「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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シャッター アイランド

 「精神障害犯罪者だけを収容する孤島で女性患者が煙のように消え主人公は捜査に乗り出すが・・・」という設定を聞いただけでも多くの人が予想する新味のないトリックなのに、わざわざ映画冒頭にお節介な注意事項を追加し「謎解き」や「衝撃のラスト」を強調しまくりガッカリ感を増幅して足を引っ張った配給会社に喝。作り手の狙いは明らかにそんな方向にはなく、むしろ早々にカラクリに気付かせる違和感をあからさまに与えており、観客が脳内で真相を再構築しながら観賞する事を前提に作られてる節すらあります。とにかく、バカ正直に謎ばかり追ってちゃ楽しめない構造なのです。ミステリーじゃなくダーク系ヒューマンドラマとして見応えのある作品。

 これは謎解きよりもムードを楽しむ映画です。孤立した場所、断崖、螺旋階段などが用意され、『レベッカ』のような設定に『めまい』のような演出と不自然なカメラワーク、其処彼処にヒッチコック・タッチが散見します。美術や音楽もそれっぽくていい雰囲気でした。
 ラスト3分の穏やかな表情のディカプリオと最後の台詞の意味を考えれば、種明かしで観客にインパクトを与える意図があったとは考えにくく、スコセッシ監督はエピローグの大オチのために主人公の心の傷や心理的不安・恐怖を格調高く描いたのだと思います。実際、この幕引きにはガツンとやられました。

 そんなわけで騙そうとしてないのに「トリックが読めてツマラナイ」とか言われちゃう事には同情的なんですが、真相を明かされても納得性が低かったり動機に無理があったりプロット自体の出来の悪さは否めません。それにわかりきった答え合わせに時間を使いすぎなのもイライラしました。そこをカットして2時間以内に収めてくれれば結末の重みが増したと思います。

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レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ 他

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沈まぬ太陽

 読んだことはないですが文庫本で全5巻に及ぶ山崎豊子の長編小説の映画化であるからして3時間22分の長尺であろうと駆け足ダイジェスト編集版になるのは否めないと予想してました。しかし、殆ど混乱することが無い上に社会派のドラマは重厚で少しも長く感じなかったです。超豪華ベテラン俳優陣がじゃんじゃん出ては消えていくこの手の映画では先ずあり得ない丁寧で分かり易いとすら感じる脚本&演出に感服。主人公には全然共感できないんですが。

 時間軸の長さにしろ登場人物の多さにしろ大河ドラマ級の題材を扱うわけですからエピソードや人物の掘り下げは不十分にならざるを得ないわけですが、そこを渡辺謙扮する愚直な主人公の生き様に絞って過剰なまでの説明台詞で物語を整理してしまうのが凄いです。人生経験が浅いと昭和的な権力闘争や企業戦士の感覚が掴みにくいかも知れませんが、キャスト的にみてメイン視聴層は中年以上で鉄板だから問題無いでしょう。出世のため金のために腐敗していく敵役・三浦友和も、彼の側からのストーリーを同じ分量描いて欲しいぐらいに熱演。それじゃ『白い巨塔』ですけど。

 一方で、CGが物凄く酷いです。題材が題材だけに航空会社の協力を得られない事情があったんでしょうが、飛行機が出る毎に違和感を与えるレベルというのは予算配分を間違ってるとしか・・・。
 あと、フィクションと言い張りながら現実の出来事を連想するしかない墜落事故をストーリーに組み込み露骨な日航批判を展開するスタンスや労組美化は不快でした。作り話の部分も確実に事実と混同しますし、いまや労組側も経営悪化の大きな要因と認識されてるわけですし。腐りきった経営陣や政府の問題は原作が書かれた時点では先見の明だったのでしょうが、日航の破綻と再建問題がクローズアップされた現在に敢えて遺族への配慮に欠くように思える御巣鷹山関連ネタをインサートする必要があったのか疑問であります。

