「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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南極料理人

 南極観測隊員としてドームふじ基地で調理を担当した人のエッセイを原作としたとってもライトなコメディ。冒険もロマンも大事件もストイックなプロのお仕事も無く、閉鎖された土地で過ごす男8人の織り成す喜怒哀楽を食事を通じて描く事に専念していて、ほのぼのな空気感にゆるーい笑いがジワジワ来ます。とても南極とは思えないチープな映像を背景にむさい男所帯の合宿生活を描く映画ではありますが見応えは結構ありました。

 「美味しいものを食べると元気が出る」という主題を何度も何度もやる作品なので重要なのが料理の表現なんですがコレが秀逸。ご飯を食べるシーンの殆どで男達は旨いとも不味いとも言わずに黙々と箸を進めるんですが、旨そうな料理は旨そうに不味そうな料理も不味そうにきちんと撮れているのがナイス。特に「豚汁とおにぎり」と「手打ちラーメン」が魅惑的でした。
 敢えて越冬の過酷な部分に深入りしない姿勢が貫かれてるのも面白かったです。タロ・ジロの時代よりは随分快適になったんだろうけど、時間感覚すら狂わす白夜と極夜の中で作業を阻害する悪天候と戦い息が詰まるようなストレスを抱え込んで暮らすというのは変わってないと思うのですよ。なのに、彼らの死と隣り合わせのアカデミックな活動や大自然の驚異は軽く触れる程度で済ませ、まったりとお気楽な日常部分をポジティヴに誇張しシチュエーション・コメディに仕立てたのには感心しました。
 キャストも小劇団っぽくて良いです。内心はどうあれ上辺はいつも微笑んでいるような堺雅人のイメージを最大限に利用し、生瀬勝久・きたろう・豊原功補といった濃いキャラクター達が笑いの部分を的確に抑えていた印象。そこはかとなくユーモラスな台詞回しもツボでした。

 恐らく実際にあった面白可笑しいエピソードを繋ぎ合わせて脚色したのであろう本作は、「閉塞状況を乗り切る為になるべく楽しく凄そう」という隊員達の暗黙の掟を上手く捉えてると思うんですが、そんな中で車両担当の人だけがネガティヴでダメダメな描かれ方をされていたのが少し残念。内燃機関が命綱の環境で暮らしてるんだから、彼を持ち上げるエピソードをちょっと付け加えても罰は当たらないのに。
 あと、観測隊参加を夢見て20年の人が直前でチャンスを棒に振るなんていう暗い話は現実のエピソードの有無に拘わらず不必要だったんじゃないかと。始終ほんわかなこの物語でここだけちょっと浮いてる気がしました。観測隊って志願じゃなきゃ参加できないだろうから、主人公の経緯は少々不細工に思えましたし。

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堺雅人、生瀬勝久 他

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2010ブルーリボン賞

・シネマ報知 | ブルーリボン賞

 大本命『悪人』が作品賞を滑りました。まあ、他の映画賞の選出と違うことが多い賞なので『告白』の受賞は想定内でしたが、監督賞に『川の底からこんにちは』が食い込んで来たのは予想外。満島ひかりとの電撃結婚で話題を攫った石井裕也監督は弱冠27歳でのブルーリボン賞制覇です。

【主要部門賞】
 作 品 賞 『告白』
 監 督 賞 石井裕也  『川の底からこんにちは』
 主演男優賞 妻夫木聡  『悪人』
 主演女優賞 寺島しのぶ 『キャタピラー』
 助演男優賞 石橋蓮司  『アウトレイジ』『今度は愛妻家』
 助演女優賞 木村佳乃  『告白』
 外国作品賞 『第9地区』

ベスト・オブ・ベスト アワード2010

・ベスト・オブ・ベスト アワード2010(cinemacafe.net)

 CS放送局「ムービープラス」、シネコン「ユナイテッド・シネマ」、映画WEB「シネマカフェ」の3社共同で映画ファンによる投票で決める「ベスト・オブ・ベスト アワード 」は、批評家や映画通の選考とは大違いのランキングが形成されております。
 ヒットはしたけど評判がよろしくない『アリス・イン・ワンダーランド』はともかく、、興収100億円を突破し中身も好評を博した『アバター』&『トイ・ストーリー3』が上位に食い込めてないのが不可解。それらを抑え堂々1位が『THE LAST MESSAGE 海猿』というのをどう分析すべきか悩みます。ジャニーズ映画が奮戦してるから女性票が中心なのでしょうが伊藤英明ってそんなに人気あるんですか?
 ベストアクトレス部門で深津絵里を選んでおいて『悪人』はベストテン圏外というのも謎ですな。小説が爆売れした水嶋ヒロがベスト・アクターでは影も形もってのもアレですが。

