「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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愛のむきだし

 「映画秘宝」誌でゼロ年代最強邦画と評価されたり各方面で大好評の、ずっと気になってた大長編をやっと観ました。独特のクセはありますが、ほんと物凄い作品でした。アクション&バイオレンス風味の青春コメディかと思えば、想像を遙かに超えて背徳と信仰を壮大に網羅するエネルギッシュな社会派純愛エンターテイメントなのでした。波瀾万丈な展開で少しも飽きさせず、なんだかわからないうちに4時間たってしまいます。混沌が『キル・ビル』っぽい映画なのですが、これが実話を基に製作されたというからビックリ。しかも後半の新興宗教の話だけじゃなく盗撮と変態の部分も含むと言うからまたビックリ。

 ストーリーを吟味すると4時間もかける必要は無さそうでシナリオの質が良いとはいえないんですが、タランティーノ作品のような間延びは一切無しに異様なハイテンションのまま矢継ぎ早に話を進めて無理矢理説得力を持たせる力業に感嘆。最初の1時間だけでも「母の死」→「父の転向」→「懺悔強要」→「非行」→「盗撮」→「女装」→「バトル」→「勃起」→「運命の女」と発想の異次元ぶりを見せつける謎すぎる流れが観る者を惹きつけます。梶芽衣子の『女囚さそり』へのオマージュと70年代風の演出・音楽なども絶妙でした。

 そして、アイドル上がりとは思えない満島ひかりの大活躍。登場早々パンモロでセーラー服空手アクション。その後もひたすらパンチラで自慰行為にレズビアンに緊縛監禁とアブノーマルな行為にとことん躰を張ってます。長回しで新約聖書の「コリント人への手紙」を一章丸ごと捲し立てる迫真の演技も見事。
 相手役の西島隆弘は全然知らない役者だったんですが、調べたらアイドル系の歌手兼ダンサーだそうで、こんな巨根の変態役を颯爽とこなしていいのかと心配になりました。普通の学生から盗撮王子に女装人格など色々な顔を上手く演じていて、男のくせに凄くキュート。今後の俳優活動に注目したいです。
 しかし、この二人以上に強烈なのが奥田瑛二の娘・安藤サクラ。満島ひかり同様パンチラ止まりで脱がないしし美人でも可愛くもないけど妙にエロエロです。そして、いかがわしく陰湿で猟奇的な恐ーい女を的確に演じています。板尾創路に跨り無表情でイチモツを下着に擦り付けるサイコっぷりや、話が進むほどに不気味さを増し壊れていく様は圧巻。
 それにしても三者三様の若手からこれだけの存在感を引き出せる園子温監督の手腕には恐れ入りますねぇ。

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ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

 太宰治の小説に太宰本人の破滅的な生き様を重ねて脚色したらしいので、暗くじめっとした作品なのかと思ったら意外と笑いどころが多かったです。監督・根岸吉太郎&脚本・田中陽造の手堅い仕事で終戦頃の雰囲気を醸し艶やかで美麗な映画に仕上がってます。壊れてる夫婦を描く切り口に目新しさはないですが、オーソドックスな日本映画として安心して観られました。最後の方は「女の自立」みたいな太宰らしからぬポジティヴな方向に舵が切られるのかとハラハラしましたが。

