「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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クライマーズ・ハイ

 1985年の日航機123便墜落事故をモチーフにはしてますがあくまで事故は背景。「奇跡の生還者」「遺族の怒り・悲しみ」「事故原因の謎」などは原作段階から主題ではありません。本作は大事故報道に追われる地元新聞社の喧噪を興奮で恐怖心が麻痺する登山用語“クライマーズ・ハイ”に喩えた物語です。原作小説ではそれと並行して主人公の家庭・友人を絡めたドラマが描かれ、わき目も振らずにただひたすら登った後に我に返って気づく「人の絆」と「ジャーナリズムの使命」に収束していくのですが、本作はテーマ自体を変更し、組織の多様な人間たちのぶつかり合いに重点を置いたサラリーマン映画に仕上がっています。女子供置いてきぼりの男映画ですな。

 ワンマン社長と殺伐縦社会の幹部達、同僚相手ですら出し抜き・足の引っ張り合いが日常茶飯事の記者世界、派閥闘争に営業・販売部署との軋轢など、新聞社内の人間模様は原作の完成度を損なうことなく再現され、社員達が各々の仕事に取り組む様を同時多発的に捉えることに成功しています。全体に地味なキャストなんですが脇役の世間話まで凄く細かく設定され人間像が巧みに造形されてて驚きました。単純に再現したらごちゃごちゃするだけのオフィスの修羅場が、しっかりとした演出とスムーズな編集で映画の体を為しているのが凄いです。
 アプローチとして面白いのは日航全権デスクとなる主人公の性格が原作とかなり違うところ。原作は仕事でも家庭でも人間関係のトラブルを抱え望まざる全権に苦闘する繊細な男なのですが、堤真一が演じた男は当たり前のように全権をこなす強権タイプの熱血漢で人望も厚い。同じ状況設定、同じ台詞でも全然ニュアンスが違っているのです。

 このように背骨の部分は高水準です。だが、惜しむらくは散漫。新聞社内のドラマだけに絞り込めば良いものを原作の他の要素もかなり拾っった為に焦点がぼけぼけです。しかも、もう一つの軸である主人公個人の話が練れてない上に、無駄にアクが強いだけのセクハラ社長・流れを澱ませる記者の事故死と葬式・不必要に陰謀論が匂ってしまう最後のテロップなど改変箇所が尽く失敗という有様。特に、原作終盤の重要エピソードをカットしたため別のオチが必要なのですが、新たに用意されたラストの出来が悪く話の整合性に欠けて主人公の想いが曖昧になるのが致命的です。
 それと、冒頭の高嶋政宏が何を言ってるのか分からなくて早々に日本語字幕を呼び出しました。これは滑舌の問題じゃなくて音声がかなり酷いためです。また、「二社面」「降版」「大久保・連赤」など業界の専門用語が飛び交い台詞量が多目という点でも字幕鑑賞がお奨めです。

 余計な物が多くて傑作にはなり損ねたものの、良くも悪くもプロフェッショナルな男達の感情と行動を丹念に描いた点で見応えがありました。堺雅人の事故現場帰還時の表情とか堤真一のゴミ箱キックとか印象的。あと、携帯電話もパソコンも普及してない時代の仕事場の様子が興味深く、デスクに鎮座する黒電話と鉛筆削り、手書き原稿にタイプライター、扇風機のオフィスで団扇片手に普通にクールビズな人々などが目を惹きました。ただ、あの特に暑かった夏を再現しきれてないのが物足りないのですが。

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