「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ナショナル・トレジャー2/リンカーン暗殺者の日記

 ベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』にインスパイアされ歴史の浅い米国を舞台に無理矢理贈る歴史アドベンチャーの第2弾。行き当たりばったりでさくさく謎が解けていく前作の流れをそのままに、あれよあれよとロンドン・パリからホワイトハウスに『ディープ・パープル・イン・ロック』『北北西に進路を取れ』でお馴染みラシュモア山まで、主としてアメリカの観光地を駆け巡る現代のトレジャー・ハンターの大活劇であります。
 薄っぺらな人間関係は即座に理解でき単独鑑賞に支障ないこと請け合い。続編ものRPGのレベルダウン理由みたいに、前回得た女も富も名声も全部取り上げてのリスタートとなってるのが微笑ましいです。ただし今回も謎解きやトリックを期待してはいけません。

 主人公の瞬速謎解きと即断即決の行動力を個性と割り切りヒロインとの破局原因にまでしてしまったのは笑えますが、それじゃ前作の最大の問題点である観客置いてけぼりが全く解消されないのも当然のこと。しかも、今回は“謎だった事がむしろ謎”レベルの暗号のため全然『ダ・ヴィンチ・コード』に似ておらず単なる劣化『インディ・ジョーンズ』に成り果てる本末転倒ぶりです。
 こうなると基本的に頭脳労働者で戦闘力や人間的魅力に欠ける主人公ではいかにも厳しいです。冒険の目的が「祖先の名誉回復」というのもロマンがないし、そもそも伝説の「シボラの黄金都市」の発見で本当に暗殺首謀者の汚名を注げるのかも疑問ですし。こんな設定でエド・ハリス、ジョン・ボイト、ヘレン・ミレンと並ぶ無駄に豪華すぎるベテラン達に対抗させられるニコラス・ケイジは災難ですな。
 それに前回は足手まとい役だった相棒がスーパーハッカーとして無難に活躍するため、どこでも潜入・脱出が自由自在となり冒険映画なのに全く冒険になりません。悪党側も端から主人公に便乗作戦というスキルの低さを見せ、だけど妨害工作はしっかり行うという支離滅裂な展開。この何も考えてない悪役像が最後まで足を引っ張り続ける事になります。

 でも、勢いだけで突き進むスタイルはアトラクション・ムービーとしてはそれなり良くできており、ハラハラはしないけどツッコミ入れながら退屈せずに鑑賞できます。コメディもベタで楽しいです。歴史の小ネタが散らされてる辺りもグッドで、あんまり物語には絡んでこなかった「リンカーン暗殺者の日記」が一部破かれていたのも事実のようです。アメリカン・キッズ向けB級宝探し映画としては実に正しい造りの作品だと言えましょう。「47ページ」を強調しまくって何も無しなのと、悪意にすら思える英国王室の描写を除けば及第点。主人公の秒速解読術が母親譲りというどうでもいい事実も明らかになり満足です。

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ザ・マジックアワー

 三谷幸喜監督・脚本によるオリジナル・コメディ。監督が得意とするバック・ステージ物であり、これまたお得意の「偽者が本物以上に活躍する話」でもあります。今回スポットを浴びるのは映画の裏方さんなのですが、それを単なる撮影現場の騒動ではなく「偽の殺し屋にされた役者と本物のギャングのドタバタ」という変化球で拵えるセンスが見事でした。豪華キャストが要所で軽妙な演技を見せ、映画セットのような佇まいの港町は素敵で、巧みに計算され老若男女問わず笑えて和めるストーリー。製作のフジテレビ以外でも構わず出演した三谷幸喜と佐藤浩市の“ダブルコーチャン”の宣伝が強力だったことを差し引いても大ヒットが肯ける娯楽作です。安直なTVドラマのスピンオフばかりが持て囃される昨今、独自色の強い作品が成功するのは貴重であり喜ばしい。でも映画ファンとして敢えて言いましょう。「監督、これもしかして映画じゃねぇな。」と。