 ダメ人間の女房を天真爛漫に演じた松たか子がかなり魅力的。変に丁寧な喋りと素直で朗らかな性格で、下品な客達をあしらい不幸な境遇を根拠無くはね除ける明るさが心地よいです。迂闊に演じると只の天然おバカになるか全て計算尽くのしたたかな女になりかねない難しい役だと思うんですが、根っこでは夫同様というか夫以上に倫理を超えて自分を正当化できてしまう強さを繊細に表現していたと思います。
 松たか子なくして成立しない作品ではあるんですが、旦那役の浅野忠信もかなり貢献。シンプルに、インテリで無駄にナーバスな病的キャラにするのかと思いきや、座ってるだけでどこか滑稽な情けなさ愚かさを身に纏ってる感じに演じております。こういうユニークさで人を惹きつける演技をする人というイメージがなかったので凄く新鮮でした。他人行儀な話し方も良いです。
 伊武雅刀・室井滋など脇を固めた役者も渋い演技。とりわけ、人生狂わせる程にダメ男に貢いで媚びてヒロインを完全に見下してる愛人役・広末涼子が嵌り役でした。濡れ場も妙に生々しいです。んで、同じように脱がないにしても松と広末では限界線が結構異なることもよくわかりました。
 そんな中、華があり過ぎて溶け込めなかったのが妻夫木聡。初々しい誠実な青年を的確に演じてはいますが、どう見ても底辺の酒場でたむろす旋盤工には見えませんし昭和の香りもしません。場違いな店に訪れた弁護士・堤真一が浮いてるシーンで一緒に異物感を出す有り様。善人の仮面の下に危うさが垣間見えるような演出もされず、まんま草食系坊やで女たらしで名を馳せる亭主に嫉妬心を抱かせるポジションを振られても困るとは思いますが。

 ところで、この映画は戦後のハイパーインフレと闇市の時期で貨幣価値がややこしいことになってます。ちょっと調べたら銀行員大卒初任給が昭和20年で80円、原作小説によるとその頃の100円が3,000円相当というから大卒初任給が2,400円ぐらい。現代で初任給20万円として換算すると、浅野忠信が盗んだのが40万円強、最初に25万円払ったきり只酒を呑みまくり三年で積み上げた借金が大負けに負けて約170万円。堤真一のビールのような一本が1万円強の贅沢品じゃなく安酒で。毎日通ってるわけじゃないから一回で一升超は堅いですな。そんな客をのほほんと放置するなよ、店主。

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私の中のあなた


 白血病の姉を救うため遺伝子操作されドナーとして生まれた少女が、臓器提供を拒み両親を相手に訴訟を起こすというヒューマン・ドラマ。とはいえ、主演キャメロン・ディアスで次女役が『リトル・ミス・サンシャイン』のぽっちゃり女児アビゲイル・ブレスリンとくれば、無理を強いる親とドロドロの法廷バトルってな展開なわけもなく、終末医療の問題提起を軸に家族愛を描いた切なく温かく泣ける映画に仕上がっております。こういうのを観ると、日本の「難病もの」の多くが如何に安直で踏み込みが浅いかがよく判ります。

 ラブコメの女王と実力派子役の競演が話題で、二人ともそのユニークな魅力を遺憾なく発揮してくれてる本作ですが、それ以上に頑張ってるのが白血病の長女を演じたソフィア・ヴァジリーヴァです。当初は天才少女ダコタ・ファニングが起用(そして妹役も実妹エル・ファニングだった)されていた難しい役を見事にこなし、鼻血や嘔吐も厭わずに髪どころか眉まで抜けた顔を披露して強く優しくキュートに大熱演。実質の主役と言って良い活躍でした。辛い治療でボロボロになりながらもポジティヴに短い青春を謳歌する様がグッと来ます。ここは、恋人役トーマス・デッカーのTV版『ターミネーター』のジョン・コナーの時とは大違いの男振りにもやられました。

 デザイナーズベイビーの問題から、延命治療の是非、難しい問題に直面した家族の在り方まで観る者に考えさせる要素がてんこ盛り。多少の取っ散らかりや投げっ放しもありますが、説教臭かったり小難しかったりすることなく描くストーリーの構成が巧みです。現在と過去の回想が行き来し、視点も一人に固定しない重層的なシナリオの緊張感のおかげで、ミステリー仕立てのオチがわりと簡単に読めてしまっても問題なく楽しめました。地味だったパパと息子それぞれに、大事なところで家族を救う見せ場があるのも良かった。全体的には善人ばかりが出てきてちょっとロマンチックすぎる内容でしたけど、家族それぞれの心の中や弁護士・判事・担当医のエレガントな対応がしっかりまとめられてるのが素晴らしかったです。

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ディア・ドクター

 作品・脚本部門で数々の映画賞をさらった話題作ですが噂に違わぬ傑作でした。僻地医療・終末医療・老人の孤独・コミュニケーション不全など実に奥が深く考えさせられるテーマを盛り込みながら、お堅く感じさせないようにユーモアが散りばめられ、関心を途切れさせないドラマもあり、バランスが物凄く良いです。『ゆれる』でも思った事ですが、西川美和監督の洞察力とシナリオ構成力は只者じゃないですね。

