「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

愛のむきだし

 「映画秘宝」誌でゼロ年代最強邦画と評価されたり各方面で大好評の、ずっと気になってた大長編をやっと観ました。独特のクセはありますが、ほんと物凄い作品でした。アクション&バイオレンス風味の青春コメディかと思えば、想像を遙かに超えて背徳と信仰を壮大に網羅するエネルギッシュな社会派純愛エンターテイメントなのでした。波瀾万丈な展開で少しも飽きさせず、なんだかわからないうちに4時間たってしまいます。混沌が『キル・ビル』っぽい映画なのですが、これが実話を基に製作されたというからビックリ。しかも後半の新興宗教の話だけじゃなく盗撮と変態の部分も含むと言うからまたビックリ。

 ストーリーを吟味すると4時間もかける必要は無さそうでシナリオの質が良いとはいえないんですが、タランティーノ作品のような間延びは一切無しに異様なハイテンションのまま矢継ぎ早に話を進めて無理矢理説得力を持たせる力業に感嘆。最初の1時間だけでも「母の死」→「父の転向」→「懺悔強要」→「非行」→「盗撮」→「女装」→「バトル」→「勃起」→「運命の女」と発想の異次元ぶりを見せつける謎すぎる流れが観る者を惹きつけます。梶芽衣子の『女囚さそり』へのオマージュと70年代風の演出・音楽なども絶妙でした。

 そして、アイドル上がりとは思えない満島ひかりの大活躍。登場早々パンモロでセーラー服空手アクション。その後もひたすらパンチラで自慰行為にレズビアンに緊縛監禁とアブノーマルな行為にとことん躰を張ってます。長回しで新約聖書の「コリント人への手紙」を一章丸ごと捲し立てる迫真の演技も見事。
 相手役の西島隆弘は全然知らない役者だったんですが、調べたらアイドル系の歌手兼ダンサーだそうで、こんな巨根の変態役を颯爽とこなしていいのかと心配になりました。普通の学生から盗撮王子に女装人格など色々な顔を上手く演じていて、男のくせに凄くキュート。今後の俳優活動に注目したいです。
 しかし、この二人以上に強烈なのが奥田瑛二の娘・安藤サクラ。満島ひかり同様パンチラ止まりで脱がないしし美人でも可愛くもないけど妙にエロエロです。そして、いかがわしく陰湿で猟奇的な恐ーい女を的確に演じています。板尾創路に跨り無表情でイチモツを下着に擦り付けるサイコっぷりや、話が進むほどに不気味さを増し壊れていく様は圧巻。
 それにしても三者三様の若手からこれだけの存在感を引き出せる園子温監督の手腕には恐れ入りますねぇ。

愛のむきだし [DVD]愛のむきだし [DVD]
(2009/07/24)
西島隆弘満島ひかり

商品詳細を見る

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

 太宰治の小説に太宰本人の破滅的な生き様を重ねて脚色したらしいので、暗くじめっとした作品なのかと思ったら意外と笑いどころが多かったです。監督・根岸吉太郎&脚本・田中陽造の手堅い仕事で終戦頃の雰囲気を醸し艶やかで美麗な映画に仕上がってます。壊れてる夫婦を描く切り口に目新しさはないですが、オーソドックスな日本映画として安心して観られました。最後の方は「女の自立」みたいな太宰らしからぬポジティヴな方向に舵が切られるのかとハラハラしましたが。

 ダメ人間の女房を天真爛漫に演じた松たか子がかなり魅力的。変に丁寧な喋りと素直で朗らかな性格で、下品な客達をあしらい不幸な境遇を根拠無くはね除ける明るさが心地よいです。迂闊に演じると只の天然おバカになるか全て計算尽くのしたたかな女になりかねない難しい役だと思うんですが、根っこでは夫同様というか夫以上に倫理を超えて自分を正当化できてしまう強さを繊細に表現していたと思います。
 松たか子なくして成立しない作品ではあるんですが、旦那役の浅野忠信もかなり貢献。シンプルに、インテリで無駄にナーバスな病的キャラにするのかと思いきや、座ってるだけでどこか滑稽な情けなさ愚かさを身に纏ってる感じに演じております。こういうユニークさで人を惹きつける演技をする人というイメージがなかったので凄く新鮮でした。他人行儀な話し方も良いです。
 伊武雅刀・室井滋など脇を固めた役者も渋い演技。とりわけ、人生狂わせる程にダメ男に貢いで媚びてヒロインを完全に見下してる愛人役・広末涼子が嵌り役でした。濡れ場も妙に生々しいです。んで、同じように脱がないにしても松と広末では限界線が結構異なることもよくわかりました。
 そんな中、華があり過ぎて溶け込めなかったのが妻夫木聡。初々しい誠実な青年を的確に演じてはいますが、どう見ても底辺の酒場でたむろす旋盤工には見えませんし昭和の香りもしません。場違いな店に訪れた弁護士・堤真一が浮いてるシーンで一緒に異物感を出す有り様。善人の仮面の下に危うさが垣間見えるような演出もされず、まんま草食系坊やで女たらしで名を馳せる亭主に嫉妬心を抱かせるポジションを振られても困るとは思いますが。