 色々とバランスが悪く映画としての完成度は危ういのです。ご自慢の大掛かりな街のセットは画が狭苦しくなりロケとマッチしない弊害を発生。現代の首都圏とギャングが牛耳る架空の街とを並存させる世界観も構築しきれておらず、主人公に映画の撮影と思い込ませるには設定に無理がありまくりで、古き良き映画への愛情が露骨過ぎるし詰めこみ過ぎ。この嘘八百にしか見えない演出をやめて1時間半程に収めてくれれば名作に成り得たと思うのですが・・・。前作『THE 有頂天ホテル』は「舞台では不可能な舞台劇」という存在意義があったのですが、今回はもっと空間を制限した舞台劇に仕立て上げた方が良くなりそうな話なのです。
 また、「人生のマジックアワー」というテーマに繋がる主人公の物話は文句無しなのですが、その話は老俳優との邂逅で実質的に完結しており、後に来るギャングとのクライマックスでの主人公の立ち位置が妙になってるのが惜しかったです。それにオチが弱い。最後の最後で「実は観客も騙されていた」という展開が欲しかったところ。

 けど、目茶目茶な設定を強引に纏めちゃう力量があるのが困ったところで、「三谷幸喜の最高傑作」の謳い文句には同意しないにしても出来の良いコメディなのは間違いなく、素直に観ればすれ違い・勘違いを多用した巧みな笑いに唸らされます。本作が代表作となるであろう佐藤浩市は大熱演でおいしい場面を次々とかっさらっていき、そこに絡む西田敏行と寺島進の存在感も格別。損な役回りながら妻夫木聡も細かいリアクションで好演してます。カメオ出演も含め男優陣は良い仕事が目立ちました。あて書きで的確にキャラを作る監督の真骨頂といえましょう。
 一方で女優陣は揃って騙される側じゃない事が災いしいまひとつ冴えず。深津絵里が「どうしようもないバカ女」にしか見えないのは監督の善男善女しか書けない弱点が出た感じ。性悪女の旨味が足りないので男たちの争奪戦に説得力が生まれません。戸田恵子は流石の安定感ですが本筋には無関係なポジションで見せ場は少なめ。そして、時折発動する三谷マジックによる新境地開拓を期待された綾瀬はるかも普通の演出でがっかりでした。佐藤浩市が笑わせるシーンに大概絡んでないのも女優陣の大きなハンデとなっており残念。

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俺たちフィギュアスケーター

 『俺たち・・・』シリーズの開祖、ウィル・フェレル主演のスポ根コメディ。フィギュアスケート・男子シングルスで金メダルを分け合いながら表彰式で大喧嘩して永久追放となった犬猿の仲の二人が、規約の不備をつきペア部門でカムバックし史上初の男子ペアで頂点を目指すという、ありがちなダメダメ・ヒーロー復活系話。「アメリカン・コメディは日本でウケない」という定説を覆し単館上映ながらロングランヒットとなった作品です。

 この映画が成功したのはベタなコントに徹してるからですね。英語と日本語のギャップで理解できないような言葉のギャグは少なく、見た目でわかるくだらない演技、徹底してダーティなライバル、確執・特訓・友情・窮地のド定番ストーリー、お下劣系やブラック要素もやり過ぎないレベルで止まっていて間口が広い。抱腹絶倒とはいかなくてもコンスタントにニヤニヤさせる力があります。最後が投げっぱなしなのがアレですが。

