ロードレーサーなので「殴る!蹴る!跳ねる!」のハードなアクションは軽量なXR系エンデューロレーサーを駆るショッカー勢(含、V3)の独壇場でありバイク・スタントでは見せ場が多いのでした。
 3人のライダーのキャラクターも魅惑的。高校教師に転職した本郷は生徒に童貞呼ばわりのダメっぷり優男で見事に学級崩壊。根拠も無くヒロインの女生徒をつけまわしたり従来のヒーロー像とはかけ離れてます。そして、美味しい役どころ担当の一文字はツンデレ化。率先して救出に駆けつけておきながら馴れ合いを嫌い、死にそうなのか不死身なのかよくわからないけど無闇に色気を振りまきます。あの派手なスーツと柄シャツが似合うってだけで得がたい人材です。ここに加わる風見がこれまた強烈で、若きIT企業の社長で自己中で自意識過剰でバトルよりワインの香りを開く事を優先する男。元秘書に必殺キックを見舞い女の顔にグーパンチを叩き込む容赦の無さも素敵です。それに比べるとヒロインの女の子達のインパクトは弱すぎましたね。キュートに撮る努力も感じられませんし。
 ショッカーの怪人も首領の命令は仮面を手に全裸で受けるとか意味不明で愉快でした。洗脳技術が低いくせに無差別改造を試みてまた裏切り者を増やすし、レストランのど真ん中に秘密基地の入口作って客の前で堂々と出入りとか、眼鏡したままマスク装着とか、味方の足にチェーンソー誤爆とか、やたらとお茶目な奴らです。ストーリーが破綻してても娯楽アクションとして楽しめるのは個性的なショッカーの皆さんのおかげなのでした。感謝、感謝。

 ちなみに前作も二つのストーリー・ラインが上手く絡まずにアクションだけが突出して出来が良い点は同じです。原作漫画に思い入れがあるかどうかで大きく評価が別れる点が違いますが。

仮面ライダー THE NEXT仮面ライダー THE NEXT
(2008/04/21)
高野八誠益子梨恵

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