「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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リアル鬼ごっこ

 「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」「ランニング状態で足を止めた」など英文を翻訳ソフトに叩き込んだかのような日本語の怪しさが話題の原作ですが、それが何故かミリオンセラーとなり山田悠介が若者の圧倒的な支持を得る作家として地位を築いているのは厳然たる事実。あまり本を読まない層にブレイクするのは「本を読まない人間の書く小説」という発見は『Deep Love』『恋空』などケータイ小説の発展にも寄与しております。まあ、良識ある読者を震撼させた驚異の文章力は自費出版の為せる業であり、編集者の重要性を世に知らしめたともいえましょう。
 無茶苦茶な文章以外にも設定が稚拙とか展開が一本道とか10頁でオチまで読めるとか色々批判はあるものの、その着眼点と発想力は見事で次々と映像化作品を送り出すだけのことはあります。本作の「全国の佐藤さん狩り」の着想も素晴らしいです。だから、今回のネタだけいただいて大改変という試みは上手く再構成すれば結構面白くなるんじゃないかと期待したのですが・・・。

 ヘンテコな未来王国をパラレルワールドに変更し「一方の世界で人が死ぬと並行世界の同一人物も死ぬ」と設定したのは悪くなかったです。古臭いジュニア向けSFみたいになっちゃって原作ファンは憤慨ものでしょうが、『NHK少年ドラマ』世代としてはこれも一興。実際、殺人オニごっこのゲーム性やスラッシャー表現や主人公の謎などで引っ張る中盤までは、「もっと予算があれば」と思うぐらいには頑張っていました。しかし、鬼ごっこパートが終わり完全オリジナル展開になると、知りすぎてる妹やら不自然過ぎる危機一髪描写やらが並び、その雑な処理にいちいち興醒め。それにSFやるならパラレルの整合性にはもっと気を遣うべき。鬼ごっこに意味付けしたのは良かったですが、その作戦じゃ王様は目的を果たせない確率の方が高い事に気づくべきです。主人公の決意が台無しのラストも脱力もので、終わってみれば「前言撤回、やっぱ無駄金」なのでした。

 キャストは全体に脇役テイストで地味。主人公・石田卓也や妹役・谷村美月は数本の主演映画歴があり揃ってアニメ版『時かけ』の声優に起用されたりもしてる若手俳優ですが、その割りに演技が冴えないのは演出の問題でしょうか。登場する佐藤の皆さんに緊迫感・悲壮感ってものが著しく欠けてて困ります。
 オニのデザインは雑魚戦闘員っぽくってなかなかですが、アクションがいまいちで全然怖くないしスリリングな逃亡劇を楽しませるほどのアイデアも無いのが残念。王宮のセットがチープこの上ないせいで王様の狂気が伝わらないのも問題です。東映特撮ヒーローのスタッフなら少ない予算でももっとクオリティの高い仕事をすると思うんですけどね。

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(2008/08/22)
石田卓也谷村美月

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告発のとき

 流行りの「いったいこの国はどうしちまったんだ!?」映画。イラクからの帰還直後に陸軍から失踪した息子の行方を探す父親を通じて、兵士のPTSD問題や現代アメリカの苦悩を鋭く描くヒューマン・ドラマです。監督は04年の長編映画デビュー以来アカデミー賞常連という驚異の社会派脚本家ポール・ハギス。実際に起こった事件を基にしてるそうですが、軍警察出身の父親を探偵役に据えたミステリ仕立てとなっておりエンターテイメント性も高い良作であります。
 ただメインはあくまでイラク戦争を教訓とする厭戦映画なのでミステリにあまり期待しすぎると拍子抜けします。『父親たちの星条旗』の延長線上というか、わかりやすい『ノ-カントリー』というか、“人を戦争に送った人達”に突きつける“信じた正義の無力感”の物語。重いテーマを静かに淡々と紡ぎつつ話にグイグイと引き込み見事な収束を見せるハギス節健在で余韻はいつも通りビターです。

 登場人物達が感じている事が映画のメッセージに直結するだけにキャストの力量が問われるわけですが流石の実力派揃い。先ず誠実かつ善良で軍の規律を信じる白人保守層にピタリと嵌る主演のトミー・リー・ジョーンズが非常に良いです。捜査での切れ者ぶりは格好良く、真相に辿り着いた姿は痛々しく心情を思うと泣けます。相棒役シャーリーズ・セロンも女性蔑視に悩まされるシングルマザーの刑事という落ち着いた強い女性を好演。鼻絆創膏をして凛々しい女優というのはなかなかいません。出は少ないけどスーザン・サランドンの存在感も素晴らしい。

