「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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運命を分けたザイル

 アンデスのシウラ・グランデ峰の西壁初登攀に挑み、実際に起きた山岳事故を再現したドキュメンタリー・ドラマです。アタックした2人の英国人(と1人の留守番)の回想形式・・・つまり2人が生還する事があらかじめ判ってしまうスタイルを敢えて採っていますので、手に汗握る展開を期待する人には向きません。彼らは淡々と登り、やがてアクシデントを蒙り、そしてヘビーな体験の末に帰還します。それは世界的な偉業であり奇跡の生還なんですが、ハリウッド的な演出は一切無しで物凄く地味な映画です。肝心の生還方法なんて気力・体力・時の運が大半を占めるマッチョなもので、知恵や機転や男の友情といったファクターはあまり絡みません。

 感受性の強い人なら泣けるんでしょうが、マピールさんは心が歪んでるので あまり感動はしませんでした。彼らの行為は身も蓋も無い言い方をすれば『限りなく無謀なチャレンジを試みて、やっぱりミスって酷い目にあったけど命取りにならずラッキー』というものだと思います。だってベースキャンプに待機してたのは素人だし其処からはクライミングの様子を見守る事さえ出来ない。ベテランもいなけりゃ現地ガイドもいない。勿論救助も呼べない。いくら必要最低限の装備でアタックするアルパイン・スタイルといってもサポート体制が悪すぎです。下山ルートの選定にもミスってるし、本当に計画ギリギリの燃料しか持ってなくて水もロクに補給できなくなります。挙句に骨折という致命的アクシデントとパーティー分断、普通は2人揃って死にます。これで助かるなんて実話じゃなければ許容できませんよ。

 しかし、この作品はパーフェクトな山岳映画として高く評価できます。クライミング技術は本物で時代考証もしっかりしてますし、垂直の壁にへばり付く雪ひだや無数に口を開くクレバス群など美しくも過酷な山々の画も素晴らしいです。「どこにカメラ置いて撮ったんだよ!」っていう凄い映像も豊富です。寒くて空気の薄い六千メートル級の高地に重い機材を運び込んだスタッフに惜しみない拍手を贈ります。登場人物がむさい男3人だけ、主役の2人すら大部分のシーンで離れ離れという難しい設定でありながら上手く纏めたアイディアにも感心しました。
 そして、これは全く意外な事だったんですが、この映画はシニカル・コメディとして楽しめるのです。次々起こる困難な出来事に付く本人コメントが、いちいち如何にも英国人らしいブラックな本音トークなのでした。笑って軽口を叩くんじゃなくて、クソ真面目に「いっそ滑り落ちてくれてれば楽なのにと思った。」とか語るんですよ。留守番の人も「どっちか一人助かるなら奴の方がいいなと思った。」とか容赦のない事を言うし。他にも極限状況に頭の中でリフレインしたのが嫌いな曲だったりと、妙なおかしさがありました。『カルネアデスの板』そのものの体験をしながら、彼らは依然として友人で現在も登山を続けてる。それが判ってるからこそ笑えるんですが。さすがモンティ・パイソンの国。

運命を分けたザイル 運命を分けたザイル
ジョー・シンプソン (2005/08/26)
ポニーキャニオン

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