【ベストテン】
1位 『THE LAST MESSAGE 海猿』
2位 『インセプション』
3位 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
4位 『トイ・ストーリー3』
5位 『SP 野望篇』
6位 『告白』
7位 『大奥』
8位 『アバター』
9位 『アリス・イン・ワンダーランド』
10位 『十三人の刺客』

【個人賞】
ベスト・アクター   伊藤英明 『THE LAST MESSAGE 海猿』
ベスト・アクトレス  深津絵里 『悪人』
ベスト・ディレクター クリストファー・ノーラン 『インセプション』

2010「映画芸術」誌、日本映画ベストテン&ワーストテン

・映画芸術: 2010年日本映画ベストテン&ワーストテン

 独自の批評スタイルというか、ベスト票の点からワースト票の点を引いてランキングするシステムなので編集長・荒井晴彦の意志が反映されやすい「映芸ベスト&ワースト」。今年はキネ旬ベストで2位の『告白』と6位の『キャタピラー』が血祭りに。更に同1位の『悪人』はベストもワーストもランク外という歌舞いた結果となっております。

【ベストテン】
1位 『ヘヴンズ ストーリー』
2位 『堀川中立売』
3位 『これで、いーのかしら。(井の頭) 怒る西行』
3位 『パートナーズ 』
5位 『イエローキッド』
6位 『川の底からこんにちは』
6位 『さんかく』
8位 『十三人の刺客』
9位 『海炭市叙景』
9位 『時をかける少女』
9位 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』

【ワーストテン】
1位 『告白』
2位 『キャタピラー』
3位 『おとうと』
4位 『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』
5位 『東京島』
6位 『座頭市 THE LAST』
6位 『シュアリー・サムデイ』
8位 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』
9位 『踊る大捜査線THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』
9位 『ソラニン』

沈まぬ太陽

 読んだことはないですが文庫本で全5巻に及ぶ山崎豊子の長編小説の映画化であるからして3時間22分の長尺であろうと駆け足ダイジェスト編集版になるのは否めないと予想してました。しかし、殆ど混乱することが無い上に社会派のドラマは重厚で少しも長く感じなかったです。超豪華ベテラン俳優陣がじゃんじゃん出ては消えていくこの手の映画では先ずあり得ない丁寧で分かり易いとすら感じる脚本&演出に感服。主人公には全然共感できないんですが。

 時間軸の長さにしろ登場人物の多さにしろ大河ドラマ級の題材を扱うわけですからエピソードや人物の掘り下げは不十分にならざるを得ないわけですが、そこを渡辺謙扮する愚直な主人公の生き様に絞って過剰なまでの説明台詞で物語を整理してしまうのが凄いです。人生経験が浅いと昭和的な権力闘争や企業戦士の感覚が掴みにくいかも知れませんが、キャスト的にみてメイン視聴層は中年以上で鉄板だから問題無いでしょう。出世のため金のために腐敗していく敵役・三浦友和も、彼の側からのストーリーを同じ分量描いて欲しいぐらいに熱演。それじゃ『白い巨塔』ですけど。

 一方で、CGが物凄く酷いです。題材が題材だけに航空会社の協力を得られない事情があったんでしょうが、飛行機が出る毎に違和感を与えるレベルというのは予算配分を間違ってるとしか・・・。
 あと、フィクションと言い張りながら現実の出来事を連想するしかない墜落事故をストーリーに組み込み露骨な日航批判を展開するスタンスや労組美化は不快でした。作り話の部分も確実に事実と混同しますし、いまや労組側も経営悪化の大きな要因と認識されてるわけですし。腐りきった経営陣や政府の問題は原作が書かれた時点では先見の明だったのでしょうが、日航の破綻と再建問題がクローズアップされた現在に敢えて遺族への配慮に欠くように思える御巣鷹山関連ネタをインサートする必要があったのか疑問であります。

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2010ゴールデン・グローブ賞

・『ソーシャル・ネットワーク』ゴールデン・グローブ賞4冠 N・ポートマン主演女優賞(cinemacafe.net)

 今年は『ソーシャル・ネットワーク』の独壇場ですなぁ。『ツーリスト』というガチのサスペンス映画が何故かコメディ部門の方にノミネートされ、「老害」だの「買収」だの物議を醸したらしいゴールデン・グローブ賞ですが、蓋を開けてみれば実に穏当なセレクトだった模様。

