「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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最高の人生の見つけ方

 病院で相部屋になり共に癌で余命宣告された二人の老人。一人は堅実な家庭を築いてきた雑学王の庶民、もう一人は横柄で家族も友人もいない成金投資家。死ぬまでにやりたいコトを箇条書きした“棺桶リスト”を片手に旅に出た対照的な二人が、最初は財力にものを言わせ、やがてプライスレスな願いを叶えるド定番のバディ・ムービー。あからさまに在り来たりな内容の作品ですが、『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナー監督らしい手堅い演出と、ハートフルで洗練された脚本により「遅すぎることなんて何もない」というポジティブなメッセージが明確に示され、当然迎える悲劇的結末も後味は爽やか。若者や女性の立場からは異論もありそうですがオヤジ視点では秀作です。

 アホな邦画だと奇跡の投げ売りや過剰な泣かせに突っ走るところなんですが、観客を哀しませるより喜ばせることに主眼を置くのがハリウッド流。そして、国内ロケでも十分に豪遊場面を作れるのに世界中を旅しちゃうのもハリウッド流。でもガンの化学療法の辛さもきちんと見せ、死をテーマにしながら不謹慎にならない按配で観客を笑わせるデリケートさも持ち合わせてます。キリスト教的博愛を織り交ぜつつ魂の救済に帰結する流れも説教臭くないし、「死ぬ程笑う」とか「世界一の美女にキス」とかリストの項目が伏線を回収しながらエレガントに消化される様も小気味良いです。巧みなミスリードからの綺麗な大オチにも笑顔が綻びました。

 十八番の「独白」も披露してくれてるモーガン・フリーマンですが、今回のような知的で温かみのあるキャラクターを演じると溜め息が出る程の圧倒的な魅力を発揮しますね。私生活では10余年間の不倫の末に3度目の結婚を45歳年下の義理の孫娘と挙げるような人なんですが。
 存在感抜群な職人芸でこれに応えるのが最強爺ジャック・ニコルソン。エキセントリックでユーモラスなお得意の小憎らしいキャラで大活躍です。こちらは現実も4人と離婚してるしプレイボーイとして知られてて役柄通り。
 かっこいい老人二人の洒落た掛け合いに加え、ニコルソンと秘書のシニカルな受け答えなど台詞劇としても秀逸です。フリーマンの語る蘊蓄もためになります。

 気にいらないのは例によって邦題。原題の『バケットリスト』じゃ意味わかんないし、訳した『死ぬ前にやることリスト』じゃ冴えないかも知れないけど、こんなロマコメみたいなタイトルも無いと思います。人生に最高も最低もないって憎まれ口を叩きたくなりますです。

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(2008/09/25)
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デトロイト・メタル・シティ

 過激でお下品な笑いは嫌いではないですが、ナツメロと言われながらもハードロックを好んで聴き続けるおっさんの立場からは否定的見解も多々ありで、原作は雑誌で断片的に読んだ程度。ギャグマンガの映画化なんてのは大抵が討ち死にだし、音楽映画は曲のイメージ造りが難しいし、クラウザーさんの悪行や言動をマイルドにしないと不味い事情もあるので殆ど期待してなかったのですが、これが意外にいけました。もっと笑わせられそうなギャグはあれど大外しが無く平均はやや高めという感じ。松山ケンイチの両極端な役作りの賜物であります。ただ、これは『デトロイト・メタル・シティ』の笑いとは違うので原作に思い入れがある人ほど低評価になる気がします。

 序盤の着替えて行ったり来たりのコントがかなりテンポ悪く、その後もぶつ切りエピソード連発でグダグダなんですが、松山ケンイチの成りきりが凄いのでキャラの力だけで笑いを誘発します。根岸君がネガティヴな感情からクラウザーさんとなって暴走するパターンは少なく、理性が働いてる時の善良クラウザーとクネクネお洒落ポップの根岸君でコントラストを生みだした辺りが映画の肝。デスメタル的な話からは遠ざかってしまってるけど、クラウザーさんは街にいるだけで妙に可笑しいので一般向けにはこれで正解と思います。
 あと、社長役・松雪泰子の暴れっぷりもバカに徹していて立派。DMC信者の人達もかなり良かったです。で、デスメタル界の帝王にKISSのジーン・シモンズ、日本在住マーティ・フリードマンもギターで参加という狂ったキャスティングに拍手喝采。歌った曲はデスメタルっぽくなかったですけど。ちゅか、全体にメタルの曲はイマイチで渋谷系の曲の方が出来が良い感じ。

