「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ランボー 最後の戦場

 ベトナム戦争から帰還したら謂われの無い苛めを受け、請われて捕虜救出に行けば敵陣に置き去りにされ、いつも独りで戦争する羽目になる最強ゲリラ戦士映画『ランボー』の4作目。今回は虐殺続くミャンマーを舞台に老いて益々無謀で暴力的なマッチョ・ヒーロー「ランボー」の活躍が描かれるのですが、当初の社会派路線はもとよりゲリラのサバイバル・アクションを期待しても大火傷は必至。現在のミャンマーの情勢とか政治的な問題意識は微塵もなく、異様にシンプルな救出と脱出の物語に最初から最後まで殊更に繰り返されるのは、腕がもげ足が飛ぶ過激な残酷人体破壊ショー。スプラッターなバイオレンス映画ですよ、これは。

 当時の仮想敵・ソ連軍を完膚無きまで駆逐しアメリカの英雄としてシリーズを終えた筈の人間兵器ランボーですが、空白の20年の間に共に闘ったアフガン戦士たちが米国にテロを仕掛ける憂き目に合い一段とやさぐれてしまったとしか思えません。昔と違ってリミッターが外れており正義の鉄槌じゃ済まされない殺戮レベルです。前半の極悪非道妄想ミャンマー軍の理不尽アタックのインパクトも薄れるほどの狂乱血まみれ地獄絵図を描きながら独りで一個中隊を壊滅。「人道支援の人達もご立派だけど、その為に汚れ仕事を請け負う方にも少しは敬意を払え!」と言わんばかりに大暴れ。かつての「アメリカンドリーム」や「強いアメリカ」と同じように今回は「感謝されない世界の番犬」を体現します。これだからシルヴェスター・スタローンは油断出来ません。

 しかし、この映画は本当にあっという間。実質80分だけど体感時間はずっと短くスラッシャー描写だけで突っ走ります。しかも、大半が被弾や爆破によるスピーディーな殺傷で肉弾戦は殆どありません。クライマックスなんて重機関銃を奪って圧倒的優位に立ったランボーが兵士からトラックから武装ボートまで構わず乱射してるだけです。仲間の傭兵さん達も生死不明なまま倒れる奴が続出。とにかくそこにドラマはないです。よく考えるとヒロインも何もしてませんし。それでエンドロールがたっぷり10分。凄いバランスです。
 あと、副題は日本で勝手につけたモノで、最初から次回作を撮る気満々だったスタローンに応え速攻で制作が決定。ランボーの行くところ戦場となる運命であり、「最後の戦場」はありえないと思われます。配給会社がどうフォローするのか楽しみ。

ランボー 最後の戦場 コレクターズ・エディション [DVD]ランボー 最後の戦場 コレクターズ・エディション [DVD]
(2009/02/04)
シルベスター・スタローンジュリー・ベンツ

商品詳細を見る
スポンサーサイト

NEXT -ネクスト-

 2分先の未来を予知できる男のSFアクション。『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』でお馴染みフィリップ・K・ディック小説の映画化ですが・・・かなりのバカ映画。難解なディックのイメージを吹き飛ばすデタラメぶりが快感に変わります。着想は面白いし演出も凝ってるしアクションは派手で俳優陣も健闘してます。しかしその功績を全部チャラにしてお釣りが来るほどに脚本が超テキトー。

 とにかく物語の発端となるFBI捜査官の行動があまりに不可解。彼女らの目的は「核兵器を持つテロリストのロサンゼルス爆破計画阻止」なのですが、その最優先ミッションが何故に「予知能力者確保」なのよ?2分先の未来しか予知できない半端な能力だって事までしっかり見抜いてるのに。しかも、彼女がどうして主人公が隠し持つ能力に気づいたのかも不明なら、主人公を追い回した挙げ句無理矢理やらせた作戦にも唖然。ジュリアン・ムーアが脚本をちゃんと読んだ上で出演したのか心配になります。
 テロリスト側も凄いです。彼らにとって主人公は「FBIが追ってる謎のマジシャン」に過ぎないのに、何の根拠も無くいつの間にやら「なにがなんでも殺すべき人物」になってます。そんなの放っといてさっさと爆弾を設置し出来るだけ遠くに逃げるべき状況の筈なんですが。こいつらが何の目的でこの事件を起こしたのかも謎。

