「Wring that Neck」

DVDで観た映画の感想

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ピンクパンサー2

 「フランス警察の恥」クルーゾー警部にスティーヴ・マーティン(米)が扮する新シリーズのパート2。相棒のジャン・レノ(仏)、恋人のエミリー・モーティマー(英)も続投し(全員フランス人役)、更に今回は伊・英・日・印から集まったドリームチームと共に捜査に当たる設定なので一段と国際色豊かになっております。ちゅか、よく考えたら役柄に米国人が一人もいません。アメリカ映画なのに。舞台もフランスとイタリアであります。
 笑いの主軸は毎度お馴染み訛りネタと使い古されたスラップスティックですが、同じギャグを2度3度と繰り返す所謂「テンドン」のバランスが巧みなので満遍なく小粒な笑いを手堅く誘ってきて飽きさせません。もっとも、破天荒で傍迷惑でクレージーな警部の活躍を観せて欲しいというのが本音ですが。

 キューバ系米国人のアンディ・ガルシアがイタリアのプレイボーイというのを除けばドリームチームの面々はその国の俳優が担当。とはいえ日本の刑事は松崎悠希という米国在住の役者です。『硫黄島からの手紙』で二宮くんの仲間をやってた人ですね。『ラストサムライ』にも出演してるらしいけどこっちは何の役か知りません。まあ、無名の役者がガルシアと対等に扱われるわけもなく活躍の場は殆ど無いのですが、この人がキツイ日本語アクセントで話したので他のキャストも極端に訛った英語を使ってるのが伝わりました。英語力がゼロに等しい人間としては大助かり。
 やたらと目を惹くセクシー系インド美人はアイシュワリヤー・ラーイ・バッチャンという人で、『スラムドッグ$ミリオネア』でクイズの答えにもなってる超有名俳優アミターブ・バッチャンの息子の嫁にあたる人。自身もボリウッドのトップ女優だそうです。控え目でキュートなお嬢様風ヒロインのエミリー・モーティマーとのコントラストは素晴らしいですが、二人とも実年齢は30代後半。男優陣に至っては日本代表以外が50~60代に集中しており平均年齢がどうにも高すぎますな。

 本シリーズのクルーゾーはピーター・セラーズ版より毒のない真面目な切れ者に設定されている為、終盤の事件解明がかなりマトモ。折角のドタバタ劇がそこで失速しちゃうのが勿体ないです。事件はもっとクルーゾーのせいで紆余曲折を辿り混乱するべきで、あっと驚くどんでん返しも用意したいところ。
 また、今回はクルーゾー以外に笑いを引っ張るキャラがおらず彼が抜けたシーンでテンションが下がるのが気になりました。前回は全身タイツで頑張ったジャン・レノが地味なのが痛いです。そして、クルーゾーに悩まされるのがお約束のドレフュス警視があまり前面に出ないのも残念。今回扮したジョン・クリーズはモンティ・パイソンの“バカ歩き”の人なんだから、もっと高圧的で相応に酷い目に遭うハチャメチャな警視を見せて欲しかったです。

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バーン・アフター・リーディング

 予告編では主演ブラッド・ピットでバリバリにおバカな犯罪コメディみたく宣伝しまくってましたけど、想像してた内容とは全然違いました。超豪華キャストの群像劇ではありますがブラピの出番はわりと薄く、無駄にややこしくてスリラー色の強いグダグダでブラックな悲喜劇なのでした。つまり、いつものコーエン兄弟なのですが何故か盛り上がりに欠け、個人的には超シリアスな前作『ノーカントリー 』の方がよっぽど笑えたぐらいです。全米大ヒットでゴールデングローブ賞のコメディ部門にもノミネートされたぐらいだから解る人には最高なのでしょうが、これはもう笑いのツボの違いと諦めるしかないですね。

 少しずつ歯車が狂っていき意外な展開を見せる脚本にしても、登場人物が複雑に絡みあうプロット構成にしても練り込みは十分。俳優陣はそれぞれアクの強い演技を見せてますし演出も的確。何がいけないと言うわけでもないのに、トータルで評価すると騒々しいだけであまり面白さを感じられないという不思議。コンセプトは初期のコーエン・コメディと変わってないのに何かが決定的に違っていて自己満足映画にしか感じられないのであります。名優が揃いながら殆ど相乗効果を得られてないのも残念。

