「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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第9地区

 ヨハネスブルグに住み着いた不気味でおバカな宇宙人集団に炸裂する南ア名物アパルトヘイトと無法な人類の虐待行為。アカデミー賞候補になるぐらいだから差別問題やら異文化との格闘を扱った真面目な映画になるのかと思いきや、ブラックな笑いに血肉が飛び散る生粋のB級SF映画なのでした。ちゅか、このぶっ飛んだグロ&バイオレンスは ポール・バーホーベン監督の『スターシップ・トゥルーパーズ』のテイストです。しかも、本家に抜けてたパワードスーツまで登場するサービスぶり。エロ方面が大きく後退してますが。
 何はともあれ、確実に観る者を選ぶ作品です。映像がチープなのも否めません。くれぐれも製作にクレジットされたピーター・ジャクソンに騙されてSF大作と勘違いしないように。

 オスカーを争った『アバター』とネタが被り、無慈悲な人類と搾取される少数民族の軋轢を描いておりますが、先住民の土地への侵略とは逆で此方は地球に住み着いてしまった難民というのがミソ。おまけにエイリアンから主人公を含む人類まで満遍なく民度が低いアナーキーな世界観ときてます。一瞬で人体を木っ端微塵にする超兵器を持ちながら野良犬レベルの知性の宇宙エビ、そんな隣人と友好的に暮らせるわけもない人類側は抑圧的な政府機関とそれを支持する住民に血気盛んな軍人といかれたマフィアを取り揃え見事な混沌ぶり。ただ、監督の出身地という事で南ア住民の描写にはエクスキューズも可能ですが、ナイジェリア人のあまりに酷い扱いには困惑。南アで何やったんだ、ナイジェリアは。

 ストーリーも細部に工夫があり意外性があって面白いんですが、それ以上にキャットフードが大好きでブラジャーつけたエイリアンとか、重力兵器で飛ばされる豚とか、斜め上の発想が楽しいです。それに『ザ・フライ』や『エイリアン2』などの影響も入ってるし、パワードスーツは『アップル・シード』な上にミサイル発射シーンは「板野サーカス」と、洋の東西問わずSFオタク的ネタが満載。怒濤の破壊行為からクライマックスの燃え戦争アクションに至る流れが、わかってる人が作ってる事を感じさせ、そのドライブ感が心地よいのでした。

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ハート・ロッカー

イラク戦争における米陸軍爆発物処理班の活動を題材にしたアカデミー賞6冠作品・・・の割りに極端に賛否が分かれてるっぽい問題作。まあ、主人公がクレイジー過ぎますし、爆弾処理描写は何がどうなっているのか理解不能だし、指揮系統が曖昧で独立支援部隊か何かのような行動に不可解な点も多いので、娯楽作品としてはわかりにくくリアルな軍事モノとしても考証が酷すぎる気がします。でも、異様な緊迫感で意味の無い戦いが無限ループで続くマッチョな恐怖映画として面白かったですよ。描かれるのがあまり知られてない仕事というのも好奇心が満たされますし。

 冒頭で「戦争は麻薬である」と引用される通り、テーマは「戦争中毒者の狂気と悲劇」なんですが色々と一筋縄では行かないのが興味深く。常套なら普通の善良な若者が地獄を見て変わっていく様子を捉えるでしょうに、本作は爆弾処理が大好きなだけのジャンキーを主人公に据えており、それが次第にテロ犯への怒りを顕わにするまともな人物に変遷していく様を描くという変化球なのでした。それが英雄的な兵士に成長するというわけでもなくてですね、既に戦争中毒者であった男が大義やら使命感やら持つというのは最悪の男が最悪の状態で大暴れという事に他ならないという・・・。
 そんな暗いドラマが展開されるのは、やたら暑そうな荒れた風景の中で一般市民がごちゃごちゃと生活を送る町。この描写と強烈なストレスで疲弊していく兵士の心情との相乗効果が素晴らしいです。爆弾テロには色々な種類がありますし、唐突に砂漠のど真ん中で狙撃戦が繰り広げられたり飽きさせない工夫も豊富で良く出来てます。後半に筆が滑りすぎのあり得ないイベントが続くのはアレですが。

 しかし、この映画を見ると「戦闘地域」だの「非戦闘地域」だのと騒いでいたのがバカみたいですな。爆弾テロの無差別非道ぶりにこんな分類は意味を為してませんし、主な標的もイラクの一般市民であり米とか日とかあまり関係ないようですし。陸自の居たサマーワは比較的治安が良かったとされますが空自はバグダッド国際空港でも活動してたわけで、死傷者が出なかったのが奇跡に思えます。反撃すら難しい特措法下の自衛隊をこんな所に派遣するって狂気の沙汰ですよ。民生支援も論外。

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ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー 他

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マイレージ、マイライフ

 マイレージ集めが趣味で「バックパックに入らない物は背負わない」が人生哲学の、家庭を持たずに年間300日超を出張に費やして全米を飛びまわるリストラ宣告人の主人公に、ネット解雇導入で出張全面廃止という合理化案が降りかかり云々というアイロニーたっぷりのコミカル人間ドラマ。主人公のように仕事を愛してないし華麗に旅をこなせないし気軽な愛人もキープしてませんが、不惑を過ぎた独身男としては「オイラの人生って・・・」と身につまされるのでした。