 知らなくてもそれなりに楽しめますが、近年のフィギュア界だけでなく華やかなりし旧ルール時代の知識があればモア・ベター。相方のジョン・ヘダー扮する王子様系スケーターは現役の“白鳥”ジョニー・ウィアーのパロディっぽいですし、テンガロンハット姿でセクシーな振り付けのウィル・フェレルはリレハンメル&ナガノ銅メダリストのフィリップ・キャンデロロを思わせます。
 本人役で出演してるスケート選手もたくさんいます。“イーグル”と“ヒラヒラタイツ”の第一人者ブライアン・ボイタノ(カルガリー金、世界王者2回)、“襲撃事件”のナンシー・ケリガン(リレハンメル銀・アルベールビル銅)、スコット・ハミルトン(サラエボ金、世界王者4回)やサーシャ・コーエン(トリノ銀)などなど王国アメリカのビッグ・ネームがずらり。果ては日本の佐藤有香(94世界女王)まで出てきます。
 それにしても名前しか登場しないミシェル・クワン(ナガノ銀、ソルトレイク銅、世界女王5回)、オクサナ・バイウル(リレハンメル金)などが平然と危険なギャグに使われてるのには驚きました。
 ただ、フィギュアに詳しいと「音楽に歌詞が入ってる」とか「帽子かぶってる」とか「足を持って振り回すのは反則」とか余計なことが気になってしまうのです。バカ映画だから気にしちゃ負けなんですけどね。

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クライマーズ・ハイ

 1985年の日航機123便墜落事故をモチーフにはしてますがあくまで事故は背景。「奇跡の生還者」「遺族の怒り・悲しみ」「事故原因の謎」などは原作段階から主題ではありません。本作は大事故報道に追われる地元新聞社の喧噪を興奮で恐怖心が麻痺する登山用語“クライマーズ・ハイ”に喩えた物語です。原作小説ではそれと並行して主人公の家庭・友人を絡めたドラマが描かれ、わき目も振らずにただひたすら登った後に我に返って気づく「人の絆」と「ジャーナリズムの使命」に収束していくのですが、本作はテーマ自体を変更し、組織の多様な人間たちのぶつかり合いに重点を置いたサラリーマン映画に仕上がっています。女子供置いてきぼりの男映画ですな。

 ワンマン社長と殺伐縦社会の幹部達、同僚相手ですら出し抜き・足の引っ張り合いが日常茶飯事の記者世界、派閥闘争に営業・販売部署との軋轢など、新聞社内の人間模様は原作の完成度を損なうことなく再現され、社員達が各々の仕事に取り組む様を同時多発的に捉えることに成功しています。全体に地味なキャストなんですが脇役の世間話まで凄く細かく設定され人間像が巧みに造形されてて驚きました。単純に再現したらごちゃごちゃするだけのオフィスの修羅場が、しっかりとした演出とスムーズな編集で映画の体を為しているのが凄いです。
 アプローチとして面白いのは日航全権デスクとなる主人公の性格が原作とかなり違うところ。原作は仕事でも家庭でも人間関係のトラブルを抱え望まざる全権に苦闘する繊細な男なのですが、堤真一が演じた男は当たり前のように全権をこなす強権タイプの熱血漢で人望も厚い。同じ状況設定、同じ台詞でも全然ニュアンスが違っているのです。

 このように背骨の部分は高水準です。だが、惜しむらくは散漫。新聞社内のドラマだけに絞り込めば良いものを原作の他の要素もかなり拾っった為に焦点がぼけぼけです。しかも、もう一つの軸である主人公個人の話が練れてない上に、無駄にアクが強いだけのセクハラ社長・流れを澱ませる記者の事故死と葬式・不必要に陰謀論が匂ってしまう最後のテロップなど改変箇所が尽く失敗という有様。特に、原作終盤の重要エピソードをカットしたため別のオチが必要なのですが、新たに用意されたラストの出来が悪く話の整合性に欠けて主人公の想いが曖昧になるのが致命的です。
 それと、冒頭の高嶋政宏が何を言ってるのか分からなくて早々に日本語字幕を呼び出しました。これは滑舌の問題じゃなくて音声がかなり酷いためです。また、「二社面」「降版」「大久保・連赤」など業界の専門用語が飛び交い台詞量が多目という点でも字幕鑑賞がお奨めです。