 問題はセンスのない邦題ですよね。『告発のゆくえ』とゴッチャになるし、なにか物凄い陰謀でもあるのかとミスリードしてます。そういう映画じゃないのに。劇中でちゃんと説明されるのだから原題の『エラの谷』で問題なかったというか、この少年ダビデと巨人ゴリアテの寓話に潜む疑問が物語の核なのだからタイトルから外すのはありえんと思うのですが・・・。

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(2009/01/07)
トミー・リー・ジョーンズシャーリーズ・セロン

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JUNO/ジュノ

 個人的に米アカデミー賞で重視してるのは脚本賞なので、「16歳の妊娠コメディ」なんてスルー当然のジャンルにもトライしたわけですが、初見の感想は「これ、脚本より演出じゃね?面白いけど。」でした。でも後日、本作の売りは「対話」と知り今回は吹替で観賞。字幕よりもニュアンスが伝わってきた(但し、声質が女子高生っぽくないという問題が・・・)ものの、ティーン特有の独特な言い回しとか脚本の魅力を理解するにはネイティブじゃなければやはりダメっぽいですな。それに「スパイナル・タップ」がロックバンドの名前だとか、米では自明でも日本じゃわかりにくいネタがたぶん彼方此方に散らばってる。

 そんなわけで本来の長所は全然伝わってないと思うのですが、その辺はエレン・ペイジ扮するジュノのキュートでクールなキャラクターの魅力で問題なくカバー。常に自己完結する大雑把でポジティヴな性格に辛辣かつユーモラスなトークが堪りません。「性的に活発」というフレーズもなんだかツボ。
 劇的な事件やお仕着せのお涙頂戴もなく、無理解な大人との対立やありがちな自己陶酔的美談にも奔らずに、「産むけど自分では育てない」という日本では馴染まない選択を明るく元気なアプローチで描いて見せたのが新鮮でした。過剰な説明を避けながらあくまでもハートフルに紡がれる物語に妙なクセがあって心に残ります。文化の違いで括りきれないほどに倫理的にはけしからん話なんですがね。

 にしても、90'sグランジロックを扱き下ろしつつ70'sアメリカンパンクを崇拝してたり、ホラーの帝王に『サスペリア』のダリオ・アルジェントを主張し伝説のスプラッター映画『血の魔術師』の良さもわかる十代少女というのはかなり凄い設定ですな。喩えるならX JAPAN全否定で戸川純を愛聴し天知茂の乱歩シリーズを語る女子高生?ちょっと違うか。

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ラスト、コーション

 日中戦争期の上海と香港を舞台に繰り広げられる抗日女スパイ一大ロマンス。中国本土では濡れ場をごっそり削除しての公開となり話題になった米中合作映画です。その影響で干された中国女優タン・ウェイが香港の市民権を獲得なんて余談もあり、なにかと過激なラブシーンばかり取り沙汰となる作品ですが、心理的駆け引き満載のドラマ展開で2時間40分の長尺を飽きさせません。終わってみれば目新しさのない話をここまで惹きつけるアン・リー監督の力量に感服。エロも必然的にストーリーに溶け込んでおります。

 物語の基本構造は『ブラックブック』に激似。あちらはナチ将校の情婦として潜り込んだユダヤ人の愛と裏切りの物語でしたが、こちらも日本の傀儡・南京国民政府の特務機関幹部を誘惑し任務を背負いながら肌を重ねる女の話です。ただ、『ブラックブック』は社会派テーマを内包した娯楽性の高い作品でありますが、本作はじっくりねっとりラブ・ストーリーと、性格付けは全く異なります。
 個人的には話題の秘め事が挿入される後半の上海パートよりも、“仲良し抗日ごっこ”の学生のノリが良い感じの香港パートが好きです。目標がでかいくせに計画は杜撰だったり、雰囲気に酔って墓穴を掘ってみたり、若気の至りここに極まれり。同じ学生運動でも「連合赤軍」とかは貞節を否定し強姦込みのフリーセックスだったそうですが、こいつらは揃って未経験で唯一の経験者も素人童貞ってのが笑えます。それで人妻に扮して誘惑作戦とか恐れ入る。このヒロイン処女喪失シークエンスの気まずい空気から始まる“夏休み限定テロ集団”の情けない祭りの終わりが最高でした。
 後半は基本的にメロドラマでして、ベッドでのトニー・レオンの嗜虐志向やヒロインに溺れてからの精神的な主従の逆転など、組んず解れつに込められた物凄い緊張感とパフォーマンスが面白いんですが、肝心の工作活動が命がけの綱渡りというには弱く展開に捻りも無いのが物足りず。正直、抗日に身を投じる動機にしても、過ちを認めながら運動に復帰する理由にしても、この娘の考えがよくわからないのです。それは用心深く孤独な軍人や純真で煮え切らない学生リーダーもしかりで感情移入が難しいです。そんなわけで恋愛模様の行方よりも中華貴婦人の社交麻雀のレベルの高さと何気ない会話に見え隠れする駆け引きの方に目を見張ったり。

