「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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マンマ・ミーア!

 端から「ABBAじゃなきゃ観ねーよ!」という否定的スタンスだったとはいえ、本当にABBAの曲だけが生命線の映画でビックリしました。既成の曲だけを使って構成されるジュークボックス・ミュージカルということで、話は有って無い様なもので歌に比重に置かれるのは当然なのですが、それにしては肝心要のキャスティングと歌唱力に著しく問題ありなのでした。きっとブロードウェイや劇団四季の舞台版は素晴らしいんでしょうがね。

 とにかく俳優陣の老け具合が気になりすぎます。 主演のメリル・ストリープの確かな歌唱力は『今宵、フィッツジェラルド劇場で』で聴いて知ってましたし、コミカルで弾けた演技に大奮闘なのも認めますが、いかんせん推定年齢40歳前後のシングルマザーを務められるルックスではありません。『母べえ』の吉永小百合以上に無理があります。親友役のジュリー・ウォルターズ&クリスティーン・バランスキーを含めアラウンド60のハイテンション・パフォーマンスがドン引きものなのです。特に凄いのが"Does Your Mother Know" で、老女に群がるギリシャのフェチな若人達というシュールな光景が・・・。更にミュージカルの常識を覆す究極兵器がピアース“007”ブロスナン。その致命的な歌声で奏でる"SOS"にはこっちが助けを呼びたくなりました。ラジー賞獲得も納得です。
 けど、一番残念なのはカメラワークやダンス演出が不出来な事。本作は舞台版演出家フィリダ・ロイドの映画監督デビュー作であり脚本や振付もオリジナルと同じ人が担当してるのですが、舞台の魅力を映画で伝える力量は無かった模様。群舞はバラバラだし、ダンス中に不自然なアップ映像を挟みまくるし、照明の具合も妙に安っぽく。なにより、印象的なシーンが全然見あたりません。

 それでも、とてもハッピーな気分になり元気をもらえる作品なのは間違いありません。ノリだけで突っ走らせるABBAの力は偉大であります。熟女達には少々品位に欠けようと理屈抜きの明るさで誰もを脳天気にさせるパワーがあります。娘役のアマンダ・セイフリードの透き通った歌声も素敵。エンディング・テロップでながれる"Thank You for the Music" には温かい拍手を贈りたくなりました。

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イースタン・プロミス

 英国ロンドンにおけるロシアン・マフィアのヴァイオレンス映画。実はこの設定の社会的背景とか移民の置かれた状況がよくわからないわけですが、放射性物質でスパイを殺したり秘密警察出身の万能無敵怪人が指導者だったり何かと怖いロシアのイメージが猛威を振るい、なんとなくその禍々しさに納得させられてしまうのでした。日本のヤクザ映画の様式美にきつめの暴力描写が混在する感じで、えぐい人体破壊描写に耐性があれば物語自体はわかりやすく淡々とソリッドに紡がれる正統派の極道映画として楽しめると思います。けど、派手なドンパチは全く無いし、サスペンス的な意外性も無く、売りはヴィゴ・モーテンセンのフルチン格闘と最近のクローネンバーグ監督が醸し出してる粘着質な雰囲気。はっきり言って地味です。

 銃をまったく使わず全編が刃物と素手の暴力描写というのが本作の特徴で、鮮やかなナイフによる切り傷と適度な血量のおかげで残酷なハードコア・シーンが満載な割りにグロ度は少な目。美味そうなロシア料理が良いコントラストをもたらしております。肉弾戦そのものの「特出しの死闘」も圧巻の怖さだけど笑えちゃうわけで。「刺青者が風呂場で全裸格闘」と言えば日本のお家芸なので、股間の紳士がコンニチワしない計算されたカット割りに挑んで欲しかったところ。

 適材適所な俳優陣の奮闘は特筆もの。くわえタバコとアルマーニのスーツが印象的なヴィゴが垣間見せる悲哀と優しさ、偉大なボスのダメ息子ヴァンサン・カッセルのヘタレ加減とヴィゴに見せる甘えた表情が絶妙。いかにも裏表のありそうなマフィアの親分や善人側のヒロイン一家も素晴らしい熱演の二人を見事にサポート。ナオミ・ワッツは無鉄砲で幸薄そうなところが実に良いのですが、ヒロインとのドラマよりも男達のストイックな関係性の方が面白いんでちょっと損をしてますね。今回は得意のホラー演技の場面も少ないですし。

 そろそろクローネンバーグ監督にはサイコ・サスペンスとか撮って欲しいと思ってるのですが、本作のような殆ど無駄のない佳作を作られてしまうとオスカー獲るまではこの路線もやむなしって気がしてきます。と、思ったら3D版『ザ・フライ』のセルフ・リメイクに手を出してたりこの人は何処へ向かっているのやら。いや、あの変態的なB級臭さも捨てがたい魅力ですが。