 けど、「2分先の未来予知」をあの手この手で描写したのは面白かったです。冒頭のカジノ脱出をはじめ、脳内シミュレートから最善手を導き出し大アクションの末にスイスイ逃げ続ける様が心地よい。多くの条件分岐から正解を導き出す過程を、何度も何度もバッドエンドを繰り返して見せたり、分身させて表現したり飽きさせない工夫もたっぷりです。
 そもそも主人公のスキルとFBIの捜査規模で国家的危機に対抗するのが無理筋というのは棚に置いといて、問題は「2分間の制約」という設定がヴィジュアルだけでストーリーに全く活かせてないところ。一応、FBIの主人公捕獲作戦では少しだけ考慮されますが、2分間の情報処理速度を無視した超人的索敵範囲とかはもう少し練って欲しいところ。最初から「ヒロインに関しては例外」と明示してるのだからその設定も有りだとは思いますが、その理由が明らかにならない上に、後半の展開にダイレクトで「ヒロイン救出」を持ってきちゃうのは超の付くド反則でしょう。ぎりぎりでヒロインが巻き込まれるとかの小細工ぐらいライターは考えないと。

 そして、困ったことにニコラス・ケイジの抑えた演技が妙に可笑しいです。「一見、何の取り柄も無さそうで実は凄い能力を持つ胡散臭いて男」という役をさせるとこの人は本当に嵌りますね。ジェシカ・ビールも見た目最重視のB級SFヒロインという得意のポジションをきっちりこなし、珍作常連のジュリアン・ムーアも生き生きと大真面目に熱演。普通なら箸にも棒にもかからない筈なのに彼らの演技で駄作とは言い切れない味わいが。重度のアルツハイマー病を患ってるらしいピーター・フォークが顔見せしてるのも嬉しいです。

NEXT [DVD]NEXT [DVD]
(2008/10/03)
ニコラス・ケイジジュリアン・ムーア

商品詳細を見る

奈緒子

 駅伝が題材って事でヒロインと男子部員との恋や青春を描く王道スポーツものかと思ったら意外にそっち方面は中途半端。ストイックなスポ根ものってわけでも無いのにトーンが延々と灰色なのも想定外。なにより、実は三浦春馬と笑福亭鶴瓶の物語で主演の筈の上野樹里が殆ど“いらない子”扱いなのが予想外な作品でした。

 何故タイトルが『奈緒子』なのかは全くの謎。彼女抜きでも監督とチームメイトで十分に話が成り立ちます。とにかく、奈緒子の背負った罪やら豪腕にも程がある臨時マネージャー就任の経緯やらに時間を割いたにもかかわらず、奈緒子が見守り続ける事になる天才ランナー君との距離感は最後まで殆ど縮まらず駅伝部でも特に重要なポジションにいないのが問題です。おまけに上野樹里になまじ演技力があるもんだから『巨人の星』の明子姉ちゃん並に物陰がフィットしちゃうのです。助演女優であれば映画全体を落ち着いた雰囲気にさせるファインプレーものの演技ですが彼女を看板に撮ってる映画でこれは酷い。
 代わりに前面に押し出された鬼監督・笑福亭鶴瓶も災難です。暖かく大らかな人物でありながら豹変して生徒達を鍛える役柄は鶴瓶のキャラに合ってる筈なのにどうにも作品世界で浮いてしまってます。演技力の問題ではなく、打っても響かない部員達とフォローしないヒロインが原因。クライマックスの駅伝シーンでエースランナー・三浦春馬以外のメンバーは監督ではなくエースを拠り所にしてるんだから話になりません。奈緒子を想って走る奴がいないってのも凄いけど。