 ところで、この映画は戦後のハイパーインフレと闇市の時期で貨幣価値がややこしいことになってます。ちょっと調べたら銀行員大卒初任給が昭和20年で80円、原作小説によるとその頃の100円が3,000円相当というから大卒初任給が2,400円ぐらい。現代で初任給20万円として換算すると、浅野忠信が盗んだのが40万円強、最初に25万円払ったきり只酒を呑みまくり三年で積み上げた借金が大負けに負けて約170万円。堤真一のビールのような一本が1万円強の贅沢品じゃなく安酒で。毎日通ってるわけじゃないから一回で一升超は堅いですな。そんな客をのほほんと放置するなよ、店主。

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]
(2010/04/07)
松たか子浅野忠信

商品詳細を見る

ウォッチメン

 原作は80年代のアメコミだそうですが予備知識は全く無し。そんなわけで冒頭の「ミニッツメン」結成から「ウォッチメン」への世代交代、更にヒーロー禁止令を経てウォッチメンの一人が殺されるまでの歴史に詰め込まれた情報量に唖然。なんか途中でヒーローがケネディ暗殺を実行してたり、ニクソン政権がずーっと続いてたりで、歴史改変モノだと理解するまでかなり混乱しました。その後もヒーロー・アクションを楽しむつもりが、漠然とズッシリ来る陰鬱な話と青い全裸ハゲが不必要にブラブラさせてる逸物に度肝を抜かれることに・・・。

 けど、冷静に考えれば身構えるほど本編は複雑じゃないんですね。当代のヒーローだけで6名で先代もわんさかいる上に、ヒーロー名と本名が入り交じってごちゃごちゃするし、紅一点と絡むフルチンと中年にも惑わされますが、主人公というか狂言回し役が一線を越えた「絶対正義」の男ロールシャッハだとわかってくれば意外となんとかなる気がします。 セックス&ヴァイオレンスがてんこ盛りで好き嫌いがはっきり分かれそうですが、一癖も二癖もある人物像は全く退屈しないし世界観や映像センスもかなり魅力的。問題はテーマが古臭くミステリー要素が全然面白くないこと。映画オマージュが結構ある事から推すに、アメコミに詳しければパロディとして楽しめる部分も多いみたいですが。

 お話の収束点がガッカリなのは、石ノ森章太郎・永井豪・石川賢、或いは初期ウルトラシリーズの金城哲夫といった面々を筆頭に、それぞれの信念に基づく「正義」の隔たりに苦悩するヒーローのシニカルで衝撃的な物語というのをとっくの昔に開拓している日本の事情もあります。特撮ヒーロー好きやマニアックな漫画読みにとってはダーク路線こそがスタンダードですから今更感が強く。とはいえ、それをちゃんと映像化出来ないのが邦画の弱点。こういうテイストの『デビルマン』を観たかったというのが正直なところです。
 ところで、この世界観ですと日本も「ドクター・マンハッタンの傘」の元に超絶バブルを謳歌してる筈で、技術力・経済力から観て巨大ロボを所有してる連中も存在してそう。自警団活動が合法か違法かはわからないですが、何をやらせても日本一の男が一芸に秀でた悪人を潰して回ってるのは確実ですな。

ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
(2009/09/11)
ジャッキー・アール・ヘイリーパトリック・ウィルソン

商品詳細を見る

アマルフィ 女神の報酬

 邦人少女誘拐事件に巻き込まれた外交官がイタリアの観光地を走り回る羽目になるサスペンス風観光ムービー。脚本家名が無いと話題になった時点で予想してた通りの穴だらけな犯行計画が素敵なバカ映画です。関係者の証言によると、先ず主演・織田裕二と海外ロケが内定しタイトルが『アマルフィ』となった後で、ミステリ作家・真保裕一がプロットの基本線を固めたオリジナル・ストーリーが完成し共同脚本の監督・西谷弘が最終的に仕上げ、そして脚本家クレジット抹消問題が起きており、原作は読んでませんが整合性の無い改悪に真保センセがぶち切れたと考えて良さそうです。まあ、作品はいつもの織田カラーに染まってますんでキャラものドラマとしてはそこそこ楽しめると思いますが。