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レッドクリフ PartⅡ ―未来への最終決戦―

 さて、なんか飛び抜けたセンスの副題がついた後編。強引に二部作にした関係でネタは「最終決戦」しか残ってません。これだけで2時間保たせるのはきつい筈で、孫劉同盟の内輪の工作合戦を除けてしまった「赤壁の戦い」に劉備&超人トリオの活躍する場が無い点も厄介です。そんなわけでオリジナル・エピソードで肉付けしてくるとは思ってたんですが、「赤壁」本戦までアレンジしまくるとは予想外。結局は「男と男の約束」のジョン・ウー映画に帰結するんですが。

 いきなり「孫権の妹が男装して曹操軍に潜入」という孔明さんの冗談みたいな策略が炸裂し、対する曹操も「死体を孫権軍に送りつけ疫病蔓延」という無理筋の計略を成功させ爆笑。白馬をペイントした偽シマウマや「大きい耳のネコ」なるミッキーもどきが通用し、大量死した魚を何の疑問もなくお持ち帰りしたり毒餃子で二次被害を出すうっかりな国民性がよく出てます。
 そんなこんなで大スペクタクル本番までの間延びは否めず。また周瑜さん英雄視に拍車がかかり、希代の英傑・曹操は無能で寝取り属性の下衆野郎になっちゃうし、あろうことか礼節の大器・劉備が信義にもとるダメオヤジに成り下がります。更に、ピンチに援軍登場で形勢逆転という流れにせず劉備に見せ場を与えないジョン・ウー監督の人が悪さが素敵です。孔明には「10万本の矢」のエピソードがあるものの、それも結局は周瑜のダシで後は天気予報ぐらいしか功がないです。矢を集めるシーンで「誰か火矢を放っちゃえば面白いのに」とか思ってる孔明嫌いのマピールさんでもちょっと同情なのでした。更に周瑜リスペクトの弊害は「孫」側にも及び、黄蓋の一世一代の作戦はあっさり却下され、「連環の計」の鳳雛先生は存在自体が無かった事に。で、代わりに活躍するのが愛妻の小喬さんってんだから・・・まあ、いいか。美女の出番が増えるのは。
 問題は大幅改変の末に物語がまとまらなくなってるところ。ラブ&ピースに持ち込むなら持ち込むで三国に共通認識が芽生える流れにしなきゃならんのに、周瑜と孔明が勝手に絆を結んでるだけだから最後の曹操の処理に困るわけです。あんなんで孫権や劉備に納得されちゃ戦死者達に申し訳が立たないですよ。

 前編を見た誰もが期待し延々とオアズケをくらうことになる赤壁のクライマックスですが、目玉の「火計」は大迫力で何万隻もの曹操船団が燃えていく様は壮観。投石機や火矢の描く空のアートに暗闇の水面を煌々と照らす炎、強引な上陸作戦にばたばたと倒れる雑兵達。そこから陸戦に傾れ込み豪傑達のオモシロ大活躍。前回程の超人バトルはありませんが、劉備や孫権までが前線に投入される凄い展開で、決めポーズがいちいちカッコイイです。ただ、曹操側将軍が空気同然なので盛り上がりに欠けるのが残念。奴ら全員後方待機なんですが前線は誰が指揮してるんでしょう?

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レッドクリフ Part I

 『三国志』の有名な激戦「赤壁の戦い」を題材にジョン・ウー監督が贈る歴史エンターテインメント二部作。前編は「長坂の戦い」から「孫劉同盟」結成を経て「赤壁」前哨戦までで肝心の所は次回持ち越し。要するに途中から始まって途中で終わるのですが、その割りにフラストレーションは弱め。無駄に豪華な画にわかりやすく薄っぺらい物語に猛将たちの荒唐無稽超絶アクション満載。ゲーム等でキャラだけ知ってるなんて人にベストマッチです。逆に『三国志演義』好きや本格歴史ファン、そして曹操軍贔屓の人には極めて残念な造りなのでした。マピールさんは孫権陣営派でヘイト孔明な人ので双手を挙げて喜んでますが。とにかく良くも悪くもジョン・ウー映画です。