【主要部門賞】
<ドラマ部門>
 作 品 賞 『ソーシャル・ネットワーク』
 主演男優賞 コリン・ファース    『英国王のスピーチ』(02/26 公開)
 主演女優賞 ナタリー・ポートマン  『ブラック・スワン』(G.W.公開)
<ミュージカル/コメディ部門>
 作 品 賞 『キッズ・オールライト』(G.W.公開)
 主演男優賞 ポール・ジアマッティ  『Barney's Version』(原題)
 主演女優賞 アネット・ベニング   『キッズ・オールライト』
<共通部門>
 監 督 賞 デビッド・フィンチャー 『ソーシャル・ネットワーク』
 脚 本 賞 アーロン・ソーキン   『ソーシャル・ネットワーク』
 助演男優賞 クリスチャン・ベイル  『ザ・ファイター』(03/26 公開)
 助演女優賞 メリッサ・レオ     『ザ・ファイター』

2010放送映画批評家協会賞

・ブロードキャスト映画批評家協会賞も「ソーシャル・ネットワーク」が作品賞(eiga.com)

 放送映画批評家協会(BFCA)主催“クリティックス・チョイス・アウォード”も『ソーシャル・ネットワーク』。圧倒的な強さです。俳優部門もこのラインナップがオスカー本命とみていいでしょう。あと、技術部門は『インセプション』vs『アリス・イン・ワンダーランド』の様相です。

【主要部門賞】
 作 品 賞 『ソーシャル・ネットワーク』
 監 督 賞 デビッド・フィンチャー 『ソーシャル・ネットワーク』
 脚 本 賞 デヴィッド・サイドラー 『英国王のスピーチ』(02/26 公開)
 脚 色 賞 アーロン・ソーキン   『ソーシャル・ネットワーク』
 主演男優賞 コリン・ファース    『英国王のスピーチ』(02/26 公開)
 主演女優賞 ナタリー・ポートマン  『ブラック・スワン』(G.W.公開)
 助演男優賞 クリスチャン・ベイル  『ザ・ファイター』(03/26 公開)
 助演女優賞 メリッサ・レオ     『ザ・ファイター』

ノウイング

 『アイ,ロボット』のアレックス・プロヤス監督がオリジナル脚本で贈る人類滅亡系のディザスター・ムービー。グラフィックの完成度の高さは見て取れるものの、予告編から受ける印象は間違いなく駄作で、実際に予感は間違いじゃなかったと言えるトンデモ話なのですが、ツッコミどころ満載で意外に面白かったです。けど、大スペクタクルシーンを予告でばらしちゃ駄目なところも含めてがっつり見せちゃうのはどーなのか。あと、後述しますが宗教的な側面にはちょっと閉口。

 パニック映画と思ったら冒頭から50年前のチャネリング少女が登場して自動書記というオカルトな流れに驚かされました。現代に舞台が移ったら移ったでニコラス・ケイジが『ナショナル・トレジャー』被りもなんのそので暗号を高速解読。それが過去50年の世界規模な大惨事を記したものと判った時点で残る予言は3件と展開を更に加速し、サスペンスタッチのストーリーに傾れ込みスケールがどんどん大きくなっていく辺りはワクワクするんですが、「絶対畳めんな、この風呂敷」な予想通りに後半は一切の捻り無くお馴染みのオチに突き進むのが素敵。潔すぎて逆に新鮮でした。
 折角の災害予告がタイムカプセルに封印されてる時点で未来を知る筈の送信者が何をしたかったのか意味不明だし、主人公が惨事を防ぐ使命感に燃える理由もわからないし、そもそも謎が解読できたところで何の足しにもならなかったりで、脚本の適当加減は特筆モノ。宗教性溢れた終末思想がベースなのに、人類に警鐘を鳴らすこともなく個人的にあたふたするだけの主人公というのは新しいですが。

 バカ映画好きなのでストーリーは許容レベルでしたが、人間ドラマの薄っぺらさの方が気になりました。主人公の家族にしてもヒロインにしても上っ面をなぞっただけで感動のラストに持ち込むのは無理があります。子供達の演出も不自然で、親子の絆が描かれているようには思えなかったです。この原因は物語の根底に流れるニューエイジ的な価値観でしょう。一見キリスト教的終末論に見えますが、「偶然はない」とか「永遠に一緒」とか「高次の存在」とかはニューエイジャーの思想に他なりません。嫌いなんですよ、スピリチュアルな考え方。