 但し、退屈でも眠りに落ちる直前で踏みとどまれるという意味では、豪華俳優陣の起用は無駄ではなかったかと。主演のジョージ・クルーニーは「またいつもの役なのか」と辟易するものの間抜けな女たらしを最悪のヒゲ面で好演してるし、イラっとさせっぱなしの怪演をみせる「コーエン組」フランシス・マクドーマンド、激しやすいジョン・マルコヴィッチや哀愁漂うリチャード・ジェンキンスなどあくまでもシリアスに役を演じてアイロニーを醸し出す面々も見事です。
 そして、なんといってもブラピ。殆ど無意味で馬鹿馬鹿しい作品に付加価値をつけているのはほぼ脇役の彼と言っても過言ではなく。感情移入が難しいキャラ揃いの作品で只独りチャーミング。楽しそうにバカっぽい男を演じる姿はなんやかやいって演技派で溜め息が出るほど。もっと出番が多くても良かったのに。

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フロスト×ニクソン

 リアルタイム世代ではない為、リチャード・ニクソンについては通り一遍のことしか知らず、それも多くはケネディ絡みの知識でウォーターゲート事件には疎かったりします。勿論、この映画の題材となった討論番組の存在も知りません。そんなわけで、30年前にそのTVインタビューを眺めたであろうアメリカのインテリ層の評価は高くとも、これは結構退屈するんだろうと予測しつつ知識欲で観賞しましたが、ラウンド毎の攻防でボクシングを思わせる演出のおかげで僅かな予備知識でも非常に楽しめる作品になってて驚きました。ただ、永田町の人材不足やら有能な側近の不在をまざまざと感じさせられて憂鬱になっちゃうわけですが。

 ボクシングといっても派手な打ち合いや華麗なテクニックの応酬ではなく、チャンプの老獪なクリンチワークの前に何もさせてもらえない経験不足の挑戦者という一般ウケにほど遠い図式。おまけに傍目には破壊力に欠けるように見えて大ダメージという腑に落ちない逆転の一打が炸裂します。この世紀の凡戦になりかねない構図のインタビューを面白く見せるカラクリが両陣営のセコンドですね。5年後の彼らの回想によって作られたという設定の偽ドキュメンタリー形式が巧い。間に挟まれる小ネタが結構笑えるのも良いです。
 もっとも、一番の功績はニクソンその人にあり。フロストの方は基本的にハッタリ野郎だからニクソンの政治家としての魅力としたたかさがドラマを牽引することになりますが、これが悪玉イメージしか知らなくても考え直して投票したくなっちゃう説得力なんだからたいしたもの。強烈なオーラを身の纏い一瞬の表情で落差をつけなきゃならない難しい役柄を演じきったフランク・ランジェラも素晴らしいです。

 とはいえ、最低限の時代背景は理解しとかなきゃなのも事実。ニクソンに関しては、実力がありながら見た目でケネディに敗北、大統領選に続いて州知事選まで落選し低迷、しかしベトナム戦争からの「名誉ある撤退」を主張し復活、外交・内政とも実績を高く評価され大勝利で2期目を迎えるもスキャンダルが発覚、最後まで罪を認めず謝罪もしないまま辞任、というアップダウン人生は知っておきたいところ。インタビューが行われた77年は民主党のカーター大統領が就任した直後、即ちニクソン恩赦の逆風がフォードに吹き政治が疲弊してた時期ってことも頭に入れておいた方が良いです。
 一方、洋楽好きなら記憶してる人もいるだろう米国番組「デヴィッド・フロスト・ショー」は72年に放送終了。ビートルズの「Hey Jude」が有名ですから少なくとも足かけ5年は放送が続いた筈です。つまり英・豪だけじゃなく米でもバラエティの司会者としての実績は十分にあり、しかし報道への転身には疑問符という立ち位置です。

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ベンジャミン・バトン 数奇な人生

 『セブン』『ファイト・クラブ』のデヴィッド・フィンチャー×ブラッド・ピット作品ですが、ああいうサイコでマッチョでソリッドなバイオレンスを期待するのは大間違い。原作が文豪スコット・フィッツジェラルドで「80歳の体で生まれ若返っていく男の人生を描く物語」と聞けばらしからぬファンタジーなのはご理解いただけると思います。もっとも原作とは全くと言っていいほど違うストーリーになってるらしいというか、これはどう見ても『フォレスト・ガンプ』の焼き直しなのであります。始まり方は『タイタニック』だけども。