 主人公は吉川英治・横山光輝など『演義』を元にした作品で「孔明のかませ犬」をやってる孫権軍司令官・周瑜でして、聡明で知略・武略に通じ兵や民の信任厚い名将として描かれます。ま、周瑜に関してはそれが史実に近いんですが、機知に富む好敵手・曹操は女目当ての卑小な人物に成り下がり、温厚で度量大きい人徳の人・劉備には威厳のかけらもなく、君主・孫権も家臣団をまとめあげるカリスマが無いという解釈。そして劉備側軍師・孔明は一応バディの位置に納まり好人物に描かれているものの実は見せ場を奪われまくりです。劉備軍敗走時には有効な手を打てないし、同盟成立に向けての数々の工作は殆どカットされ周瑜がまとめた形となり、超人バトルと化した合戦では知謀の出る幕無し。馬のお産の手伝いぐらいしか役に立ってません。ジョン・ウー的には鳩を乾かすという重要な使命を担ってますが。
 劉備軍の関羽・張飛・趙雲が大活躍する他、おきゃんな孫尚香までが妙に目立っており『三國無双』ファンにウケが良かった事は想像出来ますが、日本における二枚看板の曹操・孔明の人気に頼らず興収50億円突破の大ヒットはちょっと意外です。エイベックスの社運を賭けた宣伝戦略があったとはいえ、トニー・レオン&金城武にそんなに集客力があるとも思えないのですが。

 常に単騎で投入される無敵超人たちの大立ち回りは見応え有り。「八卦の陣」の戦闘はちょっと長すぎると思うものの、タコ殴り戦法とホラー映画風の各個撃破に爆笑。琴シーンのファンキーな即興と突然ストップモーションとかの演出も楽しいです。劉備の草鞋編みを「三本の矢」風に巧く返し、虎狩り大好き孫権のシーンで主君の尻を叩き、通をニヤリとさせるシーンから必ず最後に美味しいところを周瑜が持って行く構成。監督の姿勢は一貫していて、我が子よりも趙雲の身を案じ劉備の株を上げる有名なシーンは無いし、美人姉妹の片割れである大喬は存在自体を無視と、周瑜と小喬の夫婦に並ぶ存在は徹底的に排除されてます。
 あと、ラブシーンはちょっとくどかったけど、小喬の人は絶世の美女に相応しく着物姿が美しいです。しかも周瑜に包帯巻いてるだけでもそこはかとなくエロエロだったりするわけで素晴らしい。ただ、トニー・レオンは『ラスト、コーション』のイメージが強すぎて「ここで豹変した周瑜が包帯で拘束した小喬をいきなりバックで・・・」とか想像してしまい弱りました。

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容疑者Xの献身

 東野圭吾の原作は未読ですが、その出来はかなり良いと推測させる作品でした。話の骨格がしっかりしてるのでオーバーアクト気味のキャラクターもバレバレで破綻気味のトリックもさほど気になりません。おそらくは探偵側のコミカル・テイストで人気を博したのであろうTVシリーズに引きずられることなくきっちりと犯人側の哀しい物語を描き、『ガリレオ』の金看板を外して数多の劇場版TVドラマと一線を画した点が立派です。
 但し、ミステリーとしてはダメダメです。原作からどの程度アレンジされてるのか知りませんが、あのトリックはどう考えても悪手で「だったら隠蔽出来るんじゃね?」という疑問がつきまとうし、警察の初動シーンで騙しの肝の部分が想像ついてしまう辺りは演出も巧くないです。

 ネタバレになるので具体的言及は避けますが、「天才」だの言ってる割りには論理飛躍がもの凄いのです。冒頭の大がかりな実験と同じで、理論的に可能でも現実的な選択肢としてはリスクが勝る解答を、さも特別なアイデアであるかのように偽装したに過ぎません。けど、作り手はこの弱点を理解してる節もありますね。普通なら「誰にも崩せない鉄壁のアリバイ」をもっと強調すると思うのですが、そこを曖昧にしたまま劇は進みますからね。ミステリーであることをバッサリと切り捨てた感じ。

 さて、弱めた「どうやって?」の部分を補うのが「なぜ?」の部分。これが本作のミソです。数学にしか興味が無く殺人などという非合理なことをしない男が献身的に事件に拘わる謎。一見ミスキャスト的でありながらも孤独で見た目も冴えない中年男を哀愁たっぷりに魅せた堤真一の功績も大きく話にぐいぐい引き込まれるのです。また、娘を抱えて健気に生きる元ホステスを演じた松雪泰子の生活に疲れた感じが良いです。観客の同情を誘いつつ「男を見る目がない愚かな女」として嫌悪感も持たれなきゃならない難しい役柄を見事にこなしてました。
 引き立て役にまわる事になる本来の主役・福山雅治ですが、設定的にキャラが浮くのは必定の中で頑張って踏みとどまった印象。同じ場所からサクセスの道を歩んだコントラストと謎にしか興味がなかった男の苦悩で、実は底の浅い自己犠牲を感動的にする事に成功。只、堤慎一共々「天才」という設定に足を引っ張られてる感はありますが。一方、柴咲コウは何の為に存在してるのかが謎という別の意味で憐れみを誘うポジション。もう少し見せ場をつくってあげてもいいのに。雪山とかヘリとかに意味なく注ぎ込んだ予算を回してねぇ。

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