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(2010/05/28)
渡辺 謙、三浦友和 他

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サブウェイ123 激突

 過去に何度もコンビを組んできたトニー・スコット監督×デンゼル・ワシントンが悪役にジョン・トラボルタを迎えて贈る犯罪スリラーの佳作『サブウェイ・パニック』のリメイク。巻き込まれた男が地下鉄をジャックした悪党と交渉するはめになるアウトラインは同じですが、現代風の手直し以外に主役の設定が鉄道公安官から運行司令部の職員になってたり、犯人の性格が変わってたりかなり色々とアレンジされてます。・・・その捻りが悉く失敗するという悲惨な事態になってますが。

 はっきり言って全然面白くなかったです。短いカットに効果を付けまくってスタイリッシュな映像を繋ぐ作風は健在ですし話もテンポ良く進むんですが、ドラマが今ひとつ盛り上がらないままエンドロールに突入されても不満がつのるばかりです。古典的なサスペンスなんで斬新なストーリー展開は端から期待してなかったですが、まさか知的興奮を誘う心理戦や小粋な会話や凝った伏線回収などの必須要素を片っ端からオミットするとは。
 戦略もなく場当たりで対処するド素人ネゴシエーターを相手に喋る毎に情報を漏らす隙だらけの犯人に、穴だらけの犯罪計画、ポンコツなNY市警、必然性無くいきなりヒロイックになる主人公などが揃う日本のTV屋のお家芸みたいなシナリオに愕然。何かありそうで何もないってのがとにかくストレスになります。現代テクノロジーとかも全然活かせてないですし、わざわざセフティの外し方をレクチャーしたそこが伏線じゃないばかりかクライマックスで持ってる銃自体がこの銃と全く違う型なのに唖然。わざわざ注目させといてなんでそんなミスを?
 普通ならバカ映画として笑い飛ばせそうな要素が盛り沢山なのに不快感が勝るのは、人質達の挙動がメイン・ストーリーに殆ど影響を与えず単発ネタで終わるなどのサービス不足。小便の男も空挺隊もバカップルも無意味すぎてつっこむ余地がないのです。ジャックされた地下鉄車内の映像がネットで生中継されるという美味しいネタを猫跨ぎとか信じられませんよ。同じように無内容であってもきちんと客のニーズに応えてくれるジェリー・ブラッカイマーは偉大です。彼のプロデュースあってのトニー・スコットなんだと痛感させられる一作でした。この穴はデンゼルとトラボルタがいくら頑張っても埋まらないのです。

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(2010/02/24)
ルイス・ガスマン、デンゼル・ワシントン 他

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サマーウォーズ

 監督・細田守、脚本・奥寺佐渡子、キャラデザは貞本義行でアニメ制作はマッドハウスという、アニメ『時をかける少女』スタッフ再結集が話題の長編オリジナル作品。興収10億突破は公開規模を考えればメガヒット級でありメディア販売も好調、各種映画賞のアニメ部門を席巻しブレイクはアニオタだけに留まらないことも証明されている作品です。
 けど、個人的にはこの脚本でそこまで褒められる理由が謎。話は解り易いし退屈もしないですが、風呂敷はでかすぎだしキャラ描写が薄っぺらだし伏線の配置は稚拙だしサイバー物のプロットにも新鮮味が無いと思うのですが。

 とにかく主人公とヒロインの影が決定的に薄いのが難。軍師役な筈の主人公が立案するのは他人の技量に依存した大雑把な作戦ばかりで本人の活躍の場は意外に少なく、ヒロインにいたっては延々と蚊帳の外をキープして唐突に美味しいとこだけ掻っ攫う。二人が関係を深めるエピソードなんて殆ど無いのに済し崩しにくっつかれても困惑するばかりなのです。家族・友人の繋がりに乏しい主人公と巨大な親戚・縁者を抱えるヒロインとの対比を狙ったように思うんですが、なんで途中から男衆と主婦連という構図にしちゃったんでしょうか。
 何故に婆ちゃんが一目見た瞬間に主人公を認めヒロインを託したのかさっぱりわからないのも困ります。婆ちゃんは傑物として描かれ作品のテーマらしき台詞を吐くわけですが、物語の落とし所がそれとズレてるというか、最終的に家族を守るという役目をサブポジションのゲームチャンプに担わせるのであればそこに主人公が関与して欲しいところ。ちゅか、このストーリーだとヒロイン役は“煽てのセイラさん”な婆ちゃん一人でいいし、クライマックスも間接的でいいから彼女が落とし前をつけるべきだと思いました。