 しかし、勝手リメイクとはいえ侮りがたい出来。どうやら最近のフィンチャー監督は本気でアカデミー賞を狙ってるようですね。前作『ゾディアック』もアメリカ現代史を背景とした大作でしたが今回もいかにもオスカー好みな力作です。淡々とした内容ながらも3時間弱の長尺を飽きさせずに興味を引き続ける作劇が為されており『ゾディアック』より取っ付きやすいのがありがたい。設定から想像させるような艱難辛苦や悲劇の連鎖といったあざとい泣かせは一切無しで、善男善女に囲まれた順風でありふれた人生の悲喜を主人公を取り巻く非常に魅力的な人々によって描いており、惚れ惚れする演出力です。ただし、これをペーソスたっぷりな大人の寓話と受け取れるのは折り返し地点を過ぎた世代であり若い人ほどわかりにくい気がしますが。

 もう一つの売りは特殊メイク&視覚効果。老化したブラピの顔と子供ボディとの合成は遂にここまで来たかと感嘆する魔法みたいな出来栄え。ケイト・ブランシェットの10代メイクも見事ですし背景美術にも凄く拘りがあるのが伝わります。無論、何段階かの年齢を演じ分けられる役者達の力量あってのものですが、CG時代の映像表現として相当レベルが高いです。ただ、幼少期が小さな老人だったのに晩年のブラピをバカでかい幼児にしないで逃げてしまったのは残念。

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蛇にピアス

 正直言って話題の「ハードな濡れ場」目当てでありまして、芥川賞獲った原作のあらすじどころか主演・吉高由里子の顔すら知らない状態での観賞でしたが、エロ抜きでも結構興味深い映画でした。好き嫌いは両極端に分かれそうですが、若い頃には村上龍や山田詠美を読み漁ってたマピールさん的にはモロ好み。いかんせん過剰にセンシティブな女心を正面から受け止めるパワーが失われて久しいのですが・・・。

 なんちゅうか、村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を女性視点にして焼き直した感じの話でした。ピアスとか刺青とか挙げ句にスネーク・タンとか、行為が理解しがたいし破滅的な生き方も全然感情移入出来ないんですけど、痛みでしか生きてる実感を捉えられない自傷行為癖のメンヘラな人達の心を鷲掴みにしそうな危うさがこの作品にはあると感じました。
 こういう変な話は奇を衒った映像にされがちなんですが、クラシカルというか王道の演出で撮ってたのが印象的。一昔前ならVシネかロマンポルノの枠じゃなきゃ映像化出来なかったものが文芸作として繊細に扱われたことが嬉しいです。癖のある話に加え役者の力量もそれなりなので万人ウケの傑作とは言い難いですが、たぶん原作の魅力をあまり損なわずに映画化出来てるんじゃないかと想像します。

 んで、当初目的のHシーン。吉高由里子は開始10分足らずのベッドシーンを皮切りに次々と出し惜しみ無しでヌードを披露。ビッチな演技と脱ぎっぷりの良さが光りますが、個人的には濡れ場でのエロさはイマイチ。まあ、ポルノじゃないので彼女の痛みを伝えられればいいのですが、全編に渡り痛々しい彼女が素晴らしいのに、サディスティックなセックスの時だけプレイっぽくて見劣りなのであります。入れ墨を入れる時の肢体とかは凄くセクシーでしたが。
 相手役の男二人、高良健吾&ARATAはインモラルな雰囲気がとても良かったし、見た目の割りに甲斐甲斐しかったりの萌えキャラを巧く演じていたと思いますが、一線を越えた時のバイオレンス度がちょっと弱かったように思います。彼女を殺しかねない狂気を見せるには至らず残念。
 あと、ちょっと邪魔くさかったのは無駄に豪華な端役達。主役陣が拙いなりに世界観にシンクロする一方で、カメオ出演の人達が浮いてるのはいただけません。特に、本当にどーでもいい役で出演してる唐沢寿明には笑ってしまいました。ここ凄く大事なシーンなのに。

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