「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

 全共闘世代ウケかと思いきや意外と各方面で高評価の本作、確かにこの種の歴史映画にしてはドラマが豊富で3時間超の長尺を飽きずに楽しめました。映画としての出来はそれほどのものとは言い難く、早足で不親切な展開や危うい演技も散見するし粛正の描写もぬるま湯ですが、先鋭化した活動家達の様子や時代背景が濃密度に盛り込まれております。後の世代としては思想がどうにも理解しにくいですが、大事件のあらましを学ぶには都合が良い作品です。

 明確に分けてはいませんが実質3部構成でして、連合赤軍結成までの流れを実録モノでまとめた第1部、山岳ベース事件の顛末を描く第2部、内部視点であさま山荘事件を綴る第3部となっております。
 加速度的に盛り上がるのはサスペンスタッチで生々しい狂気に染まるリンチ事件の第2部で、とにかく並木愛枝が扮した永田洋子の存在感に脱帽です。坂井真紀も理不尽な批判と凄惨な暴力に晒される女性を頑張って演じてるんですがこれは勝負にならない。もう一人の指導者・森恒夫の救いがたい責任転嫁ぶりも霞む見事な鬼畜ぶりでした。
 第2部が強烈すぎて蛇足っぽくなったし美化されたきらいもあるものの第3部もそれなりに面白い。けど、淡々と流れる第1部はとっつきにくいです。ビッグネームの重信房子や赤軍創設者の関西人などテロップ付きの主な人物、特に男性陣の殆どは捨てキャラで真に着目すべきがいきなり敵前逃亡する男なんて事は予備知識無しにはわかりません。何故、指導部が一網打尽となり、或いは海外に分派していくのか、彼らが何を目指していたのかも駆け足過ぎて謎ですし。学生運動の物凄い逮捕数とか、デモや籠城程度じゃ済まない過激な事件、必ずしも反戦ではない思想などにはあらためて驚きましたが。

 腑に落ちないのは、これだけ永田洋子がフィーチャーされており山荘事件の主メンバーも革命左派出身なのに語られる歴史は赤軍派ばかりってとこ。一連の事件のバックボーンは赤軍派の思想ではなく毛沢東思想のアナーキーな全体主義のようだし、連合赤軍の結成以前から革命左派は一線を越えてます。なのに、永田がこの集団で頭角を現す過程や夫の坂口弘との馴れ初めなどが省略されてるのは何故なんでしょう。

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SAW5 ソウ5

 年1回更新の連続猟奇ドラマ第5弾。論理パズル型B級サスペンスの傑作も3作目以降は劣化が著しく、謎解きや心理戦からは遠く離れたスラッシャー映画になってしまったので今回から劇場での観賞は辞めました。この判断は残念ながら大正解でして大差でシリーズ最低の出来。Ⅲから延々と続くジクソウの後継者をめぐるエピソードは未だ終わらぬままに放置され、今回は実質スピンアウト作品となっております。
 外伝だろうと面白ければ良いのですが、何がしたいのかさっぱりわからない半端な脚本と、バカっぽいだけでスリルのないトラップ演出で萎え萎え。シリーズの裏話だけで3本も撮る根性も許し難いです。本作含め残りは完結してから暇だったら観ればいい。リタイヤ推奨。

 ホフマン刑事は前作で先代の遺したゲームの被験者確定の人物です。しかも、序盤で立て続けにジグソウ・ルールから逸脱した殺しを見せて後継者じゃないことを強調。なのに、このカリスマ性のない只の手駒を主役に据えて、散々匂わせてる「壮大なジグソウの構想」からはみ出した抗争をやられても興味がわきません。追跡者とのハイレベル・バトルがあればまだしも、ジグソウの手口に詳しい筈の捜査官が迂闊な動きを連発するんじゃ盛り上がりようがないです。
 そして従来路線の「5人の脱出ゲーム」の出来も酷い。第一ステージは彼らの誤答でもスピーディにやればクリア出来ただろうし、他のステージも簡単な対処方法に被験者が気づかないだけ。そもそも協力しないでも全ゲームに勝てる時点で趣旨に反してます。最終ステージなんて死体を使えばOKだもの。グロいだけのスラッシャー表現を控え目にしたのはナイスですが、「怖さ」「痛さ」までが失われているのも難。なにより「悪い事をした連中を絶望の底へ叩き堕とす」というコンセプトが今回は蔑ろにされ過ぎです。

 真の後継者の話とか前々回から回収されてない数多の謎とか放置されたままの案件が多々あり、今回もあからさまに怪しい人物・妙な時系列・謎の遺産やらメモやら加わって混沌に拍車。彼方此方で整合性も揺らぎつつあり、先行きには不安が募りジャンプの打ち切りみたいな終焉にならない事を祈るばかりです。高度なトリックやどんでん返しは諦めますから、ジグソウさんのヒューマン・ドラマだけは勿体つけに見合うだけの結末を願います。一番の願いは次でフィニッシュすることですが・・・。