 海辺の街アマルフィが登場するのは2時間中20分程な上にミラノでもナポリでも何処でも置き換え可能という無関係ぶりが凄いです。ビバ、企画先行。事件自体もわざわざイタリアで撮る必要もない話なんですが、そこは「多めに予算が付いたTV特番」みたいなものと許容。しかし、犯人がイタリアを拠点に事件を起こすのは不自然という壊滅的設定には開いた口が塞がらず。生ドラマの舞台を熱海からシカゴに変更した事を発端に急場凌ぎを繰り返し次第に別の話になって原作者がキレる喜劇『ラヂオの時間』を、生放送でもないのにリアルにやらかし辻褄合わせの努力すらしないんですから豪気です。
 誘拐事件と無理矢理にリンクさせた不確定要素だらけのミネルヴァ(女神)大作戦、最終的に明らかになる事件の全容のトンデモ加減、終盤まで全く匂わされない犯行動機のせいで犯人に感情移入も出来ないなどなど、作り手の頭の悪さが随所に炸裂。まともな伏線やミスディレクションを用意しないでサスペンスに挑戦した男気に拍手。だいたい誘拐の顛末も筋が悪く、単身でトイレに来るように子供に指示したのならば登場前から犯人バレバレで、そうじゃなければ子供の尿意に全てを賭けた計画って事ですしねぇ。

 少女消失を謎とも思わないローマ市警の一貫した無能ぶり、国家全域で杜撰そのもののセキュリティ、拉致同然なイタリア人のナンパ描写など、何故にフジテレビは開局50周年記念でイタリアに喧嘩を売るのか。アマルフィの空撮が意図的にピンボケなのも謎で、映像・音声を突然ぶち切る編集が劇中のサスペンスよりよっぽどドキドキを誘発するのには苦笑。
 けど、感動の押し付けシーンも無ければカーチェイスも派手な爆発も銃撃戦も無しに勝負したのは評価したいところ。織田裕二が安易に天海祐希や戸田恵梨香やサラ・ブライトマンとくっつかないのもよろしい。いや、サラ・ブライトマンとのロマンスなら見てみたい気もしますが。
 ところで、クリスマス頃にローマで大雪が降るのは珍しいことなんでしょうか?

アマルフィ 女神の報酬 スタンダード・エディション [DVD]アマルフィ 女神の報酬 スタンダード・エディション [DVD]
(2010/01/01)
織田裕二天海祐希

商品詳細を見る

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

 全く観てないのですが初監督作品『寝ずの番』は結構評価され次作『次郎長三国志』が大不評らしい監督名・マキノ雅彦こと津川雅彦。真価が問われる3作目ですが、いかにも子供向けな予告編とは大違いの悲喜こもごも人情話をシニア向けなユーモアたっぷりで描いていて驚きました。経営をめぐる政治決着の件などは退屈するかもですが、基本的には子供にも解り易い話になってるのも好感。但し、親世代の鑑賞に耐えるには詰め込みすぎでどうにも中途半端です。

 廃園に追い込まれかけてた動物園の再生物語なら『プロジェクトX』でやってましたし、前にチラッと見た覚えのある同題材のTVドラマでは新人の成長物語に絡めてました。後発としてはこれらに似ないように作る必要があるけど、「行動展示」への転換という美味しいネタは捨てがたく飼育係と動物たちのエピソードも魅力的過ぎたという事でしょうか。次々と要素を拾った結果、サクセス・ストーリー部分は肝心の所が妙に素っ気なく、いじめられっ子だった新人飼育係の成長話は不完全燃焼気味で、動物愛護メンバーで獣医で存続懐疑派市長の姪という設定も不自然でしか無く。「人と野生動物の距離」などの問題提起も多くは掘り下げが足りず、ブツ切りエピソードの羅列で終わってしまうのがなんともかんとも。30余年の歳月で起きたエピソードを数年の出来事であるかのように凝縮した弊害で、お取り潰しもやむなしレベルで不祥事続きなのも失笑モノであります。

 しかし、ご存じのペンギン散歩や白熊スイムに加え雪玉を投げるゾウなど動物撮影は工夫が凝らされていて楽しめます。芸をする動物やCGは一切使わずに根気で撮ったという奇跡的シーンの数々は拍手モノ。ひたすら暑苦しく過剰演出なドラマの間に挿入される動物たちの愛らしい仕草や珍しい生態が箸休めとしても機能しているのに感心しました。
 芝居は津川さんの人脈を最大限に活かして取り揃えた強力ベテラン男優陣が貫禄を見せつけ、中村靖日・前田愛・堀内敬子といったキャストも手堅い演技を披露。幾分説教臭くはあるものの野生動物の尊さ・人間の素晴らしさ・命の平等さなどのメッセージを魅力的に伝えて来ます。キャラ立ちについては文句のつけようもありません。あと、関係ないけど園長・西田敏行に飼育係・長門裕之ってのが「玄太」と「楠公さん」の立場と逆なのが感慨深かったり。

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ スペシャル・エディション [DVD]旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ スペシャル・エディション [DVD]
(2009/07/15)
西田敏行中村靖日

商品詳細を見る

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。