「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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さんかく

 同棲中の恋人の部屋にその妹が夏休みを利用して転がり込んできて云々という、アラサー・カップルと中3娘が織り成す奇妙な三角関係を描いたラブストーリー。普通ならスルー確実な作品なんですが、「映画秘宝」方面で妙に評判が良いことが気になってチェック。なるほど、全然想像と違う、いかにも「秘宝」好みのブラックで怖ーい三者三様ダメ人間の悲喜劇でありました。まさに脚本と演出の勝利な作品。

 前半はオーソドックスに思春期の無防備な少女がカップルを無自覚にかき回す展開で、それにかこつけてアイドルの成長途上の胸元とか太腿とかをフレッシュかつエロく撮る事を目的にしてる感じでした。妹役を演じた小野恵令奈はAKB48の娘だそうで、友情出演の大島優子すら登場シーンに無反応な当方としては当然の如く名前も顔も知らなかったわけですが、舌足らずな喋りと謎の行動で悪意無く男を惑わせる気紛れな子供を見事に演じてたと思います。まあ、たぶん当て書きなんでしょうが。

 しかし、そんな彼女は意外にも途中退場。終盤にちょこっと再登場するものの物語を引っ張るのは同棲の二人となり、ここから本作の痛い人間模様が更にヒートアップし話は俄然面白くなっていきます。とにかく田畑智子がヤバすぎで、並のJホラーなんかよりずっと怖いです。こういう依存型の女ってリアルにいそうなわけですが、ウザくなりがちな役をギリギリ可愛いラインに踏みとどめてしまう演出力&演技力に感嘆。そして、15の小悪魔に惚れたばかりに悲惨なることになる三十路男・高岡蒼甫のはまりっぷりも半端ないです。先輩風を吹かせるも実は人望無くビッグマウスでナルシストで愚かな元ヤンキーという痛い存在で、しかしどこか憎めなくて母性をくすぐる感じが実に良いのです。
 曖昧なラストの三人の気まずい表情も素晴らしかったです。

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(2010/11/03)
高岡 蒼甫、小野 恵令奈 他

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ヒーローショー

 2006年に起きた東大阪リンチ殺人事件をモチーフにした青春バイオレンス。「キネマ旬報」と「映画秘宝」の年間ベストテン双方で8位入着してる話題作です。両誌のベクトルがかなり異なる事を考えるととっても凄そうと思ったのですが、これはちょっと期待し過ぎでした。いや、鬱系でアンチ・ハッピーエンドなオイラ好みの映画には違いないのですが。

 とにかく、中盤までは不毛な暴力を怒濤の如く描いていて最高に盛り上がるのですが、埋めてしまった後は二人の主人公のプチ・ロード・ムービーがダラダラと続き結構かったるいのでした。恐喝兄弟や重機オヤジから更なる暴力の連鎖という思惑を肩すかしされた事もあり、後半は無駄に長く感じたし展開も弱くオチもぬるいと思いました。「昔のひとーがー♪  いうことみたいだーとー♪」な説教をかましつつも夢破れゆく今どきの若僧へのエールを込めてる点は好印象なのですが、やっぱり物語は『ミスティックリバー』風に陰惨で絶望的であるべきだったと。

 井筒和幸監督というのは『ガキ帝国』の紳助・竜介とか『岸和田少年愚連隊』のナインティナインとかお世辞にも演技が上手いとは言えないお笑いコンビを起用して成功を収める驚異の演出力の持ち主で、今回もジャルジャルの二人をはじめ無名の吉本芸人や若手俳優をごっそり揃えてるんですが学芸会みたいには決してなりません。特にジャルジャル・福徳秀介のダメ人間ぶりは完璧レベル。ごく自然に悪気もなく次々と嘘をつくのがまた良いのです。相方・後藤淳平も暴力を振るう側の怯えを丁寧に表現してました。他では事件の発端となり事態を悪化させていくチャラ男くんが印象的。けど、寝取った女をナース姿にしてスパンキングってまだ若いのに随分とマニアックですな。これだからポルノ出身監督は・・・。

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(2010/11/26)
後藤淳平(ジャルジャル)、福徳秀介(ジャルジャル) 他

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オーケストラ!

 ブレジネフ体制の旧ソ連で弾圧により楽団を追われた天才指揮者が、30年間の沈黙を破りかつてのメンバーを集めて偽楽団を結成しパリへと向かうコメディ。てっきりロシア映画だと思ってたらフランス映画でした。両国の民族ネタや国家ネタをさして理解出来ないというハンデはありましたが、ベタなギャグも十二分にあるし笑いの品も良く、色々と中途半端で煮込み不足の構成なのに見せ方の巧さで拍手喝采に持ち込んでしまう力業に感心。特にヒロインの出生の秘密から後日譚迄詰め込んだ12分間に及ぶチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲演奏で感動的にフィナーレというのが素晴らしかったです。

 前半はメンバー集めのドタバタがに費やされてるわけですが、そこで多彩な登場人物それぞれを魅力的に描いた割りにサブ・ストーリーが群像劇として綺麗に収束しないのはガッカリ。偽造パスポートや楽器調達問題や団員失踪などの障害もあっさりクリアしすぎるし、嘘がバレるスリルも殆ど無いなど全体に脚本は甘いです。でも実在するパリ・シャトレ劇場やボリショイ交響楽団に間抜けな役回りを振ってみたり、チェルシーのオーナーである石油王やロシア国家をコケにするような政治の話もあったり尖った部分も多いです。
 特筆すべきはソリスト役を務めたメラニー・ロランの美貌。『イングロリアス・バスターズ』での映画館オーナー役に引き続き今回も受難のユダヤ系フランス人を熱演。流麗な弓さばきに自然と目が行く首筋や胸のホクロ、バイオリンと一体になって感情を吐き出し究極のハーモニーへと誘っていく姿には震えが来ました。後半のフランス編しか出演してないにも拘わらず物凄く輝いております。

 ところで、普遍的なロシア人気質というのがよくわからず、況んやフランス人視点となれば更に厳しいのですが、どうやら、「出たくねぇ」事件の歌手『t.A.T.u』を思い出せばいいようですね。即ち、大雑把で時間にルーズでプライドが高く約束を守らないし謝らないエトセトラ。しかし、宇宙飛行士・野口聡一さんの本などで効率・マニュアル重視のアメリカ流とは別の経験則アプローチでビッグ・プロジェクトを成し遂げる姿も伝え聞いており、いざという時に結束し型破りな力を発揮するのは映画の中の話だけじゃ無いのかもしれません。少なくともロケット打ち上げは天候も気にしなければカウントダウンもせずいきなり発進な国だけど、それで高い成功率を誇ってるわけですし。

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(2010/11/04)
アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン 他

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