 さて最後に噂のベッドシーン。中国の7分間カット程ではないけどR-18の日本版でも6箇所修正というから無修正版の過激さは想像に難くなく。確かに一般映画ではあまりお目にかかれない色々な体位やらサディスティックなセックス描写があり、童顔なのに脱いだら凄いタン・ウェイのボディも艶っぽいんですが、肉体よりも精神の支配を重視した過激な少女漫画のエロ描写みたいな印象。心理劇も含めて女性向けなエロスだと思います。そういえば前作『ブロークバック・マウンテン』は「やおい」でしたしね。しかしこの監督、「いきなりバックで・・・」ってのが好きですなぁ。

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人のセックスを笑うな

 蒼井優を目当てに鑑賞。主演は永作博美&松山ケンイチということでもっと商業的な作品を想定していましたが、予告編の印象と全然違いストーリーより映像や演出を楽しむタイプのアートな作品で面食らいました。
 キャスティングでわかるとおり「セックス」が表題でも大胆な濡れ場とかあるわけもなく、主に脱がされるのは松山ケンイチだったり。「L」「クラウザーさん」「銭ゲバ」など極端なメイクの役が多い彼が普通の学生を演じた途端にパンツ一丁というのがちょっと可笑しかったです。
 原作は芥川賞候補にもなった小説だそうですが鑑賞後の印象は「レディコミ」。まあ、作者も監督も女性ですしね。個人的に芥川賞は地雷率が高いという認識でして、加えて女目線も苦手とくれば相性は最悪の筈なんですが、これが意外といけました。トータルでは退屈なんだけど、あまり観たことがないテイストの不思議な映画でした。

 とにかく画角を固定しての長回しが多用されていて全然カメラが寄らないのが印象的。カップルがいちゃいちゃしてるのを傍観しているような距離感で撮影されていて、構図はピタリと決まり観客の視線誘導などの演出も的確。カップルの日常の姿を切り出すという点では秀逸で、妙に生々しく観てて居心地が悪いことこの上ないです。
 ただ、テクニカルすぎる映画手法が鼻につくのも事実。流石に有って無いようなストーリーで140分もそんなのが繰り返されれば飽きます。反復の手法が多いこともあり自ずと画面は単調ですし。
 尺が伸びた原因は冗長な編集に尽きます。確かに長回しの緊張感やアドリブが効果的に活かされ見事に空間を撮っているシーンはあるものの、それ以上にカットすべきどうでもいい長回しが多すぎてメリハリがつきません。ひときわ人物の動向に注視させる演出なんだから意味なくシーンを引っ張って観客に緊張を強いたら疲れ果ててしまいますよ。

 繋ぎが問題とはいえ、個々のシーンはキャストのイメージビデオに使えそうな出来で熱演が光ってました。特に主役の永作博美は若者をメロメロにするに説得力十分の魅力。ただ、大人の色気とは違うなんだかふわふわしたキュートさを醸し出していて、「禁断の交際に惹きこむ奔放な20歳年上の女性」の従来像とはちょっと違うかも。あのルックスだと「かなりの年齢差」というブレーキは働かず多くの男が躊躇無くアクセル・ゴーな気がします。
 一方、松山ケンイチが現代の普通の若者を演じるのを観るのはこれが初めてなのですが、役柄にマッチした自然な演技をみせていて感心しました。ホスト崩れみたいなイケメン男優が幅を利かす昨今では貴重といえましょう。
 そして期待通りの蒼井優。独特な透明感も遺憾なく発揮されており、後半は主役カップルを喰う存在感を見せております。ベッドのシーン(ベッド・シーンに非ず)の身のこなしとか最後の照れるシーンとかぞくぞくしました。全編で色々な種類の気まずさを体現するのが凄かったです。

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(2008/07/25)
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