「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ノーカントリー

 現代アメリカの病理を憂いている様でもあり、そんな普遍的な話ではなくもっと斬新な解釈がある様にも思える、なんかよくわからないけど凄いバイオレンス映画。『2001年宇宙の旅』とか『惑星ソラリス』とか、理解できない部分が多々あるけど傑作という作品がたまにあるけどコイツもその類です。何度繰り返して観てもいわくありげの科白や含みの多すぎる挿話の数々を上手く捌き切れません。
 でも、ネイティヴならわかるであろうアカデミー賞的なメッセージとか、最後の保安官の夢の話の意味とかの小難しい事はとりあえず放っておいて、普通の理屈が通じないオカッパ頭の殺し屋アントン・シガーの強烈なキャラクターを楽しむだけでも全く損はしません。

 巨体で妙に濃い顔で苦痛にも無表情で稀に見せる笑顔が不気味。装備は音が特徴的な家畜屠殺用エアガンとサイレンサー付きのバカでかいショットガン。本当に死神を思わせるような理不尽な死の香りを纏ってて、やる事なす事が滅茶苦茶の自分ルールというおっかない御仁です。ハビエル・バルデムの噂に違わぬ怪演によってもたらされる緊張感にひたすら快哉なのでした。シガーのスピン・オフ映画を撮って欲しいぐらいです。
 バルデムの演技が突出しているものの、殺し屋に追われる側のジョシュ・ブローリンも好演を見せてます。危ない橋をクレバーに渡って大金を手に無事に帰還しながらも、人助けに現場に舞い戻ったため命を狙われる破目になる愚か者という面白い役で、設定がベトナム帰還兵なので戦闘力も高くやたら格好いい銃撃戦を披露します。
 この作品が一筋縄ではいかないのは二人を追う老保安官の存在。理解不能の犯罪の前に無力な正義の象徴として嘆き続ける傍観者でありながら、「昔は良かった」という安易な逃避を「今に始まった事じゃない」と全否定されるなど物語を難解にする方向で活躍。“宇宙人ジョーンズ”で御馴染みトミー・リー・ジョーンズが哀愁を漂わせる熱演です。前半は目立たないのに最終的には間違いなくこの男が主人公であり本作がサスペンスでもエンターテインメントでも無い事をガツンと知らしめます。

 問題は中盤までのフェイク的クライム・サスペンスが秀逸すぎるが故に、本来の社会派なテーマよりも逃亡者の行く末と金の行方に興味が向いてしまう事ですね。追跡劇にのめり込み期待を膨らましていた観客に容赦なく冷や水を浴びせる拍子抜け展開に唖然とさせられました。「人生は何が起きるかわからないし、起きた事は元には戻せない」という本作に横たわる思想をシンプルかつシニカルに打ち出した正しい着地点だけれども、強い困惑と後を引くモヤモヤ感は否めません。何度も言うように細かい意味を考えさせられ簡単に答えが出ない陰鬱な話なので、この結末は色々と途方にくれる事が倍増なのであります。
 
 コーエン兄弟の映画はコメディしか観てなくて、それもどちらかと言うと趣味に合わないものばかりだったのですが、今回はテクニカルな構成と独特の作風が興味深かったです。序盤こそ生々しい殺害シーンを見せ付けられるものの、話が進むに連れ繰り返しと相似を駆使する事で直接描写を省略し事後処理に留める演出を多用。しかもワンパターンに陥らないようにきっちりコントロールされ、時に映像以上の凄惨さを印象付け、時に観客の予想を裏切り、皮肉たっぷりにブラックな悲劇を盛り上げました。荒涼として徒労感に溢れる物語に相応しいテキサスの乾いた映像がまた見事。光線の使い方も効果的で、日差しの強さになんともビールが美味そうでした。これぐらい抑え目ならコーエン流のユーモアも悪くないですし。

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディションノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション
(2008/08/08)
トミー・リー・ジョーンズハビエル・バルデム

商品詳細を見る

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mappil.blog65.fc2.com/tb.php/248-9cbf5295
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。