 問題はやはり毒気が薄まり過ぎたことでしょうね。信者達が語る伝説を裏付けるような悪行が誤解含め全然無いのは説得力に欠けます。それに悩める悪役レスラー的に捉えた物語も消化不良気味で、あそこまで青春映画風にしながらメタル愛に目覚めないで終わる意味がわかりません。折角、プロレスノリのライヴ対決をあそこまで盛り上げておいてベタなギャグを挟むセンスに失望ですよ。不必要な正体バレにも興醒め。

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松山ケンイチ加藤ローサ

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ブラインドネス

 「全世界、失明!」のキャッチコピーが鮮烈な心理パニック・サスペンス。原作者はノーベル文学賞作家、監督は『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』のフェルナンド・メイレレス、主演は気の強い女の第一人者ジュリアン・ムーアで、伊勢谷友介&木村佳乃も共演と話題は豊富ながら、ハリウッド映画ではなくブラジル・日本・カナダ合作のインディペンデント作品であります。
 突如として視力を奪い、しかも爆発的に伝染する謎の疾病。政府は患者を隔離するも、失明を恐れ管理の手が及ばぬ病棟は程なく無秩序状態に陥り混沌と暴力に支配されていく・・というプロットを聞けば凄く面白そうなんですが、カンヌ映画祭での評価はイマイチで日米でも興行的に奮わず評判もよろしくない。原作の『白の闇』は未読なんですがネットで探ってみるとこれがすこぶる好評で、わりとそれに忠実に映画化されてるっぽいのに何故こんな事に・・・。

 答えは明らかで、とにかく隔離病棟のディテールの詰めが大甘。いきなり老若男女の区別もなく大部屋に収容し俄の盲人だけで共同生活なんて『電波少年』みたいな設定で納得出来るわけ無いです。先進国っぽい演者が揃っている以上は非人道的な架空の国では済まされません。施設の職員や医者も直ぐ感染して管理を断念するとか、次第に生活環境が悪化する描写が欲しいです。同様に、空気感染が強く疑われるのに密閉施設じゃないとか、1号罹患者のデータもとらないとか、既に蔓延してるのに収容を続けてるとかも少しの配慮で整合性をとれたと思います。
 そして一番のネックが主人公と“第3病棟の王”のパワーバランス。紛れ込んでるノーマルの盲人が座頭市でもない限り失明を免れたおばさんの圧倒的優位は動きません。アウトローたちの圧倒的な凶暴さを見せるなり、「敵側にも目の見える人物がいるかも?」と疑わせる演出がないと説得力に欠けます。それに王には『ミスト』の宗教ババアみたいな狂気のカリスマが絶対的に不足してて、酷い受難の筈なのに奴隷化に切迫感がないし、対する主人公も崇高に見えません。終盤の荒廃した都市のリアリティがなかなか見事なだけに収容所の不出来は本当に残念。
 あと、日本人限定の短所。伊勢谷友介の役が意外に重要なのですが、日本語のシーンが妙に多く、その口調がいっそ英語に吹き替えて欲しいほどに悶絶もの。ついでに木村佳乃は脱ぎっぷりの悪さが目立ってます。

 苦言を並べましたが、状況設定やテーマは面白いし話は綺麗にまとまっており、個人的には観賞推奨。降って沸いた肉体的ハンデに生理的に耐えられない生活環境と理不尽な簒奪者。映画じゃ描けない自殺もの発狂ものの妄想もどんどん膨らむ状況は、実は内戦や紛争の下では普通に起こってそうな事であり、我々はそれに目を瞑って生きているわけです。深く考えさせられるじゃないですか。
 また、在り来たりのモラルを問うだけの作品には成っておらず、拝金主義・資本主義批判もあれば、生産能力を持たない都市生活者の脆さも描かれ、キリスト教的な含意も加わる複雑さも魅力的です。ヘビーな話に加え、音響や暗転や白の闇などの効果を巧みに使い緊張感を保ってくるので物凄く疲れるけど、最後のスッと力が抜ける感覚が良かったです。

