「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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クヒオ大佐

 元ネタとなる笑っちゃうほどインチキ臭い経歴で結婚詐欺を繰り返した金髪中年の事件は覚えてます。彼が週刊誌やワイドショーを賑わせたのは80年代半ば頃でして、後に再逮捕となった時も性懲りもなく殆ど同じ設定のまま活動していて日本中を呆れさせた人物なのです。本作は彼が出所していた90年代初頭が舞台ではありますが実際の事件とは関係なく、自称米軍将校プリンス・ジョナ・クヒオからインスパイアされたフィクションであります。
 原作段階で創作中心だそうですから事件の掘り下げや彼の人物像、口説きのテクニック、或いは騙された女たちの心理なんてのを期待しても無駄。けれど、軽めのコメディ映画として笑い飛ばすにはかなり女達の生き様が重く切ないわけでして、悲喜こもごもを味わい深いと感じるか中途半端と受け取るかこの辺のバランスが結構きわどいのでした。世界観も少し特殊なので好き嫌いは分かれそう。個人的には湾岸戦争の戦費肩代わりと女達を繋ぐ点が腑に落ちないものの、全体としては寂しい男達女達のシリアスな人間模様が良く描けてたと思います。

 とにかくキャスティングが絶妙で演技・演出は文句なし。堺雅人は相変わらず正邪怪しげな役をやらせたら天下一品で、純日本人顔に付け鼻で片言の日本語を操る軍服男という存在自体が非日常のキャラなのに自然に違和感無く溶け込んでおります。脇が甘い三流詐欺師ぶりでどこか憎めないチャーミングな男のインパクトが、真面目にコツコツ生きる女を騙す悪印象を上回ってるのが見事。どんなにバレバレでも現実を書き換え続けてクヒオとして生きる天性の嘘つきと堺雅人特有の底の見えない笑顔がきっちり嵌ってるのでした。
 女性の強さと弱さを表現する博物館学芸員・満島ひかりはかなり巧いし、中村優子のしたたかな銀座のNo.1ホステスも板に付いてるんですが、なんといっても圧巻は弁当屋の女社長・松雪泰子が見せる思い込みの激しさと献身の凄味。ありがちな愛に狂った女になるか極端にコメディよりのバカ女になりそうな役柄を、痛々しさを前面に可笑しくも哀れで真っ直ぐな女として存在感たっぷりに演じ、そのパワーは終盤のシュール展開に傾れ込む役割を担うほど。なんだか凄く惹きつけられる危うい女なのでした。彼女には幸せになって欲しい。

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感染列島

 隔離指定病院の勤務医である主人公の異常に軽いフットワークを始め、登場人物達の突飛で理解不能な行動の数々に辟易するディザスター映画。この手の映画の肝はリアリティに尽きるわけで、脚本レベルでかなり奇妙な設定が為された上に、役者の顔を露出すること最優先の演出の賜物で画面から緊張感がごっそり抜け落ちています。豚インフル流行直前という絶妙のタイミングでの封切りですから、シミュレートがしっかりしてさえいれば迫真のヒューマンドラマとしてブレイク出来たはずなのに。
 とはいえ、現場のマンパワーに頼らざるを得ない日本の医療体制を浮き彫りにするなど考えさせる部分も多くあります。縄張り意識や思い込みからの硬直的対応やらマスコミと世論のヒステリーやらと撚り合わさって初動からほぼ無政府状態という描写も日本の現状をつきつけるものです。現実にならない事を願うばかりの新型感染症パンデミックという題材だけに色々惜しい作品なのでした。

