失敗作といっても決してつまらない訳ではないのです。ホラーといっても設定的に犠牲者不足なのでスプラッターにはなりませんし、思わせぶりな謎と特殊状況の緊迫感で全く退屈しません。背景となる荒廃マンハッタンの細部描写も凝っていて現実との比較が楽しく、ブロードウェイでインパラを狩り、セントラル・パークでトウモロコシを獲り、SR-71の翼上からゴルフと、終末感を薄くしたのが功を奏し空想力を喚起する画になってます。燃料や水を確保しライフラインを維持する様子などサバイバル要素をもう少し強めて欲しかったとは思うものの、独り占めのニューヨークで愛犬を相棒にそれなりに暮らす姿や孤独な日常・外敵の恐怖などは巧みに描かれてたと思います。CMで強調された「たった一人だけ生き残った男と犬の感動物語」部分は合格点です。
一方で、回想として挟まれるディザスター・パートは群集映像とかは凄いもののディテールが甘く残念。選別・避難誘導・封鎖とどれも出鱈目だし、媒介になる犬を平然と飼い続け更に持出しOKとかありえません。研究の最先端にいる主人公を最前線に残すなんて事を国家が許可するわけもないですし。
それでも最初の1時間は素晴らしいのですよ、最初の1時間は。そこから最後までの40分で「スタッフ総取替?」と思うほどに伏線無視で穴だらけの散漫脚本に急旋回するのです。積み上げた評価を台無しにしてお釣りがくる展開は、テーマらしいテーマも無く当たり前すぎる陳腐な結末に強引に着地。誰が観たって不自然な幕切れです。元凶が完成直前にリテイクされたエンディングなのは間違いありません。
買って無いんですが市販DVD特典の真・エンディングはたぶんコチラで見れる物と思います。これだと放置された数々の伏線はちゃんと回収され、序盤で子連れライオンを見逃すシーンも意味を増しますね。主人公が「グラウンド・ゼロ」を連呼するのも合点がいきます。テーマは「9.11とアメリカの正義」って事ですよね。そのテーマで撮っておいてあの公開版エンドだと主張が逆転してると思うのですが、臆面もなく差し替えてるのが呆れます。
それに撮り直しの7分程度だけじゃ説明がつかない唐突な急展開はそもそものシナリオも完成度が低かったと判断せざるを得ません。夜中にヤケクソで大バトルってのが邪魔で、マネキンに話しかけるシーンで新展開に入る方が自然だと思うんですが。そこから疑心暗鬼による致命的ミスを発生させてラストに誘導するのは簡単な筈です。何れにせよ真・エンドだと「伝説」の意味が薄れるのが難なのです。公開エンドの「伝説」も曲解ですが。いやいや原題がオチそのものってのは厄介ですな。いっそ終戦を知らない日本兵的扱いのマッド・サイエン君が暴走の末に自滅して悪い意味で伝説の男とか・・・。
あと、本来なら映像でカットバックすべき人類滅亡の様子を台詞で済ましてるのも手抜きにしか見えないです。尺に余裕があるんだからDVD特典のコミック版のようなエピソードを挿入し、「生存者の多くは自殺」とか「ミュータントの攻撃性は熱による錯乱」とか示して厚みを出すべきでした。設定が存在するって事は、たぶん、予算が尽きたんでしょうがね。
かくして昨今のハリウッドSF大作の水準通りにビジュアルばかりでセンスが悪い駄作が完成。実に勿体無いです。なんにしてもシェパードの頑張りに感謝。犬がいてくれなかったらもっと酷い事になっていたに違いないですから。
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