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百万円と苦虫女

 百万円を貯めては各地を転々とし生活していく女性の物語。転職サクセス&節約生活の映画かと思ったら全然違いました。毎回ゼロから貯めるのではなく、引っ越すたびに持ち出した金額を補填して貯金が百万円を超えたら誰も自分を知らない次の街へって事らしい。そんなわけで励むのは低賃金な短期アルバイトばかりの、のんびりほのぼの青春ロードムービーなのでありました。
 蒼井優の主演映画がこの作品でまだ2作目ってのが先ず驚きですが、主演女優に相応しい存在感で「性格が不細工で人と距離を置くタイプの地味な美少女」を演じております。オリジナル脚本を手がけた女流監督タナダユキの世界観はかなりファンタジー寄りだと思うんですが、蒼井優が必死にリアルな世界の端っこに繋ぎ止めてる感じ。ここまで一人の女優に依存していいのかと思うほどに彼女の魅力だけで成り立ってる映画です。蒼井優が目当てなので私的には何ら問題ありませんが。

 不器用な男女を絡めた脚本の全体的な流れは悪くないしサラッとしたラストも好みなのですが終盤の展開が微妙。普通はそこでゲームセットになるから「金目当て」の指摘は不要だし、「先輩、水かけすぎ。」だけで十分なのに台詞で真相を説明しちゃったり、ラストへの繋ぎに色々と失敗してる印象で残念。シンプルに事を成せるタイプに思えるあの男にあんな回りくどいことをさせるには理由が欲しいし、最後に悟った主人公の出す結論も腑に落ちず。なんで次の街なのよ?
 ただ、その辺りはは些細なことで真に足を引っ張ってるのは撮影と演出。蒼井優だけアイドル映画風にアップが多い一方で、テクニカルなカメラワークが空回り気味で不必要に安っぽい映像になっている箇所が多々あります。演出は全体にステレオタイプが鼻につき主役以外で自然な演技なのは森山未來ぐらいで、演者が年配になればなるほど三文芝居がきつくなります。笹野高史・平岩紙・堀部圭亮など地味に豪華な脇を揃えてるのにもったいない。子役の芝居も今時珍しいぐらいに嘘くさいです。

 だがしかし、蒼井優の演出には間違いなし。苦虫を噛み潰したような愛想笑い、人間くさくて時に鬱陶しい性格、感情移入せずにはいられない弱さ脆さ危うさを身に纏い、感情表現の不得手な役柄でも微妙な成長を表現してみせます。きめ細かい身のこなしやモノローグだけでも魅せるし、話を暗くしすぎないコントロール役も担当する大活躍。いろんなシチュエーションの蒼井優を眺めてるだけで幸せなのであります。あとはベッドシーンに艶があれば言うこと無いんですが。

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蒼井優森山未來

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僕らのミライへ逆回転

 ハリウッド超大作勝手リメイクの自称“スウェーデン製”手作りビデオ制作ネタが楽しいジャック・ブラック主演の人情コメディ。ボンクラ二人組のもう一人は『16ブロック』のモス・デフ、舞台はDVDを持ってない貧困層向けの小さなレンタルビデオ店です。予算無駄遣い駄作揃いのハリウッド・リメイクを風刺するのかと思いきや、「みんなで精一杯工夫して夢を形にしようぜ!」というポジティブで感動的な話なのでした。

 脚本はかなり粗く、発電所云々はフェード・アウトだし、ヒロインとのロマンスも中途半端に放り出されるし、売りのリメイクも多くは一発芸で済まされます。店のレンタルビデオが消去される設定も荒削り。笑いも毎度お馴染みジャック・ブラック節炸裂で癖が強く万人ウケは期待しがたいです。でも、怒濤の“映画愛”で押しまくる終盤の展開でそんなことはどうでもよくなってきました。
 アルミホイルを体に巻き『ゴーストバスターズ』、廃材で拵えた『ロボコップ』、アニメ『ライオン・キング』だって無理矢理作成。気分はチープなセットと学生ノリで出し物に取り組んだ文化祭。そして、CGの普及で忘れていた作り手の創意工夫と撮影技術の積み上げに思いを馳せたり。R2-D2の中に人が入ってた事すら信じてくれない最近の若者にこのロマンが伝わって欲しいです。

 でも、話の軸になるのは勝手リメイクの方じゃなくて、実在した戦前のジャズピアニストのファッツ・ウォーラーにまつわる街の人達の話なんですよねぇ。ルイ・アームストロングと共演してるから演奏を耳にしたことはあると思いますが、正直言って名前も代表作も偉業も知らなかったです。それでもスラムの人々の盛り上がりは十分に伝わってくるけれど、やっぱり知らないことが残念に思えたのでした。こういうアメリカの庶民生活に根付いたコメディ映画は、その空気感をどれだけ理解出来るかが勝負ですから。

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