「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ブラインドネス

 「全世界、失明!」のキャッチコピーが鮮烈な心理パニック・サスペンス。原作者はノーベル文学賞作家、監督は『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』のフェルナンド・メイレレス、主演は気の強い女の第一人者ジュリアン・ムーアで、伊勢谷友介&木村佳乃も共演と話題は豊富ながら、ハリウッド映画ではなくブラジル・日本・カナダ合作のインディペンデント作品であります。
 突如として視力を奪い、しかも爆発的に伝染する謎の疾病。政府は患者を隔離するも、失明を恐れ管理の手が及ばぬ病棟は程なく無秩序状態に陥り混沌と暴力に支配されていく・・というプロットを聞けば凄く面白そうなんですが、カンヌ映画祭での評価はイマイチで日米でも興行的に奮わず評判もよろしくない。原作の『白の闇』は未読なんですがネットで探ってみるとこれがすこぶる好評で、わりとそれに忠実に映画化されてるっぽいのに何故こんな事に・・・。

 答えは明らかで、とにかく隔離病棟のディテールの詰めが大甘。いきなり老若男女の区別もなく大部屋に収容し俄の盲人だけで共同生活なんて『電波少年』みたいな設定で納得出来るわけ無いです。先進国っぽい演者が揃っている以上は非人道的な架空の国では済まされません。施設の職員や医者も直ぐ感染して管理を断念するとか、次第に生活環境が悪化する描写が欲しいです。同様に、空気感染が強く疑われるのに密閉施設じゃないとか、1号罹患者のデータもとらないとか、既に蔓延してるのに収容を続けてるとかも少しの配慮で整合性をとれたと思います。
 そして一番のネックが主人公と“第3病棟の王”のパワーバランス。紛れ込んでるノーマルの盲人が座頭市でもない限り失明を免れたおばさんの圧倒的優位は動きません。アウトローたちの圧倒的な凶暴さを見せるなり、「敵側にも目の見える人物がいるかも?」と疑わせる演出がないと説得力に欠けます。それに王には『ミスト』の宗教ババアみたいな狂気のカリスマが絶対的に不足してて、酷い受難の筈なのに奴隷化に切迫感がないし、対する主人公も崇高に見えません。終盤の荒廃した都市のリアリティがなかなか見事なだけに収容所の不出来は本当に残念。
 あと、日本人限定の短所。伊勢谷友介の役が意外に重要なのですが、日本語のシーンが妙に多く、その口調がいっそ英語に吹き替えて欲しいほどに悶絶もの。ついでに木村佳乃は脱ぎっぷりの悪さが目立ってます。

 苦言を並べましたが、状況設定やテーマは面白いし話は綺麗にまとまっており、個人的には観賞推奨。降って沸いた肉体的ハンデに生理的に耐えられない生活環境と理不尽な簒奪者。映画じゃ描けない自殺もの発狂ものの妄想もどんどん膨らむ状況は、実は内戦や紛争の下では普通に起こってそうな事であり、我々はそれに目を瞑って生きているわけです。深く考えさせられるじゃないですか。
 また、在り来たりのモラルを問うだけの作品には成っておらず、拝金主義・資本主義批判もあれば、生産能力を持たない都市生活者の脆さも描かれ、キリスト教的な含意も加わる複雑さも魅力的です。ヘビーな話に加え、音響や暗転や白の闇などの効果を巧みに使い緊張感を保ってくるので物凄く疲れるけど、最後のスッと力が抜ける感覚が良かったです。

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