「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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パンズ・ラビリンス

 妖精に導かれた少女が迷宮で試練に立ち向かうファンタジーみたいに編集された予告編に騙されて観ると、『となりのトトロ』でハッピーなつもりが同時上映の『火垂るの墓』で茫然自失という体験を再現できる衝撃の問題作。レイティングはPG-12、半分は暗黒な『千と千尋の神隠し』みたいな話で、半分はファシズムに支配されたスペインの暴力と恐怖の時代を切り取った悲劇のリアリズムであります。幻想の国もダークだけどそれ以上にヘヴィな現実世界が描かれグロテスクでショッキングな演出が一杯。救いようもなく死屍累々だけどラストは切なく、単純なストーリーのようで深読みの余地が満載というマピールさんモロ好みの作品です。

 時は1944年、フランコ独裁政権下のスペイン。臨月を迎えた母に連れられたヒロインは再婚相手の大尉さんがゲリラ掃討作戦に勤しむ山岳駐屯地に赴くわけですが、怪しげな試練を課す牧神パンの暗躍と行くところ残虐シーンがついて回る冷酷無比な大尉さんの活躍で絶望の淵へと着実に追い込まれて行きます。このシュールなメルヘン世界と過酷な現実世界とのはっきりとは語られない因果関係が面白く物凄い緊張感が心地よいです。
 3つの試練は母と赤子の運命に被さる様でいてレジスタンス一味の家政婦にリンクしている様でもあり、それぞれのミッションの成否と現実世界で起るリアクションをシミュレートしてみたり妄想が尽きません。蛙や怪物、鍵や短剣の象徴するものにも考察が必要だし、妖精が示した鍵穴が間違ってた事、「2滴」で繋がるアイテム達などにも頭を捻らされます。
 地上に取り残された地下世界のプリンセスの帰還というファンタジー設定や子宮や血を匂わし期限が満月ってことなどから察するにミッションの目的は初潮の前に母体回帰って事のようですが、一方でご母堂の「世の中は残酷、人生はお伽噺じゃない」という台詞にしろ恐怖や欲望との対峙を要求する牧羊神にしろ大人になる事を促しているようでもあります。他にも魔法のチョークと監禁部屋からの脱出の幻想と現実の兼ね合いとか、一事が万事、一人一人が違った解釈を楽しめるようにわざと作られてるのが粋なのです。最後も救いが無いような有るような・・・。

 脚本良しキャラ良し映像良しで極めて完成度の高い作品なんですが、スペイン少女は葡萄には抗えないかのような演出は疑問。食事抜きという伏線があったにしても、時間制限ありで怪物を目の前にしながら誘惑されてしまうほどの説得力は見出せませんでした。あと、美術のレベルが異様に高いわりに山奥の爆発などの合成映像が見事な違和感で苦笑。素敵デザインのクリーチャーたちに活躍場面が少ないのも残念。どれも瑣末な事ですが。

 さて特に知らなくても観賞に支障は無いけど最後に歴史のお話。ピカソの『ゲルニカ』やヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の題材として有名なスペイン内戦ですが、社会主義勢力のスペイン人民戦線と右翼のフランコ将軍率いる反乱軍の戦いは1939年にフランコの勝利宣言で一応は幕を閉じております。だから、本作はその残党とバスク、カタルーニャ地方に大弾圧が加えられてる時期ですね。劇中でノルマンディー上陸作戦のニュースをレジスタンスが喜んでるシーンがあって誤解し易いんですが、スペインは第二次世界大戦では中立を維持し戦禍を免れており革命闘士に春は来ません。60年代以降は多少の緩和政策が実施されたようですが、フランコの独裁は75年にその生涯を終えるまで続いたのでした。

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(2008/03/26)
イバナ・バケロ セルジ・ロペス マリベル・ベルドゥ ダグ・ジョーンズ

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