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2010 キネマ旬報ベスト・テン 個人賞・作品賞

・「悪人」4冠…キネマ旬報ベストテン(スポーツ報知)

 『悪人』がスタッフ部門主要3冠を達成。それでいて俳優賞は助演男優賞のみに留まるというのが泣けます。そして異色なのが、出演作がどれもベスト・テン圏外ながら助演女優賞をゲットした安藤サクラ。奥田瑛二の娘です。『愛のむきだし』の強烈な印象が残ってるので出演作には興味があるんですが、どれを観ればいいのかわからなくて困りますな。

【主要部門賞】
 作 品 賞 『悪人』
 監 督 賞 李 相日  『悪人』
 脚 本 賞 吉田修一、李相日 『悪人』
 主演男優賞 豊川悦司  『今度は愛妻家』『必死剣鳥刺し』
 主演女優賞 寺島しのぶ 『キャタピラー』
 助演男優賞 柄本 明  『悪人』『桜田門外ノ変』等
 助演女優賞 安藤サクラ 『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』『トルソ』等
 外国作品賞 『息もできない』

2010 キネマ旬報ベスト・テン

・2010年 第84回 キネマ旬報ベスト・テン

 『悪人』『告白』『十三人の刺客』が今年の3強と認識してたら『ヘヴンズ ストーリー』なる私にとって未知の映画が割って入っております。外国映画はトップの『息もできない』からして存在を認識してません。そして、相変わらずイーストウッド監督が強いですな。

【日本映画ベスト・テン】
1位 『悪人』
2位 『告白』
3位 『ヘヴンズ ストーリー』
4位 『十三人の刺客』
5位 『川の底からこんにちは』
6位 『キャタピラー』
7位 『必死剣鳥刺し』
8位 『ヒーローショー』
9位 『海炭市叙景』
10位 『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』
次点 『武士の家計簿』

【外国映画ベスト・テン】
1位 『息もできない』
2位 『インビクタス/負けざる者たち』
3位 『第9地区』
4位 『白いリボン』
5位 『ハート・ロッカー』
6位 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
7位 『クレイジー・ハート』
8位 『冬の小鳥』
9位 『スプリング・フィーバー』
10位 『インセプション』
次点 『ブロンド少女は過激に美しく』

【文化映画ベスト・テン】
1位 『ショージとタカオ』
2位 『月あかりの下で~ある定時制高校の記憶~』
3位 『ただいま それぞれの居場所』
4位 『442 日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍』
5位 『弁護士 布施辰治』
6位 『生きもの 金子兜太の世界』
7位 『森聞き』
8位 『沈金 前史雄のわざ』
9位 『ANPO』
10位 『里山の学校』
次点 『おってくらんし、アイ・コンタクト』

2010全米映画批評家協会賞

・「ソーシャル・ネットワーク」全米映画批評家協会賞も4冠で圧勝(eiga.com)

 アカデミー賞の前哨戦として注目される全米映画批評家協会賞(NSFC賞)が発表になり、またも実名登録SNSフェイスブック創立の裏話を題材にした『ソーシャル・ネットワーク』が主要部門4冠。下衆野郎ぶりを描かれた金持ちの若僧マーク・ザッカーバーグの心中や如何に。

【主要部門賞】
 作 品 賞 『ソーシャル・ネットワーク』(01/15 公開)
 監 督 賞 デビッド・フィンチャー    『ソーシャル・ネットワーク』
 脚 本 賞 アーロン・ソーキン      『ソーシャル・ネットワーク』
 主演男優賞 ジェシー・アイゼンバーグ   『ソーシャル・ネットワーク』
 主演女優賞 ジョバンナ・メッツォジョルノ 『勝利を』(未公開)
 助演男優賞 ジェフリー・ラッシュ     『英国王のスピーチ』(02/26 公開)
 助演女優賞 オリヴィア・ウィリアムズ   『The Ghost Writer』(原題)

空気人形

 持ってはいけない「心」を持ってしまったダッチワイフが街へ繰り出し、どこか空っぽな人たちと織り成すシュールなファンタジー。原作はわずか20頁の漫画だそうで、殆ど是枝裕和監督のオリジナル脚本レベルに膨らんでいるものと推測されますが、現代社会の抱える病理を生々しく捉えた途方もなく寂しくて奥が深い物語が美しく紡がれております。あまり好みの作品ではないんですが傑作なのは否定できません。