 余計な物が多くて傑作にはなり損ねたものの、良くも悪くもプロフェッショナルな男達の感情と行動を丹念に描いた点で見応えがありました。堺雅人の事故現場帰還時の表情とか堤真一のゴミ箱キックとか印象的。あと、携帯電話もパソコンも普及してない時代の仕事場の様子が興味深く、デスクに鎮座する黒電話と鉛筆削り、手書き原稿にタイプライター、扇風機のオフィスで団扇片手に普通にクールビズな人々などが目を惹きました。ただ、あの特に暑かった夏を再現しきれてないのが物足りないのですが。

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ダークナイト

 さんざん語り尽くされており今更な感想ではありますが、アメコミ・ヒーローものに興味が無く『スーパーマン』が復活しようと『スパイダーマン』が好評を博そうとスルーしてきたし、前作含め『バットマン』映画も殆ど観て無い人間が、全米での破竹の勢いとか評論家の絶賛とか関係無しに予告編のジョーカーの演技だけで一目惚れして劇場に足を運んだ事実には言及しておきたいです。ここまでの求心力に遭遇した経験はありません。
 そして、予想通りエキセントリックで非常識な怪人が大活躍。的確かつ冷静に正義の泣き所に悪意を注ぐ無敵の存在として君臨です。とにかく登場シーン全てが見せ場というジョーカーによるジョーカーのための映画。過剰なまでの存在感を振りまくヒース・レジャーが素晴らしい。その強烈なキャラクターが浮いてしまわないような世界観を構築し、クライム・サスペンスの大傑作に仕立て上げた監督の手腕も見事であります。
 ただ、賞賛ほどに完璧な映画ではなく欠点は山ほどあるのに凄さが勝るタイプの作品なので要注意。特に派手なヒーロー・アクションと爽快なストーリーの典型アメコミ路線を求める観客には全く食い合わせが悪いといえます。

 なんたって、主人公が始終けちょんけちょんにされ続けデーモン軍団ばかりが輝き過ぎてる漫画版『デビルマン』みたいな話ですから。しかも、終わってみれば童話『泣いた赤鬼』の青鬼ポジションにバットマンがいるという、ヒーローものの主人公あるまじき扱いです。元々、アメコミヒーローとしては格別シリアスを基調とするバットマンですが、本作はあまりに暗くカタストロフにはほど遠いのであります。
 それに本作はリアリズム重視な世界観。趣味でやってる正義の味方は法の枠では犯罪者に分類され、よく考えると盗んだ鯨肉を証拠に盗みを告発する某団体みたいな存在なのでした。更に銃を使わず殺人御法度の俺ルールで犬にも手こずる戦闘力。私生活の馬鹿馬鹿しい金持ちぶりも含め物凄く格好悪く描かれます。挙げ句にマスクで顔が出ない役となれば演じるクリスチャン・ベールも浮かばれませんね。でも、皮肉なことに実にバットマンの神髄と思える物語なのです。

 それは人々のモラルに挑戦する予測不能なサイコパスが、正義という概念を破壊し善と悪の境界線を曖昧にしていく極上のヒューマン・ドラマ。これを「バットマンVSジョーカー」という単純な図式ではなくアーロン・エッカート扮する正義の検事を積極的に絡めてディープなテーマをより明確にし、切ないラブ・ストーリーとの相乗効果で苦悩のヒーローを際立たせたのには驚きました。加えて悪に翻弄される一般市民たちにもドラマが用意されてます。これだけの内容なら映画2本撮れそうだけど敢えて2時間半に詰め込み、延々と事件を発生させ続け緊張感を弛めずに最後まで突っ走った力業が圧巻です。余計なのは香港パートぐらいだけど、アレをカットすると本当にバットマンが悲惨なだけになりますしねぇ。何が起こってるのかわからないアクションが多い中、香港の夜空を黒マントをはためかせ飛ぶバットマンの勇姿は印象的でしたから。

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