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紀元前1万年

 ローランド・エメリッヒ監督作品であるからして歴史考証など端から期待しちゃいけません。見所は当然のごとく派手な特撮と珍妙な設定であります。つまり、マンモスとサーベルタイガーとモアだかなんだかの巨大鳥と、『神々の指紋』にインスパイアされた超古代文明で織りなす旧石器時代末期を楽しむファンタジーです。しかし、巨大動物の出番は意外と少なくスケール感が乏しいので、主にトンデモを味わう結果となっています。

 ストーリーはぬるい『アポカリプト』。異民族に嫁と仲間を掠われた男が奪還の旅で成長し英雄になるというオリジナリティほぼゼロのプロットであります。けど、偶然で一族のホープに成り上がり、伝説のおかげで各部族を統合するリーダーに就任、クライマックスも強引な力業の連打でクリアと、コメディでもないのに全部ラッキーで乗り切るのが新しいです。こいつ、仲間の犠牲は気にも止めず嫁の事だけ考えてるし、後先考えない蛮勇しかしてないわけで、最後まで成長もしません。凄い英雄譚です。
 そして、アドベンチャー映画のお約束的な思わせぶりシーンを随所に配置しつつ悉くクールに無視する姿勢が素敵です。本当によくこんな企画がハリウッドで通ったと感心するほどに本筋と無関係な伏線もどきを連発します。それと、一族に風の谷の大ババ様が混ざってると笑っていたら、最後もナウシカ的でひっくり返りました。あれを前振りもなくナレーションだけで済ますのも酷いです。でも、マンモス食ってる癖にマンモスを強制労働させると可哀想って感覚は「流石、狩猟民」と感心しました。

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母べえ

 古き良き日本の郷愁も反戦思想も家族愛も基本的に苦手ですが、正統派の映画女優として期待している檀れいをお目当てに鑑賞。ユーモアを織り交ぜた手堅い脚本と日常描写の的確さに定評のある山田洋次監督らしい、戦時下の矛盾に翻弄されながら艱難辛苦を乗り越えて強く生きた主婦の物語であります。

 社会人になったばかりの頃、定年間近の上司に「これ、事務所の女の子に渡しといて。」と仰せつかって向かった先にいたのは中学生の息子さんがいる女性でした。だから、山田洋次の主客層のおじいちゃん達にとっては還暦を超えた吉永小百合が三十路、それも20代と見紛う二児の母を演じてもさして問題ないのだろうとは思います。でも悟りの境地に至らぬ我が身にはとても無理。違和感しかない親子・夫婦・親戚などの人間関係を脳内補正するのに必要以上の労力を注がされるのであります。
 だって、そういう事情で全体に役者の実年齢が高めなんだもの。子役達は相応の小中学生なのに、主人公「母べえ」の夫・坂東三津五郎が50歳超、一家を助ける青年・浅野忠信も30歳過ぎです。30代半ばの檀れいが美大生のモダンガールってのもキツイ。更に吉永小百合より年上の倍賞千恵子が成長後の長女(妹・戸田恵子と3歳差と言う設定も凄い)という荒技まで飛び出て大混乱であります。
 まあ、そうは言っても役者の力量でねじ伏せてぎりぎりで成立。特に浅野忠信は新境地の好演と言えるのではないでしょうか。脇では笑福亭鶴瓶・でんでん・中村梅之助などが要所を味のある演技で締め戦中の雰囲気を醸し出していました。注目の檀れいは綺麗でしたが役柄が世界観からはちょっと浮いてて残念。やっぱり、彼女を「母べえ」に据えて義妹は蒼井優とかで観たかったです。

 お話の方はもっと反戦色が強いと予想してたんですが意外とマイルド。「非国民」の家族でありながらご近所の嫌がらせもなく、憎まれ役にもそれぞれの立場があることを明示しさえします。この手のドラマの絶対悪たる「特高」すら大して理不尽を行いません。
 また、「母べえ」が労せず職にありつき収入を確保、一家は食うに困らない程度で健やかに過ごすなど、悲劇の要素がやたら控えめ。徹底的に家族の日常で攻めておいて、最後に普通のホームドラマ的大団円と真逆の台詞で一気に悲劇性を高める試みが興味深かったです。場面転換が急すぎて美しい着地にはならなかったですけどね。
 ただ、獄中での受難の描写が薄めなこともあり、いかんせん悲劇の人「父べえ」に感情移入できず。蔵書持ちの癖に家賃滞納って事で冒頭から悪印象でして、思想家としてポリシーを貫く姿勢も中途半端となれば身勝手で家族に迷惑かけてるだけの人物に映りました。献身的というよりダメ男に盲信する妻に見えてしまい萎え。

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(2008/07/25)
吉永小百合坂東三津五郎

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