 一刻を争う現場の医師に感染源の特定云々やってる暇はないし、ワクチン開発を待てる状況でもないのは自明なわけですから、さっさと「ワクチン完成は半年後」と規定して病院の修羅場だけでドラマ構築した方がスッキリしたと思います。無理に外に出して探偵ごっこさせればマスクや防護服を着けない不自然シーンが自ずと増えるわけですし。ぶっちゃけ海外ロケから妻夫木聡を外せないって所から無理矢理な脚本に至ってるんでしょうけど。だからってゾンビ映画風は無いと思いますが。
 あと、脚本で特に酷いのは感染ルートの顛末。国外を含む広範囲を媒体が移動しており「日本限定で大流行」「最初の患者の周辺に感染原因がある」という基本条件が満たせてないです。クライマックスの泣かせも脳みそに蛆沸いてて、蘇生中の患者を放置してのTV電話も酷いし、檀れいが身体を張って一か八かの治療に臨んでるのに妻夫木がそのデータを待たずに見切り発車というのも凄い展開です。
 演出面で一番疑問なのは、鳥インフルエンザと絡めてミスリードを狙ってる筈なのに、素人目に見ても真っ先に出血熱を疑うべきな描写を行ってること。風邪症状が出ないでいきなりぶっ倒れる人が多いのも変ですし。結構重要なキャラなのにカメオ出演と見紛う浮きっぷりだった爆笑問題田中への緊張感のない演出も謎。カンニング竹山の「俺は無名のウイルス研究者だ!」に代表される超絶説明台詞の数々も笑えます。

 それでも、ウィルス災害の問題を提起し、野戦病院と化した救命救急機関の滅茶苦茶な状況を疑似体験させ、トリアージ(患者の選別)の決断など過酷な環境の中でひたむきに尽くす命懸けの医療関係者に敬意を払ってる事は評価出来ます。ベタだけど子役を使った一連の泣かせもちょっと感動。「たとえ地球が明日滅びるとも、君は今日リンゴの木の種子を植える」という引用(リルケだったっけ?)を落とし所に使ったのも巧いと思いました。

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妻夫木聡檀れい

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ゲット スマート

 60年代のアメリカTVドラマ『それ行けスマート』の映画化。舞台を現代に置き換えてのリメイクですが微妙にネクスト・ジェネレーションの風情も。主人公が属する秘密諜報機関には靴電話を駆使したスパイがかつて存在したようなのです。そんなわけで先代との縁については特に触れられませんが、21世紀のマクスウェル・スマート氏も「86号」を襲名しセクシーな「99号」を相棒にコミカルなスパイ・アクションを繰り広げる内容となっております。
 『オースティン・パワーズ』のようにお下品でアクの強い笑いではなく、ドリフのコントみたいなわかりやすい小ネタを散りばめたスタイルなので日本人でも単純に笑えるし意外にアクションも出来が良いです。下ネタも少な目なのでファミリー観賞でも安心。本作を観るまで知りませんでしたがオリジナルには「喜劇王」メル・ブルックスが一枚噛んでるんですな。

 何の予備知識が無くても問題なく楽しめると思いますが、『ミッション:インポッシブル』を押さえておけば喜ばしく、「007」シリーズ、特に『ムーンレイカー』を観てればなお良し。神出鬼没の「13号」ネタなど当時のお約束もかなり踏襲してるのでオリジナルも知っていれば言う事無しです。
 携帯電話が普及しあろうことか「スマート・フォン」なんてものまで存在するご時世に「靴型無線機」が売りのコメディをやるとなれば40年間の技術の進歩との折り合いが難しいわけですが、現代風にアレンジしたり古いアイテムのまま無理なく使ったりスパイ・グッズの見せ方が巧みで感心しました。ギミックの馬鹿馬鹿しさもそそります。

 クスクス笑いを絶えさせないギャグの連発から展開はスパイものの定番を辿り、後半には気合の入ったド派手アクションも用意されてます。しかし、元々がシチュエーション・コメディという性格上ほぼ「86号」に依存した笑いなため、彼が真面目に活躍すると物語が少しダレてしまうというのが皮肉。オチの弱さが全体の印象を大きく損なう結果になってしまったのも残念。
 アクションやダンスを難なくこなしポーカーフェイスからとぼけたギャグを繰り出すスティーブ・カレルと、カッコいいスーツやタイトなドレスを着こなしシュールな雰囲気を際立たせつつ若干のお色気をスパイスするアン・ハサウェイのコンビは絶妙。一方でオリジナルでは「99号」並の重要キャラなチーフを演じたアラン・アーキンが期待ほどの怪演ではなく物足りませんでした。もっと見せ場があって然るべきなんですが。