 そんなこんなで、もっと削ったり足したりブラッシュアップ出来るお話だったという不満はありますが、父方が9人兄弟で従兄弟だけで13人という身としては、親戚が一同に会した時の雰囲気はリアルに描けてたと思います。確かに子供達は年少組で固まり難しい年頃はやや距離を置き、男達は銘々に場所を塞ぎ女達は賄い組と井戸端組に分散し、長老が全体を掌握してました。台所とかも本当にあんな感じ。
 あと、世界の危機に一族の男達が立ち上がる展開のワクワク感はいいですね。漁船の活用法とか爆笑しました。男達の行動を女・子供が全然理解してないのも面白かったです。更に、ネットの戦いを甲子園予選とシンクロさせたり、この辺りの脚本は良く出来てますね。それだけに終盤の展開が釈然としないわけですが。
 んで、あのバーチャル世界の色々と杜撰で危うすぎるセキュリティシステムと“村上隆”チックなセンスには生理的に抵抗があるのですが、現実社会とデフォルメなネット描写との画のギャップやポップな格ゲー・アクション自体はさして気にならず。「レイアウトの鬼」と言われるだけあって演出は見所満載でしたし、あんな2D画なのに溌剌とよく動いてました。言うまでもなく『時かけ』で証明済みの現実世界の描写も美麗で躍動感あり。良く出来たアニメなのは間違いないです。

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(2010/03/03)
神木隆之介桜庭 ななみ

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重力ピエロ

 伊坂幸太郎という作家は文字で読む分はいいんですが、映像化の匙加減を間違うと即座に嘘臭さが蔓延する作風であります。本作がかなり健闘してるのは間違いありませんが、巧妙な心情描写で異色の人物達による回りくどい物語を構築している原作故にハードルは一段と高く、特に物語の落としどころの按配が重要な作品。雰囲気や仕上りは悪くないけどラストで原作未読の観客を納得させるには少々仕掛けが足りないのでした。

 敗因はアレンジがあまりに乱暴過ぎたこと。チョイ役に墜とされたストーカーの夏子さんがペラペラ真相を語るとか酷いし、父が謎解きに参加してないのに二人が何かやったことに気づいてたりするのも雑すぎます。遺伝子コードを暗号にする意味や放火の理由も弱いし、伏線も無しに最後になってサーカスのエピソードが出てくるのもいただけません。クライマックスで火を放ったのも明らかにやり過ぎです。

 けれど、原作では終盤まで引っ張るミステリー要素をあっさり放り出した改編は正解。この話は本質的に家族の物語であり、無駄にややこしい事をやる奇人変人に陥らせない為には登場人物の心情描写に時間を割く必要があるからです。「最強の家族」の関係を描くという点で一点の曇りもなくその絶妙な距離感に感服しました。
 キャストのハマリ具合も特筆モノで、特に加瀬亮が地味で目立たず平凡で弟に振り回されることを諦観してる兄貴を原作イメージ通りに好演。相変わらず実年齢よりかなり若い役を難なくこなしております。岡田将生はエキセントリックさが物足りないものの風変わりでクールで実はナイーブな弟を見事に演じました。小日向文世のいい父ぶりも非の打ち所なしで、凄い存在感で静かに優しさと強さを醸し出すのであります。まあ、回想・小日向には吹き出しちゃいましたが。

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(2009/10/23)
加瀬亮岡田将生

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