「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ミッドナイト イーグル

 冬の北アルプスに墜落した米軍機を追うジャーナリスト達が遭遇する自衛隊と秘密工作員の血みどろの争奪戦を壮大なスケールで描く山岳ミリタリー・アクション&サスペンス・・・と言えば聞こえが良いですが、劇中の猛吹雪以上に「なぜ?の嵐」が吹き荒れるトンデモご都合主義ユカイ映画です。ストーリーの流れに意外性は全く無いけど設定や行動は意外な事だらけと言う稀有な作品。軍事・政治・人間ドラマに至るまであらゆる方面に不自然かつ頓珍漢な展開を取り揃えており全く飽きさせません。無能者ばかり登場するある種の実験映画。誉める所が見当たらない作品ではありますが、ダメなところを一晩中語り合ってもネタが尽きないのがストロング・ポイントなのでバカ映画好きには堪らない逸品です。

 先ず、主人公の戦場カメラマンと相棒の新聞記者の冬山エキスパートとは思えない行動の数々は必見。道中で装備の半分とテントを失って下山すら困難な遭難状態の筈なのに、全く意に介さずに「この山は俺たちの方が詳しい」とか自衛官にアピールして登山を続行。でも目的地到着順は、たぶん土地勘は無い外国の工作員集団>深手を負った別働隊の自衛官>ご立派な山の心得を説く主役パーティと、やっぱり口だけです。キャリア20年のサバイバル術や地の利を活かした抗戦を期待したいところでしたが、缶切り無しで缶詰を開ける知恵すらないから無理なのでした。挙句に必死に防戦する自衛官を他所にずっと遊んでる始末で、実は主人公はいらない子です。実に大胆な脚本ではあります。
 サブストーリーの東京編も負けてはいません。コッチの担当は主人公の義妹で米軍横田基地に侵入した不審者を追う週刊誌記者。家庭を顧みずに山に篭ってた義兄を憎み姉の忘れ形見を引き取って育ててる設定ですが、偉そうな事を言いつつ自分も幼い子供を独りで留守番させ、突発の外泊に連絡ひとつ寄越さず保護者の自覚はゼロです。取材活動では共犯とされても仕方の無い迂闊な行為ばかりして無用な混乱を誘発させるという、正義の社会派ヒロインとしてあるまじき人物像が新鮮。事態の真相を知ってなおスピーディーな行動に繋がらない頭の悪さも素敵です。

 このように主人公もヒロインもダメ人間なのですが、組織の方も作り手の見識を疑うダメ対応を頻発させます。工作員潜伏を想定しながらご多分に漏れず呆気なく殲滅されるレンジャー部隊、だけど後続を投入する気配の無い司令部、100万人単位で死者が出るかの瀬戸際に独断で驚愕の行動に出るヘリ部隊と、撮影協力した自衛隊をコケにしまくる役立たず描写満載です。現場が初動で知ってる情報を2日たっても共有できてない対策本部、発砲やら爆発やらあっても独力で関係者を捕捉出来ない捜査機関、工作員の情婦に尋問すらせずヒロインの持つ情報一点賭けの公安、宣戦布告されたに等しい事態に何故か静観を決め込む米軍も凄い描かれ方です。総理に至ってはアマチュア無線でのやり取りで不特定多数にバレたと思われる情報の漏洩に拘ってたり、特に意味もなく映像送信させたり、民間人の浅知恵作戦にのっかったり馬鹿丸出しで困ります。
 でも、一番わけわかんないのは某国工作員の皆さん。パイロットが山中で軟着陸を決める前提で作戦展開する根拠がまったく不明です。それができるなら本国に堕とせば容易に機体回収できるのにねぇ。安全圏までは逃げきれないのに時限装置を使用するのも謎。何処かに消えていた理由も理解できません。そもそも現地が確実に吹雪に閉ざされてくれないと成り立たないザル作戦ですよね、コレ。そして、東京の怪我人が持ってたのは起動パスじゃないから全く「保険」にはなってない気がします。そもそも「保険」を持ってる時点で不可思議なのですが。

 クライマックスの「泣かせ」も酷いです。前フリで親子の物語を全くやってないのに30分も引っ張るし、息子の演出もおかしいです。母と死別し父に育児放棄されて叔母に引き取られたのですからそれこそ「許さない!」と叫ぶべきなのは息子でしょう。それに呼応して主人公は僅かな可能性を探り、結果はどうあれ最後まで諦めない姿を見せるのが筋だと思いますよ。無責任な奴が無責任なまま終わっては映画のテーマ自体がグダグダじゃないですか。ちゅか、ヒロインが義妹なんてややこしい設定だから変なのであって、別れた妻なら息子を託すだけで済む話なんですが。

 説得力皆無の脚本も強烈ですが演出の手抜きも目に余ります。軍事・政治方面は演出以前の問題で知識が無いとしか思えませんし、「ミッドナイトイーグル」の墜落は台詞のみで語られ最低1機は堕ちた方が自然なヘリも無傷で残すなど、あからさまにCG・特撮を避けてるのもナイスです。低予算でも普通はもっと工夫しますが、自衛隊機を使って撮れない画は挿入しないという潔い態度が貫かれてます。
 アクションでは敵も味方も白迷彩で区別がつかない一方で主役達は的同然の派手な服を着たままだし、銃撃されても避けもしないし、伏兵に全く驚かされないなどダメ演出を連発。登山のベテランの装備がピカピカで、疲れも凍えも全くみせず、ラッセル不要の積雪状態とか笑えますが、それなりに寒い中で頑張ったであろう役者さんの努力は水の泡です。でもこの監督、山中に航空機が墜落する『クライマーズ・ハイ』に引き続き関わっちゃってるんですよねぇ。やれやれ。

ミッドナイトイーグル スタンダード・エディションミッドナイトイーグル スタンダード・エディション
(2008/06/04)
大沢たかお藤竜也

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