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グラン・トリノ

 ユーモアに溢れ重厚で感動的なヒューマンドラマとして絶賛に次ぐ絶賛の作品ですが、『チェンジリング』を撮り終えたクリント・イーストウッド監督が次作『インビクタス』までちょっと手が空いたので制作されたという触れ込み。たぶんそれは本当で、イーストウッド以外は無名で素人も多いキャストであり、セットもヴィンテージ・カー「グラン・トリノ」を除けばビックリするほど金がかかってないです。ワンテイクOKで知られる監督の事だからさっと撮り終えちゃったことは想像に難くない。それで傑作を作り出せちゃう魔法のような演出力に呆れるばかりです。

 とにかくシンプルに見えて語るべきテーマが数多いのが本作の魅力でありますので、その意味づけについて語るのはやめてしまおうと思います。今後は監督に専念して俳優業から引退するというのですから「役者・イーストウッド」としての感想をば。まあ、本当に引退するかは結構怪しいわけですが。
 悪態をつき狂犬のように唸り自分の落とし前は自分でつける80歳近い頑固ジジイ。常に暴力で悪を屈服させてきた男。この役は『ダーティハリー』をバック・ボーンに持つイーストウッド以外に考えられない。半引退状態だった老優が引っ張り出されるのも納得です。ひたすらカメラの前に居座り、格好良く美味しいところを全部持って行く往年の大スターらしい大見得の大根演技に拍手喝采。最近のいぶし銀演技じゃ見納めに相応しくないですからね。これは山田康雄の吹替で観たかったかも。

 あと、古き良きアメリカを支えたポーランド系移民もモン族なるラオス系山岳民族も等しく未知の存在なので色々と異文化を知れて良かったです。日曜大工を大きく飛び越えたレベルで家を直し庭を手入れするのが男の仕事とされるアメリカンマッチョ主義もピンとこなけりゃ、強引な貢ぎ物攻撃で感謝の意を表し男尊女卑傾向が強そうなモン族の風習も謎でありました。特にデトロイトでモン族は何を生業に暮らしてるのかとか、改宗して無さそうな彼らの教会との関わりとか興味深いです。なんとなく沖縄っぽい文化な印象なんですが。

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紀元前1万年

 ローランド・エメリッヒ監督作品であるからして歴史考証など端から期待しちゃいけません。見所は当然のごとく派手な特撮と珍妙な設定であります。つまり、マンモスとサーベルタイガーとモアだかなんだかの巨大鳥と、『神々の指紋』にインスパイアされた超古代文明で織りなす旧石器時代末期を楽しむファンタジーです。しかし、巨大動物の出番は意外と少なくスケール感が乏しいので、主にトンデモを味わう結果となっています。

 ストーリーはぬるい『アポカリプト』。異民族に嫁と仲間を掠われた男が奪還の旅で成長し英雄になるというオリジナリティほぼゼロのプロットであります。けど、偶然で一族のホープに成り上がり、伝説のおかげで各部族を統合するリーダーに就任、クライマックスも強引な力業の連打でクリアと、コメディでもないのに全部ラッキーで乗り切るのが新しいです。こいつ、仲間の犠牲は気にも止めず嫁の事だけ考えてるし、後先考えない蛮勇しかしてないわけで、最後まで成長もしません。凄い英雄譚です。
 そして、アドベンチャー映画のお約束的な思わせぶりシーンを随所に配置しつつ悉くクールに無視する姿勢が素敵です。本当によくこんな企画がハリウッドで通ったと感心するほどに本筋と無関係な伏線もどきを連発します。それと、一族に風の谷の大ババ様が混ざってると笑っていたら、最後もナウシカ的でひっくり返りました。あれを前振りもなくナレーションだけで済ますのも酷いです。でも、マンモス食ってる癖にマンモスを強制労働させると可哀想って感覚は「流石、狩猟民」と感心しました。

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