 人形から人間への成長プロセスを演じる実力が要求され、設定上汚れ役必然かつヌード&濡れ場必至で、勿論若くて無垢で透明感なきゃ務まらない大役に白羽の矢が立ったのは韓国女優ペ・ドゥナ。正直、アラサーの外国人起用には疑問符だったのですが、幼く見えるルックスに抜群の表現力、加えて驚愕のナイスバデーと訥々とした片言の日本語が見事に嵌るクリティカルなキャスティングでありました。演出力に定評のある監督との相乗効果がいかんなく発揮されております。「CGじゃないの、コレ?この娘、本当にビニールで出来てるんじゃない?」と思うほど手足の動きとかが衝撃的でした。空気が抜けたり膨らんだりする時の喪心と恍惚の表情も凄いし、ダッチワイフとして使われてる時の無表情も迫真。なんというか肉体を感じさせない演技でした。節操ないほどにヌードシーン三昧なのにエロイというよりキレイ。特に自分でエアポンプを操作する横座りの裸身で見せたバランスの良い姿態が印象的でした。それにしても、ここまで脱ぎっぷりのいい女優だったとは。

 そんなわけでペ・ドゥナはばっちりなんですが、周りの都市生活者たちに共感を得られるようなリアリズムが欠けてる印象で、キャラ多すぎが災いしとっ散らかってもいて不満。空虚がテーマらしいので浮遊感が大事だったんだろうけど、群像劇としては微妙です。空気人形の恋のお相手としてちゃんと見せ場があるARATA以外では、人形の所有者である板尾創路が変態チックにならないように孤独な人形愛を上手く表現していて「もっとこの男のドラマが観たい」という出来だったものの、父と娘・アラフォー女・自首マニア・警官などと人形の繋がりは曖昧に描かれ、特に過食症のOLが掘り下げ不足なのは物足りなく感じました。
 シニカルでブラックでルールがきちっとしてるモノを好む性分なんで、本作で構築されるイノセントでメランコリックな箱庭が単純に癇に障るってのもありますが、好んで他者を拒絶して生きる人々に「空虚感を埋める」という命題がナンセンスに思えてどうにも入り込めなかったです。

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サブウェイ123 激突

 過去に何度もコンビを組んできたトニー・スコット監督×デンゼル・ワシントンが悪役にジョン・トラボルタを迎えて贈る犯罪スリラーの佳作『サブウェイ・パニック』のリメイク。巻き込まれた男が地下鉄をジャックした悪党と交渉するはめになるアウトラインは同じですが、現代風の手直し以外に主役の設定が鉄道公安官から運行司令部の職員になってたり、犯人の性格が変わってたりかなり色々とアレンジされてます。・・・その捻りが悉く失敗するという悲惨な事態になってますが。

 はっきり言って全然面白くなかったです。短いカットに効果を付けまくってスタイリッシュな映像を繋ぐ作風は健在ですし話もテンポ良く進むんですが、ドラマが今ひとつ盛り上がらないままエンドロールに突入されても不満がつのるばかりです。古典的なサスペンスなんで斬新なストーリー展開は端から期待してなかったですが、まさか知的興奮を誘う心理戦や小粋な会話や凝った伏線回収などの必須要素を片っ端からオミットするとは。
 戦略もなく場当たりで対処するド素人ネゴシエーターを相手に喋る毎に情報を漏らす隙だらけの犯人に、穴だらけの犯罪計画、ポンコツなNY市警、必然性無くいきなりヒロイックになる主人公などが揃う日本のTV屋のお家芸みたいなシナリオに愕然。何かありそうで何もないってのがとにかくストレスになります。現代テクノロジーとかも全然活かせてないですし、わざわざセフティの外し方をレクチャーしたそこが伏線じゃないばかりかクライマックスで持ってる銃自体がこの銃と全く違う型なのに唖然。わざわざ注目させといてなんでそんなミスを?
 普通ならバカ映画として笑い飛ばせそうな要素が盛り沢山なのに不快感が勝るのは、人質達の挙動がメイン・ストーリーに殆ど影響を与えず単発ネタで終わるなどのサービス不足。小便の男も空挺隊もバカップルも無意味すぎてつっこむ余地がないのです。ジャックされた地下鉄車内の映像がネットで生中継されるという美味しいネタを猫跨ぎとか信じられませんよ。同じように無内容であってもきちんと客のニーズに応えてくれるジェリー・ブラッカイマーは偉大です。彼のプロデュースあってのトニー・スコットなんだと痛感させられる一作でした。この穴はデンゼルとトラボルタがいくら頑張っても埋まらないのです。

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