 終盤の駅伝はベタにスポ根構成だけど出来はなかなか。『恋空』とは大違いの三浦春馬のひたむきな熱演をはじめ、チームメイトやライバル校のランナーを努めた若手俳優陣が奮闘です。フォームや筋肉の付き方がちゃんとアスリートに見えるので、走っている場面だけならかなり水準は高いです。シーンの背景の壱岐や長崎の町並みもご当地映画臭くならずに調和していますし。
 惜しむらくは選手それぞれのドラマに尺が足りません。駅伝ってのは「個々の想いを一つに繋ぐ」というのをわかりやすく表現出来るスポーツですが、多くを駅伝中に語らせた為に躍動美の走る姿が台無しでした。レース中の表情や身体の動きだけで色々伝わってくるだけに説明過多が惜しい。大会に致るまでの選手達の内面をもう少し丁寧に扱って欲しかったです。身も蓋もないけど奈緒子に使った時間が無駄なのでした。
 それと転倒・エース頼み・オーバーペースなど補欠の子以外は最初の試合から殆ど成長してない展開なのも気になりました。給水も含め「過去の失敗を克服する」というスタンスが極力避けられてる意図がちょっとわかりかねます。

奈緒子 [DVD]奈緒子 [DVD]
(2008/07/11)
上野樹里三浦春馬

商品詳細を見る

チェンジリング

 アンジェリーナ・ジョリー扮するシングルマザーの9歳の息子が失踪し、それから5ヶ月後に発見の朗報が届くが引き渡されたのはなんと別人。ミスは明らかだが失態を認めない警察は捜索継続を拒否し、逆に彼女を育児放棄で糾弾し異常者扱いする。
 警察の主張は「通るか!そんなもん!!」で一蹴されそうな無茶なんですが、これは1928年のロサンゼルスで起こった実話だといいます。そして、巨匠イーストウッドはこのB級サスペンス並に馬鹿げた事実を淡々と再現しつつ、きちんとした社会派エンターテイメントの傑作に仕立ててしまいました。例によって、モヤモヤ感たっぷりでとことん嫌な話がぎっしり詰まっておりますが、個人の尊厳を犯す腐敗した社会への怒りと事件に巻き込まれた子供達の悲しみを静かに静かに伝えてくるのであります。

 このクラスの映画ですから出演者は当然粒揃いなんですが、それにしてもアンジー姐さんの力量には感嘆です。いつものスタイリッシュなアクション・ヒロイン像を封印し、母の強さと信念で気丈に振る舞いつつ弱さ脆さも併せ持つ減り張りの利いた演技に深く魅入られました。これで主要映画賞の最優秀主演女優賞を殆ど獲れないってんだから運がないです。
 失踪事件から不当圧力・隠蔽・人権蹂躙と異常な展開を経て辿り着く大事件。息子を捜し続け、正義を貫き、社会に変革をもたらす事になる女の物語は、何度も「ここでエンディングか」と思わせる場面を迎えながら気づけば142分の長尺。遠回りしているようで何所も削れないエピソード群を見事にまとめ、主人公と観客を生殺しにするイーストウッド特有の後味悪さを珍しく抑えたラストも素晴らしい。この希望的な(そして残酷でもある)「新たな真相」は創作だそうで、たぶん脚本家の手柄でしょうね。これで北朝鮮の拉致被害者家族の方々が実ることの無さそうな努力を続ける心情も理解出来ようかと。必見。

 さて、事実だと言われても俄に信じ難いロス市警の愚行ですが、禁酒法と世界恐慌のアル・カポネの全盛期と重なるとなると、ギャング映画の知識で考えれば警察の腐敗も全く不思議じゃないとは思います。けど、田舎者のガキンチョの幼稚な嘘は方言でバレバレじゃないの?ラジオが普及してるったってローカル局だろうし、映画はトーキーの時代を迎えたばかり。LAの言葉を覚える機会なんて無さそうなんだけど。まあ、ウィキペディアで事件のあらまし(激しくネタバレ)を読むとイリノイ州で保護した輩が騙されたのはガチの様ですが。ちゅか、映画では敢えて節度ある描写に抑えてあるけど現実はかなり陰惨な事件でビックリ。

チェンジリング [DVD]チェンジリング [DVD]
(2009/07/17)
アンジェリーナ・ジョリージョン・マルコヴィッチ

商品詳細を見る

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。