随所に笑いを交えて辛気臭さを回避しつつ攻める所はきっちりシリアスな減り張りと、日本的な情緒に溢れた風景やチェロの奏でる旋律の按配が心地よい。納棺の長回しも所作が面白く思わず見惚れました。なにより物語として淡々と進む感覚が堪らないです。ただ、かなり良い映画なんだけど例えばゼロ年代を代表する邦画に推せるかというと躊躇するのも事実。オリジナル脚本という点は高く評価するものの、不必要にご都合主義な終盤展開と淡々と描けず狙い過ぎな最後の泣かせが勿体なかったと思います。夫婦の問題に絞り「穢れ」という厄介な信仰を乗り越えるに相応しいドラマが欲しかったです。
本作は題材を持ってきた本木雅弘の功績が非常に大きく、しっかりとした演技で喪われつつある崇高な日本人の精神を具現化しております。脇に少ない出番でも存在感な渋い役者が揃っていて特にユーモア方面で力を発揮しているのも強み。それだけに惜しいのが広末涼子の演じる納棺師の妻で、見事に作品世界に溶け込んだ夫とは対照的に異分子にしか見えないのでした。演技力の問題よりも非現実的すぎる程に寛大な妻という設定がいけません。どう考えたって職業が汚らわしいってこと以前に、算段無しの田舎暮らしや無断の超高額出費にぶち切れるのが普通でしょうに。その上、穢れを気にするタイプにも見えないとくればミスキャストと言わざるを得ません。たいした濡れ場じゃないのに無駄にエロいところは実に良いのですが。
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