 明日は我が身な製造業勤務でありますしリストラされた経験もあるので当初は主人公を敵視しつつの観賞だったわけですが、主人公の深い人間関係を築こうとしないライフスタイルに共感し機微もわからぬ小娘には反感と、瞬く間に作り手の思う壺に。特に自らの主義に反して結婚に怖じ気づいた妹のフィアンセを説得するくだりには来る物が有りました。こちとら姪っ子が適齢期を迎えてまして、もしも式のスピーチとか頼まれたらと思うとげんなりですから。好きで宙ぶらりん状態にいるとはいえ、支えてくれる家族や友人を着実に減らしながら年輪を重ねてるわけで、色々と捉えようがある終わり方なのにポジティヴに受け取るのは難しかったです。

 そんな個人的事情は別にして、馘斬りという非情の仕事を罪悪感無くドライにこなしながら、デジタルなリストラには否定的という主人公のスタンスが笑えます。単純にマイルが貯まらないから反対ってわけじゃない所がいい。始終フワフワしたコメディなのに結構辛辣で苦い展開なのも良いです。只、終盤の主人公の変化があまりに急ぎ足なことや、ネット解雇の顛末が雑で大事な所の筋が通ってないのが残念でした。

 それにつけてもアナ・ケンドリック。『ジュノ』でも思いましたがジェイソン・ライトマン監督は現代っ子の娘さんをキュートに撮るのが上手いですねぇ。上司ジョージ・クルーニーの恋のお相手はあくまでヴェラ・ファーミガであり、彼女は只の小生意気な新入社員に過ぎず中途半端にフェードアウトしてしまう役なんですが無駄に可愛すぎる。ちみっちゃい躯のスーツ姿には不似合いなはち切れんばかりのバスト、髪を下ろせば子供っぽく泣き方も幼く、ベロベロに酔っぱらって歌う「Time after Time」がこれまたチャーミング。主演の二人がスマートにキメてる大人の男女を的確に演じたからこその輝きもありましょうが、今後の活躍に注目したい若手女優だと思います。まあ、『トワイライト』シリーズの観賞は遠慮したいけど。

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(2010/08/27)
ジョージ・クルーニーヴェラ・ファーミガ

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曲がれ!スプーン

 『サマータイムマシン・ブルース』と同じく監督・本広克行×脚本・上田誠で贈る劇団・ヨーロッパ企画の舞台作品映画化第二弾は、能力を隠して暮らすエスパー達が集う喫茶店に紛れ込んだマスコミ女の織り成すハートフル・コメディ。けれど残念ながら前作ほどの出来ではなく、『UDON』などで顕著だった監督のバカみたいに説明過多な特性が強く出ており、恐らくは原作の魅力を大きくスポイルしてしまってると予想。長澤まさみファンにもガッカリな感じで、小劇団系のゆるーい会話が好きな人向けです。

 とにかく、テレビ局のサイキック・バラエティの話と番組担当ADの取材行脚のパートがつまらないです。どうやら本来は喫茶店の中だけで展開するエスパーたちのドタバタだったようで、彼らの会話だけで済まされてたものを膨らまして映像化したのが上記シーンと思われます。主役なのにそんなどうでもいい枝葉を延々と担わされる長澤まさみが気の毒で気の毒で。喫茶店に辿り着くまでの1時間ばかりは完全に蚊帳の外に置かれ、合流後もエスパー達の引き立て役に過ぎず、ビックリするほど見せ場がありません。「番組に出演したエスパー達は不甲斐ないけどきっと本物はいる!」とか「スクープをものにしないと仕事を馘になる!」とかで必死な様子を見せてくれればクライマックスでエスパー達の動機に繋がるんですが、「サンタがいなくて残念」程度の曖昧な想いで仕事ぶりに熱意も苦悩も表れてないのに同情とか応援とか無理ですよ。そもそもサンタはサイキックじゃないし。
 そのクライマックスで殆どの者が特に超能力を必要としない役割というのも腑に落ちません。制約の多い舞台とは違うのだからそこはもっと工夫して全員の力を結集させてくれないと。サイコキネシスの大ネタにしても舞台であれば十分にインパクトを与えられたでしょうが映画にそのまま適用すると間抜けでしかないものですしね。あと、ヒロインがエスパー個々の能力に勘づくようにちゃんと伏線張って理由付けしないと。どうにも緻密さに欠ける印象。

 良かったのは配給規模を考えると信じられないほどの地味で無名な男優陣。うっかりしてると客寄せ用のお笑い芸人を安直にキャスティングされかねないところに、独特の雰囲気があって良い具合に胡散臭く芝居できる実力派を起用できたのは、ドル箱監督の発言力の賜物でしょう。喫茶店でのやり取りにもっと時間を割いてほしいと思うほどに、セリフの掛け合いは楽しく間合いも演劇的でいいアンサンブルでした。嗚呼、そんな中に放り込まれ慣れないコメディエンヌを要求される長澤まさみが重ね重ね・・・。

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(2010/05/19)
長澤まさみ三宅弘城

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