 過疎地で慕われる医師と研修に赴任した若者という構図から現代版『赤ひげ』を想像してたんですが、感動のヒューマニズムにはほど遠く、むしろアンチテーゼ的な作品でした。これだけ人間の内面をえぐり出す内容を滑稽で穏やかで分かり易い娯楽作品にしてしまうのが凄いです。しかも、安易な泣かせや人情噺や断罪路線に奔らずに。
 伏線の巧さにも舌を巻きます。終盤で八千草薫が刑事に云う台詞が腑に落ちなかったんですが、序盤にある「先生、何にもしないでください。」に気付いて感嘆。二度見すると確信犯のキャラがさりげなく嫌味を吐いたりしてて面白いです。ラス前の刑事とのニアミスで笑福亭鶴瓶が煙草をふかす事で善に寄りすぎた鶴瓶の印象をグレーに戻し、意外なオチで更に視聴者を揺さぶる流れも凄い。失踪前後の二つの時間軸の混ぜ方も絶妙です。

 善悪と別の所でその人の望むようにしてあげてしまうキャラが鶴瓶師匠に異様にマッチしている他、瑛太・余貴美子・八千草薫・井川遥といった面々がそれぞれの持ち味をいかんなく発揮しドンピシャの演技を披露。とりわけ印象的だったのが香川照之で、便利に使われるコミカルなポジションかと思えば小狡く立ち回ったりシリアスに核心を突いたり見せ場が多いです。難しい役柄で狂言回しをこなしてる松重豊にも痺れました。この二人の共演シーンの事情聴取で不意に香川が倒れるシーンは演出的にも唸らされましたが。

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トランスフォーマー/リベンジ

 前作の闘いから二年後のお話ですが、たぶん前作観てなくても大丈夫。主役カップルの馴れ初めも肉屋のおっさんの正体も未だに思い出せないけど無問題でした。重要なのは「この映画の対象はアメリカのボンクラなティーン」だと理解しておく事、これ一点です。原作アニメになんの思い入れもなく、大味なストーリーやくだらないギャグの挿入は前回の経験で覚悟完了していたこともあり、“大爆発&カーチェイス馬鹿”マイケル・ベイ監督のサービス精神旺盛な匠の世界を存分に堪能出来ました。

 感心したのは、前回の問題点だった何が起きてるのか不明のアクションが大幅に改善されてる事。ベイにしては編集がマトモでスクリーンを目一杯使う悪癖が修正されてます。オープニングなんか夜間のバトルなのにハッキリクッキリ事態を把握出来ますし、売りの変形プロセスをしっかり見せたりロボ形態のヴァリエーションを増やしたり合体したりと随所に工夫が施されてます。ロボ達のキャラもかなり差別化され、乱戦下に銀色の奴らが混乱を産む程度に収まっているのもありがたいです。米軍もやたら格好良くて強いし、少年の心を掴んで放さない娯楽映像が満載と言えます。惜しむらくはラスボスが妙に弱いのですが。

 主人公パートの下ネタ系ギャグも凄い映像の箸休め程度には機能。新キャラの双子ロボやさかりのついたラジコンロボの所作は楽しいですし、ヒロインのミーガン・フォックスが無闇矢鱈に性的なのも非常によろしい。特に肌が露出しまくりのありえない作業着姿が強烈。ただ、「やりたい盛りの軟弱ハイティーン」だったシャイア・ラブーフは成長して「因縁を背負った勇敢な青年(初体験済)」というポジションに落ち着き、すっかり影が薄くなってしまいました。戦闘能力ゼロで頭脳も並の主人公には全く見せ場がなく、手が付けられないくらい強引なストーリーの渦に巻き込まれていく様が哀れ。ひたすら走るだけのクライマックスが涙を誘います。既に制作が始まっている第3弾ではミーガン・フォックスが電撃降板との事なので、新ヒロインとの恋愛ドラマを盛り上げて欲しいところです。

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