「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

 太宰治の小説に太宰本人の破滅的な生き様を重ねて脚色したらしいので、暗くじめっとした作品なのかと思ったら意外と笑いどころが多かったです。監督・根岸吉太郎&脚本・田中陽造の手堅い仕事で終戦頃の雰囲気を醸し艶やかで美麗な映画に仕上がってます。壊れてる夫婦を描く切り口に目新しさはないですが、オーソドックスな日本映画として安心して観られました。最後の方は「女の自立」みたいな太宰らしからぬポジティヴな方向に舵が切られるのかとハラハラしましたが。

 ダメ人間の女房を天真爛漫に演じた松たか子がかなり魅力的。変に丁寧な喋りと素直で朗らかな性格で、下品な客達をあしらい不幸な境遇を根拠無くはね除ける明るさが心地よいです。迂闊に演じると只の天然おバカになるか全て計算尽くのしたたかな女になりかねない難しい役だと思うんですが、根っこでは夫同様というか夫以上に倫理を超えて自分を正当化できてしまう強さを繊細に表現していたと思います。
 松たか子なくして成立しない作品ではあるんですが、旦那役の浅野忠信もかなり貢献。シンプルに、インテリで無駄にナーバスな病的キャラにするのかと思いきや、座ってるだけでどこか滑稽な情けなさ愚かさを身に纏ってる感じに演じております。こういうユニークさで人を惹きつける演技をする人というイメージがなかったので凄く新鮮でした。他人行儀な話し方も良いです。
 伊武雅刀・室井滋など脇を固めた役者も渋い演技。とりわけ、人生狂わせる程にダメ男に貢いで媚びてヒロインを完全に見下してる愛人役・広末涼子が嵌り役でした。濡れ場も妙に生々しいです。んで、同じように脱がないにしても松と広末では限界線が結構異なることもよくわかりました。
 そんな中、華があり過ぎて溶け込めなかったのが妻夫木聡。初々しい誠実な青年を的確に演じてはいますが、どう見ても底辺の酒場でたむろす旋盤工には見えませんし昭和の香りもしません。場違いな店に訪れた弁護士・堤真一が浮いてるシーンで一緒に異物感を出す有り様。善人の仮面の下に危うさが垣間見えるような演出もされず、まんま草食系坊やで女たらしで名を馳せる亭主に嫉妬心を抱かせるポジションを振られても困るとは思いますが。

 ところで、この映画は戦後のハイパーインフレと闇市の時期で貨幣価値がややこしいことになってます。ちょっと調べたら銀行員大卒初任給が昭和20年で80円、原作小説によるとその頃の100円が3,000円相当というから大卒初任給が2,400円ぐらい。現代で初任給20万円として換算すると、浅野忠信が盗んだのが40万円強、最初に25万円払ったきり只酒を呑みまくり三年で積み上げた借金が大負けに負けて約170万円。堤真一のビールのような一本が1万円強の贅沢品じゃなく安酒で。毎日通ってるわけじゃないから一回で一升超は堅いですな。そんな客をのほほんと放置するなよ、店主。

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(2010/04/07)
松たか子浅野忠信

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